加計疑惑のキーマンだった柳瀬唯夫元首相秘書官が10日午前、衆院予算委員会に参考人として出席し、冒頭で「国会審議に大変なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」と謝罪した。

そして加計学園、愛媛県、今治市の職員と2015年4月2日に首相官邸で面会したこと、さらにその直前の同年3月頃と6月前後の計3回、加計学園と面会したことを明かした。

 さらに加計側の出席者の1人が今春、開学した獣医学部の吉川泰弘学部長だったことも認めた。

 柳瀬氏は加計学園関係者と知り合ったきっかけは、2013年に安倍晋三首相が河口湖の別荘でバーベキューとゴルフ会を開いた時だと説明。安倍首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎理事長もバーベキューの席にいたことを認めた。

 さらに「お庭でバーベキューをして秘書官も十数人いますし、総理のご友人、親族もおられ、加計さんもおられた」などと状況を説明した。

 自らが安倍首相らとゴルフをしたことも認めたが、緊急時の要員として後方にいたとし、「総理と加計理事長が、どういうお話をしていたかわからない」と、安倍首相と加計理事長との間で交わされた会話について自らはあずかり知らない立場にいたことを重ねて強調した。

 午後に行われた参院予算委員会では立憲民主党の蓮舫議員が存在感を発揮した。

蓮舫:最初の面会は3月24日と聞いているんですが、なぜ加計学園関係者と会ったんでしょうか?

柳瀬:アポイントの申し入れがあって、今度上京するのでお会いしたいと。

蓮舫:具体的な案件がわからないけれど、上京したのでお会いしたい。つまり首相秘書官である柳瀬さんと学園関係者はそれくらい密接な関係ということでしょうか。

柳瀬:元々総理の別荘のバーベキューでお会いし、面識はありましたので…

蓮舫:加計関係者とバーベキューでお会いし、どなたから紹介されたんですか。

柳瀬:総理は河口湖の別荘でご親族やご友人を集めてバーベキューをよくやっておられました。ご紹介いただくとかそういう場ではございません。何十人も人がいる中でお会いしたというわけで、特に誰かに紹介されたわけではございません。

蓮舫:全く紹介されていなくて、何十人も人がいる中で、お会いをした。その人から連絡がきて、案件もわからないでお会いをする間柄なんですか?さらに3月24日の面会で、あなたから加計学園に「国家戦略特区でいこう」と助言していませんか。

柳瀬:記憶がクリアではありませんけど、3月の最初にお会いしたときも構造改革特区で何度もやっているけれどうまくいかないという話がありまして、その時にもう国家戦略特区制度をスタートしていましたし、安倍政権として大事な柱でございましたので、えぇ、その時に国家戦略特区の話になったと思います。

 柳瀬氏は焦点になっている安倍首相の関与の有無については一貫して否定。

 だが、柳瀬氏が否定すれば、するほど疑惑はますます深まったといえる。

 柳瀬氏は愛媛県職員や加計学園関係者と面会した際の記録の存在について立憲民主党の長妻昭議員から問われても「メモは取っておりません」と答弁。安倍首相への報告については「いちいち報告したことはない」と述べると議場からは「エーッ」という声があがった。

長妻氏は記者団の取材に「首相経験者は秘書官経験者に私が話を聞いた限りでは、『そんなことはありえない』と言っている。信用できない」と話した。

 この発言には与党議員からも驚きの声があがった。自民党の閣僚経験者は「秘書官がメモを取らないなんてありえない。こんなのウソに決まっているじゃないか」と憤る。

 実は、官邸が細かい過去の記録をキチンと保存していることについて、安倍首相自身が語っていたこともある。2014年3月21日、フジテレビ系の「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングに、安倍首相は現役の首相としてはじめて出演した。このとき、司会のタモリとのトークで、安倍首相は番組5千回記念で当時の小泉純一郎首相が電話で生出演したことを紹介し、「そういう記録は全部残っているんですよ。やっぱり官邸には」と自慢げに語っていたのだ。


ところが、加計学園問題が国会で取り上げられ、愛媛県や今治市の職員らが官邸を訪問していた事実が問題になった昨年7月には見解が一変。萩生田光一官房副長官は(当時)は、官邸の記録について「官邸訪問者の記録が保存されておらず、確認できない」と説明した。

 経産省出身で首相秘書官の経験もある江田憲司衆院議員も、柳瀬氏を厳しく追及した。

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(AERA dot.編集部 西岡千史、福井しほ) 
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