■所得税改革、観光促進税…

 平成30年度税制改正をめぐり、自民党税制調査会(宮沢洋一会長)が首相官邸と財務省の狭間(はざま)で存在感を発揮できずにいる。焦点の所得税改革は財務省の筋書き通り決着する見通しとなり、逆に27年ぶりの新税となる観光促進税(出国税)の創設や法人税減税は官邸主導で進んだためだ。かつて政府や財務省ににらみを利かせた自民税調だが、「追認機関」との汚名はなかなか払拭できない。(田村龍彦)

 「高齢化がさらに進展して社会保障費が増大することは分かっている。日本の財政を持続可能にしていく方向で議論をしているのは間違いない」

 宮沢氏は6日の党税調会合後、今回の議論の経緯を記者団に問われ、こう自信を示した。しかし、実態は異なる。6日は各省庁の税制改正要望を党税調が「○△×」などと仕分ける大詰めの協議が行われた。その結果をみると、財務省と官邸が根回しした内容がほぼ実現する場面が目立った。

 所得税改革では「給与所得控除」などが見直され、年収800万円超の会社員は増税になる見通しだ。財務省が周到に用意した案で、全体で1千億円の増収になるが、会社員全体の約5%が対象となり、世論の反発が懸念されていた。

 財務省幹部は「何年もかけて準備してきた結果」と打ち明ける。あまりのスムーズさに省内には「高い球のつもりだったが、そのまま通ってしまい、逆に驚いた」との声があるほどだ。

 たばこ税の増税も紙巻きを来年10月から33年度にかけて1本当たり3円引き上げ、加熱式たばこも増税する財務省案が軸になった。党内では葉タバコ農家への影響を危惧する反対論が強かったが、党税調の議論は増税方針で最終調整が進む。

 30年度税制改正で官邸は「党が決める」姿勢をアピールする。来秋の党総裁選で安倍晋三首相の3選をにらみ、党内で「官邸主導」への反発が広がるのを防ぐ狙いがあるからだ。

 実際は官邸の方針を党税調が追認する場面も目立った。象徴的なのが訪日客や日本人が日本を出国する際に1人千円を徴収する観光促進税だ。過去の税制改正で全く議論になっていなかったが、観光庁の有識者会議が11月に提言をまとめるとトントン拍子で導入が決まった。観光振興を進める菅義偉官房長官の意向が反映されたとみられる。

 かつて党税調は強い影響力を誇り、「税調のドン」と言われた故山中貞則氏には歴代首相も一目置いた。現在の宮沢会長は安倍首相が軽減税率導入をめぐり対立した野田毅前会長を事実上更迭して後任に据えたが、財務省の勢いを抑えているとは言い切れない。逆に党税調の古参幹部からは「宮沢氏は官邸のいいなりだ」との不満も出ている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171207-00000070-san-pol