(SS)銀河鉄道は遥なり
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銀河鉄道物語が元ネタのSSです。キャラ崩壊してたらごめんなさい 無限に広がる大宇宙
そこには、多くの星星が生まれ…そして、死んでいく。
━━ファァァァァーン……ガタン…ガタンガタン…
銀河鉄道。それは宇宙の海を夢見る者にとって、憧れと希望を運ぶものだ。
しかし…時として宇宙は彼らに、過酷な運命を齎すことも有る。
「……おかーさんみて!石がいっぱい飛んでくるよ!」
「え?どこ?」
「あそこ!」
「……っ!ぶつかるっ!!」
「うわッ?!…くそ…どうなってんだ…」
乗務員「ご安心ください、当銀河鉄道は軌道シールド及び、磁力バリアーに守られておりますので、安全に━━」
バリィッ!!!
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 〈EMERGENCY〉
『銀河鉄道707号、緊急停止!タツミ星系3500宇宙キロ、シグナルレッド』
『起動シールド損傷大、磁力バリアー出力最大!』
『SDF出場要請入電!』
『っ……待ってください!タツミ星系4000宇宙キロにホワイトホールの出現を確認…重力レベル上昇!このままでは……』
『空間鉄道警備隊、シリウス小隊出場。直ちに救助に向かえ』
運命という歯車が動き出す。それを、誰も止めることは出来ない。
人はただ、歯車の流れに身を委ねてしまう……。 【第壱話 旅立ち】
「銀河鉄道管理局はなにやってるんだ!!」「早く助けてよっ!!」ガヤガヤ
乗務員「皆様、こちらに只今救助を派遣したとの連絡を受けました。ですので、安心して座席にお戻りを……「ふざけるなっ!けが人だって出てるんだぞ!」グイッ
『フォオォォッ!フォォッ!フォォッ!』
乗務員「っぁあ……SDFが到着したようです」 近江「……これより707号、乗客救助を行う。各員全力で当たれ」
「「了解!」」
ピシューッ
遥「離してっ!離してよ!」
隊員「このっ、入れっ!」
隊員「後部格納庫に密航者を確認、近江隊長の関係者だと名乗っていますが……」
近江「お前達……」
彼方「お、お父さん……」
遥「お父さん……ごめんなさい」
海未「隊長のご息女ですか」
近江「どうしてここに居るんだ」
彼方「ごめんなさい、こんな事するつもりじゃなかったの……」
遥「お父さん!わたし、お父さんのお仕事手伝いたいの!わたしに出来ること、何かない?!」
近江「……」
遥「わたしを警備隊に入れてよ!」
近江「馬鹿者!!」
遥・彼方「っ……」 海未「近江隊長、乗客はこの人で最後です」
近江「よし、救助活動終了」
海未「はっ!」
乗務員「助かりました……」
近江「707号は我々が近くの駅まで牽引します」
乗務員「感謝します……っぁ!」
近江「……」ピシッ
遥「お父さん、かっこいいね!」
彼方「うん……!」 隊員「っ!!隊長!非常事態です」
近江「どうした」
隊員「ホワイトホールより出現する物体あり」
近江「何……?!」
隊員「戦艦のようですが……」
近江「各員、戦闘配置」
「「了解!」」
海未「高熱源体接近、距離3000宇宙キロ」
近江「急げ、発進する!」
ビッグワン「フォオオオオオオオオオオオオ!!!!ガコンガコッ……シュッシュッシュッ……」
ドゴッドゴンッッドカッドゴォォォォン!! 海未「直撃を回避!」
近江「707号の牽引は断念!乗客達の生命維持を最優先とする」
海未「応戦の許可、お願いします!」
近江「追撃してくるようならば、許可する!」
海未「了解!」
海未「敵機接近!迎撃用意!」
近江「軌道シールド開放、撃てッ!!」
バシュッバシュッバシュゥゥゥン!!
近江「遥、彼方、ドアから離れろ」
彼方「お父さ……ん」
遥「お父さん……」
近江「大丈夫だ、心配ない……」
隊員「突破されました!!ミサイル一発が直撃コース!」
隊員「回避出来ないっ……!!」
ドゴォォンッ!!
遥「きゃあああああああああああああああっ!!━━」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 遥「わぁあああ……」
ビッグワン「フォオオオオオッ!フォオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
遥「あっ!」
遥「びっぐわん……?!」
遥「間違いない!!あれは!……あーっ!!」ドテッ
遥「お父さんが帰ってきたんだっ!!」 彼方「出前いってきまーす」
「かなちゃん!性が出るねぇ!」
彼方「どうも~」
彼方「鬼頭さーん!出前ー!」
鬼頭「お、彼方ちゃん。こっちこっち、早かったね」
彼方「鬼頭さんよく食べるねぇ」
鬼頭「おうよ……そういやぁさあ、学校卒業したらどうするの?」
彼方「私?……」
鬼頭「SDF?」
彼方「!!」
鬼頭「図星かぁ」
彼方「……」
鬼頭「宇宙ねぇ、私も10年若ければなぁ~」
彼方「あははっ」 遥「お姉ちゃん!お姉ちゃ~ん!!」タッタッタッ
彼方「遥ちゃん…?」
遥「ビッグワンが来たよ!お父さんの列車が帰ってきたんだよ!」
彼方「そんな予定なかったけど……それにお母さんが」
遥「行ってみようよ!」
彼方「ダメだよ、駅にはパスがないと入れない規則なんだから」
遥「えぇ~、お姉ちゃんいつも規則規則って、まじめすぎ!」
遥「一人でいくもん!ランドセル、持って帰って!」タッタッタッ
彼方「あぁっ……遥ちゃん!」
遥「お母さんにはすぐ帰るって言っておいてね~っ!!」タッタッタッ
彼方「あぁ……もう、しょうがないなぁ……よいしょ」
ギィィィイ……
遥「へへ~ん、わたしにはパスなんて関係ないもんね、この洞窟の先が……よいしょっ」
遥「ふう!あとはホームに上がれば……よっ、よいしょっ!」ピョンピヨン
警備ロボ「ビビビビ……」
遥「んうっ!届かない……」
「まもなく、三番線に、空間鉄道警備隊の車両が入ります……」ブォォン……
遥「三番線……?」 ビッグワン「フォオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
遥「ビッグワン?!すごい……!!」
ビッグワン「フォオォオォオ!!キキーッ!!!」
遥「あっあぁ……に、にげないと」タッタッタッ……
遥「はぁっはぁっはぁっ!!うわっ……!?うっうそっ……」タッタッタッドテッ……
遥「あぁーっ!……」ズサーッ
ビッグワン「ギギギ……プシューッ!!」
遥「っえほっえほっ!……」
警備ロボ「動クナ、侵入者ヲ確認」
遥「う、撃たないで撃たないで!お父さんを迎えに来ただけだよ!?」
「何の騒ぎだ」
警備ロボ「侵入者デス」
近江「どうやら家の娘が、ご迷惑をおかけしたようだ……」
遥「お父さん!」
近江「馬鹿者!」
遥「うっ……」
近江「遥、無茶をするな。出迎え……ご苦労」スッ
遥「よいしょっ……おかえりなさい!お父さん……」 遥「ねえお父さん、今度はいつまで居られるの?」
遥「またすぐ行っちゃうの……?」
近江「すまんな」
遥「仕事だからしょうがないよね」プイッ
近江「生意気言うんじゃない」
遥「一つお願いがあるの」
近江「なんだい?」
遥「わたしをビッグワンに乗せてよ!」
近江「無理言うなよ……」
遥「どーして?」
近江「規則が有る、部外者を列車内に入れるわけにはいかないんだ」
遥「じゃあわたし、空間鉄道警備隊の隊員になる!それなら良いでしょ?」
近江「ああ」
遥「あっ、やっぱりやめた!」
近江「え?」
遥「隊長になる!」
遥「わたし大きくなったら、空間鉄道警備隊の隊長になる!」
近江「はっはっはっ!」 近江「秀太郎!元気だったか?」
「ワンッ!」
ガラガラ……
近江母「いらっしゃ……あら!?」
遥「ただいまーっ!」
近江母「もう遥?こんな遅くまで何してたの?」
近江「母さん、ただいま」
近江母「お、おかえりなさい……///」
遥「あっ、お母さん照れてる」
近江母「もうっ!遥!」
彼方「お、お父さん!?」タッタッタッタッ!!
遥「お姉ちゃん!やっぱりお父さんのビッグワンだったよ!」
近江「彼方、元気にしてたか?」
彼方「お父さん……お帰りなさいっ」
近江「ただいま」
遥「ねえねえお父さん!キャッチボールしよーよ!いいでしょ?!」
近江「分かったよ、よし……やるか」
彼方「うん!」 近江「ナイスボール!遥、いい球投げるようになったな!」パシッ
遥「えへへっ、毎日お姉ちゃんと……練習したんだよっ!」ヒュンッ
近江「はははっ、そうか!彼方!」パシッ……ヒュンッ
彼方「よっ……私、もうお父さんには負けないよ~っ!」ビュンッ
近江「ぬっ……ははっ、いててて……彼方すごいなぁ」バシッ
遥「お姉ちゃんすごい!」
近江「父さんもう歳だな、あとは二人でやってくれ」
遥「えぇ~っ?!なんで?!」
彼方「隊長が泣き言~?」
近江「少しは母さんの相手もさせてくれ」
遥「えぇ~!つまんない~!」
彼方「遥ちゃんいくよっ!」
遥「うんっ!」
近江母「お疲れ様」
近江「大きくなったな……二人共」
近江母「ええ」
遥「お姉ちゃんいくよ!」ヒュンッ
彼方「よっと!遥ちゃんやるねぇ~っ!」パシッ
近江「ありがとう……母さんのおかげだよ」
近江母「ふふっ……」 ジリリリリリリリリン……ジリリリリリリリリン……ガチャッ
近江「……ああ、分かった……すぐに出る、直ちに招集をかけろ」
近江母「……スクランブル?」
近江「すまん、この星の近くで列車が立ち往生しているらしい」
近江母「二人には私から言っておくから……」
近江「すまない……」
近江母「いいのよ」
近江「ちょっと早いが……誕生日プレゼント」スッ
近江母「ネックレス?……ありがとう、気をつけて……早く帰ってきて?」
近江「ああ」
プーップーッ……ガラガラ
近江「ご苦労」
海未「はっ」
バムッ……ブロロロロロ…… 遥「お父さん……」
遥「……」ギィ……ギィ……
彼方「おトイレ?」
遥「ひゃっ?!」
彼方「そんな格好じゃなさそうだねぇ~」ニヤッ
遥「お、お父さんの見送りに行きたいの!お願い行かせてよ!」
彼方「遥ちゃん」
遥「っ……!」メツムリ
彼方「私も行く」
遥「え…?!」
彼方「どこ行くの?!」
遥「大丈夫!こっちこっち!」
彼方「そんなに早く進めないってぇ!よいしょ……」 ビッグワン「シューッ……シューッ……」
近江『我々シリウス小隊は緊急任務につく』
近江『各自それぞれの持場に付き、発進命令を待て』
「「了解!」」
近江『以上だ』
近江「よし、発進準備」
隊員「磁力バリアー異常なし」
隊員「ボイラー内圧力上昇中」
彼方「ホームは……大丈夫そう、ロボットは居ないみたい」
遥「やった」
彼方「上げるよ!よいしょっ……!」
遥「も、もうちょいっ……よっ……と」
彼方「よいしょっ!……ふう」
遥「お姉ちゃん!機関車の方行ってみよう!」タッタッタッタッ……
彼方「あっちょっと待って!」 ビッグワン「シューッ……シューッ……」
彼方「これがお父さんの列車……」
遥「お父さん、もう乗っちゃったのかな……?」
警備ロボ「侵入者発見!侵入者発見!!」ビビビビ
遥「お姉ちゃん!」
彼方「遥ちゃんこっち!」グイッ
隊員「エネルギー正常、ボイラー内圧力上昇」
海未「シリンダーへの閉鎖弁、オープン」
海未「メイン回路接続」
隊員「システム、オールグリーン」
遥「お姉ちゃんもうだめぇ!はぁっはぁっ!」タッタッタッタッ
彼方「遥ちゃんがんばって!!」タッタッタッタッ
警備ロボ「止マリナサイ!!」 彼方「はぁっはぁっ……えぇい!!乗っちゃえ!!」グイッ
遥「あぁっ!お姉ちゃぁっ!」ドタッ
プシューッ!!……ガコンッ
遥「お姉ちゃんドアが!」
近江「ビッグワン、発進!」
ビッグワン「フオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」ガコンッ……シュッシュッシュッ……
彼方「そんな……」
遥「動き出しちゃった……どうするお姉ちゃん?!」キラキラ
彼方「もう遅いよぉ……」
フオオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!
近江母「……あなた」
彼方「宇宙だ……遥ちゃん!」
遥「うわぁぁぁあ!━━」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 「━━るか……遥、しっかりしろ!遥!!」
遥「……お、お父さんっ?!」
近江「気が付いたか?」
近江「二人共、大丈夫か」
彼方「だ、大丈夫……でも、お父さん怪我……」
近江「父さんは心配ない、遥は?」
遥「うん、大丈夫!……」
近江「偉いぞ、さすが父さんの娘だ」
彼方「……大丈夫だよ」
遥「うん……うん!」
海未「隊長、敵戦艦……ホールアウトまで、あと五分!」
近江「いかん……絶対に出すな」
海未「了解ッ!……隊長怪我を?!」
近江「気にするな……搭載機を全機発進させろ」 パシューッ!!…パシューッパシューッ!!
パイロット「一番機から全機へ、主砲斉射の後、突撃する!」
「「了解ッ」」
海未「主砲斉射ッ!」バシュッバシュッバシュゥゥゥン!!
パイロット「突撃する!」
敵戦艦「シュイイイイン……パシュイイイン!!……パシュイイイン!パシュイイイン!!」
パイロット「ぐわああっ━━」
パイロット「三番機がやられ━━」
パイロット「クソッ……!!だがこの距離ならッ」カチッ
ドゴォォォンッ……!!
敵戦艦「パシュイイイン!!」
パイロット「避けれッ━━」 海未「全機撃破されましたッ!!」
隊員「戦闘車両大破!!」
エマ「隔壁、閉鎖します」
ガションッ……ガションッ……ガションッ!!
エマ「隔壁、閉鎖完了」
隊員「ホールアウトまで、あと三分ッ!!」
近江(このままでは……)
敵戦艦「パシュイイイン!!」
海未「来ますッ!!」
近江「磁力シールド、全開ッ!!」
海未「っ……間に合いませんッ!!」
近江「衝撃に備えッ!!」
シュュイインッ!シュュイインッ!…ジュイイイイッ!
バチバチバチッ……ボフッ!……
「「ぐっ……うわぁっ……」」ゴゴゴゴッ……
海未「くっ……ううっ……」ピシュッ
乗客達「「きゃあっあああっ!!」」 遥・彼方「お父さんっ……!!」
近江「心配するな二人共」
近江「お前達は……必ず母さんのところへ返してやる」
遥「お父さん……?」
「「隊長!」」
近江「みんな、奴らに空間鉄道警備隊の底力を……見せてやるんだ」
「「了解ッ」」
近江「只今より、シリウス小隊指揮権を園田海未に移譲する」
海未「待って下さいそれは「聞けッ!!」
近江「総員客車ブロックに移れ、ビッグワンが囮となり、敵を引き付ける」
近江「その間に補助動力で戦闘エリアを離脱、後続の救援を待て」
遥「……お父さんは?」
遥「お父さんはどうなるの?……お父さん答えてよぉっ!!」 近江「っ……彼方、そろそろ進路に悩む時期だな」
近江「人がなんと言おうと、お前のやりたいようにしなさい」
近江「お前の人生は、お前のものなんだ」
彼方「……っぁ……!!」
近江「……」ニッ
近江「遥」
遥「……!」
近江「遥、姉さんの言う事をよく聞いて、母さんを助けてやってくれ」
遥「……ねぇなんで?!なんでそんな事いうの?!」
彼方「遥ちゃん……」
遥「おとーさんッ!!」
近江「……総員、後部デッキへ速やかに移動」
近江「園田……後のことを、頼むぞ」
海未「……はいッ」ギッ ビッグワン「パシューッッ!……ガッコン!!」
海未「近江隊長に……敬礼ッ!!」ピシッ
隊員「「……」」ピシッ
遥「おとうさんッ!!」ポロポロ
近江「……」……ピシッ
近江(彼方、遥……)
遥「おとーさんいかないでぇえええっ!!!」ポロポロ
近江(娘たちよ……やがて大人になり、この宇宙の海原に旅立つ時……)
近江(この父に、その勇姿を見せてくれ……)
彼方「お父さん……っ」
彼方「……お父さああああぁぁぁあんっ!!!」ポロポロ ビッグワン「フオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
AI「ホールアウトマデ、アト一分」
敵戦艦「シュィィィィィパシュイイイン!!パシュイイイン!!」
近江「シリンダー内、圧力最大!」
近江「目標!敵戦艦ッ!!」
AI「了解シマシタ」ゴゴゴゴゴ
近江「……母さん、今度は……長くなりそうだ、すまん」
ホログラム「……」ビビビ
近江「総司令ッ!」
ホログラム「やはり、行くのですね……」ビビビ
近江「……」コクッ
『では、参りましょう……私は……セツナ……』
ビッグワン「フオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
……ドゴォォォォォンッ!!!
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 海未「━━回収できた遺品は……以上です」ピシッ
秀太郎「クゥゥン?」
海未「ん?……」
近江母「父さんは……もうっ……うぅっ……あぁっ……」
秀太郎「クゥゥン……」
遥・彼方「……」ウツムキ
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ ━四年後━
近江母「彼方、どうしても行っちゃうの……?」
彼方「決めたんだ、もう」
彼方「遥ちゃん、お母さんの事……よろしくね」
遥「うん、任せて!」
彼方「お母さん、行ってきます……」
近江母「うん、いってらっしゃい……っ」
ガラガラ
鬼頭「彼方ちゃん!空間鉄道警備隊入隊、おめでとう!!」
「「おめでとう!!」」
鬼頭「よかったね、彼方。がんばってね」
彼方「鬼頭さん……皆さん……!」
彼方「ありがとう……!」 アナウンス「停車中のエターナル銀河行き、銀河超特急999号はまもなく……」
彼方「……」
彼方(この列車に乗ったらもう……引き返せない)
彼方「……」スタスタ
「ジリリリリリリリリリリリリリリリリン!!」
「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッ……
「フォオオオオオオオオオオオオ!!グゴゴゴォ……ガシュンッ!!……シュッ……シュッ…シュッ…シュッシュッシュッ……」
遥「お姉ちゃん!!」シュタッ
駅員「こら待て!!」
遥「お姉ちゃーんっ!!」タッタッタッタッ!
彼方「……遥ちゃん?!」ガチャッ
彼方「よいしょっ……遥ちゃん!」
遥「お姉ちゃん!これ!!」ビュンッ
彼方「遥ちゃん?!」パシッ
彼方「ボール……遥ちゃんっ!」
遥「お姉ちゃん……」
「シュッシュッシュッシュッシュッシュッ……」
彼方「遥ちゃん……」
彼方「ありがとう……っ」
今、万感の思いを胸に、少女は宇宙へ旅立って行く
運命という名の、星をめざして ━一年後━
ジリリリリリリリリン……ジリリリリリン……
遥「はい!銀河亭……お母さん!電話だよ!」
近江母「はいはい!もしもし?」
近江母「……彼方が……?……」ドサッ
遥「お母さん?!お母さん!大丈夫?!」
電話「もしもし?もしもし?近江さん?!」
遥「はい……えっ?」
遥「お姉ちゃんが……死んだ……?」
《次回、時の結び目》 遠い、遠い宇宙の海原にを見上げて
銀河鉄道を見ることが出来たものは、幸せである
それは、自分の未来に希望を見ることが出来る者だからだ
『遥ちゃん?!』
『お姉ちゃん!これっ!!』
遥「……お姉ちゃぁぁあん!!なんで死んじゃったのっ……?!」
シュイイイ……ガタン…ガタンガタン…ガタンガタン…ガタンガタン……
遥「━━お姉ちゃん……私も……っ」
【第弐話 時の結び目】
近江母「遥!遥っ!」
遥「なにー?」
近江母「いいから早く降りてきなさいッ!」
遥「もー、何?怖い顔して……」
近江母「これは何?」スッ
遥「えぇ?……」ペラッ
【近江遥 SDF入隊審査:合格】
遥「!!」 近江母「どういう事なの?!」
鬼頭「ラブレターかい遥ちゃん!」
内田「羨ましいねぇ~!」
近江母「私に黙って、空間鉄道警備隊に入隊するつもりだったの?!」
遥「ぁ……それは」
近江母「父さんや彼方……それにあなたまで……っ」
近江母「私は絶対に許しませんからね」
近江母「絶対にッ!!」
遥「お母さん……」
近江母「どうしても出ていくって言うなら……今日限り、親子の縁を切ります」
鬼頭「まあまあ!!そう怒らないで!!は、遥ちゃんもさっさと謝っちゃいなよ!」
遥「私は……」
内田「遥ちゃんはうちらと働くんだよね!!」
遥「私は、宇宙に行くよっ!」
パシッ
遥「っ……」
近江母「……」スタスタ
近江母「はぁ……」ネックレストリダシ
近江母「……あなたにそっくり」
近江母「嫌になるくらい……」 遥「荷造り終わり……っと」スクッ
遥「……あっ、写真……」
『遥、姉さんの言う事をよく聞いて、母さんを助けてやってくれ』
『遥ちゃん、お母さんの事……よろしくね』
遥(お父さん……彼方お姉ちゃん……ごめんなさい)
遥(私、やっぱり……)
遥(自分の夢は、捨てられないんだ……!)
遥「お母さん……」
近江母「……」
ガラガラ
秀太郎「クゥン……ハッハッハッ……」
近江母「待ちなさい、遥」
遥「……?」
近江母「……お弁当、持ってって」
遥「お母さん……っ」
遥「行ってきます……!」タッタッタッタッ アナウンス「三番線に停車中の列車は、ディスティニー行きです……」
遥「このパスでお願いします」
駅員「はい……入隊おめでとうございます。これからは同じ銀河鉄道株式会社の同僚ですね」
遥「っぁ……ありがとう!」
「ジリリリリリリリリリリリリリリリリン!!……プシューッ」
フワァァアアアアンッ!!シュゥゥゥ……ガタンガタン…ガタン……
遥「ん……あれっ!」ガコッ
遥「お母さぁぁああんっ!!」
近江母「……」
フワァァアアアアンッ!!…… 車掌『この列車は、アルタイル星系を抜けて惑星ディスティニーへと向かいます』
車掌「停車する駅はニョポムとヌカドコです』
車掌『なお途中に、時の結び目付近を通過致します』
車掌『その際には電磁障害の恐れがございますので、窓を開けないようお願い致します』
遥「席は……コンパートメントの……ここかな」ガチャッ
「あ……」ペコッ
遥「お邪魔します……」ペコッ
「……ねえ、時の結び目って何?」
遥「時空の歪があるエリアの事で、遭難事故がよく起こるらしいよ」
「そうなんだ」
遥「……ダジャレのつもり?」
「え?…あ、むっ……」
「......ボクはミア、ミア・テイラー。ミアって呼んでよ」
ミア「旅は道連れ……とか言ったっけ?とにかく、仲良くしようよ」
遥「私は近江遥、よろしくね」
ミア「遥か、よろしく」 ミア「あっ!キミもSDFに入隊するの?!」
遥「キミもって……?」
ミア「ほら、ボク達同期入隊なんだね」スッ
ミア「歳は?」
遥「もうすぐ20歳だよ」
ミア「へぇ~、全然見えないけど……」
遥「え?」
ミア「もっと下かと思ってたよ」
遥「ミアさんは?」
ミア「一つ下」
遥「ほ、本当?!」
ミア「うん……何?変?」
遥「う、ううん……ただ、私より年上だと思ってたから……」
ミア「ボクって年上に見られるんだよね、なんでかな」
遥「生意気だからじゃ……あっいやごめんなさい!」
ミア「なっ?!これでもボクは訓練学校をトップで卒業したんだぞ!?」
遥「う、やっぱり生意気だ……」
ミア「……ムカつくなキミ」
遥「なっ……そっちこそ!」
「「ふんっ!」」 ガラガラッ
車掌「まもなく時の結び目に近づきます。窓を閉めて下さい」
遥「締めたら?」
ミア「そっちが閉めればいいだろ」
車掌「どちらでも結構です……閉めて下さい」
「「……」」スッ
遥・ミア「うわっ?!」
ミア「急に触るなよ!」
遥「そっちが触ってきたんでしょ?!」
車掌「はぁ……」 遥「……あっ」スッスッ
遥(お母さん、お弁当に写真を……)ペラッ
ミア「……ん?」チラッ
遥「……」ジーッ
『かなちゃん!お弁当忘れてるわよ!!』
『あっお母さんごめんなさい!』
遥「ん……」チラッ
ミア「……」zzz
遥「……ふふっ」
……ガタガタガタガタ!!
遥「な、何?」
ミア「ど、どうしたんだよ?!」
『特急550号は機関部の故障により、多少コントロールに不具合が出ていますが走行に支障はありません、ご安心下さい』
遥「支障あるじゃん!機関部を見てくるっ!」タッタッタッタッ……
ミア「ボクも行く!」タッタッタッタッ……
車掌「お、落ち着いて下さい!」
遥「一体何が起こったんです?!」
車掌「列車が、時の結び目に入ってしまったんです」
ゴゴゴゴッ!!
ミア「ひぁっ?!」
ドゴーンッ!!!
「きゃああああああっ!!」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ ━━━銀河鉄道管理局━━━
「特急ハクバ550号、レスキュー要請入電」
「時の結び目付近で、事故が起きた模様」
栞子「空間鉄道警備隊、緊急出動ッ!」
「シリウス小隊に出動許可発令」
海未「システムチェック」
果林「システムチェック、スタンバイ」
愛「軌道通信レーダー異常なし」
「ビッグワン、出場位置へ」
果林「上昇フロート、固定確認」
果林「磁力バリアー発生機関、正常値へ」
愛「エネルギー正常、ボイラー内圧力上昇、シリンダーへの閉鎖弁オープン」
海未「メイン回路接続」
愛「接続」
果林「システム、オールグリーン!」
海未「ビッグワン、発進ッ!」
ビッグワン「フオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 「━━おーい!君達!しっかり!」ユサユサ
遥「ん……っ……ここは」
「惑星ヴィーナスフォート、砂漠の上だよ」
遥「……お、お姉ちゃん……?」
彼方「……」
彼方「私はスペースパンツァーグレネーダー所属、近江彼方」
彼方「君たちが不時着したのを見て救助に来た」
遥「い、一体……」
ミア「SpacePanzerGrenadierって、SDFの中でもエリート中のエリートで編成されてる特殊部隊じゃないか!」
ミア「こんなところで会えるなんて……光栄だよ!」
ミア「ボクたちもこれから入隊するところなんだ」
彼方「……っ、来る」チラッ
彼方「伏せてッ!!」ドサッ
ミア「ひぁっ?!」
……ドゴォォォォンッ!!
彼方「大丈夫?!」
ミア「う、うん……!」
彼方「この列車に光学迷彩はある?」
車掌「は、はい!550号の光学迷彩を作動させます」
550号「……」ビビビ……
彼方「列車と乗客を守るなら、私達が囮になるしか無い」
彼方「君たちもSDFに入隊するなら、私に付いてきて」タッタッタッタッ……
ミア「ほら、行くよ!」タッタッタッタッッ……
遥「う、うんっ」タッタッタッタッ
彼方「乗って!」
ブロロロロロッ!! ……ドゴォォォォンッ!!ドゴォォォォンッ!!
ミア「ひっ?!」
彼方「しっかり掴まって!!」ブロロロッ!!
……キュルキュルキュルキュル
海賊「スペースパンツァーども逃がしゃしねぇ……ブチ殺してやるッ!!」
遥「……私たちは、時空の切れ目に落ちちゃったんだね……」
車掌「そのようです」
遥「いつなの……!」
車掌「五年前にタイムスリップしています」
遥「っぁ……やっぱり……」
ミア「どういう事?説明してよ」
遥「ここは……過去の世界なの」
ミア「What?」 車掌「タイムホールが塞がらないうちに戻れば、元の時間軸に帰れるはずです」
遥「でも……どうやって」
車掌「列車から救難信号が発信され続けています」
車掌「まもなくレスキュー隊が駆けつけてくれるはずです」
遥「お姉ちゃんはどうなるのッ……?!」
ミア「お姉ちゃん……って?」
遥「彼女は……私の姉なの」
遥「五年前、この惑星ヴィーナスフォートで任務中に殉職した……」
ミア「殉……職っ!?」
遥「私のお姉ちゃんは……ここで死ぬ」
ミア「……JOKEじゃ無さそうだな」
車掌「その場合は、銀河鉄道管理マニュアルに従って下さい」
遥「マニュアル?」
車掌「銀河鉄道運行法、第三三条二項、タイムスリップした者は決して過去の事象に介入してはならない」
車掌「あなたのお姉さんの運命を変えてはいけません」
遥「……っ」ギリッ
彼方「運命がどうしたって~?」
車掌「?!いや、な、何でもありません!!」
彼方「よいしょっ……一時間後に脱出する」
彼方「みんな少しすやぴして休んでね」 彼方「……」ジーッ
遥「偵察中?」
彼方「うん……」
彼方「あいつらは宇宙海賊ラブライバーの一味だよ」
遥「海賊……」
彼方「このあたりを荒らし回ってる賞金首なんだ」
遥「他の隊員たちは?」
彼方「駅を守ってる、夜明けとともに一斉に攻撃する作戦なんだ」
遥「……っ……あいつら、気がついてるよ」
彼方「……!」
遥「責めてくるのが分かってて……罠の仕掛けてるんだ……」
彼方「そんなバカな事……」
遥「ほんとなんだよっ……そこでみんな死んじゃうんだ…っ!!」
彼方「落ち着いて」
遥「信じてよお姉ちゃん……っ」
彼方「……またお姉ちゃんって……あなたの方が年上でしょ?」
遥「今は年上だけど……五年前は年下だった……私、遥だよ……」
彼方「はる…か……ちゃん……」
遥「……」
彼方「嘘……でしょ……?」 彼方「本当に……遥ちゃんなの……?」
遥「うんっ……」
彼方「こんなに大きくなって……お母さんは?元気?」
遥「相変わらずだよ」
彼方「遥ちゃんがSDFに入隊するの、反対したでしょ?」
遥「うん……」
彼方「だよねぇ……」
遥「……お姉ちゃん、私達と一緒に……ここを脱出しよ」
彼方「……遥ちゃん、規則を守って」
彼方「その行為は過去への介入に相当する……」
遥「だってッ!!」
彼方「気持ちは嬉しいよっ!?私だって死にたくはないし、ここで死ぬつもりなんて無い」
彼方「けど私はスペースパンツァーグレネーダー、敵を目の前にして逃げるわけには……いかないの」
遥「お姉ちゃん……」
彼方「心配しないの、何とかなるからっ、ね」ニコッ
遥「……」 ━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
ブロロロロロ……
車掌「まもなく、シリウス小隊の到着予想時刻です」
彼方「シリウス小隊……海未隊長が来てくれるんだ!だったら大丈夫だよ」
遥「知ってる人……?」
彼方「覚えてないの?お父さんの銃を届けてくれた人だよ」
遥「……あの人が」
彼方「私の知ってるSDF隊員の中じゃ、ナンバーワンだよ」
遥「へぇ~……」
……ドゴォォォンッ!!キュルキュルキュルキュル……
遥「戦車がっ!!」
彼方「待ち伏せッ?!掴まって!!」キキキキッ!!ブロロロロロッ!!
彼方「遥ちゃん……これを」スッ
遥「……わかった」スチャッ
遥(動いて……撃てないっ……) 海賊「チョロチョロしがやってッ!!」ドドドドドド
ミア「撃ってきたっ?!」
ドスッ!!
彼方「しまっ……タイヤがっ……!!」ギギギッ
遥「崖!!落ちっ!!」
ドサァァァァッ……ドゴォォンッ……!!
彼方「っ……みんな大丈夫?!ここは私に任せて、550号の所へ行ってッ!!」
遥「お姉ちゃんっ!!」
彼方「遥ちゃん」
遥「……っ」
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
彼方「迎えが来たよ、行って、遥ちゃん!!」
遥「……走るよ、ミアちゃんッ!」
ミア「ああ!」 海賊「獲物がどんどん増えてくれて嬉しいねぇッ!!野郎ども、出てきやがれッ!!」キュルキュルキュルキュル……
彼方「……手榴弾だけか……このッ」ブンッ
ピピピピピピ……ドゴーンッ!!
海賊「何?!っうぉおっ……崖が崩れっ……うおあああああああああッッッ!!!━━」
車掌「もう少しで550号着地ポイントです!」
遥・ミア「はぁっはぁっ……」
車掌「550号、光学迷彩を解除!」
遥「っ、お姉ちゃんは……」
車掌「お早くご乗車して下さい!」
遥「お姉ちゃんッ!!」
ミア「遥!!」
彼方「遥ちゃん早く乗ってッ!!」
海賊「ッ…あぁ……舐めた真似しやがって……不時着地点に、砲撃開始ィッ!!」
……ドゴォォンッ!!ドゴォォンッ……!!
彼方「早く!急いで!……うあ っ……」ドゴォォンッ!!
━━━━━━━━━ 海未「550号との連結、急いで下さい」
果林「了解」
━━━━━━━━━
彼方「……っ……パンツァーグレネーダー、攻撃を開始……SDFのレスキュー活動を援助して……ッ」
『了解……新たに出現した戦車部隊へ砲撃を開始』
……ドゴォォォォォォォォンッ!!
『……敵戦車の9割を破壊、攻撃を続行する』
彼方「了解ぃ……っ」ヨロヨロ
━━━━━━━━━
果林「連結完了しました、隊長」
海未「直ちに550号を牽引して脱出します」
海未「ビッグワン、発進ッ!!」
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 彼方「遥ちゃん、受け取ってッ……!!」シュンッ
遥「あの時のボール……?!」パシッ
彼方「またいつかやろーぜ……」
遥「お姉ちゃぁぁん!なんでっ?!」
彼方「私は……その列車に乗るわけにはいかない……」
彼方「運命は自分の力で変えられるはずだから……っ」
彼方「私は……それに賭けてみるッ」
遥「っ!!お姉ちゃんうしろ……危ないッ!!」
海賊「チィ……!」バキュゥゥンッ!!
彼方「 っぁ……」
遥「お姉ちゃ ぁ っ 」
彼方「っぅ……」ドサッ
遥「お姉ちゃぁぁんっ!!何するの離してッ!!離してよぉっ!!」ポロポロ
海未「……」ガシッ
遥「お姉ちゃんっ!!おねぇちゃぁぁ゛あ゛あ゛ん゛っっっ!!!」ポロポロ 彼方「くっぅ……こんな……はずじゃ……私は……こんな……っ」
彼方「だいじょうぶ……遥ちゃんと……約束したんだ……彼方ちゃんは……こんな所でくたばったり……」
彼方「……遥ちゃん……あなたは……いきて……っ」
彼方「っぁ……はるかちゃんの……おべんと」スッ
彼方「……」モグモグ
彼方「……おいしい……な……おかあさんの……おにぎり……」
彼方「……」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 「一同、セツナ総司令に敬礼ッ!!」
「「」」ピシッ
ミア「あれが銀河鉄道管理局総司令、セツナ・ディスティニーだよ」
遥「あれが……」
セツナ「空間鉄道警備隊に、新しい隊員のみなさんが入隊してくれました」
セツナ「銀河鉄道が滞りなく運行できるよう、皆さんに期待しています……」
遥(お父さん……お姉ちゃん、私……やっとここまで来たよ……!)
セツナ「……」
遥(わ、私?なんで私を見るの……?)
セツナ(遥、あなたが来るのをずっと待っていました……)
遥「!!」
《次回予告》
遥「私は、シリウス小隊へ配属された」
遥「だが隊長の園田も隊員も……私には冷たい」
遥「果林さん、どうして私を目の敵にするのっ?!」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 人には、容易に曲げることのできない想いがある
胸に秘めたそれは、時に相容れず人と人とのぶつかり合いを生み出していく
遥「……」タッタッタッ
遥(……ここが)タッタッ……スッ
【控室001】
遥「……」ポチッ
ピシューッ
遥「今日からシリウス小隊に配属になった、近江遥ですっ」
遥「皆さん……よろしくお願いしますっっっ!!……ぁ」
ミア「……」ヤレヤレ
愛「……」ジロッ
果林「……」ジロッ
遥「……っ」ゴクッ
《第三話 運命の動輪》 「━━早くしろってんだろォォ!!」
遥「……」
「さっさと金持ってこねえと……コイツぶっ殺すぞォッ!!」バキューンッ!!
「きゃぁぁぁあああぁっ」!!
遥「……っ」
「ただの脅したと思ってんじゃねェぞ……っ」スチャッ……
遥「……このぉぉぉおっ!!」タッタッタッ!!
「うォッ?!」バキューンッ!!
遥「あぁあっ!!━━」
遥「っ……うぁ……」ドサッ 『訓練者が死亡しました、シチュエーションを終了します』
果林「……はぁ」ドンッ
果林「あなた、これでいくつ命を無くした?」
遥「三回……です」
果林「本当の命は、一つしか無い」
果林「シミュレーションだと思って、甘えてんじゃ無いわよ」
遥「……っ」
果林「たとえ隊長命令でも、やる気のない新入りの訓練に付き合う気なんて、私は最初か無いわ」
果林「さっさとエマに治療してもらいなさい」
遥「……」ギリッ
遥(医務室はここかぁ)コンコン
「はい、どうぞ~」
遥「あれ……エマさん?」
エマ「お待たせしました~」ヒョコッ
遥「きゃあっ?!」
エマ「近江さん、あんまり無理しないでね?」シュルシュル
遥「……うん」 愛「これがマニュアルね、頭に入れといて」
ミア「Thanks」
ミア「hmm……」スタスタ
ドスッ
ミア「っ……たた……HEY!!」ドサッ
果南「うお、ちゃんと前見ないとダメじゃん」
ミア「急に出てきたのはそっちじゃないか!」
果南「ん……っあっはっはっはっはっはっ!!」
果南「おいおい、宇宙一の猛者、泣く子も黙るSDFのベガ小隊だよ私達」
ミア「っ……」
千歌「ん?あ!シリウス小隊の新入りさんか~!」
曜「威勢良いじゃん、ベガ小隊に来る?」
「「っはっはっはっはっはっ!!」」
ミア「そ……そうだね、シリウス小隊をクビになったら、考えてみるよ」
果南「はっはっはっ!こりゃいいや!」
「「っはっはっはっはっはっ!!」」
ミア「うぅ……」タッタッタッ
ミア(なんなんだよあいつら……)
ミア「……ん、シミュレーションルームにまだ誰かいる?」 遥「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
ミア『熱心だね、遥』
遥「はぁっ……ミアちゃん?」
ミア『手伝おうか?ボク今日の訓練はもう終わりなんだ』
遥「ちょっと……待ってて、今そっち行くから」ヨロヨロ
ミア「……えっ」カタカタ
ウィーンッ
ミア「こんなHigh Levelでやってるんだ……」
遥「えっ?う、うん……その方が上達が早いかなって」
ミア「へぇ~、意外と考えてるんだ」
遥「訓練学校を主席で卒業した人に、置いて行かれないようにね」
ミア「Ah……Sorry、ただボクは……むしろボクの方こそ置いていかれそうだったから、頑張らないとなって思っただけで」
ミア「それにschoolの成績なんて現場に出たら関係ないよ」
遥「……うん、ありがとう」
遥「……今日はもうやめにするよ」カタカタ
ミア「じゃあ、この後コーヒーでも」
遥「……今日はやめとく」 遥(あんな上級者用の設定になってるなんて……知らなかった)
遥(果林さんはどういうつもりで……)
遥(私を上達させるため?ハイレベルになってるのに気づかなかった?)
遥(それとも……)
【Private Room:Umi Sonoda】
遥「……っ」スッ
遥(いや……今はまだ)
遥「……」タッタッタッ
〈EMERGENCY〉
「緊急入電、イエトラ・マサイ線、特急620号車内で立てこもり事件発生」
「犯人は乗客数名を人質にしている模様」
「SDF出場要請受信」
栞子「スピカ小隊に出動命令、現状把握及び現状把握に向かえ」
『スピカ小隊、了解』 遥「……」トボトボ
モエカ「ちょっと、あんた!」
遥「……っえ?」
モエカ「あんただよ、あんた!」
遥「……わ、私?」
モエカ「ほい、これ!」
モエカ「疲れてる時には牛乳が一番効くんだよ」
モエカ「辛気臭い顔してんじゃねーよ、まっそれでも飲んで元気出しな!」
遥「は、はあ……」
モエカ「あんた近江ちゃんとこの娘っしょ?いやーお父さんに似て良い面してるねぇ~」サワサワ
遥「あっちょっと……あの!」
モエカ「今夜さぁ一緒に……」サワサワ
遥「あぁっ、ちょっ……」
インコム「ピーッピーッピーッ……」
遥「は、はい!こちら近江!」
『緊急出動要請です、すぐに戻ってきて下さい』
遥「はいっ!」キュポッ
遥「んっんっんっんっ……」
遥「お姉さんありがとねっ!!」タッタッタッ
モエカ「気ぃ付けてねぇ!」
???「……」ジーッ 海未「システムチェック」
果林「システムチェック、スタンバイ」
遥「素粒子ワープ走行発生機関、異常なし」
ミア「軌道通信レーダー、異常なし」
『ビッグワン、出場位置へ』
果林「上昇フロート、固定確認」
果林「磁力バリアー発生機関、正常値へ」
愛「エネルギー正常、ボイラー内圧力上昇、シリンダーへの閉鎖弁オープン」
海未「メイン回路接続」
愛「接続!」
果林「システム、オールグリーン」
海未「ビッグワン、発進!」
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 海未「事件が起こっているのはイエトラ・マサイ線、特急620号車内」
海未「犯人の要求は別れた恋人を連れてくる事です」
━━━━━━━━━
「はやく連れて来ォいッ!!」
車掌「ああ、あの……とにかく、落ち着いて……!お客様に乱暴は……」
「うるせェッ!!列車を止めんなよ?!止めたらこいつら全員道連れだからなぁッ!!』
絵里「SDFも舐められた物ねぇ……索敵開始」
きな子「はいっす」
━━━━━━━━━
海未「情報収集にあたっているスピカ小隊の報告では、犯人は正常な判断力を失っています」
海未「人質の安全を第一に考えると列車を止めるのは危険です」
海未「私達が乗り移ったと知られるのも避けたい」
海未「……そこで、今回の計画です」 海未「ミアは犯人の恋人の役をして先頭車両へ乗り込んでください」
ミア「Okay」
海未「愛、一緒に行動をお願いします」
愛「はい」
海未「二人でできるだけ時間を稼いでください」
海未「その間に、ビッグワンは犯人に気づかれないよう後方から620号に接近します」
海未「果林、遥。620号に乗り移って下さい」
遥「はいっ」
海未「車内では二人共速やかに立てこもり車両まで移動、タイミングを見て前後のドアから一斉に突入、犯人を確保します」
海未「私はここに残り全体の指揮を取ります」
「「了解」」
果林「遥と一緒に乗り込むのはごめんよ」
遥「なっ……」 果林「一人でやるわ」
遥「っ……どうして私をそんなに目の敵にするんですか!」
遥「私、何か悪いことしましたか?!」
果林「……はっきり言わせてもらうけど、私はあなたが嫌いよ」
果林「父親が隊長で、姉がパンツァーグレネーダー……」
果林「意志を継ぐとかなんとか、そんな事言って出てきたんでしょうけど」
果林「ここは憧れだけでやっていけるような場所じゃないわ」
果林「生憎だけど、甘ちゃんに預ける命なんて持ち合わせてないわ」
遥「……大変さは分かっているつもりですッ!!」
ガシッ!!
果林「何がわかるってェ?!新入りのあなたにSDFの何がわかるのッ!!」
海未「辞めなさい、果林!」
果林「っ……隊長」
海未「計画に変更はありません」
海未「620号と接触するまであと68分です。各員第一級装備着用、スタンバイ!」 絵里「こちらスピカ小隊、ようやく到着ね」
海未「情報索敵、感謝します」
絵里「……じゃあ、後の事は頼んだわよ?」
絵里「シリウス小隊に、ご武運を」
海未「スピカ小隊よりデータ引き継ぎ完了、シリウス小隊はこれより作業を開始します」
「「了解」」
愛「戦闘機、発進準備完了」
海未『発進!』
バシューゥゥゥ……
━━━━━━━━━
「?!……何?!」
愛『ひなきを連れてきた、これからそっちに乗り込むからシールドを開けて』
「やれよ……早くゥッ!!」
車掌「は、はひ!」カチッ
車掌「こちら620号……銀河鉄道管理局、シールドを開けて下さい……っ!」
……バリバリバリビビビ……
愛「よーし……このあたりで、行けそう?」
ミア「うん」
愛「じゃあ私が先に行くから、ミアちゃんは怖がるふりをしてなるべく時間を」
ミア「ああ、わかった」 ━━━━━━━━━
果林「乗り込むわよ」スッ
遥「はいっ」
果林「……」スタッ
遥「……」スッ
遥「あっ……あぁっ!!」ツルッ
果林「っ……」ガシッ
遥「……ありがとうございました」
果林「ありがとうじゃないわよ、足手まといになるようなら帰って」
遥「……帰りませんッ!!」
果林「二度目は無いわよ……」
『果林と遥が乗り込みました、芝居は終わりですミア』
ミア「OK……」スッ……スタッ
愛「よし、行くよ」
「乗り込んだな……」
車掌「銀河鉄道管理局!し、シールドを戻して下さい!」
……バリバリバリビビビ……
「余計な事すんなって言っただろうがァ!!」
車掌「し、しかし」
「てめえ!!」スチャッ
車掌「ひぃぃっ、すいませぇえんっ!!」ガクガク
果林「……あと4両……」タッタッタッ……
遥「……っ」 ミア「ふぅっ、ちゃんと足がすくんでるように見えたかな?」
愛「本当に怖くて渡れなかったんじゃないの~?」
ミア「ふっ、そんな訳ないだろ?」
愛「あははっ、さ、行こう」
ミア「うん」
━━━━━━━━━
果林「……配置に付きました」
『待機しろ』
「なんで来ないんだよ!!もうこの列車に乗ってるんでしょッ?!」
車掌「わ、私ちょっと見てきます!」
「お前はダメだァッ!!」スチャッ
車掌「ひぃっ……」
遥「っ……」
果林「……愛、まだ?」
愛「あと一両ッ……」タッタッタッ
「うっ…うぅ……オギャアッ!……オギャアッ!」
「うるせぇ!!黙らせろ!!」
母親「ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!」
「あっァァっ!!!!!!そのガキ黙らせろッ!!!!」「イ゛ヤ゛ァ゛ッ゛!!!返゛してェェェッ!!」 愛「入った!」
『分かりました、30秒後に突入します』
果林「……」コクッ
遥「……」
「離してェ゛ッ!!その子を返してェ゛ェ゛エっ!!」「馬鹿な真似は辞めなさい!!」「うるせえっ!!そのガキ黙らせてやるッッッ!!」
遥「!!」
「おい来るなッ!!来るんじゃねェッ!!…お前も殺すぞッッッ!!!」
遥「くっ……」ダッ
果林「遥ッ!!」
ウィーンッ
遥「あぁぁぁああああああっ!!!」ダッダッダッダッ
果林「ッ……」スチャッ
「えぇ…ぇえ、SDF?!」
「来るなァアっ!!コイツをぶっ殺すぞぉぉおッ!!」
遥「辞めろぉぉぉおおおおおッ!!!」
果林(馬鹿ッ!射線に入ったら……ッ)
バキュゥゥゥンッ!!……━━ 「っぁぁあ……い、痛てぇ……」
遥「はぁっ……はぁっ……確保っ……」ガシッ
ミア「遥……」
果林「……乗客の皆さん、もう大丈夫です。落ち着いてゆっくり、後方の車両に移動して下さい」
愛「ほら、遥」スッ
遥「っぁ……」スタッ
愛「あんな無茶して……大丈夫?」
果林「遥」
愛「カリン?」
遥「?……」
ボコッ!!
遥「うぁっ……」ドサッ
果林「SDFは、死ぬための隊じゃないッ!!自殺志願なら他へ行ってッ!!」
遥「……っ」
エマ「乗客の皆さんの手当はすべて……遥ちゃん?!動かないでねッ!今手当するから……」シュタタッ
遥「……」ギリリッ
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 果林「撃てない?」
海未「はい」
海未「……LL415、一昔前にSDFで採用していたモデルです」
海未「そして遥の銃は、私の前任の近衛隊長が使っていた物なんです……」
果林「……バカッ」
遥「……」プシューッ
ミア「遥!」
愛「お、帰ったね」
遥「戻りました!」
ミア「怪我はもう大丈夫なの?」
遥「うん。さすがはSDF、最先端の医療技術だよ」
果林「━━いくら最先端でも、死んだ人間は生き返らない」スタスタ
遥「っ……」
果林「……」スッ
遥「……拳銃……何ですかいきなり」
果林「使いなさい、撃てない銃なんて……気休め以下よ」
遥「……要りません。人を助ける仕事に銃は必要ないです」
果林「理想だけでやっていけると思ってるなら、さっさとSDFを辞めなさい」
果林「……残りたいなら、これを持つ事よ」
遥「……わかりました、持ちます」
遥「でも……私は使いませんっ!」
果林「っ……」スタスタ……
果林(いつか必要になる時が来る……生きるために)
果林(それが……宇宙の掟よ)
すれ違う二つの思いは、どこへ向かって走るのか
終着駅は、まだ誰にも見えない 『アルファ・ケンタウリにイレギュラー発見』
『認識番号なし、所属不明……』
???「カタンカタン……カタンカタン……ヒュォォォォオオオオオオッ」
《次回予告》
遥「三ヶ月に一度しか夜の来ない惑星」
遥「終点の無い漆黒の列車……」
遥「闇に向かう旅路の果てには」
遥「次回第四話、永遠という名の……」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 「カタンカタン……カタンカタン……」
昔、遠い星で戦争があった。漆黒の列車が現れ、死者を乗せていった。
ノーイグジット・オリオン線で大事故があった時も、疫病が流行った時も、漆黒の列車は現れ……大勢の死者を乗せていった。
《第四話 永遠という名の……》
車「シュオォォオオ……キィィッ」
かのん「……」スタスタ
ありあ「……お、お姉ちゃん待って!!お姉ちゃんっ」トタトタ ありあ「どこ行くの?!可可さんはもう……」
かのん「……っ」
ありあ「こんな事して何になるの……?」
ありあ「来るわけないよ!幽霊列車なんて……」
かのん「来るよ!ひと目だけでも……クゥクゥちゃんに会いたいの」
かのん「ありあ、もう帰ってッ!!」
ありあ「嫌っ!お姉ちゃんが居るなら私も居るっ!」
ありあ「……ぐすっ……ギター置いてっちゃうなんて……」
ありあ「歌で世界の人を幸せにするって願いはどうしちゃったの……?」
かのん「……おっきな声だしてごめん」
かのん「でもっ、クゥクゥちゃんに会うにはこうするしか無いの」
かのん「いい?惑星シブヤウスは2つの太陽の周りを八の字に回る、夜のない昼の惑星なの」
かのん「でも軌道の関係で三ヶ月に一回夜が訪れる……わずか10分の夜が」
かのん「幽霊列車は、その時来る」
かのん「……夜だ」
「……ファァァァン!」
かのん・ありあ「「!!」」 「カタンカタン……カタンカタン……ヒュォォォォオオオオオオッ」
かのん「来た……っ」
ありあ「お姉ちゃん……?!」
「キキキッ……プシューッ」
かのん「クゥクゥちゃん……っ」ヨロヨロ
ありあ「嘘でしょ……お、お姉ちゃん!待って!」
「プシューッ」
ありあ「待ってよ!お姉ちゃっ」ガシッ
ビビビビビッ……
ありあ「うぁっっっ?!」ドサッ
「ファァァァァアンッ!!ゴゴゴゴ……カタンカタン……カタンカタン……」
ありあ「お姉ちゃん待って!!」タッタッタッ……
ありあ「……そんな……お姉ちゃん……っ」 【銀河鉄道管理局】
「知ってるぅ?オリオン線に出た幽霊列車の話」
「な、何?それ……」
「霊界行きの特別列車、乗ったら最後もう戻ってこられないの……」
「真夜中のプラットフォーム、真っ黒な列車がスーッと止まると、白い手が手招きして……おいでぇ、おいでぇ~って」
「きゃあああっ!!」
遥「……」ゴクッ
ミア「遥」トントンッ
遥「きゃぁあああっ?!?!」
ミア「わっ?!な、何ぼんやりしてるんだよ」
遥「い、いや……その」 ミア「幽霊列車?っ……ふふっ、HAHAHAHAHA!!」
ミア「本気にしてるのっ……SoRry……ふふふっ……」
遥「そ、そういう訳じゃないけど……」
ミア「SDFの隊員が、幽霊列車っ……HAHAHAHAHAっ!!」
遥「そういう方こそ、こういう話好きなくせに……」
ミア「ボクが?Oh……hahaHaHAhAHAHAHAっ!!そんな訳ないだろ!!HAhAHAHAHAっ!!」ゲラゲラ
遥「っ……うぅ……///」
「ピンポンパンポーン……シリウス小隊各員は、ブリーフィングルームへ集合して下さい。シリウス小隊各員は、ブリーフィングルームへ集合して下さい」
ミア「おっと、じゃあ先行ってるから!」タッタッタッ…
遥「あっ……ちょっと、ミアちゃん飲み終わったコップ!……あぁっもう……」カチャカチャ 果林「……遅いわねー」
愛「迎えに行ってあげたら?」
果林「はっ、論外」
プシューッ
海未「遅いですよ」
遥「す、すみません!」
海未「では続けます。目撃者の話によると、問題の列車は漆黒のボディにダブルヘッドライト」
海未「型番は不明ですが、試作段階で運用中止になった開発ナンバー138号に似ています」
海未「行方不明者は澁谷かのん、20歳」
海未「三ヶ月前、廃線となったアルファ・ケンタウリ線のホームから列車に乗り込み失踪しました」
海未「私達の任務は澁谷さんの捜索、及び不審車両の捜査です」
海未「何か質問はありますか?」
遥「……何の話?」コソコソ
ミア「聞いてなかったの?さっき話した幽霊列車の事だよ」
遥「えぇ……!?」 愛「その不明列車の出現場所は?」
海未「報告があったのはノーイグジット・オリオン線、アキバラン環状線、そして……このアルファ・ケンタウリ線です」
愛「なんで三ヶ月もほったらかしに?」
海未「三ヶ月に一度しか夜が来ないんです、列車は夜しか現れないらしく……」
愛「よっ……ほっ」パシッ
愛「オモテ……まさに幽霊列車だね」
ミア「……ねえそのヘラみたいなの……何?」
愛「もんじゃのコテだよ、愛さんの幸運の女神なんだ~」
ミア「幸運の女神が……コテ……」
果林「目撃者は?」
海未「澁谷ありあ18歳、行方不明者の妹さんです」
果林「一人だけ?」
海未「そうです」
果林「クサいわねー、その妹」
遥「……どういう事ですか?」
果林「幽霊列車に乗って行方不明、ねぇ」
果林「きっとその辺から死体が見つかるんじゃないかしら」
遥「ははっ、まさか」
果林「あなた、本当に甘ちゃんね」
遥「なっ……」 海未「では各自、配置についてください」
「「了解」」
遥「りょ、了解!」
スタスタ……
海未「遥」
海未「遅刻はしない事、良いですね?」
遥「す、すいません!」
果林「行くわよ、お嬢ちゃん」
遥「むぅ……」 海未「システムチェック」
果林「システムチェック、スタンバイ」
「ビッグワン、出場位置へ」
果林「上昇フロート固定確認」
果林「磁力バリアー発生機関、正常値へ」
愛「エネルギー正常、ボイラー内圧力上昇。シリンダーへの閉鎖弁オープン」
海未「メイン回路接続」
愛「接続」
果林「システム、オールグリン」
海未「ビッグワン、発進ッ」
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」 遥(幽霊列車かぁ……)
遥(お姉ちゃんが乗ったのも……)
遥(……っ、まさか)ブンブン
ミア「どうかした?」
ミア「列車酔い?」
遥「……ううん、なんでも無い」
遥「あっ!ミアちゃん自分の食器くらい自分で片付けてよ!」
ミア「Oops!sorry、いつもの癖で……」
遥「癖?!」
ミア「な、なんでも無い!」
遥「いつも誰かに片付けさせてるの?!」
ミア「う、うるさい!今日たまたま忘れちゃっただけだよ!」
果林「……ふふっ」
エマ「もうすぐ惑星シブヤウスです」
海未「そろそろですか」 「シュッシュッシュッ……シュッ……キキーッ……プシューッ」
「「……」」ゾロゾロ
果林「ひどい所ねぇ……えっほ…えほっ……」
愛「もう10年も前に廃駅になってる所だしねぇ」
愛「計算によると、列車出現時刻まであと5分と11秒」
果林「それ、何の計算よ」
愛「目撃者の話に日時の経過と軌道の修正を加えたんだけど、賭ける?」
果林「辞めとくわ。愛にいくらむしり取られたかわからないもの」 ミア「……踏み荒らされててよくわからないよ」
遥「うん……聞き込みをするにも無人の惑星だし……」
ミア「……ん、何かあるよ」スタスタ
遥「これは……数字の8?」
ミア「Nope、Infinityの記号さ。無限大とか永遠とか……そんな意味だよ」
遥「へぇ~」
「それはお姉ちゃんが描いた物です」
遥・ミア「「!!」」
ミア「澁谷アリア!確かカノンの妹の……」
ミア「お姉さんはどうして列車に?」
ありあ「それは……」
遥「ミアちゃん見て!マークが!」
ミア「え?」
「……ファァァァン!」
一同「「!!」」
果林「嘘でしょ……」
愛「あれが幽霊列車!」
果林「どこのホームに……まさかッ」
海未「まずいです!このままではビッグワンに!!」
「キキィィィ……!!」
愛「あぁっ!!」 「ガタン……ガタンガタン……」スルスル
果林「透けて……る?」
愛「どうなってるの……?!」
「プシューッ……ガコンッ」
遥「止まった……」
ありあ「……っ」タッタッタッ
海未「危険です!止めて下さいッ!」
遥「ありあさんっ!」タッタッタッ
愛「待った!!」ガシッ
ありあ「嫌ぁっ!!」
遥「……っ」スタッ
ミア「遥!ボクも行くっ!」スタッ
「ファァァァン!」プシューッ
愛「ドアが……!」
果林「遥!?ミア!!待ちなさいッ!!」タッタッタッ…ガシッ
ビビビビビッ……
果林「っっっ……くっ」ドサッ
海未「……っ」
果林「……消え……た!?」
海未「……出発します、二人を追いますよッ!!」キッ
「「了解ッ!」」 ミア「━━……っ……ん……」
遥「み、ミアちゃん……起きた?」
ミア「ひゃっ?!どっどこ触ってるんだよ?!早くどいて!」
遥「重くて動けなっ……」
バシッ
ミア「なんてこと言うんだ……!」
遥「ったた……」
ミア「……それにしても」
遥「……普通の列車だね」
ミア「乗客に聞き取りを」
遥「うん」
ガラガラッ
遥「すいません、どちらまでいらっしゃるんですか?」
「この列車に終点はありません、いつ降りるかは自分自身が決めること」
ミア「あなた達は?」
「降りたくないんだ」
ミア「ええ?」
「もう少し見ていたいんだ、僕たちのいた世界の事を」 遥「この人を探してるんです、見かけませんでしたか?」
「さあ、乗ったかもしれないし、乗っていないかもしれない」
「私にはわからない」
遥「……」
『次は狭間の駅、狭間の駅です』
遥「車掌室へ行こう」
ミア「うん」
ガラガラ……
旧型車掌「入ってきては行けません、ここは車掌室です」
遥「私はシリウス小隊の近江遥です、この列車の認識番号は」
旧型車掌「認識番号はありません」
ミア「行き先は?」
旧型車掌「次は狭間の駅です」
ミア「そうじゃなくて、どこに向かっているか知りたいんだよ!」
旧型車掌「決まった行き先はありません」
遥「なんなの……この列車」
旧型車掌「質問の意味がわかりません」
ミア「無駄だよ遥、プログラム以外の質問には答えられないんだ」
ミア「それよりカノンを探さなきゃ」
遥「そうだね……」 かのん「居ない……」スタスタ
ガラガラッ……ガラガラッ……
かのん「……クゥクゥちゃんっ!!」
可可「!!」ダッ
ガラガラッ
かのん「ちいちゃん待って!!」
ガラガラッ……ガラガラッ……
「……」
かのん「クゥクゥちゃん!クゥクゥちゃんなんでしょ?!」
かのん「……クゥクゥちゃん……」トボトボ
【食堂車】
かのん「……」
「お客サマ、ココアはいかがデスか」
かのん「ん……?!」スッ
可可「ついに来てしまったのデスね……」
かのん「クゥクゥちゃん?!今までどこに……」
可可「カノンはバカです、どうしてこんな所マデ……」
かのん「会いたかったの、もう一度……どうしてもクゥクゥちゃんを見たかったんだ」
可可「ナゼです?!クゥクゥはもうこの世に居ないんデスよ……?」
可可「会ってどうするん「クゥクゥちゃんっ!!」
かのん「そんな事……言わないでよ……」ギュッ
可可「……っ」 かのん「あれからずっと眠れなくて……クゥクゥちゃんの声や姿が……忘れられないの━━」
可可「じゃあまたデス、バイバイ!」
かのん「うん、またね!」
かのん「……クゥクゥちゃん!」
可可「ハイ?」
かのん「日曜日!来てくれるよね……?」
可可「ハイ!もちろんデス!」
……ブロロロロッ!
かのん「クゥクゥちゃん……?!クゥクゥちゃんッ!!」
可可「キャぁぁあっ!!━━━」
かのん「これを渡すつもりだったんだ……」パカッ
可可「……!!」
かのん「渡しに来たよ、クゥクゥちゃん」スッ
可可「デスが……」パッ
かのん「クゥクゥちゃん、もうどこにも行かないで」ギュッ……スッ
可可「……っ……ごめんなサイ、カノン……」
可可「会うのが怖かったんデス……でも、降りたらもう二度と会えないって……」 ガラガラッ
遥「SDFの隊員です。かのんさんですね?捜索願が出ています」
ミア「ボク達に同行を」
かのん「っ……あなた達は生きてるの?」
遥・ミア「「……?」」
かのん「生きてるんだよねッ?!」
かのん「帰って!!この列車は死者の物だからッ!!」
遥「いっ生きているあなたを、連れ戻しに来たんです!」
ミア「アリアがキミの事を心配してるんだ」
可可「……」
バンッ!
遥「何?灯りが……かのんさん?!」
ミア「こちらTaylor、カノンを発見!……隊長?園田隊長?!」
ミア「繋がらない……?!」
遥「そんな……こちら近江……まさかっ!!」スッ
ミア「どうしたの?」
遥「時間が……止まってる」
ミア「WHAT?!」 果林「新人が勝手な行動を……ッ!」
果林「管理局に連絡を取りましょう」
海未「すぐに繋いでください、セツナ総司令に話があります」
『ズザザッ……近江遥の事ですね』
海未「はっ!実はミアも一緒です。連絡も取れず、向こうから報告も……」
『霊界と現世をつなぐエターニティー号、どんな時刻表にもダイヤグラムにも載っていない特別列車です……』
『あの列車を止めるすべはありません』
海未「い、いえしかし、遥とミアが……」
『自分の意志で行動したのです、運命に任せなさい』
海未「そんな事はできません!」
『運命の糸をたどりなさい、言えるのはそれだけです……』 愛「隊長ッ!軌道レーダーに反応が!」
海未「メインモニターに出力して下さい!」
愛「また消えちゃう……っ、あぁっ!」
エマ「心配いらないよ、お姉さんは必ず見つかるからね」
ありあ「っ……」
愛「この先です、反応が消えたのは……」
海未「目標地点まで急いで下さい」
愛「ねえカリン、無事返って来られる方に1000ラブカ」
果林「……それ、帰って来られなかったらどっちにしろパーじゃない!!」
愛「だよねぇ……」
愛「……見えたッ!」
海未「出力最大!なんとしても見失わないで下さいッ!」
ゴゴゴゴ!!
果林「この揺れは?!」
愛「っ……出力低下!これ以上は近づけません!」
愛「っあ……前方の空間に駅のような物が!」
果林「……あそこに止まるのかしら」
海未「……そこへ向かいましょう」 「キキィィィ……ガコンッ」
かのん「行こう、クゥクゥちゃん」
可可「ハイ……」
遥「止まった……?」
乗客達「「……」」スタスタ
遥「あの、どこへ行くんですか?この駅は?!」
「狭間の駅だよ、もう列車に乗るのも飽きた」スタスタ
遥「君は?」
「お母さんが迎えに来てるの、ほら」ユビサシ
遥「お母さん……?」チラッ
遥(影しか見えない……)
ミア「カノンは?!」
遥「えっ?女の子は?」
ミア「何言ってるんだ!?早くしないと逝ってしまうぞッ!!」 かのん「クゥクゥちゃんの事もう離さない、永遠に一緒だよ」
可可「嬉しいデス……」
遥「逝っちゃだめっ!!」タッタッタッ
ミア「待って!」
かのん「何しに来たのッ?!」
遥「その改札を通ったら、あなたは死んでしまうんだよね?!」
遥「もう帰ってこられないんだよ?!」
遥「どうして命を捨てようとするのッ?!」
ミア「キミは生きているんだよ!?残されるありあはどうなるんだ!」
かのん「っ……ありあには、私は死んだと伝えて」
ミア「そんな勝手な事ッ!」
可可「あなた達に何がわかるというんデスか!!」ガシッ
遥「ミアちゃんっ!」
可可「カノンを取らナイでっ!」グイッ
ミア「は、離してよぉっ!」
可可「ここは死者の世界デス、可可が手を離さなければあなたは死にマス!」
遥「ッ!!やめてっ!!」バシッ
かのん「……」スチャッ
遥・ミア「「!!」」
かのん「行って、私達の邪魔しないで!!」 「フォオオオオオオオオオオッ!!」
一同「「「!!」」」
遥「このっ!」バシッ
かのん「あぁっ!!」
カラカラカラ……
「シュッシュッシュッ……キキィッ……パシューッ」
海未「二人共!」
果林「何やってるの!!ミア、遥ッ!」
ありあ「お姉ちゃんっ!!」タッタッタッ
ありあ「お姉ちゃん逝かないで……お姉ちゃんには夢があったじゃない!」
ありあ「歌で皆を幸せにするって……その夢はどうなるの?」
ありあ「私やお母さんはもう要らないの?!」
かのん「……」
可可「……っ」
かのん「ごめんありあ、もう逝かなくちゃ」
ありあ「お姉ちゃんっ!!」
かのん「私のことは、もう忘れて……」
ありあ「嫌だよっ!!」
ありあ「お願い可可さん、お姉ちゃんを連れて逝かないで」ギュッ
ありあ「冷たい……っ、こんな冷たい手でお姉ちゃんを抱くの……?」
可可「━━!!」 ありあ「そんなにお姉ちゃんを愛してるの……?」
可可「っ……」ダッ
かのん「クゥクゥちゃんッ!?」
可可「カノン……ありがとう」
かのん「クゥクゥちゃん……?」
可可「もう良いんデス」
可可「カノン、ここまで来てくれてありがとうございマス」
可可「可可は、もうそれだけで十分デス……」タッタッタッ…
「プシューッ……フワァァァァァアンッ!!」
かのん「待って!クゥクゥちゃんッ!!」
かのん「クゥクゥちゃん!!」
可可「可可は幸せデス!カノンが幸せ届けてくれたカラ!」
かのん「クゥクゥちゃん!!逝かないでぇっ!!」
可可「さようなら、カノン!お幸せにっ!……」
かのん「クゥクゥちゃぁぁぁああんッッッ!!」
「ガタンガタン……ガタンガタン……ガタン……」
運命という車輪の下で、人は愛し、憎み、やがて去っていく。
行く先を知るものは誰もいない。
ただ、永遠という名の旅人だけがそれを知っている。
別れもまた、愛の形なのだと。 かのん「~~♪」
「「「━━!!」」」ガヤガヤパチパチ
ありあ「シリウス小隊の皆さん、あれから姉は旅に出ました」
ありあ「旅先から手紙が届く度に少しずつ自分を取り戻しているように感じるんです」
ありあ「あの時、姉を止めてくれてありがとうございます」
遥「ねえミアちゃん、運命って何なのかな」
ミア「Hmmm……分からないよボクには。でもあの二人は元気でいる。それだけで良いんじゃないかな」
遥「……そっか」
「ガタンガタン……ガタンガタン……」
「……ピ…ピ…ピ…ピ…ピピピピピピピピピッッッ━━」
《次回予告》
遥「惑星カノ・グランデ。プラズマ蠢く空、乾いた大地」
遥「囚われの身となった愛」
遥「管理局からは……ビッグワン破壊命令が」
遥「あなたはあの時、お姉ちゃんを殺したッ……?!」
遥「次回第五話、ビッグワン強奪」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 >>56
修正
「一同、ナナ総司令に敬礼ッ!!」
「「」」ピシッ
ミア「あれが銀河鉄道管理局総司令、ナナ・ディスティニーだよ」
遥「あれが……」
ナナ「空間鉄道警備隊に、新しい隊員のみなさんが入隊してくれました」
ナナ「銀河鉄道が滞りなく運行できるよう、皆さんに期待しています……」
遥(お父さん……お姉ちゃん、私……やっとここまで来たよ……!)
ナナ「……」
遥(わ、私?なんで私を見るの……?)
ナナ(遥、あなたが来るのをずっと待っていました……)
遥「!!」 >>66
修正
━━━━━━━━━
「はやく連れて来ォいッ!!」
車掌「ああ、あの……とにかく、落ち着いて……!お客様に乱暴は……」
「うるせェッ!!列車を止めんなよ?!止めたらこいつら全員道連れだからなぁッ!!』
絵里「SDFも舐められた物ねぇ……索敵開始」
璃奈「はい」
━━━━━━━━━ >>95
修正
果林「新人が勝手な行動を……ッ!」
果林「管理局に連絡を取りましょう」
海未「すぐに繋いでください、ナナ総司令に話があります」 惑星、カノ・グランデ。大気に暑いプラズマ層を持つこの地は、鉱物資源が豊富な場所として有名である。
今日もまた、プラズマホールを抜けて銀河鉄道の無人貨物が飛び立っていく。
「カタンカタン……カタンカタン……」
ドゴォォォンッ!!
「キィィィィイッ!!」
【銀河鉄道管理局】
「!!……惑星カノ・グランデにて大気圏内上昇軌道の爆発、損壊を感知!」
「走行中の534号が軌道より惑星地表へ墜落しました」
栞子「空間鉄道警備隊、シリウス小隊出場」
《第五話 ビッグワン強奪》 愛「まもなくプラズマ層を抜けます」
海未「予定通り、このまま着陸して下さい」
愛「了解」
「来たか……」ニヤッ
「シュッシュッ……プシューッ……」
愛「ビッグワンの出力リレーに軽い異常が有るみたい、プラズマ層を抜けた時のダメージが原因かと」
愛「修理はすぐ終わると思います」
海未「では、私達は先行して534号の牽引・回収任務に当たります」
海未「愛と遥はビッグワンの修理が終わり次第合流して下さい」
「「「了解」」」
「……」ザッ……ザッ…… 愛「ハルちゃんも、先に現場行きたかったんじゃない?」カチャカチャ
遥「え?うん……列車の回収牽引なんて、訓練学校で習っただけだし……」カチャカチャ
愛「じゃあ残されて当然、か……よいしょっ」
愛「新入り、浮かれて仕事してんじゃないわよッ!」キリッ
遥「あぁ……はぁ?」
愛「あははっ。ハルちゃんさ、ポーカーだけは辞めときな~」
遥「は、はぁ……」
愛「さ、とっとと終わらせてアタシらも合流しよ」
遥「はい!」
「……」ゾロゾロ
遥「果林さんって……ずっと、ああなんですか?」
愛「あー……まぁ、色々とね」カチャカチャ
遥「色々?」
愛「まあ、前から人付き合いが得意な方じゃ無かったけど……Bパネルチェックお願い」カチャカチャ
遥「はい、Bパネル……」カタカタ 愛「とっつきにくいとはアタシも思うけどさー……」
愛「昔はカリンだってあんなんじゃ……よし、これで治った!」
「……ピピピピピ!!」
遥「この警報は……?」
愛「ええと……作戦車両下のシグナルリレーに異常……こんな所までやられちゃったの?!おっかしぃなぁ……」
遥「見てきましょうか?」
愛「うん、お願い」
「「「……」」」タッタッタッ……
遥「確かこのあたり……」
ガツッ!!
遥「っ……ぁ……」ドサッ
「フッ……」 【銀河鉄道管理局】
「っ!?……ビッグワンの車両シグナル、消失しましたッ!」
栞子「何事です!」
「呼びかけにも応答ありません……」
栞子「……非常事態宣言、スピカ小隊に緊急出動命令。ビッグワン捜索に当たらせて下さい」
「スピカ小隊、緊急出動命令。ビッグワンのシグナルデーター、トレースモードに変換、スピカ小隊車両034号に転送します」
「ちゃ……はる……」
遥「っ……うう……」
エマ「遥ちゃん、大丈夫?!」
遥「痛っ……あたま……」
エマ「殴られたみたいで……」
海未「報告しなさい遥」
遥「報告……って……あれ……ビッグワンは……?!」
ミア「連絡がつかないんだ」
遥「えっ?!」
ミア「心配になって戻ってきたんだけど……遥が倒れてるだけで……」
海未「何があったんですか?」
遥「わかりません……車両下の点検をしていたらいきなり……」
果林「何か見なかったの?」
「ファァァァァンッ!!」
ミア「スピカ小隊!」
海未「来ましたか」 璃奈「この惑星カノ・グランデは、土壌成分及び上空プラズマ層の影響で通常レーダーの使用が不可能です」
絵里「早速捜索を開始したいと思いますが」
海未「お願いします」
海未「ビッグワンを握られている異常、迂闊な通信はできません」
海未「シリウス小隊各員は通信レンジをスピカ小隊用に調整後、作戦開始」
「「「了解」」」
海未「遥、あなたはダメです」
遥「そんなっ!」
海未「頭を殴られたんです、しばらく安静にして下さい」
遥「平気ですっ!私も愛さんの捜索を……」
海未「命令です、スピカ小隊の医療車両を借りなさい。エマ、頼みます」
エマ「はい。行こう、遥ちゃん」
遥「……」 【戦闘機格納車両】
ゴゴゴゴ……ガコン……
遥(仲間が行方不明なのに……)タッ……タッ……
遥「……ッ」タッタッタッ
エマ「遥ちゃん?!」
遥「よっ……っく……」ヨジヨジ
すみれ「……な、何?!」
遥「そのまま飛んで!!」
すみれ「ハァ?!」
遥「良いからっ!!」
バシューッ……シュゴオォォォ……
すみれ「あんた、めちゃくちゃったらめちゃくちゃよっ!!」
遥「愛さん……無事でいて……っ!」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 遥「……居たっ!!」
『こちら近江、ビッグワンを発見しました。セクター32、14号線を北東方向に走行中』
愛「……」
愛(あそこのインカムさえ手に入れば……)
「……」
愛「……ッ」ダッ
「てめぇっ!!」ガンッ
愛「うぐっ……」ドタドタ……ドサッ
愛「……」
愛(……よしっ)
ミア「14号線はこの先で行き止まりだけど……果林見て、あそこにプラズマホールが!」
ミア「きっとあそこから上がるつもりなんだよ」
果林「バカ言わないで、上昇軌道が無ければいくらビッグワンだって……」
果林「……っ!!」
果林「あれは……」
ミア「宇宙船……かな」
果林「輸送船よ……多分海賊の……」
「案外スムーズだったな」
「これで礼金倍増だぜ」
「デスナッツもうまいこと考えたもんだ、SDFのコスモジェネレーターさえ手に入ればいくらでも新しい武器を作り放題だし」
「我々宇宙海賊も暴れ放題という訳だ」
愛(デスナッツ……) 【銀河鉄道管理局】
「非合法艦データ、照合完了。登録0272」
「死の商人、デスナッツの大型輸送艦と一致しました……」
栞子「彼らの目的はビッグワンそのもの……」
栞子「すべて仕込まれていたという事ですか……ッ」
海賊「オメェら!」
「頭!」
海賊「後ろの車両を見てこい、何もデスナッツのやつらにそっくり渡すこたぁ無い」
海賊「使えそうなもんがあったら俺たちで頂く」
愛「っ……」ピッ
遥「……あっ」
すみれ「どうしたの?」
遥「シリウス小隊の暗号回線……」
遥「愛さんっ?!」
海未「愛、大丈夫ですか?!状況は!説明できますか?!」
『……コッコッ……コッコッ……コッコッ……』
絵里「SDFシグナル……どうやら、声の出せない状況みたいね」
璃奈「……銀河鉄道管理局より、緊急通信」
絵里「出して頂戴」
パッ
海未・絵里「司令」ケイレイ
栞子「……」ケイレイ
栞子「銀河鉄道管理局は、SDF規約第387に基づき決定しました」
栞子「ビッグワンを……破壊します」 絵里「ビッグワンを破壊?!」
海未「待って下さい司令、総司令はご存知なのですか……?!」
栞子「SDF規約に基づく決定です。ご裁断を仰ぐまでもありません」
海未「私の部下が乗っているんですッ!!」
栞子「あなたはビッグワンを悪用させたいのですか?」
海未「この手で……自爆させろという事ですか……ッ?!」
栞子「それが出来るのであれば、管理局が既に行っています」
栞子「今のビッグワンは車両認識シグナルが消されているんです」
璃奈「自爆コードは、車両認識シグナルと連動する……」
栞子「方法はお任せします。シリウス・スピカ両隊は、速やかに任務を遂行せよ……」
海未「……ッッッ」
すみれ「スキャニング終了よ、生体反応は5人、二人は後部車両、二人が作戦室、一人が機関室」
すみれ「この反応から見ると、愛は作戦室ね」
遥「隊長、私が飛び移って中から止めます。許可を!」
『……駄目です』
遥「隊長っ!」
『ビッグワンは……脱線転落させます』
「「!!」」 ミア「転落……?!」
果林「どういう事です、隊長」
『管理局の決定です、ビッグワンが輸送艦に到着する前に破壊しなければなりません』
『そのために今とれる手段はこれしかありません……』
ミア「……そんなの……そんなのひどすぎる!!」
ミア「管理局の決定だからってなんで大人しく従うんだよ!!」
『ドンッ……』
ミア「……っ」
海未(愛……私はあなたを……)
海未(信じています……ッ)
海未「これより作戦を変更します。全員一時帰投せよ!……」
ミア・果林「……」シュゥゥゥッ……
すみれ「……」
遥「……私は」ガシッ
すみれ「ちょっと何すんのよっ?!」
遥「……私は嫌だっ!!」バシューッ!!
遥「出来る事が有るはずだよっ!!」
遥「まだ……終わりじゃない……ッ」
すみれ「━━!!━━」
すみれ「そうよ……まだ何も終わっちゃいない!!」
バシュゥゥゥンッ!!……
すみれ「見せてやろうったらやろうじゃない!現場の意地ってのを!」
遥「うんッ!!」 「あぁっ!?頭ァ!戦闘機が近づいてきやすぜ……?!」
海賊「もうじき艦だ、放っておけ。人質もいる、攻撃出来やしねぇ」
すみれ「……これ以上は近づけないわ、さあ行きなさい」
遥「……っ」シュタッ
『遥!命令に従いなさいッ!!』
遥「やらせてください隊長……いいえ私、やりますッ!」タッタッタッ……
遥(二人は後部車両……連結を外せば)ガコッ
……ガコォォンッ
「……おい、なんだか速度が」
「見てくる」
「……置いてかれてるぞ俺たち!!」
「何?!」
「あのガキが!?」
「クソッ、舐めた真似しやがってェェ!!」 遥「一人は作戦室……」タッタッタッ
シュピーッ
「何だ?!」
遥「うわあああああああっ!!」ドゴッ
「ぐぁっ?!……」ドテッ……
愛「ハルちゃん?!」
遥「愛さん怪我は?!」
愛「大丈夫……」
遥「いま手錠を……」カチャカチャ
愛「アタシは後でいいから、先にビッグワンを!」
遥「うんっ……」カタカタ
遥「何で……制御できない……っ」カタカタ
愛「っ!!シグナルリレーだ!」
愛「手動ブレーキを使って!機関室!」
遥「はいっ!」タッタッタッ ミア「……遥」
果林「……橋梁への爆弾設置、終わりました」
シュピーッ
海賊「フンッ」バキューンッ!!
遥「うわっ……」(落ちっ……)ヨロッ
海賊「……もうすぐ終点だ」
バキューンッ!!
海賊「死にたくなけりゃすっこんでなァ……!」
バキューンッ!!
遥「っ……うわあぁぁぁああっ!!」スルッ……
海賊「フッ、この速度で列車から落ちれば……」
海賊「……音がしない?!」ヒョコッ
遥「……っ……」
海賊「炭水車のはしごで命拾いしやがったか……おもしれぇ」 遥「っ……はぁっ……」ヨタヨタ
海賊「やるじゃねぇか小僧ッ……!」シュタッ
遥「……っぁ……」
遥(あの時……の?!)
ボコッ!!
遥「っ……アァ……」
ドコッ!!
遥「……」ドサッ
海賊「俺の顔になんか付いてたかァ?!」
遥「……覚えて……ないの……ッ?!」
遥「五年前……お前が殺した……」
遥「お前がお姉ちゃんを殺したんだッ!!」
海賊「フン、覚えてねぇ……なァ!!」 ドゴゴゴゴゴォォォォオオオンッ……
果林「……隊長。橋梁の爆破、完了しました」
海未「……了解です……ッ」
ボコッボコッ!!
遥「ぐ……ぁ……」
璃奈「爆破地点まで……あと2万メートル」
愛「っ……うぁあああああっ!!」メキメキメキ
海賊「どしたァ……うわっ」ボコッ
遥「……よくも……お姉ちゃんを……ッ!!」
海賊「くっ……あぁ……鼻血がっ……」
海賊「女だと思って手加減してたのによぉ……やりやがったなぁ……」
海賊「小僧ォォッ!!」ボコボコボコ!!
遥「……ッ」
『━━遥、腕だけで打撃を受けようとしないで』
『前身を使って、力を分散させるの……こうやって━━』
『━━どんなに強い相手でも攻撃の切れる瞬間が必ず来るわ、それを見抜いて』
『一瞬の隙を突くのよ━━』
遥「……ッ」ボコッ
海賊「ぐぁっ!?」ヨロッ
遥「よくもッ」ボコッ!!
遥「よくもお姉ちゃんをッッッ!!」ボコボコッ!!
海賊「うぁ……ァあアぁ……っ」ヨロヨロ
遥「……ッ」スチャッ
近江「━━遥」
遥(お父さん……?!)
遥「っ……」 「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
遥「ビッグワン!!」
『もう間に合わないっ!ハルちゃんだけでも飛び降りてッ!!』
遥「嫌です!!まだ……終わりじゃないッ!!」
愛「くっ……うあああああああっ……ああああああああああっ!!」メキメキメキ……バコンッ!!
愛「外れた……ッ!!」
ミア「……遥……っ」
遥「っっっ……」ギギギギギギ
遥「減速が……間に合わなっ……」ギギギギギギ
海賊「……っぁ……あのガキ……止めを……ふっ……くくくく」ヨタヨタ
海賊「舐めやがってェ……ふははへぇへぇ……死ィ…ッ」スチャッ
愛「ハルちゃん!……!!」
愛「……ッ」シュッ
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
海賊「っぁぁ?!蒸気っがぁぁっ?!あちぃ!!あちぃ!?!?っうわぁぁぁあああっ!!!……」ドテッ……
璃奈「あと500」 遥「うぅっ……」ギギギギギギ
愛「くっ……」ギギギギギギ
璃奈「400」
遥「っ……!!」ギギギギギギ
愛「っ……!!」ギギギギギギ
璃奈「300」
遥「止まれ……止まれ……!!」ギギギギギギ
愛「止まれ……止まれ……!!」ギギギギギギ
璃奈「200」
遥「止まれぇぇぇぇええええっ!!」ギギギギギギ
愛「止まれぇぇぇぇええええっ!!」ギギギギギギ
近江「━━大丈夫さ」
ギィィィィィィィッ……ギギッ……
ミア「止まった……」
果林「……ふっ」ニコッ 遥「……」
すみれ「やったじゃない!」ムギュムギュ
遥「離して下さい……」
すみれ「ん?どうしたのよ、大手柄なのよ?あなた」
遥「……違う」
ミア「遥!お手柄だったじゃないか!!」タッタッタッ
愛「ハルちゃん!」
遥「私は……」
『……ッ』スチャッ
遥「私は……っ」
『━━遥』
遥「……うわぁぁぁああああああぁぁぁぁっ!!!……」 海未「近江遥、命令違反による懲罰を言い渡します」
遥「っ……」
海未「シリウス小隊専用車両の清掃、以上です」
遥「……ぇ?」
海未「……今回は特別です、カノ・グランデで汚れた分、しっかり洗い流して下さい」
遥「……あ、ありがとうございます……!!」
「……ん?」ガラガラ
遥「……」キュッキュッ
「すいませーん!」
遥「ん?」
「これ、どうぞ!」シュッ
遥「あぁっ……コーラ?」
「それ飲んで頑張って下さい!」フリフリ
遥「あ、ありがとう!」
「整備士も大変ですね!」ゴロゴロ……
遥「整備士……?ああ、この服だから……」
シュッシュッ
遥「あれ?……愛さん?!」
愛「ん゛ん゛、これは賭けだよ賭け!」
愛「アタシがビッグワンの掃除をしたらどれだけ掛かるか、整備士達と賭けてるの!」
遥「愛さん……!」 愛「よいしょ……それに、命救ってもらったからね」
愛「ほら!手動かして!5000ラブカ掛かってるんだから!」
遥「うん!」
愛「よーし、あと一時間で全部終わらせるからね!」
遥「い、いくらなんでもそれは!」
愛「賭ける~?」
人は時に、自らの命を自分の手で他人に委ねる。
信頼という名の絆と共に。
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
「ガタン……ガタンガタン……ガタンガタン」
「……キュィィィィィィィンッ!!!━━」
《次回予告》
遥「連続列車爆破事件が発生」
遥「SDF全小隊が現場へ急行する」
遥「でも、あまりの惨状に私は……」
遥「次回第六話、闇の慟哭」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 海賊は普通に殺った相手のことなんざいちいち覚えていないのか、それとも運命は変わったのか… 人は皆、幸せを探す旅人のようなものだ。
希望の星を信ずればこそ、誰もが孤独な旅路を行く。
だが、運命は時としてこの心に、謂れなき暗闇を強いる事がある。
遥「……」スチャッ
「……」タッタッタッ……
遥「!!」タッタッタッ
遥(確かこっちに……)
「……」スチャッ
遥「ッ!!」タッタッタッ
ダダダダダッ!!ダダダダダダダダダダッ!!
「……」キョロキョロ
遥「……はぁぁぁあッ!!」ドスッ
遥「動くな……」ツキツケ
「……」
遥「はぁっ……はぁっ……確保しました」
ビビビビ……
『シチュエーション訓練が終了しました……シチュエーション訓練が終了しました……』
果林「がむしゃらバカ……」 遥「これで全パターン終了ですね……!?」
『……ちょっと来なさい』
ウィーンッ
果林「……どこでミスを犯したか、解る?」
遥「え?」
果林「分からないなら、教えてあげる……」メソラシ
遥(?入り口の方になにか……?)
ズボッ……スチャッ……カチッ━━
遥「っ……ぁ……」
果林「ここで、よ。アマいわね新入り」
遥「 こ、こんなの有りですかッ?!」
果林「そいつがイカれてなければ、あなたは今ここでお陀仏よ」
遥「ちょっと!待って下さいよッ!!」
━━━━━━━━━ 「ファァァァァン!!……ガタンガタン……ガタンガタン」
車掌『この列車は大マゼラン行き特急323号です……』
「━━そう、良かったわねぇ~」
「うん!」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
「……ピピピピッ……コポコポ」ダラダラ
「あ!ママ見て!電車の外……綺麗~」
「まぁ……」
「なんだこれ……なんか漏れてるぞ?」
「ああ、こっちにも……水か?」
「粘ついてるぞ……」ベチャベチャ
車掌『皆様、落ち着いて下さい。席をお立ちにならないようお願いいたします……っ』
「ビーッ……ビーッ……ビーッ」
「何の警報だ……?!」
「バリバリィッ!!」
「窓ガラスがっ?!」
「マサキちゃん、これを被って?」
「ママ?どうしたの?」パシューッ……
「大丈夫。ほら、ぬいぐるみも一緒よ?……」
「……ゴゴゴゴ……チュィィィィィィッ!!!!」
「ママ?」
「ドゴゴゴゴゴォォォォオォ━━━」
【銀河鉄道管理局】
「ビーッ!……ビーッ!……」
「なっ……323号!軌道ごと消失……!?」 遥「いい加減にしてくださいッ!!人の銃を勝手に抜いたり……増して引き金を引くなんてッ!!」
果林「……」ジハンキポチポチ……
遥「やり過ぎじゃないですかっ!!」
果林「……」ヘンキンレバーカタカタ……
遥「ちょっとっ!!聞いてるんですかっ?!果林さ「バゴンッ!!」
「ガタン……」
果林「……アマいわ」
果林「アマすぎるにも程がある」
遥「なんですかさっきから……甘い甘いって……そのいちごジュースがですか?!」
パシューッ
ミア・愛・海未「……」
遥「いつまで私を新入り扱いすれば気が済むんですか?!」
果林「新入りを新入り扱いして何が悪いのよ」
遥「そうじゃなくて……私が言いたいのはっ!!このままじゃ任務に戻れませ」
『ビーッ!……ビーッ!』
『非常信号受信、大マゼラン行き特急323号に原因不明の事故が発生した模様』
『規模・詳細不明。識別信号消滅、交信不能』
『スピカ・ベガ・シリウス、各小隊は現場へ急行して下さい!』
海未「シリウス小隊、出場!」 果林「一言だけ言っておくわ」
果林「度胸と勢いだけで何でも片付けられると思わない事」
遥「そ……そんな事っ、言われなくても分かってますッ!!」
果林「……」
海未「システムチェック」
果林「システムチェック、スタンバイ」
遥「素粒子ワープ走行発生機関、異常なし」
すみれ「上昇フロート、固定確認」
曜「磁力バリアー発生機関、正常値へ」
絵里「メイン回路接続」
すみれ「接続」
絵里「フレイムスワロー……」
『こっちが先だよ!』
絵里「なっ……果南?!」
果南「アイアンベルガー、発進ッ!」
『ベガ小隊、発車前に安全確認願います』
果南「バカ!!そんな悠長な事言やってられない!」
絵里「まったく……ベガ小隊に続き、フレイムスワロー発進!」
「ファァァァァンッ!……パァァァァンッ!……」
海未「……ビッグワン、発進」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」 愛「……」ピンッ……パシッ
愛「……5回連続で裏……ハルちゃん、ミアち、今日はいつも以上に腹に力入れておいた方がいいよ」
遥「は、はぁ……」
ミア「どうしたの?何か問題?」
愛「詳細不明の現場に、三小隊揃えて出すっていうのは……どういう事だと思う?」
遥「……さぁ」
ミア「最悪のケースを想定してるって……事?」
愛「御名答ミアち、救助しに来たつもりが、救助される側に回ってた……なんてね」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
ミア「……これが、323号……」
絵里『これじゃあ交信なんて不可能ね……』
果南『……全員、323号は狙撃された可能性がある。族の再襲来に備えて武装!』
絵里『すみれ、戦闘機で半径20宇宙キロを監視。事故の衝撃で飛ばされた乗客の捜索救助にあたって』
果南『曜はその護衛に付いて』
曜『了解』 海未「私達は両隊とともに本宙域で生存者の救助に当たります」
海未「発見し次第、速やかに救急車料へ搬入」
「「「了解!」」」
遥「ぬいぐるみ……っ…ぁ!!」
死体「……」
千歌『ひどい……』
メイ『何もかもバラバラだ……』
璃奈『まさか……一人の生存者も……』
善子『こっちはダメ、何もかも……黒焦げになっちゃってる……』
遥「はぁっ……はぁっ……はーっ……はーっ!!」
遥(お父さん……お姉ちゃん……っ……━━)
果林「確かにこれは事故じゃない……」
果林「狙撃……いえ、爆破よ」 ミア「……っ」
愛「……ミアち」
ミア「ああ、大丈夫……」
千歌「おーい、シリウス小隊!」
果林「?」
千歌「なんとかして、救助の邪魔なのだ」
果林「遥?」
遥「はーっ!!……はーっ!!」
果林「遥、静かに息をしなさい」
遥「はーっ!!……はーっ!!」
果林「……過呼吸によるパニックよ」
エマ「遥ちゃん……」
海未「果林、遥をビッグワンで待機させて下さい」
果林「了解」
遥(……ぬいぐるみ……破片だらけ)スッ……チャキッ……スッ……チャキッ……
遥(これを持ってた子も、死んじゃったのかな……)スッ……チャキッ……スッ……チャキッ……
遥「……」スッ……チャキッ……スッ……チャキッ……
『ねえ、生きてるよっ!!』
遥「……!」
『子供です!女の子……』
『救命具を付けてるけど……酸素が漏れてる!』
『早く救護車両へ!急いでッ!』 遥「……」
エマ「遥ちゃん?」テキパキ
遥「エマさん、この人は……助かるの?」
エマ「最善を尽くすよ」テキパキ
「……わた……しの……はぁっ……はぁっ……」
遥「えっ?……これ?」
「それ……わた……しの……はぁっ……はぁっ……」
遥「はい……っ」
「……あり……が……」
「ピーーーーッ」
「……」スッ……ポトッ
遥「ぁ……そん……な」
遥「エマさんっ!?」
エマ「……」テキパキ
遥「もうダメなの?!助けてあげてよッ!!」
エマ「は、離してっ!?遥ちゃんっ?!辞めてッ!!」ドンッ
遥「うぁっ!!」ドサッ
海未「何をしているんですか」
遥「く……っ……」
海未「……近江遥、あなたに謹慎を言い渡します」
ミア・愛「……」
果林「……」 絵里「━━以上の鑑識・見聞の結果、本件は事故ではなく人為的なもの、爆弾テロであると断定します」
絵里「使用されたのは溶解型素粒子爆弾と思われます」
絵里「この爆弾は性質上、仕掛けられた場所を特定しにくく」
絵里「323号のどの部分にいくつの爆弾が仕掛けられていたのかは今のところ不明です」
果南「犯行声明は?」
絵里「現在のところ確認されていません」
果林「目的は不明、か……」
愛「愉快犯という線も有り得るね……」
ミア「そんなっ!!」
「「「……」」」
ミア「ぁ……ごめんなさい」
絵里「以後、全線の警戒を強めるとともに、各星系の反政府組織や宇宙マフィア、海賊の動向についても注意して下さい」
「「「了解」」」 ゾロゾロ……
遥「……」
ミア「遥……」
海未「何をしに来たんですか。謹慎だと言い渡したはずです」
遥「……謹慎の期間は?」
海未「無期限です」
遥「っ……!?」
ミア「……?!」
果林「……」
海未「出処進退を考えなさい。結論が出るまではここには来ないことです」
ミア「隊長……!?」
海未「よく考えなさい、父と姉が命を落としそして殉じた仕事が、自分に本当に務まるかを」
海未「あなたはまだ若いです、他の仕事でいくらでもやり直しが効きます」スタスタ
ミア「そんな言い方は!」
遥「言われても仕方ない……」
ミア「遥……」
遥(私は、何も出来なかったんだから……)
愛「……賭ける?」
果林「……」 遥「……」
モエカ「ちょっと!遥ちゃん!」
遥「お姉さん……」
モエカ「その顔は朝ごはん食べてないだろ?ほら食いな~」
遥「うん……」
モエカ「食べないと宇宙で生きてけないって、ほらほら、半分でも良いから食べな」
子供「離して!離せよ~っ!!ちょっとくらい見せてくれたって良いじゃないかーっ!」
車掌「いけません、規則ですから」
子供「一度で良いから、フォートワース号のコックピットを見てみたいんだよーっ!!」
遥「車掌さん」
モエカ「遥ちゃん?」
遥「その子、離してやってくれませんか」
車掌「しかし規則では不法侵入者は身柄を拘束し……ん?」
遥「……」スッ
車掌「SDFの方でしたか!失礼しましたッ!」 シュィィィンッ……
子供「わぁっ!!すっげぇ~!!」
車掌「見るだけです、手を触れてはいけません!」
モエカ「甘い顔するのも程々にね」
遥「…?」
モエカ「子供とは不法侵入には変わりないんだから、きっちり処置しないと」
モエカ「昔ねぇ事故があったの、このディスティニー駅で」
遥「……昔、何があったのかは知りませんけど」
遥「私に今出来る事と言ったら……」
遥(お父さん……お姉ちゃん……)
遥「私、何も出来なかった……」
遥「やっぱり、夢や憧れだけの……ただのアマちゃんに過ぎないのかな……」
「あのー!車両整備の方ですよね?」
遥「?」
「こんな所でまたお会いできるなんて、お昼休みですか?」
遥「あの!」
「新人の方ですか?」
遥「え?うん」
「やっぱり!見ない顔でしたから」
遥「あ、それは……」
恋「私は葉月恋です。今は自販機のベンダーをやってます。管理局にはよく出入りするので顔見知りが多いんですよ」
恋「遥、さんでしたよね?」
遥「うん!近江遥!」
恋「暇ならちょっと、付き合って下さい」
遥「えっ?」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 恋「ミスをして謹慎……ですか」
恋「モエカ姉さんの目利きの通りですね」
遥「あのお姉さんが?」
恋「はい、一人で居ても碌なこと無いから声をかけて欲しいと言われまして」
遥「もう、お節介なんだから……」
恋「そう言わないで下さい、あの人のお節介にはちゃんと理由があるんです」
恋「モエカさん、銀河鉄道の事故で親戚を無くしてるんです」
遥「え?」
遥「生きてれば丁度、私達くらいの歳らしくて」
遥「……」
恋「……」カシャカシャッ……カシャカシャ……
遥「手伝おうか?」
恋「良いですか?」
遥「うん。あっそうだ、待機所の自販機、調子悪いみたいだったよ」
恋「え?車両部の所は前交換したばかりですが」
遥「車両部?あぁっそうじゃなくて……」
恋「わかりました、見ておきますよ」
恋「荷台からひとケースお願いします」
遥「うん」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 「……ピピピピッ……コポコポ」ダラダラ
車掌「こちら特急224号!管理局!車内を液状の━━━」
海未「で、何ですか?聞きたいことが有るそうですが」
ミア「隊長は、遥にSDFを辞めさせたいの?」
海未「辞めるかどうかを決めるのは、彼女自身です」
ミア「その突き放したやり方も理解できないよ……」
海未「こちらから選択を迫っても意味がないでしょう」
海未「自分自身で選ばないことには、未練が残ります」
海未「夢や憧れで━━」
ミア「夢や憧れで仕事を選ぶのが、そんなに悪いことなの?!」
海未「その後の覚悟が問題です」
ミア「遥は遥なりに覚悟してる!行動でだって示してたじゃないか!」
ミア「隊長は最初から割り切れたの?!
海未「ミア」
ミア「ボクには遥を━━」
海未「ミア、そのくらいにしておきなさい」
ミア「……っ」
【隊長室前】
果林「……」
『ビーッ!……ビーッ!』
『非常信号受信、アルタイル新線特急224号、及びレグルス本線特急811号が消息をタチましたっ!!』 遥「……はい」ガタガタ
恋「ありがとうございます」カシャカシャッ……カシャカシャ……
遥「ん……」
恋「どうかしましたか?」
遥「ううん、実家の食堂にちょっと似てて……」
遥「お母さんが一人で切り盛りしてて……」
遥「あっ、恋ちゃん、タツミ茶ってもう扱ってないの?」
恋「タツミ茶……あぁ、それならもう扱ってませんね」
恋「味に癖があって売れなかったんですよ」
遥「うっ、うそ?!あんなに美味しいのに……」
恋「珍しいですね……タツミでだけは評判良かったようですけど……」
恋「あ、もしかしてタツミ出身なんですか?」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
恋「SDFのスクランブルですか……」
遥「……」 『アディロス分岐点へようこそ……』
『23時48分発、プロキシオンエクスプレスは……』
ドゴォォォンッ!!
「うわっ何だ?!!」
バゴォォオンッ!!!
「上の階が!!」
「きゃぁああっ!?!?!」
ドゴゴゴゴゴォォォォオオ━━
海未「急いで下さいッ」
愛「了解っ!」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
《次回予告》
遥「管理局を列車爆破犯が占拠した」
遥「目的は銀河鉄道そのもの」
遥「犯人は一体……」
遥「次回、闇の慟哭後編」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 「……ピピピピッ……コポコポ」ダラダラ
暗闇の中をさまよう心があった。
「ファァァァァンッ!!」
『まもなく、アディロス分岐点です……お出口は……』
謂れなき闇の深淵へと突き落とされた、その無垢な心は……
『アディロス分岐点……アディロス分岐点……23時48分発、プロキシオンエクスプレスは……』
ドゴォォォンッ!!
「うわっ何だ?!!」
バゴォォオンッ!!!
「上の階が!!」
「きゃぁああっ!?!?!」 「管理局に連絡しろ!早くッ!」
「33番線でも爆発!13階はモニター出来ませんッ!!」
「まずい……このままだとダクトを伝ってメインシャフトに火の手が!」
「消火装置を全部稼働させろ!」
「……電気系統制御出来ませんッ!!」
「強制送水は!?」
「……ダメですッ!!」
「11番線でも爆発!!」ゴゴゴゴ……
「……アディロス分岐点は放棄する、総員シェルターへ退去ッ!」
「っ……ぁぁっ!!動力炉!破壊ッ!!」
「何ッ━━━」
無垢なる故に泣き、無垢なる故に光を拒み続けた。
《闇の慟哭(後編)》 「スピカ小隊より入電、アルタイル新線224号……車両全損、生存者なし……」
「シリウス小隊より入電、レグルス本線881号、車両全損、生存者なし」
「各隊へ伝達、アディロス分岐点へのワープ移動許可、現着次第状況報告」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
「おまちどうさま」
遥「……」
恋「食欲が無い時は、スープが一番ですよ」
遥「聞いたこと無いけど……」
恋「噛まずに飲めますから、頂きます」
遥「そういう物……?」
ガラガラッ
「ありがとうございましたー!」
遥「!!」
遥(お母さん?!……違う、よね……あたりまえか……) 遥「……」ズズッ
遥「おいしい……」
恋「でしょう?」
遥「ちょっとお母さんの味に似てるかも……」
恋「それなら良かったです!……大抵のことはやり直しが効きます」
恋「そう落ち込む必要ないと思いますよ?」
遥「……ッ」
恋「手に職も有るんですし、一旦タツミに帰っても良いと思います」
恋「そうです!お母さんのお店を手伝ってあげるというのはどうでしょう」
バンッ……
遥「別れは、告げてきた……」
恋「……遥さん、仕事で何を……?」
遥「何かしたんじゃない……何も出来なかったの……」
遥「どうすることも出来なかった……ッ」
遥「どうして良いのか……分からなかった……」
恋「……」 すみれ「ワープアウト……っ?!……アディロス……分岐点……」
愛「火だるま……だよ」
果林「……これじゃあ手の出しようが無いわ」
ミア「あの炎の中に何人の人が……」
海未「ミア、管理局に目視状況の報告を」
ミア「はい……銀河鉄道管理局、こちらSDFシリウス小隊、アディロス分岐点に現着……状況……報告します……っ」
愛「……ゲームでもやってるつもりなの……っ!?」 恋「……あなたがSDFの隊員だったとは……」ブロロロロ
遥「そんなに意外?」
恋「ええ……かなり……」
遥「みんな向かないって言うよ……」
恋「向かないというより、持たないんじゃないですか?」
遥「持たない?」
恋「遥さんの事は良く知りませんけど、なんだかそんな気がして」
恋「心が生まれっぱなしと言うか……」
遥「むっ、どうせ私は子供ですよっ!!」
恋「ふふっ」
遥「……あっこの辺で良いよ、下ろして」
恋「はい」キキーッ
恋「……けれど遥さん、私はそういう人……嫌いじゃありませんよ」
遥「……」
恋「辞めたほうが良いと思いますよ」
遥「えっ?」
恋「銀河鉄道の下僕なんて、あなたには似合わないです」
遥「!!」
恋「それでは」バムッ……ブロロロロ……
遥「……」 恋「……近江遥、か……」ポチッ
『━━動機はまったく推測出来ず、人心に不安が広がっています』
『事件は広域宇宙組織による連続テロの様相を呈しているものの、犯行声明や予告の類いは依然として無く』
『この許しがたい大量破壊、無差別殺戮犯の目的は今持って不明です。銀河鉄道管理局は……』
遥「……」
『━━溶解型素粒子爆弾を初めて使用したのは、アキバラン戦線を制したオトノキ星解放軍です』
『成分組成を組み替えた特殊アルパカノールを使ったものが最も破壊力に優れていて、その威力は赤ん坊のこぶし大の爆弾一個で、重戦車を跡形もなく吹き飛ばしてしまう程です』
『医薬品を偽装し……』
遥「……っ」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
遥(ビッグワン……)
『ニュース速報です、一連の事件で最初に被害にあった大マゼラン行きの銀河特急323号の乗客、シム・マサキさんを蘇生させることに成功しましたと銀河鉄道管理局が発表しました』
『SDFシリウス小隊所属の医療セクサロイドによる適切な現場処置と、医療センターが独自に開発を進めてきた最新の蘇生技術が功を奏し、一命を取り留めたという事で……』
遥(……SDF医療センター) 【特別病室:Sim Masaki】
遥「……」ジッ
「……すー……ふー……」ピッピッピッピッ
遥「生きてる……」
コツコツコツコツ……
海未「……」
遥「た、隊長!」ピシッ
海未「……命は取り留めましたが、天涯孤独だそうです」
遥「……」
海未「遥、私たちは時に最悪の結果だけを前にすることがあります」
海未「それは誰にも、どうすることの出来ないものです」
海未「それでも私たちは、その状況において最善を尽くさなければなりません」
海未「どんな状況でも……」
海未「たとえ目の前で仲間が殺されても」
遥「!!」
海未「悲しみに耐え、怒りを制御出来なければ、SDFの隊員は務まらない」
遥「……」
海未「……私はそれを、あなたの父から教わりました」
遥「っ!!」
『……あなたがSDFの隊員だったとは……』
『向かないというより、持たないんじゃないですか?』
遥「……」
『夢や憧れだけでは、SDFの隊員は務まりません』
『理想だけでやっていけると思ってるなら、さっさとSDFを辞めなさい』
『心が生まれっぱなしと言うか……』
『……けれど遥さん、私はそういう人……嫌いじゃありませんよ』
遥「っ……隊長っ!!」 海未「!……場所をわきまえなさい遥、病院です」
遥「す、すみません……」
遥「隊長、私の謹慎を解いて下さい」
海未「……」
遥「私、変われないと思います……でも、もう何があっても立ち止まる事はしません」
遥「職務に復帰させて下さい、お願いしますっ!」
海未「好きにしなさい」
海未「自分で決めなさいと、言ったはずです」
遥「隊長……!」
海未「すぐ部屋に戻り着替えてきなさい。各隊の車両整備が終わり次第、SDFは大隊出場します」
遥「!!」
海未「遅れないように!次の爆破を全力で阻止しますよ、遥ッ!」
遥「了解ッ!」 海未「システムチェック」
果林「システムチェック、スタンバイ」
ミア「軌道通信レーダー、異常なし」
「ビッグワン、出場位置へ」
シュピーッ
遥「み、皆さん……この度はご迷惑を……」
愛「ハルちゃん!早く座って、ほらっ」
果林「……」
愛「はいっ!」
愛「モニターを見て、一連の被害車両だよ。全部ディスティニーを出て20時間経って爆破されてる」
海未「メイン回路接続」
愛「接続」
果林「システム、オールグリーン」
海未「ビッグワン、発進ッ!」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
果林「本気でやり直すのなら、その使い物にならない銃を捨てなさい」
遥「私、最初から本気です。もうあんな迷惑は掛けませんっ!」
果林「はっ……」 『只今、銀河鉄道管理局からたくさんの車両が大空に向かって飛び立っていきました。みなさんも無事を祈って下さいね』
恋「……」ピッ
恋「……」
ミア「ワープアウト」
果林「フォートワース号、捕捉。距離0.3宇宙キロ」
海未「並走状態へ」
果林「並走へ」
ミア「乗客にはマニュアル通り、架空の状況を説明済み。パニックの恐れは無いよ」
海未「了解しました」
海未「速度を維持したままシールド解除、チューブ接続」
海未「乗客全員をビッグワン後部車両に収容します」
ゴンッ……バコッ
愛「ここにも無い……外じゃないみたい!」
ミア「車内にも見当たらない……」
遥「……」ゴソゴソ
ミア「遥?ゴミ箱にも無い?」
遥「うん……」ジッ
ミア「……自販機がどうかした?」
遥「……ちょっと、手伝って」
ミア「うん」 恋「……ねえモエカさん」
モエカ「なに?」
恋「モエカさんの親戚……稲川さんでしたよね?」
モエカ「そうだよ?」
恋「その人を銀河鉄道の事故でなくしたのに……なんで銀河鉄道に奉公なんてしてるんです?」
モエカ「うーん……死んだあいつが銀河鉄道の事好きだったからかなぁ」
恋「……っ」
モエカ「どうしたの藪から棒に」
恋「い、いえ、何でもありません」
モエカ「……あんたのお母さん、今頃喜んでるだろうねぇ~」
恋「えっ?」
モエカ「こんなに立派に育ってさ!」
恋「……今日はもうお店閉めたらどうですか?雨、酷くなりそうですし」
モエカ「あー……そうだね」
恋「そう!一つお願いがあるんです」
モエカ「ん?」 【銀河鉄道管理局:メインロビー】
カツ……カツ……
恋「……」(クラシックでも聞きながら……)スッ……カチッ……
「……♪~」
恋「……」カツ……カツ……
警備ロボ「……身分証を提示して下さい」
恋「……」スッ
恋(……違いますね)
恋「ふっ……」カツ……カツ……
警備ロボ「止まりなさい!」
バシューンッ!!バシューンッ!!
愛「……」カチャカチャ……
果林「まだなの?!」
愛「空いた……愛だけに……ッ!!」
果林「これが……ッ」
遥「……あった」
遥「……っ、まさか……」 警備ロボ「……」ビビビビ
恋「……」
『リゲル小隊、576号の爆弾処理完了』
『ペルセウス行き388号、二重星団を通過。カペラ小隊が追尾を開始しました』
『管理局内に侵入者、武装している模様!』
『SDFは全隊出場!警戒態勢』
恋「……」
「恋ちゃん!気をつけて、どこかにテロリストが……」
恋「……ッ!!」
恋「……」ズルズル
「……」
恋(生体認証……生体さえ用意できれば……)ガツッ
「……」ピピピピッ!
「認証されました……」ゴゴゴゴ……
恋「……」
「……テキセイハンノウ……アリ……」ピピピピ
「ボウエイカイシ……」 遥「……っ」
愛「お手柄だったじゃんハルちゃん!」
愛「けど、出入り業者に化けてたとは……」
遥「……隊長、期間命令を出してもらえませんか……?」
果林「何言ってるの、まだ次の列車の爆弾処理が」
海未「理由を聞かせて下さい」
「……シンニュウシャヲハイジョ……シンニュウシャヲハイジョ」バシューンッバシューンッ!!
恋「……」スッ……
恋(光学迷彩なら見えないでしょう?)
「……ロスト……ロスト……」
恋「……」バシューンッ!!
バゴォォオンッ!
「ネツゲンタンチ……ネツゲンタンチ……」 遥「そのベンダーを……知ってるんです……」
遥「あの子がテロリストの手先だったなんて思いたくない……けどっ」
「……シンニュウシャヲハイジョ……シンニュウシャヲハイジョ」バシューンッ!!
恋「うぁっ!!このッ!!」バシューンッ!!
バゴォォオンッ!!
恋「これで最後……」
遥「彼女は……恋ちゃんは私にこう言ったんです……」
遥「SDFなんて、銀河鉄道の下僕だと!」
愛「SDFを……下僕、銀河鉄道そのものを憎んでるって事……」
果林「だとしたら本当の狙いは……」
恋「……」シャキッ
「カードを認証しました……」ゴゴゴゴ
恋「……ふふっ」
「「「……?」」」
ミア「銀河鉄道管理局……」 愛「隊長!」
果林「戻りましょう」
海未「もう遅いかもしれません……」
「「「!!」」」
海未「ミア、管理局との通信回線をチェックしてみて下さい」
ミア「!!」
愛「どうしたのミアち」
ミア「すべてのチャンネルで遮断されてる!」
海未「ッ!各隊へ連絡!爆弾処理班の任務を調整して下さい」
海未「シリウス小隊は帰還しますッ!」
「「「了解ッ!」」」
『……銀河鉄道管理局より、SDF全隊に告ぐ。只今をもって全路線の運行を終了する』
『奴隷である諸君らの今日までの忠誠に感謝する。ディスティニーへの帰還も不要であるが、銀河鉄道と共に殉じたいものがあればその限りではない。以上』
海未「ワープ!」
愛「ワープ開始ッ」 オペレーター「……っ」フルフル
恋「ありがとうございます。上出来でした」
栞子「後は私一人残れば良いでしょう」
恋「なにか勘違いしているようですね、逃げたい方は逃げれば良いんです」
栞子「何が目的です」
恋「私はただ、銀河鉄道を無き物にしたいだけです……ふふふふッ!!」
ナナ『若者よ……』
恋「?!」
ナナ『あなたはやはりここへ来てしまったのですね……』
恋「何ですかあなたは!」
ナナ『……』
恋「……あなたが銀河鉄道の親玉という事ですか……」
ナナ『……━━』 ━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
菜々「……ん?」
恋「お願い!お願いします!乗せて下さいっ!!」
車掌「パスをお持ちでない方はお乗りになれません」
恋「お金ならいつか必ず払います!だからっ!!」
車掌「規則ですから……」
恋「待って下さい!お願いします!お母様が病気なんですっ!!」
恋「ヘビーメルダーに居る先生にっ!」
パシューッ……ファァァァァンッ……ガタン……ガタンガタン
恋「待って……待って下さい!!」タッタッタッ
警備ロボ「侵入者をカクニン!ハイジョ!」ビビビビ
運転士「なんだ?!女の子がっ……止まれないッ!!」
恋「乗せて……お願いします!!乗せてぇぇぇぇええっ!!!」 ━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
恋「なんなんですかあなたは……」
ナナ「……」
遥(恋ちゃん……お願い居ないで……)タッタッタッ
恋「何なんです!そのすべてを見透かしたかのような目はッ!!」ビビビビ……
海未「待ちなさいッ!!」
遥「恋ちゃんッ!!」
恋「遥さん……」
果林「一人……?!」
果南「強行入線するよ!各員武装!」
「「「了解ッ!!」」」
絵里「ベガ小隊に続いて突入!」
「「「了解!」」」 恋「職場復帰ですか……てっきり辞めたのかと」
遥「どうしてこんな事……」
恋「私はこの日のために生きてきたんですよ」
遥「何だって……?!」
恋「遥さん、死にたくなければ……」
「「「……」」」ザッザッザッ
恋「ッ?!」
果南「このクソ野郎!!」ババババババッ!!
恋「ぁああっ!!」バシュバシュ……ドタッ
遥「辞めてっ!!」バッ
果南「なっ、バカ!どいて新入り!」
ミア「嘘だろ……遥っ!!」
恋「……うぅっ」ヨロヨロ
遥「恋……ちゃん……?」
恋「っふふふっ!もっと撃って下さい!胸を狙って下さいよ……」
善子「望み通り……」スチャッ
恋「……」バキバキ……ズルッ!
ドチャドチャ……ボタッ……
愛「撃たないでッ!あれは旧式の小型原子炉だよ!あたり一面吹っ飛んじゃうッ!!」
果南「わざわざあんな年代物を……」
すみれ「爆弾魔自身が……爆弾……なんて」
絵里「どうしてそこまで……」
恋「撃たないんですか……?撃たないのなら……ふふふっ……くふふふっ」シュイィンッ
果林「腕がビームキャノンに……!?全身義体を改造して……」 遥「……っ」
果南「……善子、頭を狙って」
善子「……」コクッ
遥「!!」
遥「恋ちゃん辞めてッ!!」ダッ!
ミア「遥!!」
愛「ハルちゃんッ!!」
海未「遥!下がってッ!!」
遥「両手を上げて葉月恋ッ!!」スチャッ
恋「遥さん……」
果林「遥……!」(その銃は……!) 遥「……お願い……手を上げてッ……!でないと私……私は……ッ」
恋「バカですね……」スッ
遥「何故なの?!私はあなたに……」
恋「何故なんですか遥さん。あなたは何故、銀河鉄道を守るんですか?」
遥「なに……?!」
恋「あなたのお兄様とお父様の命を奪ったのが銀河鉄道なんじゃないんですか?」
恋「……病気のお母様を助けたかった……助けてほしかった」
遥「……っ」
恋「銀河鉄道にあるのは鉄の規則と秒刻みのダイヤだけです……」
遥「恋ちゃん……」
恋「銀河鉄道は心を無くした化け物ですッ!」
恋「リセットするしか無いんですよォ!遥ァっ!!」
遥「……っ!?」
遥「違う……」
遥「違うっ!」
遥「どんな理由があっても、あなたのやったことは……ッ!」
遥「銀河鉄道は……人の喜びや悲しみや……夢や人生を運ぶもの……ッ!」
遥「お父さんやお姉ちゃんはそれを守るために死んだ……」
遥「だから、私もそれを守りたい」
遥「命に変えてもッ、私は銀河鉄道を守るッ!!」
恋「それはあなたの正義です……命に変えても、ですかッ?!」
恋「なら、銀河鉄道と共に死になさい」
カチッ……
恋「は……ぁ?」
恋「なんで……弾が……」 果林「今よッ!!」
「「「!!」」」ダッ
恋「くっ……」
遥「確保ッ!!」ドサッ
恋「うわぁぁぁあぁああぁぁっ!!離してぇぇぇぇええっ!!!」
遥「……」
モエカ「遥ちゃん」
遥「お姉さん……」
モエカ「ちょっと渡さなきゃいけない物があるんだ……」
遥「え?」
ドサッ
モエカ「明けてみれば解るって……倉庫の奥に最後の一ケースが残ってたとか……」
遥「……タツミ茶」
モエカ「賞味期限に気をつけろって……」
遥「三日じゃこんなに……飲めないよ……」
その魂は、かつて紛れもなく澄み切っていた。
銀河鉄道を愛する者、憎む者。
すべての者の出会いが光の中であったなら……。 『まもなく……当駅始発、観光特急ペガサスエクスプレスが参ります……』
《次回予告》
遥「頑固整備士ニコニー、最後の機関車825号」
遥「ふるさとの星に熱い汽笛が木魂する」
遥「次回第八話、残照」
遥「私たちは、次の駅で何かに出会う」 つまらん
スタートレックをラのキャラに改変してた奴か? 未だにスタトレというかパロSSを目の敵にしてるやつなんなん?
気にせず続けてな 一粒の麦が大地に落ちる時、誰がその音を聞くのだろうか。
その麦が多くの実りを結んだ時、初めて人は知ることになる。
一粒の麦の、真の価値を。
遥「……」zzz……zzz……
ペシペシ
遥「……んんっ、おかあさん……」
「こらァッ!!ひよっこォッ!!」
遥「うぇ?!は、はいっ!!」
にこ「良い身分ね」
遥「あっ……ええと……整備終わりました……」
にこ「ん?……はぁ、締めが甘いわ」キュルッ……キュルッ……
遥「……」ジーッ
にこ「何見てんのよ」
遥「い、いえ別に……」
にこ「私の顔を見てる暇があるならナットの点検してきなさい!全車両やり直しよ!」
遥「えぇえーっ?!?!」 希「SDFの坊やが、さっそくやられとるなぁ」
凛「どうも再研修らしいにゃ、きっと出来が悪かったんだよ!」
希「ま、みんな一回はここに来て、にこちゃんに絞られるとええんちゃう?」
希「特に、ああいう若いのは」
「「あっははっ!」」
遥「……」トボトボ
愛「ふわぁぁあっ!……金持ち列車の護衛かぁ……」
果林「……」スタスタ
ミア「ここは……そう、こっちのホームに行けば……」
「どうも!」
ミア「My pleasure!」
ミア「……はぁ、遥は今頃何してるんだろ……」
愛「……ん?」
「SDFだぁーっ!!かっこいいなぁ~っ!!」ダキッ
愛「わぁっ!キミどうしたの?迷子かな……?」
母親「チャーリー!」
『アイドルケン行き特急列車227号、ペガサスエクスプレスが発車いたします……』
「あっ、ばいばい!」
愛「気をつけてね~」
プシューッ……カタンカタン……ガタンガタン…… ナナ「美しいもの……天空を駈けるペガサスの、その翼は折れ……土に塗れるでしょう……」
遥「全部って……一体幾つあると思って……」キュルッ……キュルッ……
にこ「退いて……」
遥「?!」
にこ「こことここと、ことよ」カチッカチッ……カチッ
にこ「良い?列車はそれぞれ癖が有るの、どこが緩みやすいか知っていないと整備士なんて務まらないわ」
にこ「それが分からないうちは一つ一つやるしかないでしょ」
遥「わ、私!研修で来ただけなんですよ?!」
にこ「へぇ~、最近の若いのは生意気に口答えするわけ?」
遥「ちょっと!私には近江遥ってちゃんと名前が」
にこ「ふっ、列車の事も知らずにSDFの仕事が務まるはずが無いわ」
にこ「もう良い、帰って」
遥「あぁ~っ!!わかりましたよ!ふんっ」スタスタ
にこ「……っっっ」キュルッ……キュルッ……
にこ「うっ……けほっ……ふーっ……」
遥「……?」
にこ「早く行きなさいッ!!……うぐっ……」
遥「……」……スタスタ 遥「はぁ……ツイてないなぁ。ナットがどうのって……そんなの誰でも知ってるよ……」トボトボ
遥「……ん、スクラップ場にあんな車両あったっけ……」トボトボ
遥「……825号」ジーッ
遥「すごい……ピカピカだ……でも相当旧式だよねこれ……」ジロジロ
遥「……きっちり締めてある……整備されてるって事……?」キュッ
ドスッ
遥「きゃっ?!」
遥「何するのっ?!」
にこ「汚い手で触らないで」
遥「見てただけでしょッ?!」
にこ「見て何がわかるの」
遥「廃車にまでお説教?!どうせスクラップになるんでしょ?!」
にこ「……ちょっと来て、言いたいことがある」グイッ
遥「もう良い、たくさんだよッ!!」バッ……ダッダッダッ……
にこ「……」 遥「……」ブスッ
希「その顔は相当やられたね?」
遥「なんでも無いです」
希「825号に触ったんやろ?違う?」
遥「……そうですけど」
希「あの車両はにこちゃんの宝物でね?」
希「にこちゃんが整備士になって初めて任された車両やったんよ」
希「にこちゃんと同じ、車両も輝いていた……だが、惑星アイドルケンの崩壊を誰が予想できただろう」
希「惑星が半分崩壊するほどの大災害、その時にこちゃんは磁力鉱石を満載した825号牽引の貨物列車でディスティニーへ戻る所やった」
希「吹き飛んだ側にはアイドルケン駅と鉱山、そしてにこちゃん達の家があった」
希「大勢が亡くなった。ご両親も、妹さんや弟さん、生まれ育った街の人々も……」
遥「……」
希「アイドルケン鉱山は閉鎖され、にこちゃんはここ本部の整備局に配属された」
希「それ以来ずっと、825号を守り続けてるんや……いつでも走れるように」
希「けど、それも明日で終わり」
遥「えっ……?」
希「廃車になるんよ、さっき遥ちゃんが居たスクラップ場で」
希「余計なこと言ったらあかんよ?にこちゃんは昔の話をされると我慢ならないんやからね、ふふっ」
遥「……」
にこ「……」カチャカチャ……
にこ「……よし、と」バタンッ
にこ「ッ……ふーっ……はぁ……はぁ……」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 『……ペガサスエクスプレスより、お知らせします』
『列車はこれより、惑星アイドルケンの名勝「伝説の水琴窟伝説」へと参ります』
『かつてここは特殊磁力鉱石の採掘場でした。磁力を帯びた鉱石と溜り落ちる水滴が織りなす神秘の音楽をどうぞお楽しみ下さい』
「おお、すごいな」「ねぇきれい」
バリバリッ……ビビビッ……
運転士「今のは……?」
バリィッ!!ガガガガッッ!!
運転士「うわぁっ?!……磁力シールドが破られた?!」
バリバリッ!!
運転士「うわああっ!!」
キキィィィッ!!
『……ポーン……ご安心下さい、只今安全確認のため点検を行っております。しばらくお待ち下さい』
運転士「こちらペガサスエクスプレス!惑星アイドルケンのビューポイントで磁気嵐に遭遇して走行不能!至急応援を乞う!」
バンッ……
運転士「動力が……!」
【管理局】
「ペガサスエクスプレスより緊急入電!走行不能です!連絡が途絶えましたッ!」
栞子「シリウス小隊を向かわせて下さい。すぐにです」
「了解!」 『惑星アイドルケンのビューポイントで磁気雪崩発生、シリウス小隊は直ちに出動!ペガサスエクスプレスの救援に向かって下さい』
遥「アイドルケン……?」
『繰り返します、惑星アイドルケンのビューポイントで磁気雪崩発生、シリウス小隊は直ちに出動!ペガサスエクスプレスの救援に向かって下さい』
にこ「……」スクッ
果林「システム、オールグリーン」
海未「ビッグワン、発進」
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
遥「……」タッタッタッ
遥「にこさんは!?」
凛「相棒の所じゃないかにゃ?」
遥「ありがとうッ!」タッタッタッ… にこ「電気系統よし……動力系統よし……磁力シールドよし……」
にこ「……こころ、ここあ、小太郎」シャシンナガメ
にこ「さ、いっちょやるわよ、相棒!」
「フワァァァァァアンッ!!」
遥「にこさん?!こっちから……」
「ゴボボボボ……」
遥「825号!」ダッ
『こちら管理局、825号の発進許可は出ていません!至急停車して下さい!繰り返します……』
「ゴボボボボ……」
遥「にこさんッ!!」ダッダッダッ……
希「すー……すー……んぁっ?!な、何や?!」
希「にこちゃん……」
遥「はっはっはっ……ああああっ!!」ダッダッダッ……ガシッ!!
「ゴボボボボ……」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 海未「水琴窟の内部はアリの巣状になっています」
海未「ペガサスエクスプレスの現在地はここ、全長82キロの丁度8分の1地点です」
海未「私達はポイントAFを通り救出に向かいます」
愛「……まずいなぁ、電気系統が不安定になってる……」
海未「大丈夫ですか」
愛「ビッグワンのシールドがどこまで持つかだけど……」
果林「心配しないで、いざとなったら洞窟の土手っ腹に大穴開けてでも救い出すわ」
ミア「ペガサスエクスプレス、相変わらず交信不能」
愛「もう見えてるし、後は連れて帰るだけだよ」
ミア「……変だ」
海未「どうしましたか?」
ミア「水琴窟内部の音が、モニターできないんだ……」
海未「音?」
ミア「静か過ぎる……」 ……バリバリッ!!ビビビビッ!!!
愛「磁気雪崩、直撃来るっ!」
ミア「ペガサスエクスプレスが動き出した?!」
愛「磁気シールドが破られた……メインコントロールシステムダウン」
海未「なんとか駆け抜けて下さい!」
愛「サブもダメ……くっ……走行システム全損」
果林「……」スクッ……タッタッタッ…
海未「どこへ行くんです」
果林「手動でやってみます」
海未「果林ッ!」
シュピーッ
……
「バリバリバリ……」
運転士「くそっ……駄目だ……」カタカタ
『ペガサスエクスプレス、走行速度が限界まで上昇。磁気嵐の影響による暴走と思われます』
栞子『ビッグワンは』
『通信が途絶えました……!』
遥「にこさん、ペガサスエクスプレスが……!」
にこ「分かってるわよ」グイィィッ
遥「っっ……すごい加速……」ググググ
にこ「こいつはアイドルケンの磁力鉱石を満載して走るように設計された機関車なの」
にこ「今は貨物車も無いし、積荷は人間二人だけだから」
遥「でも、明日で廃車なんでしょ……?」
にこ「誰に聞いた」
遥「……希さんが」
にこ「まったく余計なことを……」
遥「……あれは!!」 バリバリッ!!
果林「っ……ダメか……」
「フワァァァァァアンッ……」
果林「何?……あれは」
「フワァァァァァアンッ!!」シュゴゴゴッ
遥「……」ピシッ
果林「遥?!」
果林「……ふっ、まったく」
にこ「っ……ふぅ……あなた、どうして着いてきたの」
遥「どうしてって……人を助けるのに理由がいるの?」
遥「にこさんだってそうでしょ?整備士なのに、825号を動かした」
遥「SDFは人を助けるのが仕事だよ」
遥「……私、悪かったよ……生意気なことばかり言って」
にこ「ん?……くくっ……ふふっ……あっはっはっ!」
にこ「ひよっこが殊勝なこと言っちゃって!まったく」
遥「え?……ふふふっ、あははっ!」 バリバリッ!!ビビビビッ!!!
にこ「ッ!!伏せて」ガシッ
遥「何っ?!」
ゴゴゴゴッ!!
遥「ひゃぁあっ?!」
にこ「落ち着いて!磁力シールドが有る!」
バリッ!!
遥・にこ「「!?」」
シュピーッ
海未「どうですか」
果林「825号に追い越されました」
海未「そうですか……走行システムは?」
愛「まだかかります!」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
「……もうだめだ……」「あなた……」「……」
「大丈夫だよお母さん!SDFが来てくれるよ!」
「……そうね」
海未「……まずい、あの先は磁力銀河です……」
海未「システムの復旧は?」
愛「走行システムの再インストール……終わりました!サブコントロールシステムは無事です、走れます!」
海未「出発します!」
果林(……遥、にこさんを助けてあげなさいよ) 遥「……っ……にこさん?!しっかり!」
にこ「っ……大丈夫よ」
遥「私が変わる!とにかく休んで……」
にこ「アイドルケンは魔窟……あんたなんかに任せられないわ……」
遥「じゃあ指示してよ!それなら良いでしょ……?」
にこ「……ええ」
にこ「……」スッ
遥「……その写真」
にこ「聞いたの……?」
にこ「私は助けてあげられなかった……誰も……ただの一人も……ッ」
にこ「次の磁気嵐が来る前にペガサスエクスプレスを救出する!急いでッ!」
遥「はいッ!!」グィィィッ!!
【管理局】
「磁力銀河より崩壊が広まっています」
「惑星アイドルケンが崩壊するのは時間の問題です!」
栞子「……まだ、825号がいます……ッ!」 遥「……見えたッ!!ペガサスエクスプレス!!」
にこ「よーしやるわよ!覚悟できてるッ?!」
遥「はいッ!!」
運転士「駄目だ……もう客車を切り離すしか……」
「……ねえお母さん、あれなんだろ」
「え?」
にこ『……こちらアイドルケン鉱山貨物列車825号、今追いついた!』
にこ『これより非常用連結ユニットで牽引に入る!』
運転士「825号?!」
遥「……」キコキコ
にこ「アームが出たら足元のスティックを引いて!操作レバーが出るわ」
にこ「あとはタイミング、任せるわよ!」
遥「はい!」
遥「……っ」グイッ
ガシィィンッ!
遥「ダメ……もう一度っ」グイッ
ガシィィンッ!
にこ「焦らないで、まだ時間はあるわ」
にこ「エンジンの歌を聞いてタイミングを合わせるの」
遥「エンジンの……歌……?」
にこ「そう、私が子供の頃から聞いて育った歌よ」 海未「追いつきましたか!」
果林「行けるわ、飛ばして愛」
愛「分かってるって!」
遥「っ……」
ガシィィンッ!
遥「いけぇっ!!」
にこ「……ッ」グググッ
ガキィンゴゴッ!!
遥「掛かった!」
にこ「よし!」キキィィィッ!!
にこ「反転するわ、戻って!」
遥「はいっ!」
バリバリ……バリバリバリッ!!
遥「うわっ!?」
ドゴォォンッ!!
にこ「うわああああああっ!!」バリバリバリ
遥「っ……にこさん?!」
にこ「はぁ……っ」シュゥゥゥゥ
遥「にこさん!マスコンから感電して……今手当を!」
にこ「よくやったわ……相棒……」
遥「え……?」
にこ「……」 遥「にこさん?……にこさんっ?!」
『こちらビッグワン、磁力銀河の崩壊が早まっています。速度を変えないで下さい』
『連結してアイドルケンより脱出します』
『隊長ぉ……にこさんがっ!!』
海未「遥ですか!?」
『にこさんを助けてよ……っ、だれか……にこさんを……!!』
海未「壁面を破壊して惑星表面へ出ます、砲撃用意……」
愛「砲撃用意……」
海未「……撃て」
バチュゥゥゥンッ!!
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 遥「……にこさん」
「こらーッ!!ひよっこ!!」
遥「っ……?」
希「なんて、言っとるやろなぁにこちゃんは」
希「……にこちゃんは心臓が悪かったんよ、死ぬ時はこの825号のそばでエンジンの歌を聞きながら死にたいって……願いが叶っちゃったんね」
希「……」ナム
遥「……私聞きましたよ、この子の歌」
遥「頑固で……力強くって、にこさんみたいな声でした」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━
【ディスティニー駅】
「あ、お母さん見て!825号!」
825号「……」
「すっげぇ~……」
一粒の麦の、その生涯が価値あるものであったかどうかは、最後の瞬間までわからない。
だが、その思い出は人々の心に根付き、やがて豊かな実を結ぶのだ。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオッ……」
???「……」
《次回予告》
遥「失くしたい記憶、失くしたくない記憶……」
遥「その全てが、人の生きてきた証……」
遥「次回9話、記憶の回廊」
遥「私達は、次の駅で何かに出会う」 >>83
訂正
愛「その不明列車の出現場所は?」
海未「報告があったのはノーイグジット・オリオン線、アキバラン環状線、そして……このアルファ・ケンタウリ線です」
愛「なんで三ヶ月もほったらかしに?」
海未「三ヶ月に一度しか夜が来ないんです、列車は夜しか現れないらしく……」
愛「よっ……ほっ」パシッ
愛「オモテ……まさに幽霊列車だね」
ミア「……ねえそれ何?」
愛「コインだよ、愛さんの幸運の女神なんだ~」
果林「目撃者は?」
海未「澁谷ありあ18歳、行方不明者の妹さんです」
果林「一人だけ?」
海未「そうです」
果林「クサいわねー、その妹」
遥「……どういう事ですか?」
果林「幽霊列車に乗って行方不明、ねぇ」
果林「きっとその辺から死体が見つかるんじゃないかしら」
遥「ははっ、まさか」
果林「あなた、本当に甘ちゃんね」
遥「なっ……」 人はだれでも、心の奥底に様々な思い出を抱えている。
苦しくて捨ててしまいたい記憶、愛おしくいつまでも取っておきたい記憶。
それは、人生そのものであり、人の生きている証なのかもしれない……
果林「丸2日の休暇なんて、アリアトネジャンクションの電波障害もたまには良いことするじゃない」
愛「ね~、でも治ったら即出発だよ……」
果林「いいじゃない、美味しいご飯でも食べてリフレッシュしましょ?」
愛「ご飯だけじゃなくてせっかくだから観光も━━」
ミア「良いところじゃないか!空気も美味しいし……すーっ……はぁ……」
遥「きれいな所だね~」
海未「ここ惑星コッペは先住民族の遺跡で有名な星です」
海未「たまには緑豊かなリラックスするのも悪くないでしょう」
ミア「Really!?ボク、海未は仕事の鬼だっと思ってたよ!」
遥「 」
海未「……まあ、自然現象には勝てないという事です」
海未「ゆっくり休んで、英気を養ったらもちろんしっかり働いてもらいますよ」
ミア「うう……」 遥「自然が多いだけじゃなくて、どこか不思議な雰囲気のある惑星ですね」
海未「そうですね……、遺跡を守る種族だから神話的な逸話も多いそうですし」
ミア「へぇ~」キラキラ
遥「ミアちゃん、スピリチュアル的なの好きなの?」
ミア「え?い、いや別に……でも、気になるじゃないか」
遥「もしかしてミアちゃんまだサンタさんとか信じてる?」
ミア「遥!!」
遥「あははっ!」
「……どうせ会えやしないわ」ボソッ
遥「?……」
ミア「……遥?どうかした?」
遥「……ううん、行こ」 海未「私が全員分チェックインしておきますから、しばらく待っていて下さい」
遥「……あれ?愛さん達は?」
愛「おーい!こっちこっち!」
果林「ん、このワイン行けるわ……」
ミア「もうやってる……」
遥「まだ昼なのに……」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 愛「っぇえ~……もう空だ~」
愛「ねぇねぇはるちゃぁ~ん分けて~」
遥「わ、私飲んでないですから」
愛「え~、こんなときくらいハメ外しなよぉ~」ダキッ
遥「あっちょっ」
愛「いつも散々むちゃするのに~」ベロンベロン
遥「ミアちゃん!助けて!」
愛「大体はるちゃんみたいのと一緒だと、命がいくつあっても足んないよ!」
愛「ねぇ~かーりーん~んふふふふ」
果林「私は一分だって御免よ」
遥「なっ……いちいちそんな言い方しなくたって良いじゃないですか!」
遥「私だって一所懸命やってるんですよ!?」
果林「一所懸命……一所懸命、そう言ってれば何でも済まされるなんて良いわね」
遥「……っ」
海未「子供じゃないんです、静かに飲みなさい」
「よお威勢がいいねぇ、あんた達もかすみんに会いに来たのかい?」
「でもあんたらは若いから、失くしたい思い出なんて無いんじゃないか?」
「あっちのやさぐれてる方は、いっぱいありそうだが、はははっ!」
ミア「サライって?」
「ここにいればサライが来て、要らない思い出を盗んでくれるのさ」
遥「思い出を盗む……?」
「まあ人の願いが作った想像の産物かもしれんがねぇ」
「誰でも失くしたい思い出の一つや二つ、持ってるだろうからな……」 果林「……」
遥「……思い出」ボーッ
ミア「あっ!遥ー!探したんだよ、どうしたの……?」
遥「ん、ちょっと考え事してて……」
ミア「果林に言われた事、まだ気にしてるの?」
遥「ううん、そんなんじゃなくてね……」
ミア「はいこれ!甘いもの食べると元気出でしょ?ボクの取っておきのChocolate、あげてもいいかなーなんて」
遥「……じゃあ」スッ
ミア「な~んちゃって!はむっ……あげないもんねっ」
遥「もー、意地悪」
遥「……」
ミア「……もしかして、食べたかった?」
遥「ううん、そうじゃなくて……ミアちゃんは失くしたくない思い出って……ある?」
ミア「そんなのたっくさんさ!」
遥「たくさん?」
ミア「破いて捨てちゃった楽譜とか、アイスクリーム落として台無しにしたドレスとか、パパと喧嘩した時に壊しちゃったお気に入りの……なんでもないっ」プイッ
遥「なんだ~、もっと大変な事かと思った……」
ミア「なんだよ!みんな大事な思い出なんだぞ!?」
遥「私は……失くしたくない思い出なんて一つも無いな……」
遥「どれも私の宝物なんだ……どんなに辛い思いでだって……」
「大事なものってこれですか~っ?銃……?これがあなたの思い出の塊って事ですかぁ~」 遥「?!……返してッ!!」
ヒョイッ
遥「うぁっ……」パシッ
「そーいうのは趣味じゃないです」スッ
遥「待てっ!!」タッタッ
遥「……居ない」
遥「なんなの今の子……」
ミア「……もしかして、いまのがさっきの話の?!」
遥「かすみんだっけ?そんな訳……」
愛「ぐがぁぁぁ……んんぅっ……すーっ……」zzz
果林「……」
果林「失くしたい思い出、か……」
果林「……」ペラッ
果林「ランジュ……」
━━━━━━━━━
━━━━━━
━━━ 果林「……」
「やっと見つけたわ!あなたが果林ね!」
果林「ん……?」
「コーヒー、飲まないなら頂くわよ」
「……ぷはーっ!ぬるい……」
「本部って広いわねぇ~、探し回っちゃったわ」
果林「……」
「今日からコンビを組むランジュ、ショウ・ランジュよ。よろしくね!」
果林「……」スッ
果林「私は誰とも組まない」
「……」
愛「ねぇカリン、ランジュは新入りで何も知らないんだから、あんまり突き放すのは……」
果林「……」
シュピーッ
ランジュ「あちちち、ほら早く取って頂戴」
果林「要らないわ」
ランジュ「……死神果林、ね」
果林「……ッ!!」
ランジュ「二人亡くしたんですってね」
果林「はっ、よく知ってるわね」
果林「知っててノコノコ入ってくるなんていい度胸じゃない」
果林「逃げ出すなら今の内、それともそんなに死にたいの?」
愛「カリンやめなって」 ランジュ「……死ぬのはアナタよ」
果林「……何?」
ランジュ「アタシは不死身のランジュ」
ランジュ「このアタシが三人目にして最後の相棒なのよ」
ランジュ「どう?嬉しいでしょ」
果林「……」
ランジュ「んっ……ぬるっ、アナタのせいでまた冷めちゃったじゃない!」
ランジュ「とにかく、ランジュがアナタを死神果林からただの果林に引きずり下ろしてあげるわ、覚悟なさい!」
カリン「……ふふっ、ふふふっ……」
ランジュ「なによう!そこは笑う所じゃないわ!」
カリン・愛「ふふふっ……ふふっ……」
果林「……」♪~
愛「……」
ランジュ「きゃあっ!死神のブルースってとこ?辛気臭いわねぇ」
果林「じゃあ何なら言いわけ?」
ランジュ「これからは不死身のロックンロールよ!」ジャーンッ
愛「お、ランジュいいね~っ!」
ランジュ「……」ジャンジャカジャカ
果林「……ふっ」♪~
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━━━━━━
━━━ 果林「……」♪~
果林「ん……」
愛「……?カリン」ノソッ
かすみん「……」シュイイインッ
果林「っ……ぁ……」ドサッ
かすみん「もらっちゃいましたよ~っ!」シュタッ……シュタッ……
愛「ちょっと!……カリン?!」
果林「っ……ああ……」
愛「ねえ、大丈夫?!」
果林「私、今何してた?この写真の人、誰かしら」
愛「カリン……!」
果林「まあ良いわよね、少し酔っちゃったみたい。愛も早く休んだ方が良いわよ~」フリフリ
愛「まさか……記憶を……」 遥「ミアちゃんおはよ」
ミア「Good Morning……ふわぁぁっ」
バンッ
愛「ちょっとカリン!昨日の事……ううん、それだけじゃなくて……」
果林「何よ朝っぱらから……」
遥「な、何?」
愛「この写真だよ」
果林「ん……三年前ね」ペラッ
愛「そうじゃない!ランジュの事だよッ!!」
果林「ランジュ?」
愛「!!」
遥「お、おはようございます……」
果林「あら、はるちゃん何食べる?ほら一緒に食べましょ?ミアちゃんも、これなんて美味しそうよ~」
遥「っぅぇえぇ?……な、何かあったんですか」
愛「……かすみんだよ」
遥「!」
ミア「じゃあ、昨日の子はやっぱり……」
愛「二人も何か盗まれたの?!」
遥「いえ……私は……」
愛「そっか……」
愛「カリンは記憶を盗まれちゃった……大事な記憶を……」
遥・ミア「えっ?!」 遥「本当なんですか?!大事な記憶を盗まれたって……本当に思い出せないんですか?!」
果林「何ごちゃごちゃ言ってるのよ……私がどうしたの?」
愛「思い出してよカリン!!このまま忘れちゃうつもりなのッ?!」
遥「大切なものじゃないんですか?!自分だけの……どんな事だって忘れて良いものなんて無いと思います!!」
愛「カリン……カリンが忘れたら誰がランジュの事を……」
果林「うるさいわねぇ!私は失くした記憶なんて一つも無いわよッ!」ガタッ……スタスタ……
愛「カリン……」
「……!」
果林(何……何でこんなに気分が悪いのよ)
果林(さっきまではあんなに……)
「ねえちょっと!待って」
果林「?」
「あなたも辛いことあったんでしょ?」
「かすみんはどうやって記憶を盗っていったの?」
果林「お嬢さん、それはもしかして新手のナンパ?」
「そう、覚えてないないんだったわね……」
「ごめんなさい……どうして……どうして来てくれないの……」
果林「お嬢さん?……ッ!?」
かすみん「追い回されるのは好きじゃないんです」フワフワ
「!!かすみん?!かすみんなの?!」
果林「かすみん……?」
「かすみんお願い!あの人の記憶を盗んで……」
かすみん「……」シュゥゥゥゥッ!
「……」バタッ
果林「ぁあっ!ちょ、ちょっと!大丈夫?!お嬢さん……」
「こんにちは、いいお天気ね」
果林「!!ちょ、ちょっと!あなた何を……記憶を……盗んだの?!」
かすみん「えへへっ……」サラサラサラ……
果林「消えた……もしかして私の記憶も……あの子に……」 海未「では噂は本当だったんですね」
遥「かすみんの事、隊長は知ってたんですか?」
海未「はい、ですがどこの星にも一つや二つある伝説の類だと思っていました」
ガチャッ
ミア「HEY!果林は?!」
海未「ホテルには居ません。今愛が探しています」
ミア「そっか……ボク、エマなら何か出来ることが有るんじゃないかって」
エマ「果林ちゃんは何か病気なの……?」
海未「良いんです、果林は別に病気ではありません」
エマ「そっかぁ……。アリアトネジャンクションの観測室から、あと9時間ほどで電波障害が治るだろうと報告がありました」
海未「分かりました、先に戻って待機していて下さい」
エマ「はい」
ミア「……ブルースの記憶が盗まれたって、やっぱり本当なの……?」
海未「そのようです……。9時間後には出発します」
遥・ミア「!!」
海未「果林達にもそう伝えて下さい」
遥「このまま出発するんですか?!」
海未「私達に出来る事は何もありません」
海未「記憶を取り戻すかどうかは、果林自身の問題です」
ミア「でも!」
遥「行こうミアちゃん」
ミア「遥……」
遥「私達に出来る事だって何かあるかもしれない!」
遥「それに……あんなの本当の果林じゃ無い!」
ミア「うん!」 果林「……」
果林「一体何を盗まれたの……」
果林「ハーモニカ……はある……」
『━━』
果林「何?!……今、血まみれの」ガタッ
『━━……』
果林「っぁ……」ポロッ
『カチャッ……』
果林「……私は何を……忘れて……」
愛「……」
果林「……愛」
愛「……探しにいこうよ」
かすみん「……」スッ
『きゃはっ……あははっ……』
かすみん「こんなにきれいなのに……」
果林「こんな闇雲に探してて、本当に取り戻せるの?!」
愛「取り戻す!」
果林「何か生意気で、頑固そうな子供だったわよ」
愛「そうだカリン、1ラブカ」
果林「なんの事?」
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━━━ 愛『ねえ、本当にかすみんって妖精が居たらどうする?』
果林『ふっ、失くしたい思いねぇ……』
果林『愛こそどうなの?大失恋と同時に一文無しっていう劇的な過去が有るじゃない』
愛『しずくかぁ……よしてよその話は』
愛『くれてやってもいいけど、タダで盗まれるだけっていうのはなんかムカつく』
果林『じゃあ賭ける?愛が盗まれる方に一ラブカストーン』
愛『盗まれたらどうせ忘れちゃうじゃん……まいいか』
愛『もし果林が盗まれたら、これは頂くね』
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━━━
愛「賭けは賭けだからね~」
果林「良かったわね、盗まれたのが私で」
愛「しずくを忘れるつもりは無いよ、苦いけどアタシの青春だからね」
果林「……私は、本当はどうしたかったのかしら」
果林「最初は重石が取れたみたいに気分が晴れ晴れとしてた」
果林「でも今は……空っぽなのよ、穴が空いたみたいに」
「~♪」
愛・果林「……!」
果林「歌?」
愛「行こう!」タッタッ
果林「あぁ、ええ!」タッタッ
「~♪」
果林「あの石の所?!」タッタッタッ……
愛「あれはストーンヘンジって言うの!」タッタッタッ…… 「~♪」
果林「どこ……居ない」
愛「おーい!出てこい!!」
「何しに来たんですかぁ?」
愛「!!」
果林「上よ!」
かすみん「かすみんはもう用無いです」
果林「あなたが盗ってった、私の記憶の事よ!」
かすみん「この記憶なら返してあげません、すっごく気に入ってるんですぅ!」ニコニコ
果林「っ!」
愛「タダとは言わないよ!」シュンッ
かすみん「……!」
愛「賭けだよ、このコインが表ならカリンの記憶を返してもらう」
愛「裏なら、記憶もコインもかすかすの物だよ」
かすみん「かすかすじゃ無いです!」シュタッ
かすみん「それ……何なんですか?」
愛「コイン見たこと無いの?ほら」
かすみん「わぁ……このきれいな女の人、誰ですか?」
愛「千年女王って言うんだよ」
愛「さあどうする?このコインにはアタシとカリンの思い出がたっぷり詰まってる……」
かすみん「!!やりますやります!それ欲しいですぅっ!」
愛「じゃあいくよ」チュインッ……パシッ 愛「開けるよ……表」
果林「私達の勝ちね」
かすみん「……そんなぁっ」
愛「約束だよ、カリンの記憶を返してもらう」
かすみん「い、いやです……」
愛「約束を守らないとどうなるか知ってる……?」
かすみん「し、知りませんけど……」
愛「こう……なるんだよっ!!」ガシッ
愛「コチョコチョコチョ!!」
かすみん「あひゃひゃひゃっ!!!あがっ!!あ゛ぁはあ゛!!やえ゛っやえ゛て!かえす!かえ゛しますぅ゛!!」ジタバタ
果林「っと……」ヒョイ
果林「この宝石みたいのが……私の……」
遥「果林さん!愛さん……はぁ……はぁ……かすみんも……記憶見つかったんですね?!」
愛「ねえ、記憶を戻すには?」
かすみん「その辺の石にぶつければ戻りますよぅ……」
果林「そう……」フッ
果林「ッ!!」ピタッ
遥「果林さん……?」
愛「記憶を戻したくないの?」
果林「……私は……っ」
遥「どうして……そんなのダメですよ!だって……」
果林「……」
遥「大事な物だから辛いんでしょっ?!」
果林「ッ!!」ブンッ
パリィンッ
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━━━ 果林『よし、武器をお願いッ!』
ランジュ『任せて!』パシッ
果林『よし、4時44分確保っ……まったくこんなに手こずらせて』
『うぅ……うぁ……』
ランジュ『一件落着ね、行きましょ?』
『うぁああっ!!』バリバリバリッ
ランジュ『果林ッ!!そいつの腕、武器にっ━━』バッ
果林『?!』
グサッ……バキューンッ!
『うぁ……あ……』バタッ
ランジュ『くぁ……っ……』
果林「ランジュ……!?ランジュ!!しっかり!!愛!エマを呼んでッ!早くッ!!」
ランジュ『ドジしちゃったわ……』
果林『黙って……!』
ランジュ『あなた悪くないわ……私が油断したからよ……っ』
果林『喋らないで……今エマが来るわ……』
ランジュ『無問題ラ……いったでしょ?……私は……不死身……なの……』
果林『ランジュ……静かにして……』
ランジュ『みてなさい……かりんがしにがみなんか…じゃ……無いって……』
ランジュ「らんじゅが……しょう……めい……」
果林『ランジュ……?ランジュ……!?』
果林『そんな嘘よ……ランジュっ!!』
果林『ランジュぅうっ……!!!!』
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━━━ 果林「……」
遥「果林さん……」
かすみん「変な人ですね、せっかくかすみんが盗んであげたのに」
果林「傷跡が消えると、落ち着かないのも居るのよ……」スタスタ
かすみん「みんな幸せになるんだと思ってました……」
愛「……盗まなくてもいい方法を教えてあげる、ほらっ」チュインッ
かすみん「え?」
愛「そのコインで賭けをして、かすみんが勝ったら思い出を話してもらう」
かすみん「負けたら……?」
愛「かすみんの話をしてあげればいいじゃん!」
ミア「Byeかすみん!いつかボクも訪ねてくるかもしれない!」
かすみん「あ……」フワ~ッ
かすみん「またね~っ!!」
遥・ミア「……」フリフリッ
思い出は、時に背負いきれないほど重荷になることが有る。
だが、本当に記憶を失った時、人は初めて気づくのだ。
持ち続ける痛みが、どんなに大切な物だったかを。 果林「遥ァ!ぼんやりしてんじゃないわよ!もう休暇は終わり!」
遥「は、はい!」
遥「陽気で親切な果林さんの方が良かったかなぁ……」
ミア「えぇ~?らしくなくてなんだか気持ち悪いじゃないか」ゴソゴソ
ミア「……あれ?無い?!」
遥「えっ?」
果林「何か盗まれたのッ?!」
ミア「ここに入れといたチョコが無くなってるんだよ!!」
「「「……」」」
「フォォォォオオオッ!!」
かすみん「ひょいっ……はむっ」
かすみん「これは結構かすみん好みですね……」モグモグ
愛「あと30分ほどでアルファ32分岐点を通過します」
海未「分かりました、ワープ経路の選定をお願いします」
愛「了解」
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━━━
「……」ゴソゴソ
「……!!」チャキッ━━
《次回予告》
エマ「私はただのセクサロイド」
エマ「人ではない私を、何故あなたは守ろうとするの?」
エマ「次回第拾話、分岐点」
エマ「私達は、次の駅で何かに出会う」 ちょっと忙しくなってしまったので更新頻度落ちます、すみません ━━━
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果林「……」スッ
遥「……拳銃……何ですかいきなり」
果林「使いなさい、撃てない銃なんて……気休め以下よ」
遥「……わかりました、持ちます」
遥「でも……私は使いませんっ!」
果林(いつか必要になる時が来る……生きるために)
果林(それが……宇宙の掟よ━━)
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━━━━━━
━━━ 銀河鉄道の停車駅は、惑星だけではない。
宇宙空間に浮かぶ、空間軌道ジャンクション。人々はここで車両を乗り換え、自分の進む道を決める。
それが、分岐点である。
『特殊車両用ホームに……囚人列車が入ります……』
ガタンガタン……ガタンガタン……
バキューンッ!!
「ギェェッ!!……ギエッ……」ドサッ
ビチャッ
女「!!」
男「クフフフ……」
第10話:分岐点 遥「パーティーですか?!」
愛「そ!シリウス小隊の親睦会パーティー!」
愛「最近ちょっとした賭けに勝ってね~、良いワインが手に入ったんだぁ~!みんなで飲もう?」
果林「私は」
愛「もちろん来るよね~、決まり」
果林「ちょっと!」
愛「海未隊長も来ますよね?」
ミア「キャプテンが来ないと締まらないよ!」
海未「そうですね、たまにはそういうのも良いでしょう」
海未「全額とは言えませんが、ある程度費用は持ちますよ」
果林「あぁ……」
遥「良いんですか?!」
ミア「Generous!最高だよ!」
果林「はぁ、こっそり飲もうと思ってたのに……」
エマ「……」タッタッ…… 愛「これで軍資金はよしっと……おつまみにはもんじゃと……あっ、モッツァレラチーズも入れて……もちろんエマっちも来るよね?」
果林「……医療車両に行くって」
愛「あちゃー、今回も振られちゃったか」
果林「昔っからエマは非番の集まりには顔出さないのよね」
愛「実は私達、エマっちに嫌われてたり……」
遥「えっ……?!」
愛「なんて、冗談冗談」
遥「あはは、そ……そうですよね~」
遥「……」
遥(エマさん……) 【アルファ32分岐点】
……ジジジジジジッ!!……バコッ
男「よし、大丈夫だ、出られる」
男「ウェズン鋼の車体がこんな簡単に溶けるとは……」
男「脱出艇を探せ、手分けするぞ」
男二人「わかった」
女「……っ」
【管理局】
「アルファ32分岐点に停車中の囚人護送列車から囚人4名が脱走した模様です!」
栞子「現場を報告して下さい」
「現在分岐点内、A20号通路に向かい逃走中」
男「この貨物列車で……」
栞子「非常警戒態勢、アルファ32分岐点は直ちに封鎖」
「了解」 わからん、辞めたい
てか辞めます、保守ありがとうございました。さようなら ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています