【クラクフ(ポーランド)=三好益史、矢野恵祐】イコモス勧告を覆し、8構成資産の世界遺産への一括登録が決まった背景には、委員国を説得するための日本政府側の綿密な戦略があった。

働きかけの成否のポイントは、神社信仰という日本固有の価値観がどこまで理解されるかにあった。宮田亮平・文化庁長官は「言葉よりビジュアルの方が伝わる」と考え、
沖ノ島や各資産を1枚に収めた絵図を自ら描き、各委員国に見せて回った。「日本的な感じを出そうと水墨画風にして、日本がずっと持っている宗教心について誠意をもって説明した」

イコモス勧告は資産の考古学的な価値を重視し、信仰の場として価値を主張してきた政府と大きな隔たりがあったが、一方で、沖ノ島の「神聖性」自体は評価していた。
文化庁の岡本 任弘 たかひろ・世界文化遺産室長によると、「今の宗像大社がなければ島の神聖性は成り立たないし、古代 祭祀 さいし遺跡を盗掘から守ったのは禁忌。だから全体があってこその今の沖ノ島が成り立つ」との筋立てを考えた。

07月10日 08:33 読売新聞
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