偽装大国・中国もビックリな「GDP4%成長」政府発表 そのカラクリを解説
週刊新潮 2017年10月19日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10260801/


■政府発表「GDP4%成長」実は「マイナス9・9%」のカラクリ――田代秀敏(下)
 内閣府が発表したGDP「4%」成長のニュースには、国内のみならず海外でも驚きをもって受け止められた。しかし、発表からひと月も立たない9月8日には、4割近くも下方修正した数値が。それどころか、実際は「マイナス9・9%」という数値も出ていたのである。クセモノは「季節調整」であると、田代秀敏氏は指摘する。

 まず、GDPの作成にあたって経済社会総合研究所は、各業界団体・官庁から報告される販売額や民間在庫、設備投資額を積み上げてゆく。そして、全く加工されていない「名目GDP」を算出する。
 今年4?6月期の名目GDPは「速報値」で134兆5563億円だった。ただし、これは物価の上下を考慮していない。
 経済社会総合研究所は、ここから総合的な物価指数を示す「GDPデフレーター」なる指数を用いて、「実質GDP」を弾き出す。だが、これではまだ不十分。GDPに“季節性”を加味しなくてはならないからだ。先に紹介した「季節調整」を入れるのである。
 GDPなのに「季節」とは何ぞやと思われるかもしれない。だが、ここからが「4%」成長のカラクリに触れる部分である。

■「季節調整」とは
 一般に消費や生産は、季節の循環に影響される。
 猛暑になればビールが売れ、お盆には帰省や国内旅行客が急増する。また、年末には歳末セールに人が殺到すると言えば分かりやすい。逆に4?6月期は、これといった行事がないので落ち込んでしまう。これを無視して算出したら、暮れは高成長、初夏は低成長というふうに極端なブレが出てくるため、1年を通して均等にならす。これが「季節調整」である。
 ちなみに、この季節調整を入れないと、今年4?6月の「実質GDP」は年率で実にマイナス9・9%。そんなに低かったのかと驚くかも知れないが、これも日本経済の実力を示すGDPのひとつなのだ。
 いや、むしろ給与の落ち込みや、少子化などを考えれば、我が国の実力としては、妥当な水準といえるかも知れない。ボーナスが減ってしまった読者にすれば、景気実感に最も近い数字ではないか。
 ところで、「季節調整」は、GDPを年間通してならすことだと書いた。大雑把には繁忙期の「突出した額」を閑散期にうつし替える。この額は、ほぼ一定しており、おおよそ10兆?12兆円に収まって来た。過去のデータを見ても、小泉政権期も、民主党政権期もほぼこの幅に収まって来た。
 ところが、先にあげた「4%」成長には、首を捻らざるを得ない数字が紛れ込んでいる。今年4?6月は、13兆5378億円もの「季節調整」が“大盛り”になっているのだ。エコノミストの立場からすれば、これは驚きである。
 こんなに「季節調整」を盛ってしまえば、たいていの不景気は「好景気」に化けてしまう。経済社会総合研究所は、いったいどこからこんな数字を弾き出してきたのだろうか。
 だが、やっぱりというべきか、しばらく経ってから「化けの皮」が剥がれてきた。
 速報値から、ひと月も経たない9月8日、内閣府はGDPを4・0%から2・5%(改定値)へ大幅に引き下げたのだ。実に4割もの下方修正である。
 これを知ってがっくりきた専門家も多かったはずだが、「4%」成長の時と比べてニュースの扱いはずいぶん小さかった。