改憲「日程ありき」では進まぬ 中山太郎 元衆院憲法調査会長に聞く
東京新聞:2017年8月12日 朝刊
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 衆参両院の憲法審査会は今月、設置から十年を迎えた。かつて衆院憲法調査会長を務めた中山太郎元外相にインタビューした。

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 二〇〇〇年に憲法調査会が設置されて以降、その後継機関の憲法審査会を含め、一貫して、党派を超えた建設的な憲法論議が繰り広げられてきた。
審査会は、憲法改正原案の審査権限を持つ。
憲法改正が現実味を帯びる中で、一層重要な役割を担っていくと思う。

 改憲論議の舞台となるのは、あくまで国会の憲法審査会だ。
自民党が安倍晋三首相(党総裁)の意向をくみ取った主張をすることはあり得るが、改憲は自民党だけで実現するものではない。
これまでと同様、与野党協調の下で「憲法は国民のもの」という視点から、国民投票を念頭に置いた議論が行われることを期待したい。
(改憲時期で)一定の目標を持つことは否定しないが、初めからスケジュールありきという硬直的な姿勢では、進むものも進まないのではないか。

 初めての改憲は必ず成功させないといけない。
国民の理解を得られるテーマで憲法改正原案の発議が行われなければならない。
自民党憲法改正推進本部が議論する「九条への自衛隊明記」や「緊急事態条項」などに限らず、幅広い国民の理解を得られるテーマは必ずある。
自民党の議論が幅広い合意形成に向けた国民的な議論へと発展していくことを期待する。

 自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長、船田元・本部長代行には憲法調査会時代に私の考え方を理解してもらい、随分と支えてもらった。
保岡氏はさまざまな苦労もあると思うが、何としても初の改憲を成功に導くために尽力してもらいたい。 (書面で回答)

<なかやま・たろう> 1968年参院選で初当選。衆院7期、参院3期務めた。外相や衆院憲法調査会長などを歴任。92歳。

<憲法審査会> 憲法に関する総合的な調査や憲法改正原案を審査する国会の機関。
委員数は衆院50人、参院45人。
各会派への配分は所属議員数で決まり、現在は衆参両院とも「改憲勢力」が過半数を占める。
改憲原案が提出されれば両院の憲法審で審査し、過半数の賛成で本会議に上程される。
その後、両院でそれぞれ総議員の3分の2以上が賛成すれば国民投票が実施される。
衆院は先の通常国会で計7回の実質議論を行ったが、参院は与野党対立のあおりで一度も議論しなかった。