今年世間を騒がせた森友学園の前理事長、籠池(かごいけ)泰典被告(64)=詐欺罪などで起訴=に初めて会ったのは約8カ月前の2月17日だった。
学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)の園長室でソファに座って向き合い、話を聞いた。

この数日前から他紙が格安での国有地取得を報じており、籠池被告は「われわれをおとしめようとしている」と憤っていた。
小学校は「国のためだ」と強調し、妻の諄子被告(60)=同=も「こんなに国のために頑張っている人はいない」と夫を持ち上げる。
激情的に「愛国」を強調する言い回しが印象的だった。

安倍晋三首相を「偉人」とたたえ、「奇跡の本格日本人保守政権」とまで賛美していた。
しかし、小学校開校を断念して以降は一転し、野党と連携して「反安倍」の急先鋒となる。

都議選で街頭演説に立った安倍首相にヤジを飛ばす姿は、同じ人物とは思えなかった。
あれは、一方的に裏切られたと感じた籠池被告の単なる恨み節だったのか。

小学校設置認可に関する虚偽申請疑惑でも「何ら問題ない」と強気な態度を見せたかと思えば、国会の証人喚問では「お答えを差し控える」などと言葉を濁す。
報道陣の前で饒舌に持論を述べたり、ときに無言で立ち去ったり…。
その言動にはムラが目立ち、そもそも小学校新設に確たる理念があったのかすら疑ってしまう。

籠池被告らは結局、「国のため」と豪語していた小学校建築で国の補助金を詐取したなどとして起訴された。
事実なら血税をむさぼる行為で、「愛国無罪」は当然通じない。

先の衆院選でも一部野党が争点に掲げた森友問題。
渦中にいた籠池被告は勾留が続き、その肉声を聞くことはできない。

拘置所の中で、安倍首相率いる与党圧勝という結果をどう受け止めたのか。
そして、あのとき語っていた「国」とは何だったのか。
もう一度会って、直接聞いてみたい。

写真:籠池泰典被告
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http://www.sankei.com/west/news/171106/wst1711060025-n1.html