https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171220-00000532-san-pol

 希望の党の玉木雄一郎代表(48)の党内統治能力に「赤信号」が点りかねない事態となっている。玉木氏の指示に反するように中枢議員が憲法への自衛隊明記を公然と唱え始めたからだ。党運営でも民進党から分裂した立憲民主党が着々と地方組織を整備する一方、希望の党は19日時点で京都府連の1つのみにとどまる。党代表の指導力の裏付けとなる党支持率は一貫して下がり、低空飛行を続けている。

 「どういう発言を具体的にされたのか確認をしていないのでコメントはできない」

 6日午前、玉木氏は記者団から投げかけられた質問にやや困惑した表情を浮かべて、こう語った。質問は、憲法9条の議論に関する玉木氏の指示内容と細野豪志元環境相(46)の発言の整合性についてだった。

 細野氏は5日夜、9条をめぐる党内議論を念頭に「玉木代表から『自衛隊明記も含めて議論してほしい』といわれている」と記者団に語った。細野氏は玉木代表直轄の組織体である憲法調査会の会長を務めている。

 玉木氏の指示は「自衛権のあり方について、発動要件や行使の限界について議論する」との内容で、自衛隊の存在の明記についてではない。玉木氏は自衛隊を憲法に位置づけるとした5月の安倍晋三首相(自民党総裁、63)の案に対し、距離を置いた発言を繰り返してきた。

 細野氏は産経新聞の取材に「自衛隊の憲法明記は私のもともとの考えだ」と明言し、憲法議論をリードすることへの自負で満ちている。本格的な党内議論はこれからだが、党中枢の意見が出鼻から分かれているのだ。

 細野氏と同じく結党メンバーの松沢成文参院議員団代表(59)も、党を代表して臨んだ6日の参院憲法審査会で「自衛権を担保するために自衛隊を置く。これを書き込むことがふさわしい」と述べた。自衛隊明記を提唱する安倍首相の考えに同調したと言ってもいい。

 玉木氏は9条議論について「指示書」の形で明確に指針を示している。にもかかわらず、玉木氏の指示を逸脱した発言が相次ぐのは、玉木氏が党内を掌握できていない証左ともいえる。

 玉木執行部が発足して1カ月が過ぎ、党内では党運営の面でも玉木氏の指導力に疑問を唱える声も上がる。その一つが、希望の党が「友党」に位置づけた民進党への過度な配慮だ。

 党関係者は玉木執行部の方針に不満を隠せない様子でこう切り捨てる。

 「玉木氏は決断し切れず、他党に遠慮しているから、立憲民主党に比べて地方組織の整備が遅れている。資金難は両党とも事情は同じだから言い訳にならない」

 玉木執行部の民進党への配慮の一つが、1日の役員会で古川元久幹事長(52)名で配布された「地方組織(都道府県連)について(案)」と題された一枚紙だ。

 地方組織構築の方針について「柔軟に都道府県を代表する仕組みについて立ち上げていただきたい。その際、友好関係にある政党には十分配慮されたい」と記された。

 指針はその後改定されたようだが、玉木執行部は地方組織の構築について「中央から方針は押しつけない。地方の実態を踏まえて大きな塊を作ってほしい」と柔軟な姿勢を示したままだ。裏を返せば民進党との連携を模索し、党運営を独自に行えないことを意味しているかのようだ。

 立憲民主党は18日時点で北海道や東京、愛知、大阪など9都道府県で地方組織を設立しており、完全に後れを取った。

 12月の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、希望の党の支持率は2・3%に低迷した。結党直後の10月に9・5%を記録して以降、一貫して下落している。他の報道機関が10〜12月に実施した世論調査をみても、上昇に転じた調査は一つもないというありさまだ。時事通信の12月調査に至っては0・9%で、ついに1%を切った。一方の立憲民主党は12月の産経・FNNで13・9%を記録し、支持率の差は際立つばかりだ。

 玉木氏は「支持率が低いから逆に気にせず何でもできる」と周囲に語る。しかし、支持率の低迷こそが指導力を発揮できない要因の一つに挙げられるのではないか。

 党勢を上昇させるためには「保守政党」らしい国会論戦が必須だろう。国会デビューとなった特別国会(9日閉会)で希望の党の存在感は低く、党の立ち位置を明確に印象づけられたとは言い難い。

(略)