2017年10月29日 日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/216537

不可解な延期だ。10月末に、文科省の大学設置審によって認可の可否が答申される予定だった加計学園の獣医学部新設問題。27日、林芳正文科相は突然、答申が11月前半に延期されるとの見通しを示した。とうに「認可」は決まっているのに、口実をデッチ上げ、わざとモタモタしているだけ。その狙いも、まあ薄汚い。

 閣議後の会見で、林大臣は「より慎重な審議を行うために必要な審査日程を確保した」とした上で、“深刻”な表情でこう言った。

「先日の台風の影響によりまして、予定しておりました会議が開催できなかった。委員の皆さまの日程等の都合もあって、11月の前半に答申される見込みと聞いております」

 はあ? 設置審の答申が“台風被害”に遭うだと……。いかにも取ってつけたような理由だ。文科省に“被害状況”を聞くと、「審議中の情報なので、大臣が述べた以上の詳細はお答えできません。何号の台風被害かも教えられません」(高等教育局大学設置室)とにべもない。

■臨時国会も開かず越年すれば国民も忘れる

 答申は11月10日になる見通し。設置審は8月下旬に「認可保留」の答申を出し、継続審議に。まもなく結論という段になって、わずか10日余り答申を延期する狙いは何か。元文科官僚で京都造形芸術大学の寺脇研教授が指摘する。

「審議する時間は十分ありましたよ。『台風』など後付けの理由でしょう。不認可や、開学を1年延期するなら、政権への忖度が不要なので、予定通り答申していたはず。つまり来年4月開校で認可が下りるのは既定路線ということ。先送りは10月22日の衆院補選の予定が総選挙に変わり、自民党が圧勝したことの影響です。選挙直後に認可を出せば、タイミングがロコツ過ぎるし、また『おごりだ』『忖度だ』と批判される。11月1日からの特別国会前では、野党に問題視される。そこで閉会する8日を待って、10日の答申としたのではないか。来年春の開学にギリギリ間に合うタイミングでもある」

野党は「モリカケ問題」などの審議のため、臨時国会の召集を要求し続けているが、安倍首相は、年内はせいぜい閉会中審査でお茶をにごすつもりだ。来年の通常国会まで、加計問題を塩漬けすれば、国民も年が明ければ、おとそ気分に浸り、加計問題は“去年の話”。きっと忘れているに違いないと、高をくくっているのだ。

 ほくそ笑む安倍首相の顔が思い浮ぶが、モリカケ問題の真相解明は全く進んでいない。国民は“越年トリック”に引っかかってはダメだ。