http://www.sankei.com/politics/news/170522/plt1705220042-n1.html

 国会議員が国政全般に関して政府の見解を文書で尋ねる「質問主意書」で、野党議員が政府への嫌がらせとしか思えないような“トンデモ質問”を乱発している。しかも、国会での質問が制約される少数政党ではなく、委員会で質問の機会が十分ある政党の議員による提出が目立つ。政府はどんな質問に対しても閣議決定を経て回答しなければならず、各省庁は答弁書の作成に時間を取られ、かなりの負担になっている。(今仲信博、原川貴郎)

 質問主意書は国会法に基づき、国会議員が本会議や各委員会とは別に国会会期中に質問できる制度。議長の承認を経た質問は、内容に応じて各省庁に転送され、政府は原則7日以内に議長に答弁する。

 衆参両院の事務局によると、1月20日に召集された今国会で、衆参の国会議員から提出された質問主意書は、今月22日現在で計448件。うち19日までに410件の答弁書が閣議決定された。衆院議員が提出した質問主意書の数は333件に上り、会期の違いから単純比較はできないものの、会期末を待たずして前回通常国会で閣議決定された329件をすでに超えた。

 質問主意書の提出者は、野党第一党の民進党の議員が多い。衆院では逢坂誠二氏、参院では有田芳生氏が断トツだ。

 今国会で特に目につくのが、大阪市の学校法人「森友学園」に関連した質問だ。安倍昭恵首相夫人や教育勅語に関連した質問は50件以上も並ぶ。その一方で、日本の安全保障に直結する北朝鮮問題に関しては森友学園関連の半分にも満たない。

 質問主意書は、不鮮明な政府の立場を明確にするような意義のある政府答弁を引き出す場合もあるが、首をかしげたくなるような質問も目立つ。

 逢坂氏は1月、安倍首相が施政方針演説で「世界の真ん中で輝く国創り」に言及したことについて、質問主意書で「『世界の真ん中』とは、どういう意味、概念を持つ言葉として使用しているのか」と政府見解をただした。

 同じ民進党の宮崎岳志衆院議員は4月以降、ヒトラーの著書『わが闘争』を挙げて「この書物の一部を抜粋して道徳や国語の教材として用いることは、否定されないのか」などと同種の質問主意書を連発した。

 答弁書は、閣議の2日前に内閣法制局の審査を終える必要があることから、各省庁の担当部局は答弁作成に集中的に取り組まざるを得ず、本来業務に支障をきたす場合も少なくない。過去の答弁との整合性を調べる作業も欠かせないため、省庁の担当者は「閣僚の国会答弁づくりなどで多忙な時期には重荷でしかない」と吐露する。

 日大法学部の岩井奉信教授(政治学)「最近は質問主意書を乱発しすぎだ。無所属の議員が出すのならまだしも、質問権を持っている議員が出すのはいかがなものか。意義がある質問で利用してもらわなければ、主意書自体の必要性が問われる」