毎日新聞2018年3月12日 21時52分
https://mainichi.jp/articles/20180313/k00/00m/010/140000c

安倍晋三首相は12日、財務省の決裁文書が改ざんされていたとの調査結果を受け、麻生太郎副総理兼財務相の進退について「全容解明へ調査を進める責任を果たしてほしい。信頼回復へ組織を立て直すため、全力を挙げて取り組んでもらいたい」と辞任を否定した。麻生氏も「進退は考えていない」と記者団に明言し、改ざんは財務省理財局の一部の職員が行ったという認識を示した。

 しかし野党は「国会審議の前提を覆す前代未聞の事態だ。財務省だけで(改ざんを)判断することはあり得ない」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)と、麻生氏の辞任要求に加えて首相の責任も追及する構えだ。

 首相は首相官邸で記者団に「行政全体の信頼を揺るがしかねず、責任を痛感している。国民に深くおわびする」と陳謝した。菅義偉官房長官は記者会見で、官邸が官僚人事を掌握していることが官僚のそんたくにつながったとの指摘に対し「ありえない」と反論。麻生氏ら閣僚は改ざんを知らなかったとした。

 官邸は首相の盟友である麻生氏を擁護し、あくまで財務省理財局の責任だとして幕引きに躍起だ。菅氏は「(決裁文書の)本文はほとんど変わっていない。私は(改ざんでなく)書き換えだと思う」と強弁した。

 公明党の山口那津男代表は改ざんについて「極めて遺憾だ。立法府の軽視で、断じて許されない」と財務省を強く批判。麻生氏に説明責任を果たすよう求め、続投には理解を示した。ただ、官僚だけの責任として事態を収拾するのは困難との見方や、麻生氏の責任論が加速するとの予測が官邸や与党からも出ており、与党幹部は「麻生氏が国会できちんと説明できるかだ」と指摘した。

 一方、立憲、希望、民進、共産、自由、社民の野党6党は幹事長・書記局長らが12日に会談し、麻生氏と首相の責任追及で一致。首相の妻昭恵氏や佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問を求めることも確認した。

 国会審議は野党の反発で6日から不正常な状態が続いており、与党は審議復帰を求めたが、野党側は「財務省の調査は改ざんの指示者や目的が示されていない」などと拒否。国会は13日も正常化しない見通しだ。