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 大きなスーツケースを押す外国人観光客が街を行き交う京都市内。たすきをかけて街頭演説する衆院選候補者を、物珍しそうに眺める。中には候補者に握手を求める人も。海外の人の目に、日本の「センキョ」はどのように映っているのだろう。秋の古都を歩く外国人に尋ねてみた。
 米サンフランシスコの会計士アビゲイル・ハフさん(37)と会社員グレゴリー・ゴルフィンさん(34)のカップルは関東地方を観光した後、京都駅に降り立った。鎌倉で目にした、たった数十人を前にした街頭演説が意外だったという。「米国で演説といえばもっと多くの人を集めてアリーナなどの建物でする」とハフさん。日本では禁止されている選挙運動員の戸別訪問も一般的という。
 ゴルフィンさんはトランプ大統領が誕生して以降、社会の分断が広がっていると感じている。英国出身のハフさんも、母国を二分した議論の末にEU離脱が決まり、衝撃を受けた。ハフさんは「日本では聴衆が叫ぶこともないし、落ち着いて聞いている」。
 京都駅近くに買い物に訪れた台湾人女性の林佳蓁さん(23)は専門学校で日本語を学ぶ。「候補者のポスターが並ぶ掲示板を初めて見た。台湾では大勢が声を合わせて訴えるけど、日本ではマイクで一人が呼びかけるんですね」と興味深そう。一方、一緒にいた友人の中国人の女性(22)は「中国では国の指導者のことが好きじゃなくても、普通は反対できない」と声を落とす。
 京都府内には昨年、661万人の外国人観光客が訪れ、宿泊客数は過去最高となった。日没後も、繁華街や鴨川沿いはそぞろ歩きを楽しむ人でにぎわう。その横で候補者がマイクを握り、支持者がチラシを配る。選挙カーの叫び声も遠くに聞こえる。
 寺町商店街のコーヒー店でくつろぐイスラエル人のアブラハム・テトロシュビリさん(55)とエステラ・イランさん(52)夫婦。昼間に街頭演説を聞いた。イランさんは「日本の人たちは選挙中も静か。イスラエルの選挙はもっとうるさい」と笑う。
 会社経営で、主要国の経済動向をこまめにチェックするテトロシュビリさんは、衆院選の争点にも詳しかった。「首相は雇用やGDPを回復させたね」と評価する一方、憲法9条改正の話題には表情を曇らせた。第2次世界大戦中にナチスの弾圧を受けた親族もいる。「かつて日本の軍が力を持ち、ドイツやイタリアと組んでいた悪い時代があっただろう。もし将来、クレイジーな人物が首相になったら…。10年後が気になるよ」