https://www.asahi.com/articles/DA3S13346289.html

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる国会の議論がかみ合っていない。財務省内に存在する新たな資料や、交渉の様子を記録した音声データが明らかになる中、野党は追及を強めるが、与党は佐川宣寿・前財務省理財局長(現・国税庁長官)や安倍晋三首相の妻昭恵氏らの国会招致を拒否。首相は「安倍晋三記念小学校」をめぐる朝日新聞の報道を批判している。

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 ■朝日新聞の報道経緯は―― 国が黒塗り開示、籠池氏に取材

 首相が指摘する記事は、昨年5月9日付朝刊に掲載したものだ。森友学園の籠池泰典・前理事長が2013年9月に近畿財務局に国有地取得の要望書を出した際、小学校を設立するための設置趣意書を添付し、そこに「安倍晋三記念小学校」の名称を書いていたと証言した、と報じた。昨年11月、実際には「開成小学校」と書かれており、「安倍晋三記念小学校」ではなかったことが判明した。

 「安倍晋三記念小学校」の名称は、学園が建設計画を進めていた当初、使っていた校名だった。

 学園が14年春ごろ、運営する幼稚園の保護者に配ったとされる小学校への寄付金の「払込取扱票」には、安倍晋三記念小学校という文言が印刷されていた。前理事長も一時期、この校名で寄付金を募っていたと認めている。

 学園側が大阪府に小学校の設置認可申請書を出したのは同年10月。大阪府教育庁の幹部などによると、その時点では「瑞穂の國(くに)記念小學院」となっていたが、学園側は申請前、府に対して安倍晋三記念小学校も仮称として使っていた。

 昨年2月の問題発覚後、国会では安倍晋三首相や、小学校の名誉校長に就いていた昭恵氏の存在を財務省側が意識していたかが焦点となった。安倍晋三記念小学校という名称についても昨年3月14日の衆院本会議や、前理事長の証人喚問があった同月23日の参院予算委などで繰り返し取り上げられた。

 そうした中、昨年5月8日、衆院予算委員会で当時民進党の福島伸享氏が、財務省から開示された設置趣意書の大部分が黒塗りだったことを明らかにした。福島氏は前理事長からの聞き取り結果として、タイトル部分に安倍晋三記念小学院(小学校)と書いていたのではないかと質問。前理事長らに開示の同意を得たとし、説明を求めた。

 同省の理財局長だった佐川氏は「学校の運営方針に関わることなので、情報公開法の不開示情報になっている」と拒んだ。前理事長の同意があっても、学園が民事再生手続き中であることを理由に、開示するとしても管財人への確認が必要だとも説明した。福島氏は「タイトルがなぜ不開示情報なのか」と批判していた。

 財務省が説明を拒んでいる以上、当事者の前理事長にどう記載したかを確認する必要があると考え、朝日新聞は同日の国会審議後にあったインタビューで複数回にわたって質問。前理事長は「安倍晋三記念小学校」と設置趣意書に記載したと答えた。

 記事では前理事長の証言にもとづき、「籠池泰典氏が8日夜、朝日新聞の取材に応じ、『安倍晋三記念小学校』との校名を記した設立趣意書を2013年に財務省近畿財務局に出したと明らかにした」と報じた。

 財務省は前理事長のインタビューから半年たった昨年11月、立憲民主党に対し、管財人から「開示されても支障はない」との意見書を得たとして、設置趣意書を開示。実際には小学校名が「開成小学校」と記載されていた。

 朝日新聞は、前理事長の証言として「安倍晋三記念小学校」と報じたことを含め、この事実を同月25日付の朝刊で「森友の設置趣意書を開示 小学校名は『開成小学校』 財務省」との見出し(東京本社最終版)で伝えた。

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 安倍首相は5日の衆院予算委で「(昭恵氏が)棟上げ式に行ったと籠池さんが証言した。これも朝日新聞が大々的に報道した」と述べた。今年1月28日付の朝刊「首相夫人に言及 減額迫る」の記事を指しているとみられる。

 この記事では、前理事長ら学園側が16年春、国に土地の購入を申し入れた時期の協議で「棟上げのときに首相夫人が来られることになっている」と言及しながら国有地の減額を求めていたことを音声データをもとに報じた。前理事長は「棟上げ式に来た」とは述べておらず、記事中にもそのような表現はない。

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