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 春分の日に首都圏で大雪という異常気象と符合するように、安倍晋三首相を頂点とする中央政界も“森友政局”で物情騒然となっている。年度末直前に混迷を極める国会は、財務省による公文書改ざんという驚天動地の不祥事の最終責任者と名指しされた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問を、27日に実施する。ただ、現状を見るかぎり「これにて一件落着」どころか、「喚問が与野党攻防の泥沼化の引き金」(自民幹部)にもなりかねない。山積する内外の難題への安倍政権の対応が問われる中、永田町政治の混迷は「まさに国難」(首相経験者)の様相を深めている。

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■昭恵氏喚問は首相にとって「究極の選択」

 仮に、佐川氏が証人喚問で改ざん問題について「政権中枢部からの指示で行った」などと証言すれば、これまでの首相らの国会答弁での説明は完全に崩壊し、首相退陣に直結する。また、「首相の国会答弁との整合性を図った」「首相夫人の行動も忖度した」ことなどを認めても退陣論が加速する。

 一方、佐川氏が「虚偽答弁」を認めながらも、政権への忖度など肝心な部分について「刑事訴追のおそれ」を理由に証言を拒んだ場合は、「政権との関わりはグレーゾーンのまま」(政府筋)となる。さらに、佐川氏が「改ざんは私の指示」「虚偽答弁を隠すため」などと証言すれば、同氏を改ざんの最終責任者とした麻生財務相らの主張どおりとなり、首相自身が進退を問われる事態は回避される。

 つまり、佐川氏の証言次第で首相の進退に関する政局シナリオは変わるわけだが、永田町では「結果的にグレーゾーンで終わる可能性が極めて高い」(民進党)との見方が支配的だ。となれば、「いつまでも疑惑解明が進まないまま時間が経過し、内閣支持率が危険ゾーンとされる2割台に落ち込んで、首相も国会閉幕後などの政局の節目で3選出馬断念を表明せざるを得なくなる」(自民長老)とのシナリオが現実味を帯びてくる。

 政府与党首脳間では「どんな状況になっても、拒否せざるを得ないのが昭恵夫人の証人喚問」との判断が支配的だ。首相に「妻か政権かの、究極の選択を迫る」(官邸筋)ことにもなりかねないからだ。しかし、佐川証言が「グレーゾーン」で終われば、野党側の最終標的が昭恵夫人の証人喚問になるのは間違いない。

 連日、国会答弁を続ける財務省の太田充理財局長も、19日の参院予算委集中審議で、決裁文書から昭恵夫人に関する記述が削除された理由について、「総理夫人だから」と“意味深”な発言をしている。与党内でも「国会の場かどうかは別にして、昭恵夫人本人の説明がないと、疑惑は永遠に晴れない」(ベテラン議員)との声は少なくない。

■「文部科学省への圧力事件」も政権に打撃

 ここにきて急浮上した「文部科学省への自民議員の圧力事件」も政権への打撃になっている。前川喜平・前文部科学事務次官が名古屋市立中学校で行った講演の経過などを文科省が調査した問題だが、いわゆる“安倍チルドレン”とされる若手議員の介入があったことが表面化し、党内外で批判を浴びているからだ。文科省は「主体的な判断だった」と釈明するが、関係者は「ありえない事態」(文科省幹部OB)と呆れ、メディアも厳しい追及を続けている。このため、首相サイドも「あまりにも悪いことが重なりすぎる。泣きっ面に蜂だ」と頭を抱えている。

 第2次安倍政権が4年目を迎えた16年、首相は1月1日付けの年頭所感で「築城3年、落城1日」という警句を引用した。「政府には常に国民の厳しい目が注がれている」と政権運営に緊張感を持って臨むために自らを戒めたものだ。それから2年3か月、「首相にとって現在の心境は、この警句どおりでは」(政府筋)との声も広がる。

 首相の進退も含め「森友政局」の行き着く先はどこなのか。不安のささやかれる体調も含め、すべては1強宰相の判断次第だが、どうやら「政界には首相の心象風景を見極められる人物は一人もいない」(自民長老)のが実情のようだ。