これで「道徳」の教科化とは噴飯モノだ。4日、文科省の科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58)が受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

 昨年5月、東京医科大の関係者が、同省の官房長だった佐野容疑者に、私立大などを対象とする支援事業に選ばれるよう便宜を図って欲しいと依頼。その見返りに今年2月、佐野容疑者は同大を受験した自分の子供の点数を加算させて合格させてもらった疑いだ。

■もはや教育を司る資格なし

 許し難いのは、“裏口入学”に、国民の血税が使われたことである。同大医学部医学科は倍率16倍の狭き門。佐野容疑者はわが子をねじ込むために自分の懐を痛めず、特色ある研究を支援する「私立大学研究ブランディング事業」で便宜を図ったのだ。

 この事業の予算規模は年間約55億円で、選ばれた大学は3〜5年にわたり、事業内容に応じて年額2000万〜3000万円程度の補助金をもらえる。昨年度、応募した188校中、60校が選ばれた。

「私大と文科省はズブズブですよ。人口減少で学生数が減っても、大学側は従来通り助成を受けたい。官僚に口を利いてもらう代わりに、大学側は教授のイスなど“天下り先”を用意する。官僚側から何らかのポストを要求することも珍しくなく、見返りに応じない大学の風当たりは厳しい」(私大関係者)

 そんな癒着の“権化”ともいえる佐野容疑者は、早大大学院理工学研究科を修了後、1985年、旧科学技術庁に入庁。01年の省庁再編後は、高等教育局私学部参事官や大臣官房審議官を歴任した。

「官房長だった昨年、天下りあっせん問題で厳重注意を受け、同年7月に現在のポストに就任。省内では『将来の次官候補』と目されていました」(文科省関係者)

 しかも、文相経験のある自民党の元代議士の娘婿との情報もあり、「本人も政界進出に色気があって、結婚したのではないか」(文科省関係者)と囁かれている。

今回の事件で、出世も政界進出の思惑も全てパー。林文科相は佐野容疑者の逮捕を受け、「何らかの措置を速やかに取りたい」と語ったが、部下の処分だけで収まる話じゃない。監督責任を負って辞任がスジだ。

 それにしても、教育を司る省庁トップ候補が裏口入学とは……。天下りや加計問題、局長逮捕で汚れた“三流官庁”に、もはや教育を語る資格はない。

 倫理観ゼロの政権下で、この国のモラルは地に落ちるばかりだ。

日刊ゲンダイ
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