報道陣に囲まれて防衛省を出る稲田防衛相
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 稲田朋美防衛相が東京都議選の自民党候補応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言したことに関し、28日、厳しい批判にさらされた。7月2日に投開票される都議選への影響は避けられない情勢だ。

 稲田氏はこの日、防衛省で公務に当たった。退庁時、記者団から閣僚辞任について問われ「27日に申し上げた通りだ」と述べ、重ねて辞任を否定した。続投を指示した安倍晋三首相は同日夕、台東区の候補者集会で“稲田失言”などを踏まえ「“自民党、何をやっているんだ”というお叱りを受けており、党総裁として申し訳ない」と陳謝。「自民党にとってかつてない厳しい選挙だ。ひしひしと感じる」と述べ、焦りをにじませた。23日の告示後に応援に入るのは2回目。いずれもヤジを浴びにくい支援者向けの「ハコ(屋内施設)」だった。

 3日後に迫った都議選を見据えて火消しを急ぐ政府に対し、自民党関係者や候補者は不満を募らせる。江戸川区の現職は「国会議員に責任を取ってもらいたい」と憤る。自民党候補のある陣営は「投票日まであと数日となった大事な時期。我々が地域で汗を流しているときに、大臣の失言は最悪だ」と苦言を呈した。

 巻き返しを図るため、この日街頭演説に臨んだ小泉進次郎衆院議員も「なぜ逆風が吹いているのか。自民党自身がまいた種だ」と反省の弁を述べた。“最終兵器”の登場にもベテラン議員は「大変心強いが、この逆風が変わるかどうか…」と表情は険しいままだった。

 勢いづくのは野党だ。民進党の蓮舫代表と共産党の志位和夫委員長ら4党首は28日、声明を発表し「公職選挙法と自衛隊法に違反する発言で、看過できない」などとして、首相に稲田氏を直ちに罷免するよう要求した。菅義偉官房長官は拒否したが、4党首によるこうした声明は異例。稲田氏がまたしても起こした“舌禍騒動”。自民党内からは「大逆風どころか暴風雨だ」との声まで上がっている。

 【稲田氏過去の騒動】

 ▼2016年10月5日参院予算委 民進党の蓮舫氏に11年の「子ども手当を防衛費にそっくり回せば軍事費の国際水準に近づく」発言を批判され、しどろもどろに。

 ▼17年2月14日衆院予算委 南スーダンの治安情勢について稲田氏に代わり、首相が再三答弁に立つ。民進党議員が首相に「大臣の資質に欠けていることを首相自ら証明」と苦言。

 ▼3月14日衆院本会議 「森友学園」の籠池泰典氏との関係を否定し続けていたが、過去の裁判資料に原告側代理人弁護士としての記載が判明。「出廷したことを確認できたので訂正し、おわびする」と謝罪。

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2017/06/29/kiji/20170628s00042000240000c.html