加計学園の獣医学部新設問題で、「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を証言した文部科学省の内部告発者は、守秘義務違反に問われる可能性があるのか。
公益のための通報者として保護されるべきではないのか。議論が起きている。

きっかけは義家弘介文科副大臣の国会答弁だ。

公益通報者保護法は、保護対象となる通報を生命や財産などにかかわる460の法律違反に絞り、メディアなど外部への通報にも厳しい要件を定める。

義家氏はこの規定を踏まえ、「告発の内容がどのような法令違反に該当するのか、明らかにすることが必要」と述べた。
さらに「一般論」とした上で、「法令違反に該当しない場合、非公知の(公になっていない)行政運営上のプロセスを、許可なく外部に流出させることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」と語った。

だが04年の国会での法案審議を思い出すべきだ。当時の竹中平蔵担当相は「法案は通報を抑制するのではなく、正義を希求する通報者をエンカレッジ(鼓舞)する内容になっている」と指摘。
「法案の定める対象範囲に該当しない通報は、通報の公益性等に応じて通報者の保護が図られる」とし、付帯決議にもその趣旨が盛り込まれた。

加計学園問題で、政府は情報開示に一貫して後ろ向きだ。関連文書についても文科省はおざなりな調査で「確認できない」と言い続けた。そうした状況のなか、文書はあるという内部告発が職員らから相次いだ。

立法の経過と趣旨を踏まえれば、今回の告発者は保護されるべきだ。再調査の結果、文書の存在を認めた会見で松野博一文科相が「職員としての立場が法の精神によって保護される」と語ったのは当然である。

一方、義家氏の国会答弁は、「一般論」と断ったとはいえ、内部告発をためらわせ、公益通報制度を損ないかねない危うさをはらむ。
文科省をはじめ政府がなすべきは、告発者の口をふさぐことではなく、異論や批判に耳を傾けることだ。

公益通報制度にも不十分な点は少なくない。消費者庁の有識者検討会は昨年末、制度の強化に向けた報告書をまとめ、保護の対象に退職者を含めることや外部通報の要件を緩和することを提言した。
法改正を急ぐとともに、通報対象の拡大など検討会が積み残した課題について議論を続けるべきだ。

公益通報者保護法の施行から10年余り。制度をさらに育て、定着させていかねばならない。

http://www.asahi.com/sp/articles/DA3S12991488.html?ref=editorial_backnumber

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