https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171229-00054020-gendaibiz-pol

結局、証拠は出なかった

2017年がまもなく終わる。先々週のコラムで私は「北朝鮮問題」と「野党の迷走」「左派系マスコミの暴走」を今年の3大ニュースに挙げた。野党については先週、詳述したので、今週は左派系マスコミを総括しよう。私は40年来、新聞記者をしてきたが、今年ほど左派系マスコミの偏向報道を目の当たりにしたのは記憶にない。「フェイクニュース」は米国のトランプ大統領が発した言葉だったが、いつのまにか日本でも普通になってしまった。その象徴が「モリカケ問題」をめぐる報道である。いまさら蒸し返すのもばかばかしいが、要点だけ指摘すれば、いずれも問題の核心は「安倍晋三首相が森友学園や加計学園に特別な便宜を与えたかどうか」だったはずだ。ところが、いまに至るも「首相が特別な便宜を与えた」証拠はない。それどころか、森友騒動に火を点けた籠池泰典・前理事長夫妻は詐欺の疑いで逮捕され、加計学園については7月の国会閉会中審査で加戸守行・前愛媛県知事が「加計学園を招いたのは私」と証言し、首相の関与は完全に否定されてしまった。にもかかわらず、左派系マスコミは前川喜平・前文部科学事務次官の話を大々的に取り上げる一方、加戸証言はアリバイ程度にしか報じなかった。そうした姿勢がネットなどで批判され、偏向報道問題が燃え上がってしまった。

財務省をはじめとする役所の仕事に不明朗な点が残るなら、そこは役所を追及すればいい。だが、それと「首相の関与」はまったく異なる。野党や左派系マスコミが「官僚の忖度」と批判したのは、裏を返せば、首相の関与がなかった証拠でもある。中央省庁の官僚が首相をはじめとする政権幹部の意を汲んで政策を企画立案、推進し、事務処理するのは普通のことだ。「忖度するのはけしからん」などと言い出したら、政権自体が動かなくなってしまう。当たり前である。ただ1点だけ、政権側の問題点を指摘すれば、野党やマスコミが「加計ありきではないか」と追及したとき、売り言葉に買い言葉のように政権が「加計ありきではない」と否定したのは間違いだった。加戸前知事が認めたように、愛媛県と今治市が特区申請した時点で「加計ありき」だったのは事実である。事業候補者がいなければ、そもそも申請しても意味がない。申請時点で「加計ありき」だったとしても「加計で決まり」ではない、と反論すべきだった。特区が認められた後で「ウチがやりたい」という事業者が現れれば、そこと加計学園が競争になる。実際に別の事業候補者もいたが、そちらはプランが熟していなかったので落ちただけだ。その点は前川氏でさえも国会証言で認めている。安倍政権は「加計学園の名前はあったが、だからといって加計学園に決まっていたわけではない」と丁寧に説明すればよかったのだ。そこは反省材料である。とはいえ、それで左派系マスコミの偏向報道が許されるわけではない。事実を調べるどころか、逆に捻じ曲げる方向に暴走したのだから、ひどい話である。

「対案はない」と開き直る

 なぜ左派系マスコミは暴走したのか。

先々週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53840)で、私は「安倍首相の改憲案が実現するかもしれない、と左派系マスコミが焦ったのが遠因」と指摘した。今回はさらに一歩、踏み込んで考えてみたい。結論から言えば、彼らは「とにかく護憲」で一歩も動きたくない。なぜ「とにかく護憲」なのか。そこが問題の核心である。答えは、彼らは現状変更を想像できない。ようするに、彼らは「考える能力がない」のだ。ごく最近の経験から、私はそう確信している。彼らは「現状以外の国のあり方を考えることができない」し、そもそも「考えるつもりもない」し「考える能力もない」。それが左派系マスコミの正体である。

 そう実感したのは、あるテレビの討論番組収録の最中だった。

(略)