http://mainichi.jp/senkyo/articles/20171004/ddm/005/070/057000c

 希望の党が第1次公認候補者192人を発表した。民進党には約210人の候補予定者がいたが、合流組の公認は110人にとどまった。

 安倍晋三首相の強引な衆院解散から生まれた新党である。この1週間、政界やメディアは小池百合子東京都知事の一挙手一投足に注目し続けたが、希望の党のイメージは出発時点とは大きく変わった。

 民進党の前原誠司代表は、公認予定者をまるごと希望に合流させるつもりだった。「安倍1強」の閉塞(へいそく)感を打破するために「名を捨てて実を取る」戦略だった。

 しかし、保守を信条とする小池氏は合流の条件として憲法改正や安全保障法制への同意を個別に求めた。そこで、同意できない左派系が「立憲民主党」を結成した。

 衆院選が政権選択である以上、基本政策の一致を求める小池氏の姿勢は理解できる。政党が政策を結集軸にすべきことは言うまでもない。

 問題はその進め方だ。

 党内では、安倍政権への対抗軸作りよりも候補の選別が先行した。公認権を独占する党首が公然と「排除の論理」を振りかざしたことで、党の理念として掲げられた「寛容」や「多様性」がかすんでしまった。

 選別基準として「在日外国人への地方参政権付与に反対すること」が持ち出されたのも唐突だった。議論もなく、小池氏の個人的なイデオロギーが出てきたように思われた。

 さらに小池氏の側近が候補者の規模や選挙後の戦略を口にしても、直後に小池氏が否定する展開が繰り返され、すべてが小池氏の胸三寸で決まってしまう印象を与えた。

 政治は論理と感情の組み合わせで動く。パフォーマンスに優れた小池氏が民進党をのみ込むことで選挙構図は流動化したが、1週間で初期のダイナミズムがそがれたのは否めない。小池氏の国政復帰を求める声が少ないのはその表れだろう。

 それでも希望の党はすでに事実上の野党第1党である。安倍政治とどこが違うかを明示する責務がある。とりわけ首相指名選挙で誰に投票するかは重要な判断材料だ。

 衆院解散後、安倍内閣の支持率が再び低下し、不支持率が上回っている。野党は現状への不満を吸収できる存在でなければならない。