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 政府が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案で裁量労働制に関する部分を削除したのは、問題の長期化を回避するためだ。昨年通常国会は森友学園問題などが長期化したところに共謀罪法の成立を強行し、内閣支持率が急落した。重要法案の審議を前に問題が続発するのは昨年の通常国会と酷似している。安倍政権は昨年の再来を懸念している。

 安倍晋三首相は1日の参院予算委員会で、「データにさまざまな指摘があったのは改めておわび申し上げたい。国民から疑念を持たれ、裁量労働制については全面削除する」と繰り返し、低姿勢に徹した。

 法案提出前の方針転換に、与党幹部は「昨年の二の舞いは避けたかったのだろう。問題をだらだら引っ張ると、国民の信頼がなくなる」と指摘した。

 今国会は野党第1党の民進党が分裂したこともあり、当初は政府・与党に楽観ムードが漂っていた。しかし茂木敏充経済再生担当相の秘書が選挙区の有権者に線香を配ったと野党から追及され、沖縄に関するヤジで松本文明元副内閣相が更迭された。森友学園への国有地売却では新たな財務省の内部文書が見つかり、昨年に「廃棄した」と答弁した佐川宣寿前財務省理財局長(現・国税庁長官)の国会招致を野党は求める。新たな問題が次々と降りかかる中、厚生労働省の異常データ問題は拡大の様相を呈し、昨年のトラウマが政府・与党に広がった。

 昨年の通常国会での共謀罪法は提出前から金田勝年法相(当時)の不安定な答弁で予算委が何度も紛糾。法務省が「法案提出後に議論を」と要請する文書を配布し翌日撤回に追い込まれた。金田氏に対する野党の追及は国会終盤まで続き、政権に徐々に打撃を与えた。森友学園を巡る問題も2月中旬に問題化し、首相の関与を巡り野党は追及を続けた。

 今回、与党内からは「4月以降の法案審議に入ってから修正するよりはましだ」(自民党中堅)という声も上がる。予算審議の日程はほぼ与党の想定通り進むが、野党に半ば定期的に追及の材料を与え続けており、首相や閣僚が釈明に追われる場面も目立つ。【野口武則】