「過労死が防げない」と過労死遺族たちが反対する中、参院本会議で29日に成立した働き方改革関連法。残業時間に上限は設けるものの、労働時間に関する保護から外れる人も出てくる。そんなちぐはぐなルール作りが過労死防止に逆行すると、遺族は無念さをあらわにした。

「これがあなたを追い詰めた日本の姿だよ」

 広告大手・電通の新入社員で過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母幸美さん(55)は、働き方改革関連法が参院本会議で成立した直後、傍聴席に持参したまつりさんの遺影にこう語りかけた。この日は、ほかの遺族らとともに黒い服を身にまとった。

 過労死が減らない日本で、高年収の専門職を労働時間に関する保護から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)が導入される。「長時間労働を助長する」と幸美さんは撤回を訴えてきたが、かなわなかった。

 昨年2月、安倍晋三首相と首相官邸で面会した。首相は過労死をなくすとの決意を口にしたが、その後はほかの遺族が求めた面会に応じなかった。国会でも、遺族や野党の懸念に対して、答弁を避けたと感じた。

 法の成立後に国会内で開いた会見では、こう注文をした。「過労死防止と矛盾する内容で大変残念だ。仕事で命と健康をなくさないよう、これからも働き方改革の審議をしてもらいたい」

 「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表(69)は、4年前に成立した過労死防止法を引き合いに出した。「よもや過労死防止に逆行するような法律の成立を目の当たりにするとは思わなかった。悔しくてたまらない」(贄川俊、山田暢史)

■当事者の期待…

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朝日新聞
2018年6月29日23時13分
https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5HSYL6YULZU00L.html