歩夢「大好きな人気者の大好きな私の好きな侑ちゃん、、」
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最近平和ボケして忘れてた
歩夢ってこういう奴だったんだ わたしは…子供のころ レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」ってありますよね……
あの絵…画集で見た時ですね
あの「モナリザ」がヒザのところで組んでいる「手」…
あれ……初めて見た時……
なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね……… 私が小さく首を横に振って拒むと、上原歩夢はため息をついてハンカチを取り出しそれを包むと私のブレザーのポケットに無理矢理に手を突っ込んだ。
歩夢「どうしたの?嬉しくないの?」
煽ってるのか本気なのか分からない。ただ、本当に分からないと言った様な顔をしている。
歩夢「あっ!そっか!これがないとダメなんだっけ?」
そう言って上原歩夢は足元に置かれたスクールバックに手を伸ばし中から画用紙を数枚取り出した。
歩夢「はい。これ使って」
恐怖で身体が動かない事って本当にあるんだと実感した。
歩夢「あれ?どうしたの?これ、いらない?」 もう、気がつくと泣いていた。
璃奈「歩夢さん、どうして?」
歩夢「何だ、泣けるんじゃない。かすみちゃんも泣き喚いてたよ。本当、最期まで賑やかな子だよね。別に璃奈ちゃんをどうしよって気はなかったんだけど」
話が通じない。思えばずっとそうだった気がする。出会った頃からこの人は私の事なんて一度も見ようとしなかった。
璃奈「もしかして、侑さん?」
上原歩夢は微笑むとスクールバックから取り出したそれを私に刺した。
せめて、私の血肉が事件の解決の手掛かりとなればと切に思う。 歩夢「良かったね、璃奈ちゃん。かすみちゃん達に会えるね」
喋らない私に上原歩夢は優しく話し掛ける。
歩夢「璃奈ちゃんボード、ニッコリン」
上原歩夢は画用紙を手に取ると私の顔にあてて、そう呟いた。 殺るならもっと苦しめて殺って欲しかった……
続き期待 昔からよく巻き込まれる事が多い。私は何も悪くないのに生きてるだけでトラブルに巻き込まれる。私みたいなのを巻き込まれ体質って言うんだと思う。
幼稚園の頃、同じ組の男の子が大怪我をした事があった。仮にBくんとして、彼はいわゆるガキ大将的な子でよくイタズラをしては先生に怒られていた。私もよく意地悪をされては泣かされていたから、私はとにかくBくんの事が嫌いだった。
年長の時だったと思う。夏に遠足で千葉まで潮干狩りに行った。私は幼馴染と二人でバケツを持って貝を拾っていた。すると近くで騒いでいたBくん達のグループが私達に近寄って来た。Bくんは手にナマコを持っていてそれを私の幼馴染に近づけた。きっと怖がると思ったんだろう。
しかし、Bくんの期待とは裏腹に彼女はクスッと笑って軽くいなしたのだった。その反応が気に入らなかったのかBくんは執拗に彼女にちょっかいを出し続けた。あまりにもしつこくちょっかいを出すものだから流石の彼女も嫌気がさし、最終的には泣いてしまったのだ。 泣き声を聞いて先生が駆けつけて来た時に、Bくんはバツが悪くなりその場から逃げてしまった。私は彼を追いかけた。途中で追いかけられている事に気が付いたのか、彼は私を振り切ろうと岩礁のある方まで走って行った。私も諦めず彼を追いかけて走った。
岩礁のまで追いかけた所で彼も諦めたらしく、降参と言った態度で私に近づいて来た。私は近づいて来た彼の胸をドンって押すと、彼はツルッと滑って岩と岩の間に落ちていった。
後になって追いかけて来た先生達は慌ててBくんを助け出し救急車を呼んだ。幸いと言っていいのか彼は一命を取り留めたが、暫く昏睡状態が続き、更に全治3ヶ月の大怪我を負ってしまった。
親に連れられお見舞いに行った時、Bくんの母親が彼の事を話してくれた。友達思いの素直で良い子だって。Bくんは私の幼馴染の事が好きだったとも言っていた。私はこの母親は何も分かってないんだなと思った。Bくんは捻くれてるし友達思いなんかじゃない。普通、好きな子に意地悪だってしないじゃない。
事故の後、大人は皆んな私に優しくしてくれた。目が覚めたBくんは私に突き飛ばされたと言ったらしいけど、先生達を含め誰も信じなかった。Bくんはそれから大人しくなってしまった。 それからも、私の周りではこう言った事がちょくちょく起きた。私の大事な幼馴染にちょっかいを出す人が多いから、どうしてもトラブルに巻き込まれてしまう。
今もまさにトラブルに巻き込まれている状況だったりする。友達だと思ってた子が実はそうじゃなくて、もう五人も死んじゃった。
あ〜あ、どうしてこんなにトラブルが起きるんだろう。私は友人ちゃんと幸せに過ごしたいだけなのに。 どんなに言ってもエマは言う事を聞いてくれない。
エマ「そんな急に帰れなんて無理だよ。手配だってしてないのに」
果林「そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ。いつ私達だって狙われるか分からないんだから。国外なら流石に狙われる事はないでしょ。お願いエマ」
エマ「果林ちゃんはどうするの?私だって果林ちゃんを置いてなんて帰れないよ」
こんなやり取りをもう何回もしている。かすみちゃんが居なくなってから10日以上が過ぎた。先日、警察が来て璃奈ちゃんまで行方が分からなくなったと言われた。 璃奈ちゃんの住んでいるマンションの監視カメラに彼女が外出する姿が映っていたらしい。また、同日学校の屋外に設置された監視カメラにも璃奈ちゃんの姿が映っていた。それが確認出来る璃奈ちゃんの最後の姿となる。
また、せつ菜の血痕が校舎内で見つかった事から事件は校内で起きているとの見方が大方である。行方不明となった生徒は全員、スクールアイドル同好会のメンバーであり、残された部員も狙われる可能性は高く、特に校内の寮に住む私やエマはかなり危険だと思う。
しばらくの間、警察が警備にあたってくれるらしいけど、じゃあいつまでそれが続くのだろう。 監視カメラが設置された後、璃奈の死体をどう処分したんだろう? 一週間?一ヶ月?じゃあ、その後は大丈夫なの?考えればキリがない。だから、エマには安全な所に逃げて欲しかった。
それから何も進展がないまま二ヶ月経ち、世間が事件の事を忘れかけた頃、エマが殺害された。遺体の一部が見つかったのは埼玉県S市の河川だった。遺体が発見される二日前にエマが外出する姿が監視カメラに映されていたのだった。外出する際はお互いに声を掛け合おうと約束していたのに私は何も聞かされていなかった。
世間はお台場スクールアイドル連続失踪殺人事件としてまた盛り上がっていた。
ある日、刑事が私の元を訪ねて来た。事件解決の為に聞きたい事があるとの事だった。
訪ねて来たのは態度の悪い刑事で、友人を亡くしたばかりの高校生に一切の気を遣う事をしなかった。 エマが死んでどうだとかそんな事を私に聞いて何の意味があるのだろうか。一応、言葉では気を遣う素振りを見せるが言葉の節々に女子供を馬鹿にしている感じが見受けられた。
ただ、私は事件の早期解決を望んでいたので出来るだけ協力しようと思った。
刑事「上原歩夢とは仲が良いのかな?」
態度の悪い刑事は急に歩夢の事を聞いて来た。なぜ、歩夢と不思議に思った。
刑事「ここだけの話ね、私は上原歩夢が犯人なんじゃないかと疑ってるんだよ」
歩夢が犯人?この人は何を言ってるのだろうか。
刑事「当初、警察は君達の事を調べたんだけどね。特に怪しい事もなかったので疑う事をしなかったんだけど。今回の件でもう一度詳しく調べたんだけど、引っ掛かる事があってね」
果林「引っかかる事?何ですか?」
刑事「上原歩夢の周りでね、事故が多発してるんだよ」 果林「事故?」
私が聞き返すと刑事はニヤッと笑うと胸ポケットから煙草を取り出して一本咥えた。
刑事「吸うかい?」
果林「校内は禁煙です」
そう伝えると刑事は「ああ、そう」と言って煙草に火をつけず咥えたまま喋り続けた。
刑事「最初の事故は上原歩夢が幼稚園生の頃。千葉県の海岸に遠足に行った時、彼女の目の前で男児が岩礁から転落して大怪我をしている。それから一年後。上原歩夢の通う小学校の当時12歳の少女が上原歩夢の目の前で交通事故で亡くなっている。上原歩夢とは登下校の班が一緒だった。上原歩夢が小学三年生の時、同級生の女児が屋上から転落。第一発見者は上原歩夢。中学二年生の時、同級生の男子生徒が塾の帰宅中に何者かに刺される事件が発生。当時、52歳の無職の男が逮捕されている」 これもう侑ちゃんの守護神だろ…
ちょっとやりすぎだけど 果林「それは…」
偶然じゃと言い掛けて言葉を飲み込んだ。偶然にしては余りにも多すぎる。けど、歩夢はそんな事する様な子ではないはず。
刑事「上原歩夢の評判を聞いて回ったよ。素直で友達思いの優しい、いわゆる優等生タイプでトラブルなんて今まで一回も起こした事ないと。どう?合ってるかな?」
私は上原歩夢と言う人間の事を頭の中で思い返した。歩夢はどんな子だった?確かに今までトラブルを起こす様な目立った事は一度もなかった。いつも隅の方で大人しくニコニコしていた。ただ一つ、友達思いと言う言葉に引っかかる。歩夢はいつも幼馴染の高咲侑にべったりでそれ以外の人間との関係性が薄いと言うか、悪い言い方をすると侑以外の人間には興味がない様にも見えた。
刑事「興味深い証言があったんだよ。幼稚園の岩礁から転落したって少年。彼に話を聞いたらね、上原歩夢に突き飛ばされたって言うんだよ。周りの大人は誰も信じなかったらしいけどね」 刑事の男は私の反応を見て相変わらずニヤニヤしながら話を続ける。
刑事「また、上原歩夢の同級生を刺した無職の男は過去に二回、中学生の女の子を買って逮捕されている」
だから何だと言い掛けてやめた。この刑事が言いたい事を理解したからだった。
刑事「もっと面白いのが、事故や事件の被害者が上原歩夢の幼馴染の高咲侑と親密だったり好意を持っていた事が確認出来た」
刑事の言葉を聞いて私の頭の中でカチッとハマる音がした。
刑事「上原歩夢の目の前で事故に遭った少女は同じ登下校班の高咲侑に懐かれていたらしい。無職の男に刺された少年も高咲侑に好意を持っていたと同級生から証言を得ている。他の被害者も似た様なものだよ。君達のグループ内での高咲侑の立ち位置はどうかな?」 侑はスクールアイドル活動はしていなかった。同好会ではサポートに徹していた為、メンバーからの信頼も厚く慕われていた。下級生からは懐かれていたし、私も歳上でありながら頼りにしていた。
刑事「その表情からして、合点が言った様だね。しかし今回は派手にやり過ぎた様だな、上原歩夢」
まるで勝利した様な言い振りだったけど、腑に落ちない部分もある。仮に歩夢が犯人だとして、その確固たる証拠が何一つ上がっていない事。そんな事が女子高生に出来るとも思えない。
刑事「事実なんてのはいつでも我々の斜め上を行くものなんだよ」
果林「だとして、証拠もないのに…」
刑事「証拠が無いなら現行犯で捕まえるしかないね」
刑事の男は私を見てハッキリとそう答えた。 刑事さんいいキャラしてるな
こういう被害者の遺族とか友達に同情するだとか感情を汲むだとか一切しない薄情者で、犯人に関する情報にしか興味を示さない刑事好きだよ
モデルがいたら教えて欲しいな 侑ちゃんも親しい人がどんどん消えていってかわいそうだな
その上で歩夢だけはいなくならないで…って思考になってる可能性もあるけど 歩夢とコンタクトを取ったのは刑事の男と別れてから1時間後だった。話したい事がある旨をLINEで伝えた所、分かったとだけ帰って来た。
そして、今私はせつ菜の血痕が見つかった第二視聴覚室で歩夢を待っている。
果林「遅いわね」
スマホで時間を確認すると15時14分だった。 これから全てが明らかになる。元凶は歩夢なのか、それともただの思い過ごしなのか。ああ、神様。どうか全て夢だったら。
歩夢が現れたのはそれから六分後だった。
歩夢「遅れてごめんなさい」
息を切らせて来た彼女はいつも通りの顔をしている様に見えた。
歩夢「それで話ってなんですか?」
そう聞かれて何から話そうか迷った。しかし、私は単刀直入に話を伝える事にした。
果林「エマが殺されたの。知ってるわよね?」
歩夢「あぁ、エマさん残念でしたよね」
果林「単刀直入に言うわ。エマを殺したは歩夢じゃないの?」 嘘でも良いから否定して欲しかった。せめて、ほんの少しでも良いから隠す素振りをして欲しかった。私が問い質した時、上原歩夢は笑っていた。
果林「そう言う事で良いのね?」
上原歩夢はコクリと頷いた。じんわりと目に涙が溜まって行くの気がついていたけれど、色んな感情が頭の中でこんがらがって、その理由が余りよく分からなかった。
果林「どうして?」
私は何とか声を振り絞って上原歩夢に質問をした。
歩夢「エマさんの話?それとも…」
果林「エマも、他の皆んなも…」 上原歩夢は顎に人差し指を当てて小首を傾げる素振りを見せた。
歩夢「結構鋭いんだなぁ。皆んな侑ちゃんにちょっかい出すからさ」
刑事の男の言う通りだった。トリガーは高咲侑。
歩夢「エマさんもそうだよ。侑ちゃんに構ってもらいたくて怖い怖いって馬鹿みたいにさ」
果林「そんな事でエマを?」
私がそう言った瞬間、今までヘラヘラとしていた上原歩夢の表情がガラリと変わった。
歩夢「そんな事?そんな事って何?私にとって侑ちゃんは全てなの。それなのに皆んな…どうして平気で人の大事なモノを奪おうとするの!!」
果林「大事なモノを奪ったのはあなたじゃない」
歩夢「じゃあ、私を殺す?奪った奪われてまた奪って。繰り返しだね!」 果林「一緒にしないで!!!!歩夢、あなたは狂ってる」
歩夢「何も知らないくせに!!!!知った様な事言わないで!!もういい…何も聞きたくない」
上原歩夢は肩にぶら下げていたスクールバッグからナイフを取り出すと私に向かって歩き始めた。
歩夢「さよなら」
バァーーーーーーン。部屋中に何かが破裂した様な音が鳴り響く。目の前で上原歩夢が血を流して倒れている。部屋には花火の様な匂いが立ち込めている。
刑事「良くやった」
声の方に目をやると刑事の男が倒れた上原歩夢に銃を向けて立っていた。
刑事「やっと終わったよ」 果林「はあ…はあ…終わり?」
刑事の男はまだ上原歩夢に拳銃を向けている。
刑事「長かったよ。ずっと…この日を待ってたよ」
果林「待ってた?」
引っ掛かる言い方だった。何か腑に落ちない、まるでずっと前から上原歩夢に対して怨恨がある言い方だった。
果林「どう言う事ですか?ずっと待ってたって?」
刑事「こいつは…この女は…」
刑事の男が語り始めたと思ったら、急に黙り始めた。私が不審に思って近づくと彼は口から血を吐き出した。背後には血だらけの上原歩夢が立っていた。
私は怖くなってその場から逃げ出した。 先日、虹ヶ咲学園の校舎内で刑事の男の死体が発見された。警察は今までの事件を含めて犯人を歩夢で間違いないとして捜査中。歩夢は行方をくらませている。
侑「果林さんは?」
彼方さんは首を横に振る。
彼方「部屋から出たくないって」
無理もない話だ。親友が殺され、その犯人が友人で、しかも目の前で人が殺されたのだから。 ここまで真っ直ぐな展開だとまだ何か裏がある思えてくる 彼方「私は侑ちゃんも心配だよ」
彼方さんはそう言って心配そうに私を見つめる。でも、私は意外と冷静と言うか、今まで何かおかしいと思いながらも自分に言い聞かせて生きて来たのでどこか開放された気分だった。
果林さんの証言に間違えがなければ歩夢はもう長くないだろう。どこかで息絶えてるかもしれない。もし、生きているなら歩夢は私の前に現れるはずだ。そしたら、私が全てを終わらせよう。 侑「彼方さんはどこまで知ってるの?」
私の問い掛けに彼方さんは「一応、全部」と答えた。彼女の言った全部の範囲は知らない。どこで誰から聞いたのか、こんな残酷な事を教える必要はあったのだろうか。
歩夢は刑事の男に拳銃で撃たれたらしいが、幸い致命傷にはならず男を背後からナイフで刺して逃亡。死亡した刑事の娘は12歳の頃に車に轢かれて死亡しており、その光景を私と歩夢は目の前で見ていた。何かの拍子にバランスを崩し車道に飛び出した。私は一瞬の出来事で何が起きたのか鮮明に思い出す事は出来ないが、刑事の男は歩夢が何かをしたと疑っていたのだろう。何をキッカケに歩夢を疑い始めたのかは今となっては不明だけど、確かに歩夢の周りでは不審な事故が多かった。 果林さんの証言では、歩夢の犯行は全て私への嫉妬心が原因だと本人が言っていたらしい。歩夢の深すぎる愛情には私も気がついていた。それを友愛と呼ぶには異常だと思っていても、私には拒否する事は出来なかったし、殺人犯となってしまった今でもその気はない。だって歩夢は、両親が事故死して天涯孤独となった私の唯一の心の拠り所なのだから。
だから、一刻も早く誰よりも先に歩夢と会わなければ。
彼方「侑ちゃん…何を考えてるの?」
彼方さんが不安そうな顔をしている。私は「大丈夫。もう終わるから」と呟いてスマホを取り出した。
「二人だけで会いたい。私の部屋で待ってる」
最期に歩夢は私の前に現れるはずだ。 別に人外とかそういうわけじゃなくて運良く即死しなかったのか ここまでそのまま進んでるだけだからオチで何かあると思いたい 20xx年10月2日 22時18分。歩夢が私の前に姿を現したのは彼女が死亡する一時間だった。
明かりの消えた自室のソファベットで横になっていると、インターホンが鳴ったのでモニターで確認した所、今にも倒れそうな歩夢の姿が映っていた。
私は急いで玄関の施錠を外し扉を開けた。
侑「待ってたよ。遅かったね」
歩夢「えへへ、歩くのが大変で」
私が少し意地悪っぽく言ってみると歩夢は辛そうな表情を何とか抑えながら少し笑ってみせた。
私は歩夢をリビングへ招き入れた。服も体も血で汚れていたのでシャワーを浴びるか尋ねると「傷に染みるから」と断られた。 歩夢はソファに座ると今にも目を瞑りそうだった。
侑「何か飲む?」
歩夢「いらない。時間ないでしょ」
侑「そっか」
少しの間、沈黙が続いた。それを破ったのは歩夢だった。
歩夢「もう知ってるんだよね?」
歩夢の問い掛けに静かに頷く。
侑「一応聞くけど。なんでこんな事したの?皆んな友達だったでしょ?」
歩夢「私にとって一番大事なのは侑ちゃんでそれ以外は取るに足らない存在ってだけの話だよ」
果林さんが言っていた通りだった。 歩夢「侑ちゃんはすぐに色んな人の所に行っちゃうから不安で仕方なかった。自分が周りと比べてオカシイって事には気が付いてるよ。でも…しょうがないでしょ?抑えられないんだもん。侑ちゃんの事が…大好きなんだもん」
歩夢の言葉は弱々しくて、なんとか力を振り絞っている感じだった。
侑「しょうがないじゃすまないんだよ。どんなに愛を叫んだって歩夢は殺人犯なんだから。殺された人達も皆んな誰かの大切な人で歩夢はそれを奪ったんだよ」 私の正論に歩夢は「分かってるよ」と呟くのが精一杯だった。
侑「でも、偉そうに言ってるけど私も共犯者みたいものだね」
私がそう言うと歩夢は立ち上がって「違う。侑ちゃんは何も悪くない」と力なく叫ぶ。
侑「違くないんだよ。友達を…仲間を殺されてるのに…私は歩夢を…最後の最後で拒否出来ない。だって…私にとっても歩夢は一番大事な人だから」
私がそう伝えると歩夢は驚いた表情をした後、少し嬉しそうに笑った。けど、その後の私が発した言葉にすぐにその表情は崩れる。 侑「歩夢。これで私を殺して」
私は部屋に隠してあった包丁を取り出して歩夢に差し出す」
歩夢「何言ってるの侑ちゃん」
侑「歩夢が居ない世界で私は生きてなんていけないよ。だから、歩夢の手で私を殺して」
歩夢「無理だよ。侑ちゃんを殺すなんて私には無理だよ」
侑「無理でも殺すんだよ。罰として大事な人が死んでいく悲しみを味わいながら歩夢は死んでいくんだよ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています