2017.11.10 07:00 ニュースポストセブン
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【全国の神社関係者も困惑するばかり(写真は伊勢神宮)】


 安倍晋三首相が会長を務める「神道政治連盟」や、改憲勢力の後ろ盾となっている「日本会議」を支援するなど、日本の政財界と密接なかかわりを持つ神社本庁。現在、この本庁で前代未聞の内紛騒動が起きている。不動産売買を巡る不正疑惑を糾弾する怪文書が飛び交い、懲戒解雇された内部告発者は、本庁を相手に提訴。ドロ沼の様相を呈した騒動に、本庁からついに反撃の狼煙が上がった。

「事実と乖離した報道が相次いでいるため、これ以上の沈黙は組織にとってもマイナスだと判断しました。一体何が起きているのか、今からその内情を全て明かしましょう」

 神妙な表情でそう話すのは、全国8万社の神社を包括する宗教法人・神社本庁の現役幹部A氏。目下、内紛騒動で大揺れの本庁だが、裏には知られざる“暗闘”があるのだという。

 発端は、2015年11月、神社本庁が神奈川県川崎市内にある職員宿舎を不動産会社Xに売却したことだった。

「築30年を超え、老朽化と維持管理費の高騰が売却の理由とされています。だが、宿舎は1億8000万円でX社に売却された即日、2億1000万円で別の不動産会社に転売されました。その後、さらに別の不動産会社に3億円で転売されている。

 老朽化で売却した物件が3倍近い値段につり上がったことや、X社の社長が本庁の幹部と昵懇だったことから、『本庁の上層部が不動産会社と癒着し、不当に安い値段で売却して見返りを受けていたのではないか』という疑惑が噴出しました」(全国紙記者)

 昨年春先、神社本庁内でこの疑惑を指摘する怪文書が流れ、同時に本庁総合研究部長の稲貴夫氏(57才)と教化広報部長の瀬尾芳也氏(57才)が告発文書を上司に提出。

『週刊文春』や『週刊ダイヤモンド』をはじめ、複数のメディアでも同疑惑が報じられ、本庁は副総長で熱田神宮宮司のB氏の下に調査委員会を発足させたが、第三者委員会を交えた調査結果はシロ。

「そして8月、『組織への背任行為があった』として稲氏は解雇、瀬尾氏は降格の懲戒処分が下りました」(前出・全国紙記者)

 これに対し、処分を不当とする2人は、10月17日、東京地裁に処分の無効確認を求めて提訴。「神社本庁の再生を願って提訴に踏み切った」と稲氏は会見で語り、内紛が表面化した。一連の騒動について、「真相はまったく別にある」と反論するのが、冒頭のA氏である。

「不動産売買の疑惑なんて、今回の騒動にはほとんど関係ないんです。実際に起きていたのは、神社本庁の現総長である田中恆清氏とNo.2のB氏による権力闘争です。過去の通例でいえば、本庁の総長は2期6年。田中氏は昨年で6年の任期を終え、順当にいけばB氏が次の総長になるはずだった。そして彼の子飼いの役員が幹部ポストを独占する構図を描いていた。

 しかし、昨年5月の評議員会で田中総長の3期目続投が決まった。これに怒ったのがB氏です。定年間際の彼は、ここで総長になれなければ、キャリアが終わってしまう。あらゆる手を使って“田中降ろし”を始めたB氏一派が目をつけたのが、先の宿舎の不動産売買でした」

 内紛の本質はトップとNo.2の出世争いで、不動産売買はそのダシに使われただけだというのだ。A氏が続ける。

「B氏の子飼い役員の中には、昇進の前祝いをする者までいた。全てがひっくり返ったので、慌てて2年前の不動産売買記録を持ち出しただけです。その“実行部隊”として動いたのが稲氏と瀬尾氏だった。また調査委員会の発足を命じたのはB氏本人です。しかし、彼のもくろみは外れました。最初から無理があるクーデターだったんです。自ら外部の弁護士まで招いて調査委員会を率いたB氏は、『嫌疑なし』という判断を受けて立場を失いました」

 結果、B氏は今年8月に副総長を辞任している。

◆Bさんとは何度も話し合ってきた

 A氏が最も憤るのは、稲氏と瀬尾氏が東京地裁に提訴した“日にち”にある。

「10月17日は、伊勢神宮で『神嘗祭(かんなめさい)』が行われた日です。五穀豊穣を願い、天皇陛下が皇居で刈り取られたお米が、伊勢神宮にお供え祀られる大切な儀式。しかも、今年の神嘗祭は、天皇陛下のご息女、黒田清子さん(48才)が8月に伊勢神宮の祭主に就任されてから初めて勅使参向された祭典です。いわば、清子さんの“祭主デビュー”の日。これに、他ならぬ神社本庁の人間が提訴という形で水を差すのは、あまりにも無礼です」(A氏)

 実際、神社本庁も本誌取材にこう答える。