Dec. 26, 2017, 05:30 PM BUSINESS INSIDER
https://www.businessinsider.jp/post-108959

日本でもいよいよ「#MeToo」が広がり始めた。アメリカで俳優らがハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ被害を告発したことに端を発して、ツイッターなどで「#MeToo」と声を上げる動きが広がっていたが、日本でも有名ブロガーのはあちゅうさんの告発をきっかけに「#MeToo」と投稿する人が相次いでいる。

しかし、議論の方向ははあちゅうさん個人や書いてきたものへの批判とすり替えられ、矮小化され、社会のあり方や性被害者支援の仕組みの議論までは広がっていない。

これはここ半年取材や会見等で発言してきたジャーナリストの伊藤詩織さん(以下、詩織さん)の事件と重なるところがある。

2017年10月、詩織さんは自身の性暴力被害とその刑事告発が不起訴処分になるまでの一連の体験をつづった著書『ブラックボックス』を出版した。その中でこの本を書いた理由について、この国の捜査や司法、性犯罪ホットラインなど性犯罪の被害に遭ったときの救済の仕組みづくりまで取り組んでほしいからだと述べている。

私が本当に話したいのは、「起こったこと」そのものではない。

「どう起こらないようにするか」

「起こってしまった場合、どうしたら助けを得ることができるのか」 という未来の話である。それを話すために、あえて「過去に起こったこと」を話しているだけなのだ。

(中略)

あくまで私が伝えたかったのは、被害者が泣き寝入りせざるを得ない法律の問題点や、捜査、そして社会のあり方についてだ。

『Black Box』より引用


こうした訴えを受け、国会内では超党派で「準強姦事件逮捕状執行停止問題」を検証する会(以下、検証する会)が立ち上がり、検察や司法、性被害者支援の改善について議論が進められている。

Business Insider Japanではこの検証する会の呼びかけ人の一人である自由党・森ゆうこ参院議員(61)に話を聞いた。

■ワンストップで被害者を守る体制がない
2017年6月、110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正され、被害者の対象に男性も含めること、性犯罪の厳罰化、非親告罪への変更などが盛り込まれた。

しかし、第3回検証する会で詩織さんが「スウェーデンでは病院内に24時間体制のレイプ救済センターが整備されているが、東京には24時間体制のレイプ救済センターが1つしかない」と指摘したように、被害者支援の仕組みは整っていない。

今回、「検証する会」を立ち上げた理由について森氏はこう語る。

「詩織さんが勇気を持って声を上げたことに対して、この問題をきちんと国会で検証しなければと思っている国会議員が党派を超えてたくさんいたということ。通常国会の刑法改正で、性被害の当事者が声を上げられなくても告訴できる非親告罪化が実現し、法律的には一歩進んだ。しかし、被害者支援の仕組みは遅れているなんてものじゃなくて、中世レベル。証拠を保全し後の立証に役立てる仕組みや、すぐに被害者の相談に乗り、心身のケアをするというワンストップで守る体制がない。これを何とか整えないといけない」

具体的には、「性暴力被害者支援法案」(性暴力被害者の支援に関する法律案)の成立を目指しているという。この法案ではワンストップ支援センターの整備や捜査過程における配慮、啓蒙などが記述されている。

「この法案は与野党で対決するような法案ではない。詩織さんから『なぜレイプ救済センターが整っていないのか?』と質問されたが、何も答えられない。立法府にいる人間として申し訳ない。一刻も早く設置したい」