財政指標の黒字化 今のままでは達成厳しい 内閣府
7月18日 21時34分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170718/k10011064081000.html

政府が財政健全化の目標に掲げる「基礎的財政収支」と言われる財政指標の黒字化について、内閣府は、2020年度時点で8兆2000億円程度の赤字が続き、今のままでは目標の達成は厳しいという見通しを公表しました。

政府は、先進国最悪の水準に膨らんだ借金に歯止めをかけるため、2020年度までに国と地方を合わせた「基礎的財政収支」を赤字から黒字に転換し、政策の実行に必要な費用は借金にあたる国債の発行に頼らず、税収などで賄えるようにする目標を掲げています。

これについて内閣府は、18日、昨年度の国の決算などを反映させた最新の試算を公表しました。それによりますと、今後、名目で3%程度の高い経済成長が続き、再来年の10月に消費税率を10%に引き上げた場合でも、2020年度の「基礎的財政収支」は、8兆2000億円程度の赤字が見込まれるということです。

ことし1月時点の試算は、8兆3000億円程度の赤字で、これから本格化する来年度予算案の編成で、歳出改革を着実に行うことを見込み、赤字は1000億円程度縮小しています。しかし、事実上の国際公約にもなっている2020年度までの黒字化という目標の達成は、踏み込んだ歳出の見直しなどを考えなければ極めて厳しい状況です。

政府や与党の一部には、「基礎的財政収支」を黒字化する今の目標そのものを見直すべきだという意見が出る一方、健全化の取り組みが後退したと受け取られれば日本の信認が損なわれかねないという意見もあり、今後議論が活発になる見通しです。
くすぶる健全化目標の見直し
政府は、経済財政運営の基本となることしの「骨太の方針」で、財政健全化の目標に関する表現を変えました。

政府は、これまで、先進国最悪の状況に膨らんだ借金に歯止めをかけるため国と地方の基礎的財政収支を2020年度までに赤字から黒字に転換し、「その後」、日本のGDP=国内総生産の2倍近いおよそ190%の水準に達している債務残高の比率を引き下げていく道筋を描いていました。

しかし、ことしの骨太の方針では「基礎的財政収支」を2020年度までに黒字化するのと「同時に」、GDPに対する債務残高の比率を引き下げるととしたのです。「その後」が「同時に」と変わったため、一見すると財政健全化への取り組みを強化したようにも見えます。

ところが与党などの一部には、達成が厳しくなりつつある「基礎的財政収支の黒字化」の目標をやめ、政府は、いずれ「GDPに対する債務残高の比率」に目標を切り替えようとしているのではないかという受け止めがでています。というのも、債務残高の割合は、高い経済成長によってGDPの規模を拡大できれば引き下げることが可能だからです。

実際、18日示された最新の試算では、名目で3%程度の高い経済成長を続けたとしても2020年度までに「基礎的財政収支」を黒字化するのは困難ですが、債務残高の割合は、GDPが増えることで今年度・2017年度からわずかずつ下がる形になっています。

内閣府は、来年はじめに、もう一度、財政健全化に関する試算を行って目標達成の見通しを検証することにしています。そこで仮に目標を変えた場合、財政健全化への取り組みが後退したと受け止められ、財政への信認が揺らぎかねないと警告する専門家もいて、今後の議論が注目されます。