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 第48回衆院選はきのう投開票が行われ、自民党が単独で過半数を制し、連立与党を組む公明党と合わせて絶対安定多数の261議席を大きく超える勢力を確保した。

 北朝鮮と米国が挑発の応酬を繰り返す中、政治の安定を求める国民の思いが、現状維持という選択に表れた面はあるのだろう。

 安倍晋三首相は勝利を受け、来秋の自民党総裁選での3選も視野に、長期政権を目指す意向だ。

 だが選挙期間中の世論調査ではその多くで、安倍内閣を「支持しない」とする回答が「支持する」との回答を上回った。

 であれば、通常は与党に不利な選挙になるはずである。そうならなかったのは、野党勢力が迷走を重ねたためだ。つまり、敵失に乗じた大勝にすぎない。

 選挙結果を「安倍1強」への信任とみなすことはできない。まして政権への白紙委任状ではない。

 わけても、首相自身が争点とすることを避けた改憲が、国民の信を得たとは認められない。

 首相は「国民の厳しい視線が注がれている」との認識を示し、「謙虚」を強調した。その言葉をしっかり胸に刻んでもらいたい。

■大義なき解散の果て

 そもそも、国民に問う「大義」がないまま始まった選挙である。

 解散当時、野党第1党の民進党は東京都議選惨敗や人事で迷走し、小池百合子東京都知事率いる新党は明確な姿が見えなかった。

 臨時国会が始まれば、学校法人「加計(かけ)学園」「森友学園」の問題で野党の追及は避けられない。首相にとっては「今しかない」というタイミングだったろう。

 そして消費税増税分の使途変更とともに、解散の「大義」に位置づけたのが北朝鮮情勢である。

 「われわれはあらゆる手段で圧力を高めていくから、状況は緊迫していく。今年暮れから来年にかけて選挙をする状況ではなくなる」と、解散の理由を説明した。

 だが情勢の緊迫を回避することこそ政治の役割ではないのか。なのにその責任は棚上げし、選挙戦で不安をあおった。

 政権が圧力一辺倒の姿勢を強めれば、外交的な解決は遠のく。国民が求めるのは情勢の緊迫ではなく、平和的な解決のはずだ。

 忘れてはならないのは今回の選挙が、二つの学校法人を巡る「疑惑」の国会審議をすっ飛ばす形で行われたことである。

 与党内には、今回の勝利を「みそぎ」として幕引きを図る動きもある。だが世論調査でも、国民が納得していないのは明白だ。首相は「丁寧な説明」を口にするだけでなく、実行に移す責務がある。

中略

■改憲信任とは言えぬ

 今回の選挙結果により、立憲民主党が衆院での野党第1党をうかがう勢いだ。それも、野党勢力の結集を目指した市民の後押しがあってこそだ。同党にはその原点を大切にしてもらいたい。

 今回、自公両党に希望の党と日本維新の会を加えた「改憲勢力」の獲得議席は、発議の条件である全体の3分の2を超えた。

 自民党内では、党としての改憲原案を年内にもまとめ、各党に提示する日程も取り沙汰される。

 首相はきのう「日程ありきではない」「与党だけで発議することは考えていない」と述べたが、改憲に積極的な希望の党との連携も視野に入れているのだろう。

 ただ首相は改憲を衆院選の争点とせず、選挙戦でも言及を避けた。議論が熟していないことは、首相自身が認識しているはずだ。

 公明党の山口那津男代表はきのうも改憲に慎重な発言を繰り返した。立憲民主党の躍進も、改憲に慎重な世論の表れではないのか。

 今後の改憲論議で国会は、党派の数合わせではなく、民意にこそ目を凝らさねばならない。