さやか「オムライス・リベンジ」
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綴理「草は嫌だ……じゃあ、オムライス」
さやか「オムライス?この前作りませんでしたっけ?」
綴理「作った。美味しかった…けど」
さやか「けど?」
綴理「ぐちゃぐちゃだった…」
さやか「……あ!そ、それはっ」
綴理「さやは、ボクのぐちゃぐちゃなところが好き?」
さやか「この前はその……書き過ぎちゃって、文字が潰れちゃっただけですから!」 綴理「じゃあ、ぐちゃぐちゃなボクが好きじゃない?」
さやか「ぐちゃぐちゃな綴理先輩ってなんですか……違います。綴理先輩の好きなところはもっとちゃんとありますから」
綴理「今度はそれを書いてほしい、ひとつだけ」
さやか「はいはい……えっ?ひとつですか?」
綴理「うん。ひとつ」
さやか「それは……わかりました。わたしも、次は簡潔にしようと思っていたので丁度いいです。今度は読めるように書きますね」
綴理「楽しみだ」
さやか「そ、そんなに期待しないでくださいね!」 夜
さやか「さて、今日の復習も終わったし……そろそろ寝ようかな」
さやか「……あっ、そうだ。明日のお弁当」
さやか「綴理先輩も無茶言うよね…いや、あの時はわたしがぐちゃぐちゃにしちゃったけど……でも、今度はひとつだけ、か。何書けば良いんだろ……」
さやか(綴理先輩。歌も上手いしダンスも凄い。わたしが一目見て衝撃を受けたんだから、ステージの先輩は文句のつけようが無かった)
さやか(じゃあ、『ステージの上の先輩』?いや、普通の時の先輩も、独特だけど練習で指摘してくれるところは鋭いし、マイペースだけど野良猫みたいで可愛いし……)
さやか「ああもう!ひとつに絞れない~!」 さやか「わたしの優柔不断、愚か者…!こうなったら……」
トゥルルルル…
花帆『ん……もしもし?さやかちゃん?』
さやか「花帆さん!こんばんは。寝てましたか?」
花帆『これから寝ようとしてたんだけど……どうしたの?』
さやか「花帆さんは綴理先輩のどこが好きですか!?」
花帆『……んぇ?』 花帆『なるほど……綴理センパイの好きなところ、ひとつに絞れなかったんだねえ』
さやか「はい…」
花帆『でもわかるなぁ。あたしだって、梢センパイの好きなところは沢山あるし』
さやか「で、ですよね!絞れませんよね!」
花帆『うんうん。センパイたち、すっごく素敵だもんね。でも、綴理センパイかぁ……さやかちゃんのほうが良くわかってると思うけど?』
さやか「それは……そうだっ。じゃあ花帆さんは、乙宗先輩のどんなところが好きなんですか?」
花帆『梢センパイの?それならいっぱいあるよ!えっとねえ…まず優しいでしょ?練習は厳しいけど…お茶淹れてくれたり、たくさん褒めてくれるからね!』
さやか「わかります。綴理先輩も、独特ですけどできるようになれば褒めていただけますし」 花帆『後は……演技が凄い!歌もダンスも上手で、全然追いつけないや』
さやか「ええ。一歩ずつ進んでいかなければならないのは承知ですが、やはり先輩方の演技には敵いませんね」
花帆『それと…紅茶とお菓子が美味しいんだよ!』
さやか「なるほど…わたしもよくいただきますけど、本当に美味しいですよね。本格的で……」
花帆『そうそう!ティーセットなんかもちゃんとしたやつらしくて……実はすっごく良いものらしいから、素敵なんだけど飲むときに緊張しちゃうんだよね~』
さやか「……そこはちょっとだけ、花帆さんが羨ましいですね」 花帆『え?あっ、そっか。綴理センパイはさやかちゃんから貰う側だもんね』
さやか「はい。もちろん嫌ではないんですよ。空になったお弁当箱を見るときとか、おいしいって言ってくれるのは本当に嬉しいことですから。不満はないです」
花帆『そっかぁ……偉いねえさやかちゃん。あたしも何か、梢センパイにあげたいなぁ……』
さやか「花帆さんもお弁当を作ってみるのはどうですか?料理はできるんですよね?」
花帆『一応、人並みにはね。でも梢センパイの方が上手いだろうしなぁ…』
さやか「こういうのは気持が大切なんですよ。もし良ければ、わたしもお手伝いしますから。今度の土曜なんか、練習は午後からですし…どうですか?」
花帆『良いかも!じゃあ一緒に作ろ!さやかちゃん!』
さやか「はい、喜んで」 花帆『あっ!』
さやか「?どうかしましたか?」
花帆『思い付いたよ、センパイの好きなところ!大人っぽい!』
さやか「大人っぽい…?」
花帆『前、梢センパイとお昼で一緒になったことがあったんだけど、食べ方が綺麗で驚いちゃった!』
さやか「なるほど…確かに乙宗先輩はそのあたりしっかりしてますからね。教育が良いというか、品格があるというか……それで大人っぽい、ですか」
花帆『なんか…雰囲気?があるよね。背も高いし……あ、顔も綺麗!』
さやか「か、顔ですか?」
花帆『え~?さやかちゃんはセンパイたち、綺麗だと思わない?』
さやか「確かに背も高いですし、美人だとも思いますが……改めて顔に言及するのは、その…恥ずかしいですね」
花帆『あははっ!可愛い~』
さやか「もう…からかわないで下さい」 花帆『ごめんねえ。でもわかるよ?この前振付で梢センパイと向かい合ったんだけど、ホラ、あたしからは見上げなきゃでしょ?それでセンパイの顔見たら、なんかドキドキしちゃって……』
さやか「……なんかわたしまでドキドキしてきました…」
花帆『えっ!ホント!?』
さやか「も、もう辞めにしましょうか!話を戻しましょう!」
花帆『話……なんの話だっけ。あ、綴理センパイの好きなところかぁ』
さやか「はい……あんまり辞められてない気もしますけど…」
花帆『でも難しいよねえ。ひとつだけなんて』
さやか「はい。このままじゃ夜更けまで考え込むことになりそうです…」
花帆『ち、ちゃんと休まなきゃ駄目だよ!?……でも、そうだなぁ。普段言わないところを書いてみるとか?』
さやか「どういうことですか?」 花帆『綴理センパイって、結構素直に言う人だから……わざわざオムライスに書いて欲しいって言うのは、さやかちゃんがあんまり言わないことを知りたいんじゃないかな。お手紙みたいなものだよ』
さやか「……なるほど」
花帆『あっ、これはあたしがちょっと思っただけだから!さやかちゃんの素直な気持が一番だと思うよ!』
さやか「いえ。ありがとうございます。助かりました。わたしだけだと堂々巡りになりそうで……気持の整理にもなりましたよ」
花帆『あはは、力になれたなら良かったよ!』
さやか「なんとかなりそうです。夜遅くにすみませんでした」
花帆『ぜんぜん!さやかちゃんのためならいつでも起きるからね!早朝以外なら!』
さやか「ふふ、ありがとうございます。おやすみなさい、花帆さん」
花帆『うん、さやかちゃん頑張って!おやすみ~』 さやか「……ふぅ。花帆さんは、やっぱり優しいですね。それに、いつも頼りになります」
さやか「さて、あとはわたしが頑張らないと……とは言っても、どうすれば……」
さやか(正直、綴理先輩の嫌いなところは無い。もちろん朝はもう少しスムーズに起きてくれると有り難いし、放課後は真っ直ぐ部室に来て欲しい。蟻に見惚れてえだまめの体勢で固まるのも止めて欲しいし、お風呂上がりは髪をちゃんと乾かしてくれると良いんだけど……)
さやか(それも、綴理先輩の魅力のひとつだ。だから、全部引っ括めて綴理先輩は素敵だと思う)
さやか「やっぱりひとつに絞るのは無理…!」 さやか「うぅ~ん、考えてたらわかんなくなってきた……ひとつって何文字まで?何がひとつなんだっけ?ケチャップのチューブひとつ分?ディスペンパックはふたつ?」
さやか「ここはシンプルで、綴理先輩をよく表しているものを……」
さやか「そうだ!花帆さんの言っていた『普段言わないこと』に絞ってみようかな」
さやか「演技の話……は練習中に良く言ってるし、わたしを褒めてくれるところ……はちょっと恥ずかしいな……」
さやか「お弁当いつも綺麗に食べていただいて嬉しいです…?いや、それをお弁当に書くのは完食を催促してるみたいでなんか……う~ん……」
さやか「そうだ、綴理先輩の動画を見直して、もう一度考えてみよう。一番最初のライブからで、そしたら…………」 翌日 昼
キーンコーンカーンコーン…
綴理「お弁当、お弁当…」ガサゴソ
梢「あら綴理、珍しいわね。貴女がそんなにお昼を気にするなんて」
綴理「そうかも。でも、今日はさやに作ってもらったから」
梢「いつもじゃない…」
綴理「…いつもか。うん、そうだった。でも今日は特別。オムライスにボクのことを書いてもらったんだ」
梢「オムライスに、綴理のこと?絵ってことかしら?」 綴理「違う。文字。でも、絵も良いかもしれない。今度頼んでみる」
梢「あまり村野さんを困らせないようにね。……私も、花帆さんのクッキーにアイシングで絵を描いてみようかしら?」
綴理「……大丈夫。かほなら褒めてくれる」
梢「…そうね?それで、文字って何を書いてもらったの?」
綴理「さやがボクの好きなところ」
梢「……貴女、結構大胆なことするわよねえ」
綴理「ボク、大胆?でもひとつだけにしたから、控えめ」 梢「そういう話ではないと思うのだけれど。当の村野さんと一緒には食べないのね」
綴理「うん。恥ずかしいから一人で食べて欲しいみたい。食べるの忘れないようにって言ってた」
梢「可愛らしいわね。でも、何が書いてあるのかしら。私も見ていい?」
綴理「うん。楽しみ。…よし、開ける」
梢「…なんだか緊張してきたわね」
綴理「…ボクも、ドキドキだ。じゃあ……かぱっ」
【顔】 綴理「……」
梢「……」
綴理「……かお?」
梢「顔、ね」
綴理「……」フタシメ
綴理「……かぱっ」フタアケー
【顔】
綴理「……」 梢「あの、綴理?」
綴理「……こず。ボクの顔、好き?」
梢「え゛っ……ええ、そうね。整ってると思うし、好きか嫌いかで言えばもちろん好きよ…?」
綴理「ボクもこずの顔、好き。さやの顔も好き」
梢「そ、そう…ありがとう…?(混乱)」
綴理「良かった。……けど、何故か複雑…」
梢「綴理。その、私…他にも貴女の好きなところはたくさんあると思うわよ?村野さんもきっとそうじゃないかしら…?」
綴理「うん。知ってる。さやはボクのことが好き」
梢「間髪入れずにそう言えるのはある意味貴女の凄いと思うけれど…」
綴理「さやはボクが好き。ボクの演技と、ぐちゃぐちゃなところと……顔が好き?」
綴理「……顔かぁ」 放課後
綴理「……」
さやか「……あの、綴理先輩?さっきから顔抑えて、何やってるんですか?」
綴理「アッチョンブリケ」
さやか「そう、ですか…」
綴理「うん」
さやか「……」
さやか「え、えぇ…?」
梢「綴理、止めなさい。変な癖がついたらどうするの。それに村野さんたちも困惑してるじゃない」
綴理「あらまんちゅ」 綴理「さや、さや」
さやか「なんですかなんですか」
綴理「見て」
さやか「はい?…えっ、なんでいきなりウィンドミル!?」
綴理「どう?」
さやか「え……えっと、凄く上手でした…?」
綴理「うん、ボク、上手」
さやか「???」 綴理「さや、クッキーをあげよう。あーん」
さやか「つ、綴理先輩!?」
綴理「あーん」
さやか「あ、あーん……」
綴理「美味しい?」
さやか「は、はい。美味しいです」
綴理「良かった。……もっと食べて良いよ」
さやか「それ綴理先輩の分じゃ…?」
綴理「…………さやに食べて欲しいから。あーん」
さやか「若干未練ありますよね!?無理しないでください!」
さやか「ホラ、わたしの分食べていいですから。はい、あーん……」
綴理「あーん……美味しい。……はっ。駄目だ、食べてしまった」
さやか「大丈夫ですから。綴理先輩ももっと食べてください。あーん」
綴理「あー……」 花帆「なんか……今日の綴理センパイ、おかしくないですか?」
梢「ええ。私も、ここまでとは思わなかったわ…」
花帆「なんだかさやかちゃんにアピールしてるような……全然伝わってないけど」
梢「やっぱり、あの子なりに思うところはあるのねえ」
花帆「その…何かあったんですか?」
梢「聞いてもらえるかしら。実は……」 花帆「なるほど……それってさやかちゃんと綴理センパイ、すれ違っちゃってます?」
梢「そうね。とはいえ綴理も、村野さんがちゃんと顔以外も好きだとは理解してるみたいだけれど……心の奥ではすっきりしない、といった感じかしら」
花帆「でもあたし、失敗しちゃったかなぁ……実は、普段言わないことを書いたらいいってアドバイスしたの、あたしなんですよ」
梢「花帆さんは悪くないわ。ああなるとは予想できないもの。だから事故みたいなものよ。……もっとも、誰も悪くないからこそ質が悪いのだけれど」
花帆「ど、どうすれば……ていうかさやかちゃん、なんであの話の中から顔を選んじゃったの~!?」
梢「村野さんは、その、変なところまで真面目だから…自分が一番言わないようなことを選んだんじゃないかしら…?」
花帆「だからっておっきく『顔』の一文字は無いよ~!」 花帆「っていうか、なんでさやかちゃんは気付いてないの?いつもなら綴理センパイの機嫌とか、お腹の減り具合もわかるのに」
梢「そうね。確かになんだか今日の村野さんは気力が無いというか、集中しきれていないというか…」
花帆「もしかして体調悪かったり?でもそうには見えないけど…」
梢「なんにせよ、私たちにできることは無いと思うわ。練習もしなければいけないし……後は二人に任せましょう。きっと、大丈夫よ」
花帆「はい、そうですね。さやかちゃん頑張って…!」 綴理「いち、にー、さん、しー……手は大きく前に出して」
さやか「はっ、ふぅ…はい!」
綴理「うん、良く出来てる。最後、回ったあとはこぶじめで」
さやか「昆布〆……?」
綴理「うん」
さやか「……?」
綴理「……?」
さやか「……あっ、そのまま置くってことですね。ええと……こうですか?」
綴理「そう。美味しくなった」
さやか「ふふ、ありがとうございます」 綴理「……さや、お腹空いてる?」
さやか「えっ?いきなりどうしたんですか?今は空いていませんが…」
綴理「今日のさやはなんだか、集中できてない?」
さやか「そ、それは……すみません。折角ご指導していただいているのに、不真面目なふ姿を晒してしまって」
綴理「それはいい。ボクも、お腹が空いてるとごはんのことを考えちゃうから。でも、違うなら……眠い?」
さやか「…っ、そんなことは」 綴理「それは駄目だ。ボクに隠し事はしないで欲しい」
さやか「……すみません。実は、昨日あまり寝れてなくて」
綴理「何かあった?」
さやか「それは……」
綴理「ボクのせい?だったら、ごめん」
さやか「いっいえ!わたしが勝手に悩んでただけですから!」
綴理「本当?」
さやか「……少なくとも、綴理先輩のせいではありません。それは本当です」
綴理「わかった。じゃあさや。あっちにいこう」
さやか「あっち…?」 綴理「眠いときは、寝るのが一番。だから今日は一緒に寝よう」
さやか「えっ…良いんですか?大事な練習なのに」
綴理「練習は大事。だけど、一番大事なのはさやだから」
さやか「…ありがとう、ございます」
綴理「じゃあ、はい」
さやか「…?」
綴理「さや、ここだよ」
さやか「ここって……膝?」
綴理「膝枕」
さやか「あぁ、膝枕ですね。膝まく……えええ!?」 さやか「そんな、先輩の膝をお借りするなんて…!」
綴理「良くかほとやったりやって貰ったりしてるよ?」
さやか「花帆さん!?」
綴理「かほはボクの膝好きって言ってたんだ。だから、ボクの膝は気持良いと思う」
さやか「そ、そういう問題では…」
綴理「さやはボクの膝、嫌?」
さやか「それは……~~~ッ、わかりましたっ」
さやか「先輩のお膝、お借りしますね」
綴理「うん。後で返してね」
さやか「ふふ、借りっ放しになんてできませんって」 綴理「どう?」
さやか「……はい、気持良いです。お天気も、丁度良いですね」
綴理「うん。暖かい」
さやか「……」
綴理「……」
さやか「あの、綴理先輩?そんなにじっと見られると、流石に緊張するといいますか……」
綴理「さやの顔は綺麗だね」
さやか「な…っ!?いいいいきなりなんですか!?」 綴理「ボク、さやの顔好き」
さやか「えっ……あ!オムライスの件ですか!?」
綴理「でも、さやの顔以外も好き」
さやか「……怒ってますか?」
綴理「なんで?」
さやか「それは、その……あれに書いたのって」
綴理「顔」
さやか「うっ…あ、あれは深夜のテンションがそのまま朝まで続いたと言うか、普段言わないことを書こうとして、綴理先輩の動画を見直してたら朝まで夜更かししてしまって、余計に顔が印象付いてしまったと言うか…」
さやか「し、失礼でしたよね。思い返したら恥ずかしくて、思い出さないようにしてたんですけどやっぱり…」
綴理「そんなことない。嬉しかった」
さやか「え?」
綴理「ボクは、さやの望む夕霧綴理でありたいと思ってる。ダンスも、歌も、キミが隣にいても夢中になる位…すごい演技ができるように頑張ってる」 綴理「でも、さやがボクの演技を好きでいてくれても、顔が好きじゃなかったら。それを変えるは、ちょっと…難しい」
さやか「そんなことないですから!わたしは綴理先輩が一番好きですよ!」
綴理「良かった」
さやか「良かったはこっちの台詞ですよ。オムライスひとつで、こんなになっちゃうなんて…はぁ、わたしったら…」
綴理「多分だけど…ボクたちは、手紙が上手くない。送るのも、受け取るのも。言葉で気持を伝えるより、もっと」
さやか「…そうかもしれませんね」
綴理「なんでだろう?文字なら、さやの気持がちゃんとわかると思ったのに」
さやか「そう、ですね」 さやか「……それなら、わたしたち、もう少しだけ我儘になっていただけませんか?」
綴理「?」
さやか「えっと……わたしも、そんなに器用な人間ではないですから。綴理先輩に、もっとわたしを求めて欲しいんです。そしたらもっと、たくさん気持を伝えられるのかな、と。文字だけとか、言葉だけじゃなくて……どんな手段でも、いつでも、どこでも」
綴理「いいの?」
さやか「もちろんです」
綴理「そっか。……じゃあ、さや。手出してくれる?」
さやか「はい?」
綴理「繋ごう。今は、さやの体温が欲しい」
さやか「…ふふ、わかりました」 >>42
訂正
さやか「……それなら、綴理先輩。わたしに……もう少しだけ我儘になっていただけませんか?」
綴理「?」
さやか「えっと……わたしも、そんなに器用な人間ではないですから。綴理先輩に、もっとわたしを求めて欲しいんです。そしたらもっと、たくさん気持を伝えられるのかな、と。文字だけとか、言葉だけじゃなくて……どんな手段でも、いつでも、どこでも」
綴理「いいの?」
さやか「もちろんです」
綴理「そっか。……じゃあ、さや。手出してくれる?」
さやか「はい?」
綴理「繋ごう。今は、さやの体温が欲しい」
さやか「…ふふ、わかりました」 綴理「……ねえ、さや」
さやか「綴理先輩……あっ。すみません」
綴理「ううん。さやから言って」
さやか「わ、わかりました」
さやか「では……綴理先輩。わたし…貴女のことを本当に、心から尊敬してるんですよ。村野さやかは、夕霧綴理のことが大好きなんです」
綴理「…さや」
さやか「書こうと思うとぐちゃぐちゃになっちゃって……でも、抑えようとしても上手くいかない。それが、わたしの気持なんです」
さやか「……えへへ。唐突でしたかね。でも、なんだか言いたくなっちゃいました」
さやか「こんなにわたしを気にかけてくれる、素敵な先輩がいるなんて……わたしは本当に幸せ者です」 綴理「……そっか。そっか」
さやか「あの、先輩」
綴理「?」
さやか「もう少しだけ…このままでいても、良いですか?」
綴理「うん。今はお昼寝の時間だから。ゆっくりしよう」
さやか「ありがとうございます。……そうだ、さっき綴理先輩も何か言おうとしてましたよね?わたしが遮ってしまって」
綴理「あれは……」
綴理「ううん。なんでもないよ。オムライス、美味しかったって言おうとしたんだ。ごちそうさま、さや」 梢「あの二人、どこへ行ったのかしら…あら?」
綴理「ふんふんふ~ん、ラララ~」
梢「綴理?時間になっても来ないから心配して…」
綴理「やぁ、こず」
梢「あら…ふふふっ、ごめんなさい。休憩中だったのね」
さやか「すぅ……」スヤスヤ
梢「とっても気持ち良さそうね。そう言えば貴女もなんだか…すっきりした顔をしてるわね」
綴理「そうかな?」
梢「ええ。その様子だと、オムライスの件は解決したみたいね。村野さんに直接聞いたの?」 綴理「う~ん。聞いた…訳じゃないけど」
梢「そうなの?」
綴理「でも、大丈夫。ボクはさやが好き。さやはボクが好き。ボクたちはちゃんと、わかってるから」
梢「……そうね。貴女がそう言うなら、きっと間違いないわね」
綴理「ふふ。さや」ナデナデ
さやか「ん…綴理、先輩…」
梢「起こすと悪いし、わたしは部室に戻るわね。ミーティングはまた今度にしましょうか。綴理も今日は任せるけれど、あんまり遅くまでそうしてちゃ駄目よ?日が暮れるとすぐ冷えてしまうわ」
綴理「わかった。こず、ありがとう」
梢「なぁに?私は何もしていないし、それにお礼なんて貴女らしくもない…」
綴理「そうだね。でも、なんだか言いたくなったんだ。だから、ありがとう」
梢「……ええ。どういたしまして。それじゃあね」
綴理「うん。またね」 綴理「……さや」
さやか「……」
綴理「だめだ。さやを見てると……ボクもぐちゃぐちゃになっちゃう」
綴理「でもそしたら……さやはぐちゃぐちゃなボクも、好きになってくれるのかな」
綴理「さや。大好きだよ」 おつ
素晴らしいSSだった
「顔」と書かれたオムライス想像してちょっと笑ったわ 素晴らしいわね…
早く結婚して欲しくなるわね
さやかちゃんは「顔が天才」とか言いそう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています