『安倍首相の「裁量労働制のデータは不適切だから答弁撤回するけど、厚労省に言われただけで再調査も不要でデータ撤回はしない」はいかに無理筋なのか』

2018年2月22日18:30  バザップ
http://buzzap.jp/news/20180222-hatarakikata-kaikaku-lie/

あまりにも酷い全貌が明らかになってきましたので経緯をまとめました。詳細は以下から。

かつては「最高の責任者は私です」と自信満々に国権の発動の最高機関たる国会で明言した安倍首相ですが、今国会の最重要法案と位置づけた「働き方改革関連法案」における裁量労働制を巡るやり取りでの振る舞いにその面影は見られません。

いったいどこがどれほどに酷いのか、一部を切り取って語れるようなものではありませんので、事の発端からの経緯を辿ってみましょう。

◆「裁量労働制は一般労働者より労働時間が短い」という大嘘
一連の問題が起こっているのは「働き方改革関連法案」の目玉である裁量労働制の拡大に関する議論の中でのこと。安倍首相が1月29日の衆院予算委員会で裁量労働制で働く人について「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁したことに始まります。

この答弁は厚労省が2013年度に公表した調査を元にしたもので、全国の1万1575事業所の「平均的な人」の労働時間を調べたもの。これによると裁量労働制で働く人の方が1日あたり平均20分前後短かいとしています。

これに対して野党側は裁量労働制で働く人が一般の労働者より労働時間が長いとする独立行政法人の調査結果があると指摘、さらにこの厚労省の調査には、一般労働者の労働時間が「1日23時間」を超える事業場が含まれるなど不自然な点が多く、信ぴょう性も疑問視していました。

この追求に安倍首相は2月14日「精査が必要なデータをもとに行った、1月29日の本委員会における私の答弁は撤回するとともに、おわびを申し上げたい」とし、謝罪と撤回に追い込まれました。

しかし安倍首相はそれでも「このデータを全ての基礎として法案を作ったわけではない」と釈明し、裁量労働制導入に向けて働き方改革関連法案の成立を目指す方針を強調していました。

◆しかしその「データ」はあまりに酷いものでした
このデータはそれでは今回の答弁でたまたま厚労省が出してきてたまたま答弁に使われたものだったのでしょうか?いいえ、実はこのは初めて使われたものなどではまったくありませんでした。

2015年7月以降、塩崎恭久・前厚労相や加藤厚労相は国会でこの調査に度々言及して「裁量労働制の拡大が必ずしも長時間労働につながるわけではない」と説明する根拠にしていました。つまりは裁量労働制拡大に関し、難色を示す野党や労働界への反論材料に使い続けられてきたいわば伝家の宝刀とも言えるものだったのです。

そして2月19日、厚労省はこのデータが違った質問に対する回答を比較するという、極めて初歩的な間違いに基づく不適切な手法によって作られたものだったことを認め、野党会合で「おわび申し上げる」と謝罪しました。

このデータでは、一般労働者への質問は1日の残業時間について1カ月のうちの「最長時間」を尋ねる内容だったものの、裁量労働制で働く人には単に1日の「労働時間の状況」を聞いていました。

これによって一般労働者の方が長時間の回答が集まりやすくなって「裁量労働制で働く人の方が平均20分前後短い」という結論が導かれ、安倍首相の「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」という誤った答弁を導いたのです。

世間では馬と鹿の見分けがつかない人のことを「馬鹿」と呼びますが、質問そのものがまったく異なる調査の結果を単純比較することは、自民党の竹下亘総務会長の言葉を借りれば「小学生とは言わないが、高校生なら分かる間違い」でしかありません。

厚労省幹部は「意図的ではなく、最長という概念が抜け落ちたまま比較してしまった」と釈明していますが、これは小学生の自由研究ではなく中央官庁が政府の重要法案の根拠とすべく作成したデータであり、3年間にわたって国会という場で用いられ続けてきたものです。

そして政府はこのデータの他に「裁量労働制の労働時間の方が短い」ことを示すデータは存在しないことも認めており、裁量労働制が長時間労働をもたらすという批判への唯一の牙城がここに崩れたことを意味します。

(以降ソースにて)