侑「歩夢ってひとくちがおっきいよね」歩夢「……え」モグモグ
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侑「いやあ、常々疑問だったんだよ。歩夢って頬に手を当てて『美味しい〜』って味わう割に、食べるの早いでしょ?」
侑「その理由がようやく分かったんだ。ひとくちが大きいから長く味わってもタイムロスが少ないんだね」
歩夢「そ、そうかなぁ……? あ〜むっ……」モグモグミ
侑「!」パシャッ
歩夢「きゃっ。突然フラッシュ焚いて撮らないでよっ。パンケーキに集中できないでしょ!」プンスコ!
侑「ごめんごめん。でもほら、見て見て」スッ
歩夢「ん〜?」
(あたしんちのお母さんばりに口を開いてパンケーキ一枚を丸ごと口に放り込む歩夢)
歩夢「!?」
歩夢「わ、私、こんなにおっきな口で今まで食べてたの……?」 侑「いやぁ、幼馴染だけどまだまだ知らないことがあるんだねぇ……」ウンウン
歩夢「嘘……。こんなの全然可愛くないよ……」ガクリ
歩夢「……」ザクッ
歩夢「……」モグモグ
侑「まあ、こうして改めて見るとさ、歩夢って口を開けてから閉じるまでの時間が異様に短いんだよ。だから今まで気が付かなかったんだろうなぁ……」 侑「それに……」
歩夢「……」サクリ、サクリ
侑「って、あれ。どうして小分けにして食べてるの? いつもみたいに一枚丸ごと食べないの?」キョトン
歩夢「……//」カァ~
歩夢「も、もうっ。あんまりこっち見ないでっ//」
侑「え〜っ。リスみたいに頬を膨らませて食べる歩夢が好きなのに〜」
歩夢「ほらっ。侑ちゃんも自分の分を食べるっ。さもないと私が全部食べちゃうよっ!」ザクヒョイッ
侑「あ〜っ!? バターの乗った一番美味しい部分っ!!」
歩夢「ふんだっ」モグモグ!! ──
璃奈「もろこし、美味しい」モグモグ
エマ「わぁ〜、璃奈ちゃんの食べ方、リスさんみたいで可愛い〜」
璃奈「それほどでも」モグモグ
歩夢「……」グリグリ、ボロロ…
エマ「歩夢ちゃんはかぶりつかないで実の部分を全部取ってから食べるんだね〜」
歩夢「えっ、まあ、はい。こっちの方がこう……食い出があるので」グリグリ
エマ「くいで? くいでって何かなぁ?」 侑「食べ応えみたいな意味ですよ。一個一個食べたんじゃ物足りないけど、一気に食べれば満足感すごいじゃないですか」
エマ「あぁ〜、なるほどなるほど〜。歩夢ちゃんって意外と食いしん坊さんだもんね〜」
歩夢「……」ピタッ
エマ「まあ私ほどじゃないと思うけどねっ。私も全部取ってから食べようっと!」グリグリ
歩夢「……(皿の上にこんもりと盛られたとうもろこし群)」ジッ
歩夢「……」チラッ
璃奈「焦げた醤油の匂いがたまらない(小さなおててでとうもろこしの両端を掴んで食べる図)」モグモグ
侑「う〜んっ。とうもろこしよりも璃奈ちゃんの食べる姿にときめいちゃうよ〜っ!」キラキラ
歩夢「!!!」 歩夢「……エマさん、私のもろこし全部あげます」スッ
エマ「えぇ? どうして? 折角綺麗に全部剥けたのに」
歩夢「私、もろこしの実を剥くことに人生捧げてるんです。それに、かぶりついて食べること以外、宗教上の戒律で禁じられてるんです」
エマ「そっかぁ。え、でもさっき食い出どうこうって……」
歩夢「食い出だか指出だかは問題ないです。どうぞ」
エマ「わ、わかったよぉ。なんだか今の歩夢ちゃん、ちょっと怖いよぉ……」ガクブル
エマ「じゃあ……いただくね?」ヒョイッ
エマ「ボ〜ノ〜っ」モグモグ 歩夢「……璃奈ちゃんみたいに食べれば」ガシッ
歩夢「……」ジッ
璃奈「……?」モグモグ
歩夢「(トレース、トレースするんだ上原歩夢……っ!)」モグモグ
璃奈「……(なんかめっちゃ見てる)」モグモグ
歩夢「(目一杯口を開くんじゃなく、ついばむように少しずつ……)」モグモグ
璃奈「……(もしかして、私の真似してる?)」モグモグ
璃奈「(ふむ……)」
璃奈「……うめっ」モグモグ
歩夢「!」 歩夢「……うめっ」モグモグ
璃奈「うめ、うめっ」モグモグ
歩夢「うめ、うめっ」モグモグ
璃奈「……っ!!(某平沢唯のようにとうもろこしを齧るりなりーの図)」ガリガリガリガリ!!
歩夢「……っ!!(某平沢唯のようにとうもろこしを齧る上原歩夢の図)」ガリガリガリガリ!!
歩夢「……ってっ! なにこれ!」ガバッ
璃奈「え。いや、私の真似してるって思ったら面白くて」
歩夢「あ、うぅ……。ば、バレてた……」カァ~… 璃奈「なんだか、ごめんなさい?」ペコッ
歩夢「あ、うぅん。謝らなくてもいいよ。元はと言えばずっと見ちゃってた私が悪いんだし。それに、ずっと観察してたから大体要領は掴めたから」
璃奈「よく分からないけど、力になれたならよかった。璃奈ちゃんボード『もろこしグッド』」
歩夢「(よし、璃奈ちゃんの動きは全てトレースした。後はこれを実践するだけ……っ!)」
歩夢「……」モグモグ
ランジュ「ランジュが来たわっ!」ガチャッ
栞子「こんにちは皆さん」
ランジュ「あラ……?」チラッ
歩夢「……?」モグモグ ランジュ「歩夢がもろこしを食べてる姿って、エゾヒグマが煮干しを食べているみたいね」
歩夢「!?!?!?」ガ~~~ンッ
歩夢「エゾ、ヒグマ……」ズゥ~ン…
※
从[´・֊・]从エゾヒグマは日本に生息する熊の中でも最大級のサイズを誇るよ
※
栞子「ランジュっ!!」クワッ
ランジュ「ラァっ!?」ビクンッ
栞子「恒例の反省文タイムです。原稿用紙十枚は書いて貰います」ガシッ
ランジュ「な……っ。ど、どうして〜っ!? そもそもっ! その反省文っ、どこに提出するのよ〜〜〜っ!!」ズルズル…
栞子「問答無用です」ガチャッ、バタンッ!!
ラァ〜、ラァ~、ラァ~……(扉の奥から木霊するラァ〜) エマ「熊のお肉もボーノだよね〜」モグモグ
璃奈「ジビエも食べてみたいな」モグモグ
侑「臭みとかどうなんだろうね」モグモグミ
歩夢「エゾ、ヒグマ……ふ、ふ、ふふふふふ……」ガクリ
歩夢「あは、あははははははははっ!!」 ──
歩夢「というわけで、せつ菜ちゃんには私の専属コックさんになって貰います」
せつ菜「はえ……? 藪から棒になんですか?」キョトンガトントン
歩夢「いいからっ!」カベダァンッ
せつ菜「ほよっ!?」ビクッ
歩夢「私のために一生、味噌汁その他諸々作って(低音)」
せつ菜「ふぁっ、ふぁいぃ……//」シナシナ~
ᶘイ^⇁^ナ川それからグツグツコトコト数十分
せつ菜「できましたぁっ! 自信作のビーフシチューですよ!」ゴトッ 歩夢「(きた……っ!)」
歩夢「(私の考えた策はこう。食べ方が可愛くないなら、そもそも食自体を苦手になってしまえばいいということ)」
歩夢「(せつ菜ちゃんのメシマズ力なら、お代わりすることはおろか、完食さえ怪しい!)」
歩夢「(だから適任のはずだ……!!)」
歩夢「……え?」ジッ
せつ菜「どうですか!? できる限りの手は尽くしましたっ!」ペカー
歩夢「えっ、えっ。すごく、美味しそう……」ボーゼン
せつ菜「えっ、何ですかその、美味しそうなのが予想外みたいな反応は」
歩夢「あぇっ! う、うぅんっ。期待通りだよ〜。美味しそ〜。いただきますっ!」パンッ @cメ* ˶ ˆ ᴗ ˆ ˵ リ‐3 おいしかったー 歩夢「(見た目は美味しそうでも、せつ菜ちゃんの料理だ。美味しいはずがない)」
歩夢「……」モグモグ
歩夢「……え」カラーン
せつ菜「おぉっと、スプーン床に落としかけましたよ。大丈夫ですか?」サッ
歩夢「なっ、えっ、ふぁっ!?」ガターンッ
歩夢「お、美味しい……っ!? なにこれ! 普通に美味しいんだけどぉ!?」
せつ菜「……? 美味しいなら、いいじゃありませんか」キョトンガトントン
歩夢「ま、待ってっ。せつ菜ちゃん一人が作った料理がっ、美味しいはずない! もしかして、彼方さんが作った奴とすり替えた!?」
せつ菜「な、なんてこと言うんですか! 流石の私もトサカにきますよ!?」プンスコ!! 歩夢「……嘘。嘘だよ、そんなの……」ガクッ
彼方「ふっふっふ……歩夢ちゃん。驚愕を隠せないようだね」スッ
歩夢「彼方、さん……?」
彼方「せつ菜ちゃんの上達っぷり、いや変貌っぷりは、全て彼方ちゃんが故なのだよ!」ドドンドドンドン!!カナタ!!
せつ菜「はいっ! ここ数か月、彼方さんにいっぱい付き合って貰いましたからっ!」ペカー
彼方「へへ……。そのおかげで舌が壊死一歩手前まで行ったぜ……ふふふ……」
歩夢「……が」
彼方「うん……?」 歩夢「あな、が……、あなた、が……っ!」
歩夢「あなたが、せつ菜ちゃんを変えたんですか!!」グイッ
彼方「げふっ。ちょちょっ、どうして彼方ちゃん胸倉掴まれてるの〜?」
歩夢「せつ菜ちゃんのメシマズがっ! 私を救うはずだったのにっ! 余計なことをしてくれましたね!?」グググ…
彼方「よ、余計〜っ!? って、歩夢ちゃんっ! 服伸びちゃう! 服伸びちゃうよぉ!!」
せつ菜「え、てか私メシマズなんですか?」キョトンガトントン
歩夢「そうだよっ! せつ菜ちゃんはメシマズ担当だったのに! どうしてそのアイデンティティを捨てちゃうかなぁ!?!?!?」
せつ菜「私のアイデンティティってメシマズなんですか!?」
歩夢「そうだよっ! メシマズとコエデカ!! それだけがアイデンティティだったのに!!」 歩夢「メシマズじゃないせつ菜ちゃんなんて、ソバカスのないエマさん! 方向音痴じゃない果林さん! 眠気のない彼方さん! 前髪の禿げたミアちゃんだよっ!」
せつ菜「前髪の、禿げた……ミア、さん……」ガクッ
果林「なんだか散々言われてるわね」
ミア「あぐりに向かってアングリーって気持ちだよ」
歩夢「もうっ、せつ菜ちゃんなんて知らないっ!」ガチャッバタンッ!!
せつ菜「あぁっ、歩夢さんっ!」
せつ菜「うぅっ、うぅぅぅうう……」グスグス 歩夢「……」ガチャ
せつ菜「はえ……?」
歩夢「……ビーフシチュー美味しかったから、他の料理もいっぱい食べたい。ごちそうさま。ありがとうせつ菜ちゃん」
パタン
せつ菜「( ゚д゚)」ポカーン
彼方「……」ポンッ
せつ菜「彼方さん……」
彼方「……」グッ
せつ菜「!」
せつ菜「ありがとうございます師匠っ!!」グッ
彼方「うむうむ。あの過酷な日々は無駄じゃなかった」
果林「それにしても、歩夢は歩夢で律儀ね」
ミア「食に関しては嘘を吐けないんだろうね。たぶん。メイビー」 ──
歩夢「……うぅ、もうどうしたらいいのぉ」グスグス
歩夢「……ご飯はいっぱい食べたいけど、食べ方が可愛くないし」
歩夢「……小分けにして食べてもエゾヒグマって言われるし、どうすればぁ」
歩夢「ふぇぇぇええん……」
侑「歩夢っ。こんなところにいた。はぁ、はぁ……」
歩夢「侑ちゃん……」
侑「全く、あんまりマネージャーを走らせないでよね。歩夢と違って体力ないんだからさ」
歩夢「……侑ちゃんは」
侑「ん?」 歩夢「り、璃奈ちゃんみたいな食べ方にときめいちゃうんだよね……?」
侑「うん。璃奈ちゃんってさ、食べ方が小動物みたいでときめいちゃうよっ!」キラキラ
歩夢「……っ」グサッ
歩夢「じゃあ、じゃあ……っ。私もう、侑ちゃんの前でご飯なんて食べられないよっ!」
侑「え?」
歩夢「私なんて所詮エゾヒグマだしっ、食べ方可愛くないしっ、璃奈ちゃんみたいに食べられないしっ!」
歩夢「侑ちゃんだって、私の食べてるところ見て笑ってるんでしょっ!? 分かってるんだからねっ!」
侑「違うよ」
歩夢「……っ。何が違うの!?」
侑「確かに、璃奈ちゃんの食べ方は可愛いと思うよ」
歩夢「ほら、そうなんじゃん……」 侑「でもそれ以上に、私は歩夢が食べている姿が大好きだよ」
歩夢「……ふんっ。そんな見え透いた嘘吐いたって信じないんだからっ」プイッ
侑「……歩夢。こっち見て」クイッ
歩夢「……なに」
侑「私の目、これが嘘を吐いてるように見える?」ジッ…
歩夢「……」
歩夢「……うぅん。見えない。見えないよ……っ」
歩夢「見えないけど、不安だよ……っ。侑ちゃんは嫌に思わないって分かり切ってても、不安なの……っ!」ポロポロ
歩夢「うぅっ、うぅああああっ。なん、で、涙がぁ……っ」ポロポロロン
侑「泣かないで歩夢」スッ
侑「……きっと、前に私が言ったことが原因なんだよね。おっきな口開けて食べてるって」
歩夢「……」コクリ
侑「ごめんね。今思えばデリカシーに欠けてたよ。だからこそ、一つだけ補足してもいいかな?」 歩夢「補足……?」
侑「歩夢が食事する時ってね、私と一緒にいる時が一番おっきく口を開いて食べるんだよ?」
歩夢「え……?」
侑「そこに気付いた時さ、あぁ、私ってそんなに信頼されてるんだなぁ、って嬉しくなったんだ」
侑「それに、私と一緒にいる時が一番、歩夢は歩夢らしく振る舞ってるって証拠なんだなぁって」
歩夢「……そう、なんだ。私、侑ちゃんと一緒にいる時が一番……」
侑「そうだよ。加えてもう一つ言うなら、」
歩夢「うん……」
侑「私が一番大好きな歩夢は、歩夢らしい歩夢なんだよ?」
歩夢「!」 侑「だから、私の前では我慢して欲しくないんだ。食べるのだって、食べ方だって。歩夢が一番幸せになれる振る舞い方をして欲しいんだ」
侑「そしてその姿は、私だけに見せて欲しい」ジッ
歩夢「……っ!」
歩夢「……もうっ。ばかっ」ポムッ
侑「あはは。ちょっと、くさかったかな?」
歩夢「……うぅん。全然。全然くさくなんかないよ」
侑「そっか……」
歩夢「うん、そうだよ……」
歩夢「これが、たぶん……」
歩夢(私の大好きな、侑ちゃんらしい侑ちゃんだよね)
侑「うん? なに?」
歩夢「うぅん。何でもないよ」 侑「そう? それじゃ、部室に戻ろっか」
歩夢「うん。それまで、手繋ごう?」
侑「もちろん」ギュッ
歩夢「……」ギュッ
歩夢(でも。でもね侑ちゃん)
歩夢(もしかしたら、侑ちゃんの前でもちょっとだけ我慢しちゃうかもしれない)
歩夢(それはね、やっぱり私は侑ちゃんのことが大好きだから)
歩夢(──大好きだから、一番可愛い私を、侑ちゃんには見せたいんだ)
おわり 感動した
それはそれとして一口でパンケーキ1枚はやめたほうがいいと思う 短くまとめられていて、非常に濃厚なゆうぽむで、非常に美味しい……こういうの書けるようになりてえなぁ 上質なゆうぽむをまた味わってしまった…
次回作も楽しみにしています スイカ食べるときスプーンが添えられててもガブっといってそうだよね 面白そうなネタSSだ後で読もう
と思って保存しといたら笑えて感動出来る神SSだった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています