米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設計画を巡って防衛省が2014年に発注した工事で、受注した大成建設から海上警備を委託された東京都内の警備会社が警備費約7億円を過大請求していたことが、関係者の話で判明した。防衛省は内部通報でこの不正を把握した後も、警備会社との契約を中止せず、昨年11月まで4件計約82億円の契約を結んでいた。

 過大請求が明らかになったのは渋谷区の警備会社。防衛省沖縄防衛局は14年6月、桟橋などの仮設工事を指名競争入札で発注し大成建設が約59億円で落札した(落札率約98%)。契約には移設反対派に対する海上警備が含まれており、大成建設は15年8月末までこの会社に業務を委託した。

 関係者によると、この会社は警備員を船に分乗させて24時間態勢で警備を実施。大成建設は1日の稼働人数が記載された日報に基づき警備費を支払ったが、警備会社は人数を水増しした日報を提出していた。16年1月に同局に過大請求を指摘する内部通報が寄せられ、大成建設が実際の稼働状況を調べ直したところ、約7億円が過大だった。

 警備会社は同年3月末、大成建設に約7億円を返還。同局と大成建設は契約を変更して契約額から約7億3600万円を減額し、過大請求分を精算した。

 防衛省の内部要領は契約先やその下請けに「不正または不誠実な行為」があった場合、一定期間の指名停止を行うとしているが、同局は警備会社への口頭注意にとどめ、入札参加を認めた。15年7月〜17年1月、新たな海上警備4件を一般競争入札で発注したが、この会社が4件とも受注(落札額計約82億円)した。いずれも応札は1社のみで落札率は98〜99%だった。

 4件中3件について、会計検査院は昨年11月、同局が警備会社の見積もりをそのまま採用し、予定価格が約1億8800万円過大になったと指摘。これを受け、同局は複数社が参加しやすい入札内容に見直し、昨年12月から別の会社に海上警備を直接発注している。

 毎日新聞の取材に、警備会社は「意図的に過大請求したものはない。大成建設との取引の精算は適正に行っている」、大成建設は「過大請求を受けたことは誠に遺憾。今後は請求内容の確認を徹底する」とコメント。同省は「大成建設、警備会社とも事実関係の確認などに対応しており、指名停止の措置を講じなかった。海上警備は参入業者が少なく、特定の会社を優遇した認識はない」とした。【島田信幸、松浦吉剛】

毎日新聞
2018年4月24日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180424/ddm/001/010/151000c