http://www.sankei.com/world/news/171227/wor1712270037-n1.html

 慰安婦問題をめぐる日韓合意に関する報告書の詳報は次の通り。

 【合意の評価】

 (1)公開部分

(略)

 (4)最終的かつ不可逆的解決

 不可逆的という表現が合意に含まれた経緯をみると、2015年1月の第6回局長級協議で、韓国側が先にこの用語を使った。韓国外務省は、暫定合意に「不可逆的」表現が含まれており、国内で反発が予想されることから、削除が必要だとの検討意見を大統領府に伝えた。しかし大統領府は「不可逆的」という表現は、責任の痛感および謝罪の表明をした日本側にも適用されるという理由から受け入れなかった。

 (5)在韓日本大使館前の少女像(慰安婦像)

 日本側は少女像問題について格別な関心をみせた。日本側から韓国政府が支援団体を説得するよう言及があった。

 (6)国際社会での非難、批判の自制

 日韓合意後、大統領府は韓国外務省に基本的に国際舞台で慰安婦に関連する発言をしないよう指示した。この合意を通じ、国際社会で慰安婦問題を提起しないと約束したとの誤解を生んだ。

 日韓合意は日本政府の責任、謝罪、補償問題を解決するためのものであり、国連など国際社会で普遍的な人権問題、歴史的教訓として慰安婦問題を扱うことを制約するものではない。

 (2)非公開部分

 日韓合意には日韓外相の共同会見以外に非公開部分があった。この方式は日本側の希望により高官協議で決定された。

 非公開で言及された内容は韓国挺身隊問題対策協議会(以下「挺対協」)など被害者関連団体の説得、日本大使館前の少女像、第三国の慰霊碑、“性奴隷”用語など国内で慎重な扱いを要する事項だ。日本側が先に発言し、韓国側が対応する形式で構成されている。

 まず日本側は(1)「慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決し、挺対協など各種団体が不満を表明する場合にも韓国政府としてはこれに同調せず説得してくれることを望む。大使館前の少女像をどう移転するか、具体的な韓国政府の計画を伺いたい」(2)「第三国での慰安婦関連の像・碑の設置は適切ではない」(3)「韓国政府が今後『性奴隷』という用語を使用しないことを希望する」−と言及した。

 続いて韓国側は(1)「日本政府が表明する措置が着実に実施される前提で、今回の発表を通じ最終的かつ不可逆的に解決したと確認し、関連団体等の意見表明があった場合、韓国政府としては説得に向け努力する。韓国政府は日本政府が日本大使館前の少女像に対し憂慮している点を認識し、可能な対応に関する関連団体との協議などを通じ適切に解決するよう努力する」(2)「第三国での像・碑の設置問題は韓国政府が関与することではないが、韓国政府としてもこのような動きを支援することなく、今後、韓日関係が発展するよう努力する」(3)「韓国政府はこの問題の公式名称が『日本軍慰安婦被害者問題』のみであることを重ねて確認する」と対応した。

(略)

 【政策決定過程】

 慰安婦問題の交渉に関する政策決定の権限は大統領府に過度に集中していた。大統領府の主要参謀らは大統領の強硬な姿勢が対外関係全般に負担を招きかねないにもかかわらず、首脳会談に合わせて日本を説得するとした大統領の意向に従った。

 韓国外務省は交渉で脇役にすぎず、重要争点について意見を十分に反映できなかった。協議を主導した大統領府と外務省間の適切な役割分担と有機的な協力も不足していた。

 【結論】

 被害者中心のアプローチが交渉過程で十分に反映されず、一般的な外交懸案のように駆け引き交渉で合意がなされた。韓国政府は、被害者が1人でも多く生きている間に問題を解決しなければならないと協議に臨んだが、交渉過程で被害者の意見を十分に集約しないまま、政府の立場を中心に合意を決着させた。

 被害者らが受け入れない限り、政府間で慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的解決」を宣言しても、問題は再燃するしかない。

 朴槿恵(前)大統領は「慰安婦問題の進展がない首脳会談は不可能だ」と強調するなど、慰安婦問題を韓日関係全般とリンクさせたことで、むしろ韓日関係を悪化させた。

 大統領と交渉責任者、外務省の間での意思疎通が不足していたため、政策方向が環境の変化に従って修正や補完されるシステムが作動しなかった。今回の日韓合意は、政策決定過程で幅広い意見の集約と有機的な意思疎通、関係省庁間の適切な役割分担が必要であることを示している。