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築地市場再整備の積立金2400億円は破綻した臨海副都心計画の尻拭いに消えました。残金は605億円。当初予算2380億円の再整備はもう続けられません。

 都の卸売市場の会計予算は独立採算が原則。1999年5月13日には当時の宮城哲夫市場長が、当選間もない石原慎太郎都知事に逼迫した予算状況を説明しています。開示請求で公開された〈説明の概要〉という資料には、生々しいやりとりが記録されていました。

〈豊洲の開発は、地権者との最終合意が平成13(2001)年に予定されており、それから逆算すると平成11(1999)年10月頃には結論を出さないといけない〉

〈豊洲周辺は道路整備が進んでいるが、幹線道路の整備が平成27(2015)年には終了するので、その時点で移れば、現在地(築地)で20年30年かけて整備するより短時間で再整備をすることができる〉

表向きはまだ、再整備と移転の双方を検討していた時期なのに、説明はハナから「豊洲ありき」。現実の移転スケジュールも宮城氏の言い分通りに、ほぼ進みました。都庁の「一度決めたら変えられない」体質がよくうかがえます。

 ただ、この会議の場で宮城氏に反論する都庁幹部もいました。副知事だった青山佾氏です。開示資料によると、青山氏は当時、築地市場がどこにあるべきかの検討会のトップを務めていました。青山氏は石原知事に向かってこう言います。

〈移転で腹を決めても、中央区は反対しているし、関係の議員も反対している。また、移転跡地の売却を考えているが難しい面があるし、公園整備など一般会計の持ち出しが必要になることも考えられ、慎重な判断が必要である〉

 青山氏は現在、ワイドショーのゲストに呼ばれる機会も多いのですが、まるで部外者のような顔で移転問題にコメントしているのは、なぜでしょう。浜渦武生元副知事らと同じくれっきとした移転問題の責任者です。

 さて、この日の説明会で石原知事は〈遠洋漁船は築地に接岸できるのか〉〈大田市場の移転はどのくらいかかったのか〉と質問したにすぎません。しかし、この日の説明が3カ月後に石原知事を大きく動かした「証拠」も、私は情報公開で入手してあります。 (つづく)