安倍官邸は内心、困っているのではないか――。「拉致問題の解決」を最重要課題に掲げている安倍首相。これまで北朝鮮は「拉致問題は解決済み」という態度だったが、ここにきて一転「拉致について日本に説明する」と態度を変えている。北朝鮮の変化が安倍を窮地に追い込むのではないか、という見方が広がっている。

 金正恩朝鮮労働党委員長は昨年、「拉致問題は取り上げず、対話せず、交渉もするな」という“特別な指示”を関連部署に出していた。ところが突然、「2014年のストックホルム合意に基づく調査結果を改めて日本側に説明するように」と指示したという。今月中旬、韓国の拉致被害者家族会の代表が明らかにした。

 安倍周辺が危惧しているのは、「調査結果の中身」と「トランプリスク」だ。

 ストックホルム合意に基づいて2014年、特別調査委員会を設置した北朝鮮は、日本側に「調査結果報告書」を渡そうとしたが、日本は受け取りを拒否したと報道されている。とても日本側が納得できる中身ではなかったからだとみられている

朝鮮半島問題に詳しいジャーナリストの太刀川正樹氏が言う。

「まだ帰国していない政府認定の拉致被害者は12人います。調査結果を改めて日本側に説明するとしている北朝鮮は、以前、日本に渡そうとした調査結果と同じものを提出する可能性が高い。問題は、その時、日本政府が“調査結果は信用できない”と受け取りを拒否するかどうかです。安倍首相はトランプ大統領に、“拉致問題”について金正恩委員長に伝えて欲しいと依頼し、トランプ大統領も伝えています。事実上、トランプ大統領が“仲介役”になっただけに、受け取りを拒否できるかどうか。受け取ったら北朝鮮の調査結果を事実と認めることにもなりかねない。安倍首相は悩ましいはずです」

 横田早紀江さんは、きのう(19日)、「めぐみちゃんら全員が生存して誰ひとり欠けることなく帰ってくるのは難しいかもしれない」と苦しい心情を打ち明けている。安倍は、どうするのか。

日刊ゲンダイ
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