https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180412-00000061-sasahi-pol

 森友問題で揺れる安倍政権。作家・室井佑月氏は、安倍首相が大好きか、大嫌いかで“分断”されてしまった状況が「かなりきつい」と指摘する。

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 出演しているワイドショーで、共演者に叱られた。番組では、森友問題、証人喚問を受けた佐川氏が起訴されるかされないか、起訴されるとしたら、その裁判の過程で明らかになっていく、という話題を扱った。

 あたしはこの流れに違和感を持った。

 だって、森友問題で、佐川さんは、疑惑の中のひとつのパーツにすぎない。

 公文書の扱いに関しては具体的なことがわかるかもしれないが、佐川さんが自分のところで食い止めるんだ、そう腹をくくったら、動機の部分は正直にいわなくてもいいんじゃないか。

 佐川さんが起訴されたとしても、国民の多くが知りたい、なぜそんなことをしたという部分は出てこないかも。

 だからあたしは、ほかの方法もないのか、たとえば野党がいってる国政調査権とか、そう口にした。

 そしたら共演者に、今回は検察を軸に話を進めているので進行を妨げるな、個人的な疑問を挟むな、と叱られた。普段、その人は親切な良い人だから、あたしはその場ですみませんと謝った。

 しかし、時間が経つにつれ、もやもや感が大きくなる。

 裁判の過程で物事が明らかになっていくという話は、やっぱり誰かが疑問を挟まないといけなかったんだと思う。そのまま流していたら、森友問題の収束を狙った誘導と思われかねない。

 安倍政権になってから、世の中がギスギスしている。

 右か左か、高所得か低所得か、若者か高齢か……。世の中の分断が、加速しているみたいだ。

 安倍さん以前からそういうことはあったかもしれないが、もっとふんわりとしたオブラートに包まれたようなものだった。

 もう嫌だ、こういうの。

 というようなことをいうと、それ、安倍政権とは関係ないんじゃ……、すべて安倍さんのせいかよ、という人もいるだろう。

 でも、あたしは関係ないとは思えないのだ。安倍さん自身がそういう人じゃん。国内の身近な人にも、外国との付き合い方も、敵か味方か、贔屓するか排除するか、好きか嫌いか分けたがる。

 アメリカは正しいと決めていて、周辺のアジア諸国は敵認定。

 選挙前に出演するテレビ番組も好き嫌いで選び、読売新聞と産経は好き、朝日と東京と毎日は嫌い。

 いいや、それぞれの新聞社の中でも、安倍擁護派と反発派で真っ二つに分かれ、揉めていると聞いた。

 なぜそうなるのか?

 安倍さんが、これだけ長く首相をつづけられたのは、運も才能のうち、たしかに彼に強烈なカリスマ性みたいなものがあるんだと思う。

 だからこそ、彼が大好きなのか、大嫌いなのかということでも、我々は分断された。

 その分断が、かなりきつい。

 一日も早く、彼は過去の人となって、その話題が毎日、出てこない世の中になってほしい。

※週刊朝日 2018年4月13日