善子「不思議な動画」
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それは多分ハンディカメラか何かで、テレビの画面を撮影し続けている、そんな映像だったわ。
環境音って言うのかしら、室内特有のサラサラしたホワイトノイズだけを拾っているの。 まぁだから、撮影者は無言でテレビにカメラを向けて構えていて、テレビに映っている動画も再生はしているものの、音がでてない事が推測できるのね。
無音のままに映像が流れ続けているテレビ画面を、カメラの画角いっぱいに「直撮り」している、そんな動画。 テレビの中には楽しげに話す一人の女性が映ってるの。
音が無いから話の内容自体は分からないんだけど、ホームビデオみたいに楽しそうな話をしてる、そんな風情なの。
でもね、そのロケーションにはちょっと違和感があるの。
って言うのもね、その女性がどこにいるのか、それが分からないほどに、撮影場所が真っ暗なの。
女性の姿は、多分懐中電灯か何かの局所的な光源で判別できてるんだけど、その周囲の風景はほぼ見えない感じで。 まぁ多分元の映像が悪いのと、ただでさえ画質の悪い映像をハンディカメラで直撮りしている、そういう外部環境の要因もあるんだろうけど。
そうして、真っ暗な背景の中、懐中電灯で照らされた女性がぱくぱくと口を動かしている映像は、およそ二分続いたわ。
二分経った頃、突然に女性は口を閉じて。
じっとこちらを───ビデオの撮影者の方を、向いたの。
はにかむような微笑を浮かべたまま、数秒間。
撮影者の方をじっと見つめた後で、
一歩、また一歩と後退を始めたの。 反対側を向いて歩いているとかじゃなくて、
「依然としてこちらを見つめたままの状態で、後ろ向きに歩き始めた」の。
その辺りで、画角いっぱいに(少しばかり画面端がはみ出した状態で)テレビ画面を接写していたハンディカメラが、恐らく手ブレの影響で少しばかり角度がズレたからかしらね。
女性の奇妙な動きを映しているテレビ画面の、画面左上にあった「逆再生」の表示が、その直撮り映像のなかにちらりと映りこんだわ。
そう、それはね「巻き戻している最中のビデオテープ」の映像を撮影したものだったのよ。 逆再生中だから音は出力されないし、音が出力されないまま、ただ女性が口を動かしているだけの映像だったからそれが逆再生中だって事に気づかなかったのよ。
巻き戻されるテレビ映像の中で、さっきまで楽しげに喋っていた女性は、来た道を後ろ歩きでゆっくりと戻っていくの。
それに合わせて、女性を照らしていたいくつかの懐中電灯の明かりは複数のちいさなスポットライトのように、ぶれながらその姿を照らしていったわ。 複数の明かりが、不規則にブレているからそこで始めて撮影者が複数人である事が分かるの。
女性が後ろに歩いて行ってビデオの撮影者はそれをさっきと同じ場所で見つめている。
そのため遠ざかる女性の姿は段々と小さくなっていき、それに合わせてライトの光も段々と広くぼんやりしたものに変わっていくの。
真っ暗だった背景が、少しずつ薄い灰色に変化していく。 それによって、その撮影場所がテレビ越しにでも何とか察せられるようになってきたの。
それは廃墟だったの。
まず人が住むことはできないであろう、ぼろぼろの三階建てアパートのような廃墟。
黒くシミが広がるように朽ちた外壁や、明らかに経年劣化で割れたであろう窓ガラス。
その周りを囲むように生えている、ぼうぼうの雑草。 その雑草をかき分けるようにして、女性はこちらを向いたまま後ろ歩きでアパートまで戻り、一階のひび割れた窓を開けて廃墟の中に入り、そして窓を閉めた。
閉まった窓ガラスを、暫くの間、幾つかの懐中電灯が照らした後で、そのビデオの撮影者らは、ゆっくりと、その廃墟を遠ざかっていく。
逆再生の映像だから、その廃墟を視界に映したままで、後ろ歩きに進んでいくことになるの。 閉まった窓ガラスを、暫くの間、幾つかの懐中電灯が照らした後で、ビデオの撮影者らはゆっくりと、その廃墟を遠ざかっていく。
逆再生の映像だから、その廃墟を視界に映したままで、後ろ歩きに進んでいくことになるんだけどね、少しずつぼろぼろの廃アパートの姿が小さくなっていき、そしてどこかで道を曲がったんでしょうね。
ふっとカメラがぶれると、一旦何も見えなくなって、手ぶれした状態で真っ暗な雑木林を歩く映像が流れはじめたわ。 ほどなくして、撮影者は来た道を(逆再生される映像によって結果的に)戻っていき、数分経った頃に、五、六人乗りくらいの乗用車が置いてある狭い道に出る。
懐中電灯を持っている人々が、めいめいにその中に乗り込んで。
ビデオカメラは、バック走行のように動く車窓や、車の中を映し出していった。
どうやら、その映像を撮影しているのは、私と同年代くらいの女性の一団だったの。 カメラに向かって笑顔を浮かべたり、真っ暗な雑木林を進んで(戻って)いく車窓を見ながら何やら雑談をする様子が、車内ライトによって映し出されていたの。
と、
ここでビデオは止まった。 そのテレビ画面を直撮りしている映像が、じゃなくて、そのテレビ画面が、止まった。
画面の左上を見るとさっきまで「逆再生」だった表示が「一時停止」に変わっててね。
つまり、そのビデオを接写している誰かが、映像の巻き戻しを一旦止めたんでしょうね。
そして、数秒の沈黙の後で、
ビデオが「再生」された。 さっきまで無音で逆再生されていた映像が、正規の時間経過に沿って、音声付きで流れ始めたの。
「ハァイ?今私達はー、幽霊が出るって廃墟にー、肝試しに来てるのーー」
明るげで笑いまじりの、女性の笑い声が聞こえてくる。
「あと何分ぐらいで着くって言ってたっけー」
「んー、多分もうちょっとだと思うんだけどー」
カメラは映している。 「でもさ、本当なの?そのハナシ」
「いや、ホントなんだって!お客さんも言ってたからさ」
「結構有名みたいだよ?なんか皆いなくなってそのまま忘れられたとかで」
「へえー。そうなんですね…」
「あれ?もしかしてビビってる?」
「んまぁー?!」
何気ない、女学生の騒ぎようをビデオは映し出している、んだけど。 だとすると、この映像には違和感が残る。
先ほどまでの映像が「逆再生」によるものだとするならば、この一団はこのあと車を降りて雑木林を進み、ほどなくして「幽霊が出るっていう廃墟」に辿り着くことになる。
ひとが住んでいるとは思えない、ぼろぼろのアパート。
真っ暗で電灯も無い、正真正銘の廃墟。 そして、懐中電灯を片手に其処まで歩いた彼女らは、割れた一階の窓ガラスから出てきてこちらまで歩いてくる、ひとりの女性を目撃することになる。
彼女は微笑を浮かべながら草をかき分けて彼女らに近づいて、そして何かを話し始める。
少なくとも数分間。
深夜に、山の中に肝試しに来て、その廃墟に行く様子を撮影して、そこで「あの人」が出てきたのなら。
このビデオは何故、それを淡々と撮影できたのか。 「さて、ここで問題でーす」
突然に声が聞こえた。
それは接写されたテレビ画面のスピーカーからじゃなくてもっと近く。
それを直撮りするハンディカメラの向こうから、聞こえてきている。
テレビ画面の撮影者の声だった。 そして、その声は。
つい先ほど車内の映像で楽しそうに喋っていた、
ひとりの女性の声と、まるきり同じもので。
へらへらとしたその声とともに、
ずっとテレビ画面を接写していたハンディカメラが大きくぶれ、その撮影者が自分の顔を映した。
「みんなはこの後、何を教えてもらったでしょーか」 荒れ放題の部屋の中でぐちゃりと笑うあの女性がいて。
すぐ後ろに座っている彼女の右半身が、右目が見えていてそれは撮影者の方を向いていて、
彼女は肩を震わせて笑いを押し殺していた。 「正解は、これから見ていけば分かりますよおー」
そう言ってカメラが再びテレビ画面を向いた。
画面の映像はちょうど彼女らが車を降りる所で、
「おっ、着いた着いた」
という声が流れ始めていて。
「そこで私は、映像を切りました」 この話の提供者である、女性は
そこで話を結んだ。
「なんでこの映像を先輩が、熱出して肝試しに行けなかった私に送ったのかも。皆が今どこで何をしてるのかも。全部、結局、分からないまま終わってしまいました」
2016 9.12
著者 東條希 世にも奇妙な物語みたいだ
こっからどうなるのか全く読めん
支援 深夜の廃墟から人が出てきたらすぐに逃げ出しそうだけど…
冷静に撮影出来たのは知り合いだったからとか? 今わかってるのは
・この映像は女学生達が肝試しに行った様子をモニターに映し、それを直撮りしている
・登場人物は肝試しに行った女学生複数人と、謎の女性
・謎の女性は廃アパートの窓から登場した
・この動画の撮影者はその謎の女性と一緒にいて、その部屋は汚部屋 そして恐らく
・この動画提供者はスレタイ通りなら津島善子
・動画撮影者は善子以外のAqoursのメンバー
>「んまぁー?!」 ←これ多分ダイヤさん
情報が足りなさすぎる…続き待ってます。 この動画の送り主が善子の先輩なのと、口調的に動画撮影者は鞠莉かな? >>16-17 はAqours3年生組の会話な気がする そうなると果南らしき人物が肝試しを怖がったり嫌がったりしてないのがなんか違和感無い?果南も、というか全員グルなのかな?
善子が熱出して行けなかったって事は逆に言えばそうでなければ参加してたってコトで
なら多分この肝試しは3年組のとかではなく善子以外のAqours全員が参加してるんじゃないかなぁ
でも、「何故、それを淡々と撮影できたのか」(女性の事を知ってた?)とか「みんなはこの後、何を教えてもらったでしょーか」(“私達”ではなくみんな?)を見るに鞠莉が最初から皆をこの場所、と言うよりこの女の居る場所?に連れて来ようとしてた単独犯っぽくも見えるし
「皆が今どこで何をしてるのかも。全部、結局、分からないまま終わってしまいました」の「終わってしまいました」がそのビデオ内の事だけを指してるのかそれとも
そうでなければよからぬ事が起きてそうだし
それと、もうひとつ気になるのはやっぱり希の名前が出て来た事
単なるオカルト要素繋がりかと思いきや最後の日付がことりの誕生日な辺りそこにも何か意味がありそうなんだけどちょっと分かんないな
廃墟から出て来た女がことりだったから同じμ'sの希に連絡したとか? 鞠莉が女性と知り合い且つ、撮影者だったら淡々と撮影出来そうだね
廃墟から女性が出てくるの分かってるだろうから 夜、帰るのが遅くなったんですよ。
私水泳をやってて、その練習に夢中になって。
私基本的にはイヤホンで音楽を聞いてて、途中の、バス停降りてすぐのとこにあるコンビニでお菓子買うときには外すんですけど。
そこ出た後とかはずっとスマホで音楽流しながら歩いてるんです。 コンビニ袋持ちながらてくてく歩いてるときに、
私の家までの帰り道に、路地を一本入る感じで、
道をショートカットできるところがあるんですけど。
そこ歩いてたとき、髪に引っ掛かってイヤホンが取れちゃって、その取れた場所が路地の中腹ぐらいなんですけどね。 っていうのも、路地に入って真っ直ぐ進むとショートカットが出来るんですけど、その途中にちょくちょく脇道みたいなのがあって、でも通り過ぎるだけだからそんなに意識してなくて。
でもその時イヤホンが取れちゃったから、その時初めて「その帰り道の環境音」を聞いたんですよ。 夜の暗い脇道の向こうから、
「おい」
声が聞こえて、そっち向いたら女の人が壁向いて立ってて。
暗くて顔はよく見えないんですけど。
壁向いて両手で顔覆うみたいにしてその人、全然こっち見ないまま、ぼそぼそした声で、すっごい棒読みで泣き真似してたんですよ。 「おい おいおいおい おいおい」
何て言うか、発声練習とか、下手なアングラ劇団の演技みたいな、傍目にもぎこちないって感じる、泣き声の音読みたいな。
「おいおいおい ああかわいそうに おいおい」
でもおかしいじゃないですか、夜の九時とかですよ、 それ。
そんな夜中に路地裏の脇道で、壁向いて立って、
「おいおい おいおいおい」 しかも、女の人が立ってる先の、路地裏の壁って、普通に人の家の壁なんですよ。
カーテンは閉まってたけど窓もあって、しかも窓がちょっと、何センチか開いてるっぽくて。
そんなとこに人が立ってたら絶対やばいのに。
なのにその家の窓の向こうから、
「ふ」
「ふ くっ ひ ふふふ」
明らかに、含み笑いの声が聞こえてきてて。 多分二、三人くらいの、大人の笑い声が、あの下手な泣き真似のむこうで聞こえてたんですよ。
「ふふ あ はは」
「くく あい あ あいつさ」
その声が。
「あいつさ あれで なんとかなるっておもってんの」 笑いながらそういう意味のことを言ってて、そこでやっと我に返って、すぐそこ離れたんですけどね。
その路地裏、てっきり誰も気付いてない穴場の近道だと思ってたんですけど、ただ誰も通らないだけだったんだって、その時初めて気付きました。
流石にもう通ってないですよ。
2016 7.16
著者 東條希 なるほど!
不安の種みたいな感じなのか理解した
楽しみにしてる てっきり終わったものだと思って長文書いちゃった、ごめん
よく見りゃ終了宣言も別人だ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています