歩夢「大好きな人気者の大好きな私の好きな侑ちゃん、、」
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侑「歩夢!」
侑ちゃん。小さい頃からずっと一緒で大好きな私の幼馴染。
侑ちゃんは人気者でいつも周りに誰かいる。
歩夢「でね、あそこのパフェ凄い美味しくって」
侑「そうなんだ」
かすみ「侑先輩〜侑先輩〜」
侑「どうしたの?」
かすみ「これ食べてみて下さい〜!」
侑「これは?」
かすみ「かすみんの自信作です!りな子もしず子も絶賛してます」 侑「へ〜そうなの?」
しずく「はい。凄く美味しかったですよ。ね?」
璃奈「うん。かすみちゃんの作るパンは美味しい」
かすみ「特別にかすみんがあ〜んしてあげます。先輩!あ〜ん」
侑「いいよ。自分で食べれるよ」
かすみ「またまた〜恥ずかしがっちゃって〜」
歩夢「かすみちゃん!私も食べたいな」
かすみ「え?あっ、もちろん。皆さんの分もありますよ〜。食べますか?」
歩夢「うん。ありがとう、かすみちゃん」 かすみ「じゃあ、皆さんにも」
愛「じゃあ、お言葉に甘えて!」
せつ菜「私も頂きます!」
エマ「彼方ちゃん、起きて〜。かすみちゃんがパン持ってきてくれたよ」
彼方「も〜食べれない」
果林「お腹いっぱいみたいね」
かすみ「まだ食べてないじゃないですか!!?」
侑「あはは。夢の中で何か食べてるのかな?」
歩夢「あっ、侑ちゃん。これ美味しいよ!一口…」
かすみ「でしょ!それ自信作なんです!あと、こっちも自信作で〜侑先輩一口食べてみて下さい」
侑「あはは…そんなに沢山は食べれないよ」
かすみ「そんな事言わずに」 歩夢「本当!!!!!!凄い美味しい」
かすみ「当たり前です!かすみんが作ったんですから」
愛「よっ!流石かすかす」
かすみ「かすみんです!」
侑「美味しいよ〜かすみん!」
かすみ「えへへ〜もっと褒めてぇ」
侑「ヨシヨシ〜」
歩夢「かすみちゃん一人で作ったの?」
かすみ「そうですよ」
歩夢「へ〜凄いなぁ。作り方教えてくれない?」
かすみ「作り方ですか?」
歩夢「うん。お願い」
かすみ「ん〜…良いですよ!特別ですからね〜」
歩夢「ありがとう、かすみちゃん」 次の日。
侑「ふぁ〜」
果林「大きなあくびね」
エマ「夜更かし?」
侑「えへへ。ちょっとね」
歩夢「ちょっとって?」
しずく「私のお芝居の練習に付き合って貰っていたんです」
果林「あら、そうなの?」
しずく「はい。相手役が欲しかったので」 歩夢「あれ?でも、昨日は一緒に帰った後ずっと家に居たはずだよね?」
侑「え?あ〜…リモートでね」
歩夢「そうなんだ」
愛「え?どうなの?どうなの?ゆうゆの演技は?」
しずく「あはは」
侑「え?なんで笑うの?」
果林「まあ…そう言う事なんでしょ?」
しずく「でも、とても助かりました」 せつ菜「どんな役なんですか?」
愛「あ〜確かに気になる。しずく主演?」
しずく「いえ、私はヒロインで」
璃奈「しずくちゃんがヒロインって事は…侑さんはその相手役」
彼方「もしかして恋愛もの〜?」
しずく「あはは。そうですね」
歩夢「へ〜…どんなセリフがあるのかな?」
しずく「どんなセリフ……そうですね…」
歩夢「あっ、ごめん。楽しみにとっておこうかな」
愛「確かに。舞台で観たいね」
しずく「そうですか」 歩夢「侑ちゃんのセリフは?」
侑「私?私はほら…ただの練習相手だから」
しずく「君の事を愛してる」
歩夢「え?」
愛「どした?」
しずく「昨日、侑先輩に演じて貰ったセリフです」
侑「あはは…これだけなんだけどね…なかなか難しくてね」
愛「へ〜これはこれは。ゆうゆの口から聞いてみたいなぁ」
侑「や、やらないよ」
彼方「え〜しずくちゃんだけズルいなぁ」
しずく「あはは。文字通り、役得ですね」
愛「おっ!上手いこと言うね!」
歩夢「………しずくちゃん!」
しずく「え、はい?」
歩夢「無事、舞台が成功すると良いね!応援してるね!」
しずく「はい!ありがとうございます」 🌸cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ もちろんゆうぽむHappyEndなんだよね 別の日。
愛「ダジャレを言うのは誰じゃ?」
侑「あはははは」
果林「よく…あれで爆笑出来るわね」
せつ菜「確かに…」
歩夢「侑ちゃん…昔からツボが赤ちゃんだから」
彼方「にしてもよく笑うよね」
璃奈「愛さんも楽しそう」
愛「面白い話します!白い犬は〜尾も白い!」
侑「あははは。やめて〜」 歩夢「あっ!そうだ!今日、パン作って来たんだ!」
果林「へ〜歩夢が?」
エマ「わ〜美味しそう〜」
歩夢「うん。良かったら皆んなで食べて」
せつ菜「では、お言葉に甘えて」
彼方「頂きます〜」 歩夢「ほら侑ちゃんも食べて〜」
侑「あははは。え?うん」
歩夢「じゃあ、あ〜ん」
侑「いいよ。自分で食べるから」
歩夢「むぅ」
愛「あ〜歩夢、ほっぺた膨らませて〜」
歩夢「ほっぺたも膨らませるよ」
愛「え?」
歩夢「ううん」 せつ菜「歩夢さん!凄く美味しいです!今度私も作ってみようかなぁ」
歩夢「え…それは…」
彼方「うん。それは…あはは」
せつ菜「それは?」
侑「ん…んん?」
愛「どうしたの?」
侑「なんか…パンの中に…べっ」
歩夢「何か入ってた?」
侑「髪の毛だ」
歩夢「あっ、ごめん。髪の毛入ってた?」
侑「うん。平気平気」 歩夢「本当にごめんね」
侑「大丈夫だって」
愛「ゆうゆは丈夫そうだからダイジョーブだよ」
侑「あははは。またぁ、あははははは。も〜愛ちゃんたらおかしい〜」
愛「えへへ〜」
歩夢「愛ちゃんも沢山食べてね」
愛「サンキュー歩夢!」 次の日。
歩夢「侑ちゃんおはよう」
侑「おはよう」
歩夢「さっ、行こ」
侑「うん。……今年の風邪はだいぶ長引くみたいだね」
歩夢「そうだね」
侑「愛ちゃんも風邪ひいたって。昨日夜中に連絡来たよ」
歩夢「そうなんだ」
侑「歩夢の所にも来たでしょ?」
歩夢「うん。そうだったね」 侑「私達も気をつけなきゃね」
歩夢「うん。そうだね」
チャラララ〜 チャラ〜
侑「ケータイ鳴ってるよ?」
歩夢「うん」
侑「出なくていいの?」
歩夢「そうだね」
侑「そうだねって…こんな朝から何かあったのかもよ?」
歩夢「そんな事より早く行こ。遅刻しちゃうよ」
侑「歩夢…」 小学生の頃Aちゃんと言う友達が居た。
小学三年生の時に同じクラスの隣の席になり仲良くなった。放課後も一緒に帰る様になり歩夢も交えて遊ぶ様になった。
二学期になってAちゃんは学校へ来なくなってしまった。いや、正しくは来れなくなってしまった。学校で鬼ごっこをしていた際に屋上から誤って転落してしまった。幸い植え込みがクッションとなり死には至らなかったけど、Aちゃんは半身不随となり寝たきりとなってしまった。
当時、学校の杜撰な管理体制は世の中から厳しく批判された。施錠が壊れたまま放置され誰でも屋上にアクセス出来てしまう状況だった。
あの日、偶然歩夢が発見して居なかったらAちゃんはこの世には居なかったと思われる。 退屈な毎日だった。大好きな物を隠し、ひたすらに自分を殺し続ける日々。真面目な顔して周りの顔を窺って何も起きず、死ぬまで平穏に生き続けるのが私の人生だった。
そんな退屈な日々から抜け出せたのは、あの時の侑さんの言葉があったから。お陰で今は仲間に恵まれ、好きなものは好きと隠す事なく楽しい日々を送ってる。
しかし、そんな日常に暗雲が立ち込めている。先日、生徒会室にある情報が入って来た。
普通科一年の中須かすみが一週間前から家に帰って居ないとの事だった。彼女は同好会の後輩と言う事もあって教師陣は直接私の元へ聞きに来たのだ。しかし、私の元には風邪で休むと本人から連絡が来ていた。その旨を伝えると分かったと言って先生達は生徒会室から静かに出て行った。 それから少しずらして生徒会室から出ようと扉を開けると、歩夢さんが廊下に佇んでいた。
せつ菜「歩夢さん。どうしたんですか?」
歩夢「さっき先生達が話しているの聞いちゃったの」
かすみさんの事だろう。誰が聞いているかも分からない場所で少し軽率ではないかと思った。歩夢さんは心配そうに私を見つめる。
せつ菜「大丈夫ですよ。すぐに見つかるはずですから」
根拠のない言葉を私はデタラメに並べた。 歩夢「見つかるといいよね」
とても他人行儀で冷たく聞こえたのは私の思い過ごしだったのだろうか。季節外れの寒気を感じ私は逃げる様にその場を後にしようとした。急用を思い出した。必要以上に大きな声で告げると右腕を歩夢さんにガッと掴まれた。
歩夢「急用?この後練習だよ?部室に行くんでしょ?一緒に行こうよ」
思えば歩夢さんから誘いを受けた事は一度もなかった。同じ同好会に所属していても二人で遊んだ事はもちろん、下校した事もない。教室間の移動ですら声を掛けられた事はなかった。彼女はいつもどんな時でも幼馴染の高咲侑と一緒に行動していた。 せつ菜「ごめんなさい歩夢さん。本当に大事な用事があって。同好会には必ず顔出しますから」
そう言って手を振り払うとか彼女はバランスを崩しその場に転倒してしまった。
せつ菜「だ、大丈夫ですか?」
心配して彼女の顔を覗き込んだ時、一瞬睨み付ける様にこちらを見つめる瞳をその後の短い人生で一度足りとも頭から離れる事はなかった。 行くあてもなくひたすら歩きながら、何度も後ろを振り返る。上原歩夢が段々と小さくなっていくのを確認してから私は鞄からスマートフォンを取り出して侑さんに電話を掛けた。
呼び出しのコールが耳元で鳴り響く。私はなるべく人が寄り付かない場所を考えながら電話が繋がるのを待った。
「もしもし?せつ菜ちゃんどうしたの?」
せつ菜「侑さんですか。ちょっとお話があって。なるべく二人で話したいのですが」
「二人で?何かあったの?」
せつ菜「はい。なるべく誰にも気づかれない様にお願いします。場所は……D棟の第二視聴覚室が現在使われてないはずなので」
「分かった。すぐに向かうよ」
せつ菜「お願いします」
電話を切る間際に侑さんの声ではない、けど聞き覚えのある声が聞こえた様な気がした。 視聴覚室の後ろの席に座り、私は侑さんが来るのを待った。この学校の視聴覚室はまるで小さな映画館の様で予備教室とは言え使われていない事を勿体ないと思っていたが、それに感謝する日が来るとは思ってもいなかった。
侑「お待たせ」
待つ事10分。少し呼吸を乱しながら侑さんは現れた。
侑「何があったの?」
待っている間、私は彼女にどう説明するべきか考えていたが結局思考がまとまる事はなかった。
せつ菜「かすみさんが行方不明なんです。ずっと風邪で休んでる事になっていましたが」
ストレートにそう伝えると侑さんは咄嗟に左手の甲をギュッとツネって声を出すのを我慢した。 侑「思わず大声が出そうだったから」
私の視線に気が付いたのか侑さんはそう口にした。
せつ菜「その為にこの部屋を選んだんです」
防音が施されているこの部屋なら多少の音なら漏れる心配はないと思ったのだ。
せつ菜「一昨日からしずくさんも風邪で休んでいますよね」
侑「愛ちゃんも風邪で休むって連絡が来たよね」
風邪なんて流行ってないのに。
せつ菜「これって偶然ですか?」
侑「あまり考えたくないけど」
そう言いかけて侑さんは言葉を飲み込んだ。 せつ菜「ごめんなさい」
侑「何が?」
せつ菜「こんな事を話したって子供の私達には何が出来る訳でもないでしょう?それなのに…無駄に不安にさせるだけと分かっているのに」
侑の事は信頼している。けど、別に解決したくてこの事を話した訳じゃなかった。ただ、自分だけでは抱えきれなかっただけだった。
侑「私もせつ菜ちゃんの立場だったら同じ事したよ」
まるで私の心境を全部理解しているかの様に彼女は優しく微笑む。
侑「私達は子供だけど、私達にしか出来ない事もあるかもしれない。私はそれを考えてみるよ」 せつ菜「そうですね」
侑「取り敢えず、部室に向かおうか」
せつ菜「あっ、私は施錠をしてから出るので先に行ってて下さい」
そう言って部屋から出て行く侑を見届けてから、何気なく私は隅っこにある椅子に座った。
「ダメじゃない。侑ちゃんに心配かけちゃ」
せつ菜「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
耳元で急に声がしたので私は思わず悲鳴をあげてしまった。実際には側には誰も居なくて、ただいつの間に部屋に入ったのか上原歩夢が扉の前に立っていた。 歩夢「人の口に戸は立てられないとはよく言った物だよね。誰にも言っちゃいけないんじゃなかったの?まあでも、先生達も酷いよね。一方的に聞いてきて誰にも言うなって。生徒会長って言っても17歳の子供に抱えきれる話じゃないもんね。あれ?まだ16歳だっけ………?どっちでもいっか。年齢なんてただの数字だもんね」
上原歩夢はペラペラと言葉を口にするけど一向に耳に入って来なかった。彼女はひたすら喋りながらゆっくりとゆっくりと扉の鍵を閉めた。
せつ菜「何故、鍵を閉めたのですか?」
歩夢「なんでだろう?なんでだと思う?」
言葉が出てこない。
歩夢「ここのプロジェクターってスマートフォンの動画写せるのかな?」
せつ菜「……何故ですか?」 歩夢「かすみちゃんの可愛い動画があるんだけど。見たい?」
私は何も答えられず、身体は小刻みに震えていた。その間、上原歩夢はプロジェクターをいじり始めたが結局使い方が分からなかった様だった。
歩夢「えへへ。昔からの機械音痴なんだ。仕方ないから後で動画送るね」
気がつくと上原歩夢は私に近づいていた。思わず私は近くあった鞄を彼女に向かって投げてしまった。
歩夢「痛ぁい」
鞄は彼女の頭部に当たり、よろけてその場に転倒した。核心は何もなかった。けど、私の本能が彼女を攻撃していた。気が付けば倒れた彼女を両手で抑え込んでいた。
歩夢「やめて。せつ菜ちゃん。やめてよ」
上原歩夢が大声で私に呼びかける。一瞬我にかえって手が緩んだ隙を彼女は見逃さなかった。 私が最後に見た景色は視聴覚室の天井だった。私はゆっくりとゆっくりと引きずられた。
どうしてこんな事になってしまったのか。最早、考える気力も残って居なかった。
引きずられている途中、ボトッと私から何かが取れた。その頃にはもう私は何も感じなかった。 先日、港区の虹ヶ咲学園高等部に通う女子生徒四名が連続して失踪する事件が発生しました。また、校舎内で一人の少女の血痕が見つかった事から警察は事件性があると判断し捜査を開始しています。
失踪した生徒達は今流行りのスクールアイドル活動を行なっていたとの事です。近年、スクールアイドルはメディアへの露出も増え一部過激なファンからの付き纏い行為が問題視されています。
虹ヶ咲学園は中等部を合わせて生徒数が6000人を超えるマンモス校であり業者等の出入りも頻繁だった為、部外者の侵入が容易だったのではないかと言われています。 警察は何をしているのだろうか。せつ菜さんが行方不明になってから何も進展がないまま一週間が過ぎた。
校内からはせつ菜さんの血痕が発見されたらしいけど、犯人に関係するものは何一つ見つかってないらしい。けど、そんな事は絶対に有り得ない時思う。警察は本気で捜査をしているのだろうか。
学校側の杜撰な体制にも驚いた。これだけ、デカい学園なのに校舎内に監視カメラの一つも設置されて居なかったらしい。記者会見で生徒のプライバシーが何とかって言ってたけどどうにも苦しい言い訳に聞こえる。別に更衣室やトイレを録画しろと言っている訳じゃないんだから。
屋外には監視カメラが数台設置されていたらしいけど、結局それらしきものは映ってないらしい。
こんな事件が起きていても親は相変わらず仕事で家に居ない。高層マンションの上層階に侵入するのは不可能だろうけど、それでも普通は心配で仕事になんていけないでしょ?
あれから私は学校に一度も行っていない。 学校に行ってないと言うよりは行かせて貰えない。心配するふりをした親が私を閉じ込めてるから。高層マンションの上層階の一室に閉じ込められた私はまるでラプンツェルの様だ。
いつかこの部屋から連れ出してくれる人が現れるのを私は待ってみても良いのだけど、愛さんもせつ菜さんも、かすみちゃんもしずくちゃんも多分もう居ないんだ。
考え方を変えてみようか。皆んなの居ない外の世界に未練なんかある?ないと思う。だったら引きこもってればいいじゃない。元通りの生活になるだけなんだからなにも苦じゃないでしょ。
こんに風に適当に言葉を並べてみたけど外に出るのが怖いだけだったりする。別に見張りがある訳じゃないからいつだって外には出られる。外に出れば私も狙われるかもしれないし、残された他の皆んなが目の前から居なくなるのを見たくないだけかもしれない。 虹ヶ咲のssにおけるしずく愛歩夢のサイコキラー率は異常 璃奈「皆んなに会いたい」
そう呟いたと同時にスマホの呼び出し音が鳴った。画面には高咲侑と表示されている。
璃奈「侑さん…」
一瞬出るか迷ったけど私はスマホを手に取るとスグに通話ボタンをタップした。
「あっ、もしもし璃奈ちゃん?私、侑だけど」
璃奈「うん」
「特に用事がある訳じゃなかったんだけど、どうしてるかなって。あれから私と歩夢以外は同好会に顔を出さなくなっちゃったから」
侑さんは私を心配している様だったけど、逆に侑さんと歩夢さんはこんな事になっても同好会に顔を出していたんだと驚いた。 >>78
せつなも最期は誰に引きずられてるのかわからないしな そこから、少しお互いの近況報告をした(とは言っても家から一歩も出ていない私は報告する事もないかった)
「きっと皆んな帰ってくるよ。大丈夫、心配ないから」
電話を切る間際に根拠もない言葉を口にしたのは、侑さん自身がそう自分に言い聞かせたかったからなんだろうと思う。 侑ちゃんは呪われ体質で近づいた人が不幸になるから歩夢ちゃんが死なないように助けてる説 私だってそう思いたい。握りしめたスマホを操作して何気なく開いたのはかすみちゃんがやっていたSNSだった。ことあるごとにSNSを更新していたかすみちゃん。私はよくかすみちゃんの投稿にいいねを付けていた。
最後に更新されたのは4日前、空を写した写真を投稿している。あれ?4日前って…かすみちゃんが実装したのは一週間以上前のはず。
色々な考えが頭の中で駆け巡る。
犯人がなりすましている?どこの写真?写真から投稿した場所が分からないかな?位置情報から辿れないかな?こんな事警察だって気がついているはず。
もしかしたら、かすみちゃんは生きてるかもしれない。 そこで、浅はかな私はかすみちゃんよスマホに電話を掛けてみようと考えた。人間はどうしたって自分の都合の良い様に考える生き物なんだと痛感する事になる。
4コールで電話が繋がった。自分から掛けたのに電話が繋がった事に私は驚いて言葉を出せずにいた。するとそれに察したのか向こうの方から喋り始めた。
「もしもし、璃奈ちゃん?」
かすみちゃんの声では無かった。けれど聞き覚えのある声だった。
「もしもし?もしも〜し」
もしかして、かすみちゃんのスマホに掛けたつもりで操作を誤ったのだろうか。私はスマホの画面を確認する。
画面には中須かすみとちゃんと表示されていた。
じゃあ、どうして歩夢さんが電話に出るのだろう。
璃奈「歩夢さん…だよね?」
私が確認すると歩夢さんは不安そうな声で「そうだよ。歩夢だよ」と答えた。
璃奈「どうして歩夢さんがかすみちゃんの電話に?」
歩夢「実はね、学校で拾ったの。どうしよう璃奈ちゃん。警察に届けた方がいいかな?」
歩夢さんの声は震えている様だった。引っかかる事はあった。あれだけ捜査して警察は見つけられなかったのか。けど、私は歩夢さんを疑う事はしなかった。だって友達だよ?疑ったりなんてしないでしょ?
璃奈「今、どこにいるの?」
歩夢「学校だよ」
璃奈「一人?」
歩夢「うん。璃奈ちゃん、私心細いよ」
今行くと返事をして私は電話を切った。 来世があるならもっと深く考えてから行動しようと思う。違和感を覚える時はだいたい何かがおかしいんだから、それが解消するまでは慎重に行動しなきゃいけないと学んだ所で後の祭りなんだけど。
上原歩夢に呼ばれたのは一度も入った事の無い様な教室だった。まあ、これだけデカい学校だから入った事の無い部屋の方が多いんだけど、それにしたって誰にも使われていない様な部屋だった。
歩夢「来てくれてありがとう、璃奈ちゃん」
電話で言っていた通り上原歩夢は一人だった。上原歩夢は扉の前に立つ私に手招きをすると乱雑に置かれた椅子を綺麗に並べながら座るように促した。 上原歩夢は一通り椅子を並び終えると扉の方へと向かい、鍵をしめた。そして、淡々と喋り始めた。
歩夢「私ね、璃奈ちゃんはもっと頭の良い子だと思ってたの。今回の事件が起きた時にスグに自分から切り離して関係ないって顔して家に引きこもったまま出て来ないと思ってたんだ」
私は席を立とうとした。しかし、いつの間にか私の背後にいた上原歩夢に肩を押さえ付けられて立ち上がれなかった。
歩夢「家族とかよく知らない番号とか結構いっぱい掛かって来てたんだけど、同好会のメンバーで掛けて来たのは璃奈ちゃんだけだよ。だから出てみたの。SNSも覗きに来たでしょ?」
ドキッとした。まるで自分の行動を見抜かれているのかと思った。
歩夢「足跡で分かるんだよ」
そう言って上原歩夢はクスクスと笑った。何が面白いのか分からない。 歩夢「璃奈ちゃん。皆んなの事、ちゃんと好きだったんだね。良かった。私は嬉しいよ」
そう言って上原歩夢はブレザーのポケットに手を突っ込むと何かを取り出した。
歩夢「スマホの指紋認証を解除するのに必要だったんだけど、一週間も経つとダメだね。もう使えないからあげるよ。大好きなかすみちゃんのだよ」
そう言って微笑みながら私にそれを渡して来た。 最近平和ボケして忘れてた
歩夢ってこういう奴だったんだ わたしは…子供のころ レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」ってありますよね……
あの絵…画集で見た時ですね
あの「モナリザ」がヒザのところで組んでいる「手」…
あれ……初めて見た時……
なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね……… 私が小さく首を横に振って拒むと、上原歩夢はため息をついてハンカチを取り出しそれを包むと私のブレザーのポケットに無理矢理に手を突っ込んだ。
歩夢「どうしたの?嬉しくないの?」
煽ってるのか本気なのか分からない。ただ、本当に分からないと言った様な顔をしている。
歩夢「あっ!そっか!これがないとダメなんだっけ?」
そう言って上原歩夢は足元に置かれたスクールバックに手を伸ばし中から画用紙を数枚取り出した。
歩夢「はい。これ使って」
恐怖で身体が動かない事って本当にあるんだと実感した。
歩夢「あれ?どうしたの?これ、いらない?」 もう、気がつくと泣いていた。
璃奈「歩夢さん、どうして?」
歩夢「何だ、泣けるんじゃない。かすみちゃんも泣き喚いてたよ。本当、最期まで賑やかな子だよね。別に璃奈ちゃんをどうしよって気はなかったんだけど」
話が通じない。思えばずっとそうだった気がする。出会った頃からこの人は私の事なんて一度も見ようとしなかった。
璃奈「もしかして、侑さん?」
上原歩夢は微笑むとスクールバックから取り出したそれを私に刺した。
せめて、私の血肉が事件の解決の手掛かりとなればと切に思う。 歩夢「良かったね、璃奈ちゃん。かすみちゃん達に会えるね」
喋らない私に上原歩夢は優しく話し掛ける。
歩夢「璃奈ちゃんボード、ニッコリン」
上原歩夢は画用紙を手に取ると私の顔にあてて、そう呟いた。 殺るならもっと苦しめて殺って欲しかった……
続き期待 昔からよく巻き込まれる事が多い。私は何も悪くないのに生きてるだけでトラブルに巻き込まれる。私みたいなのを巻き込まれ体質って言うんだと思う。
幼稚園の頃、同じ組の男の子が大怪我をした事があった。仮にBくんとして、彼はいわゆるガキ大将的な子でよくイタズラをしては先生に怒られていた。私もよく意地悪をされては泣かされていたから、私はとにかくBくんの事が嫌いだった。
年長の時だったと思う。夏に遠足で千葉まで潮干狩りに行った。私は幼馴染と二人でバケツを持って貝を拾っていた。すると近くで騒いでいたBくん達のグループが私達に近寄って来た。Bくんは手にナマコを持っていてそれを私の幼馴染に近づけた。きっと怖がると思ったんだろう。
しかし、Bくんの期待とは裏腹に彼女はクスッと笑って軽くいなしたのだった。その反応が気に入らなかったのかBくんは執拗に彼女にちょっかいを出し続けた。あまりにもしつこくちょっかいを出すものだから流石の彼女も嫌気がさし、最終的には泣いてしまったのだ。 泣き声を聞いて先生が駆けつけて来た時に、Bくんはバツが悪くなりその場から逃げてしまった。私は彼を追いかけた。途中で追いかけられている事に気が付いたのか、彼は私を振り切ろうと岩礁のある方まで走って行った。私も諦めず彼を追いかけて走った。
岩礁のまで追いかけた所で彼も諦めたらしく、降参と言った態度で私に近づいて来た。私は近づいて来た彼の胸をドンって押すと、彼はツルッと滑って岩と岩の間に落ちていった。
後になって追いかけて来た先生達は慌ててBくんを助け出し救急車を呼んだ。幸いと言っていいのか彼は一命を取り留めたが、暫く昏睡状態が続き、更に全治3ヶ月の大怪我を負ってしまった。
親に連れられお見舞いに行った時、Bくんの母親が彼の事を話してくれた。友達思いの素直で良い子だって。Bくんは私の幼馴染の事が好きだったとも言っていた。私はこの母親は何も分かってないんだなと思った。Bくんは捻くれてるし友達思いなんかじゃない。普通、好きな子に意地悪だってしないじゃない。
事故の後、大人は皆んな私に優しくしてくれた。目が覚めたBくんは私に突き飛ばされたと言ったらしいけど、先生達を含め誰も信じなかった。Bくんはそれから大人しくなってしまった。 それからも、私の周りではこう言った事がちょくちょく起きた。私の大事な幼馴染にちょっかいを出す人が多いから、どうしてもトラブルに巻き込まれてしまう。
今もまさにトラブルに巻き込まれている状況だったりする。友達だと思ってた子が実はそうじゃなくて、もう五人も死んじゃった。
あ〜あ、どうしてこんなにトラブルが起きるんだろう。私は友人ちゃんと幸せに過ごしたいだけなのに。 どんなに言ってもエマは言う事を聞いてくれない。
エマ「そんな急に帰れなんて無理だよ。手配だってしてないのに」
果林「そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ。いつ私達だって狙われるか分からないんだから。国外なら流石に狙われる事はないでしょ。お願いエマ」
エマ「果林ちゃんはどうするの?私だって果林ちゃんを置いてなんて帰れないよ」
こんなやり取りをもう何回もしている。かすみちゃんが居なくなってから10日以上が過ぎた。先日、警察が来て璃奈ちゃんまで行方が分からなくなったと言われた。 璃奈ちゃんの住んでいるマンションの監視カメラに彼女が外出する姿が映っていたらしい。また、同日学校の屋外に設置された監視カメラにも璃奈ちゃんの姿が映っていた。それが確認出来る璃奈ちゃんの最後の姿となる。
また、せつ菜の血痕が校舎内で見つかった事から事件は校内で起きているとの見方が大方である。行方不明となった生徒は全員、スクールアイドル同好会のメンバーであり、残された部員も狙われる可能性は高く、特に校内の寮に住む私やエマはかなり危険だと思う。
しばらくの間、警察が警備にあたってくれるらしいけど、じゃあいつまでそれが続くのだろう。 監視カメラが設置された後、璃奈の死体をどう処分したんだろう? 一週間?一ヶ月?じゃあ、その後は大丈夫なの?考えればキリがない。だから、エマには安全な所に逃げて欲しかった。
それから何も進展がないまま二ヶ月経ち、世間が事件の事を忘れかけた頃、エマが殺害された。遺体の一部が見つかったのは埼玉県S市の河川だった。遺体が発見される二日前にエマが外出する姿が監視カメラに映されていたのだった。外出する際はお互いに声を掛け合おうと約束していたのに私は何も聞かされていなかった。
世間はお台場スクールアイドル連続失踪殺人事件としてまた盛り上がっていた。
ある日、刑事が私の元を訪ねて来た。事件解決の為に聞きたい事があるとの事だった。
訪ねて来たのは態度の悪い刑事で、友人を亡くしたばかりの高校生に一切の気を遣う事をしなかった。 エマが死んでどうだとかそんな事を私に聞いて何の意味があるのだろうか。一応、言葉では気を遣う素振りを見せるが言葉の節々に女子供を馬鹿にしている感じが見受けられた。
ただ、私は事件の早期解決を望んでいたので出来るだけ協力しようと思った。
刑事「上原歩夢とは仲が良いのかな?」
態度の悪い刑事は急に歩夢の事を聞いて来た。なぜ、歩夢と不思議に思った。
刑事「ここだけの話ね、私は上原歩夢が犯人なんじゃないかと疑ってるんだよ」
歩夢が犯人?この人は何を言ってるのだろうか。
刑事「当初、警察は君達の事を調べたんだけどね。特に怪しい事もなかったので疑う事をしなかったんだけど。今回の件でもう一度詳しく調べたんだけど、引っ掛かる事があってね」
果林「引っかかる事?何ですか?」
刑事「上原歩夢の周りでね、事故が多発してるんだよ」 果林「事故?」
私が聞き返すと刑事はニヤッと笑うと胸ポケットから煙草を取り出して一本咥えた。
刑事「吸うかい?」
果林「校内は禁煙です」
そう伝えると刑事は「ああ、そう」と言って煙草に火をつけず咥えたまま喋り続けた。
刑事「最初の事故は上原歩夢が幼稚園生の頃。千葉県の海岸に遠足に行った時、彼女の目の前で男児が岩礁から転落して大怪我をしている。それから一年後。上原歩夢の通う小学校の当時12歳の少女が上原歩夢の目の前で交通事故で亡くなっている。上原歩夢とは登下校の班が一緒だった。上原歩夢が小学三年生の時、同級生の女児が屋上から転落。第一発見者は上原歩夢。中学二年生の時、同級生の男子生徒が塾の帰宅中に何者かに刺される事件が発生。当時、52歳の無職の男が逮捕されている」 これもう侑ちゃんの守護神だろ…
ちょっとやりすぎだけど 果林「それは…」
偶然じゃと言い掛けて言葉を飲み込んだ。偶然にしては余りにも多すぎる。けど、歩夢はそんな事する様な子ではないはず。
刑事「上原歩夢の評判を聞いて回ったよ。素直で友達思いの優しい、いわゆる優等生タイプでトラブルなんて今まで一回も起こした事ないと。どう?合ってるかな?」
私は上原歩夢と言う人間の事を頭の中で思い返した。歩夢はどんな子だった?確かに今までトラブルを起こす様な目立った事は一度もなかった。いつも隅の方で大人しくニコニコしていた。ただ一つ、友達思いと言う言葉に引っかかる。歩夢はいつも幼馴染の高咲侑にべったりでそれ以外の人間との関係性が薄いと言うか、悪い言い方をすると侑以外の人間には興味がない様にも見えた。
刑事「興味深い証言があったんだよ。幼稚園の岩礁から転落したって少年。彼に話を聞いたらね、上原歩夢に突き飛ばされたって言うんだよ。周りの大人は誰も信じなかったらしいけどね」 刑事の男は私の反応を見て相変わらずニヤニヤしながら話を続ける。
刑事「また、上原歩夢の同級生を刺した無職の男は過去に二回、中学生の女の子を買って逮捕されている」
だから何だと言い掛けてやめた。この刑事が言いたい事を理解したからだった。
刑事「もっと面白いのが、事故や事件の被害者が上原歩夢の幼馴染の高咲侑と親密だったり好意を持っていた事が確認出来た」
刑事の言葉を聞いて私の頭の中でカチッとハマる音がした。
刑事「上原歩夢の目の前で事故に遭った少女は同じ登下校班の高咲侑に懐かれていたらしい。無職の男に刺された少年も高咲侑に好意を持っていたと同級生から証言を得ている。他の被害者も似た様なものだよ。君達のグループ内での高咲侑の立ち位置はどうかな?」 侑はスクールアイドル活動はしていなかった。同好会ではサポートに徹していた為、メンバーからの信頼も厚く慕われていた。下級生からは懐かれていたし、私も歳上でありながら頼りにしていた。
刑事「その表情からして、合点が言った様だね。しかし今回は派手にやり過ぎた様だな、上原歩夢」
まるで勝利した様な言い振りだったけど、腑に落ちない部分もある。仮に歩夢が犯人だとして、その確固たる証拠が何一つ上がっていない事。そんな事が女子高生に出来るとも思えない。
刑事「事実なんてのはいつでも我々の斜め上を行くものなんだよ」
果林「だとして、証拠もないのに…」
刑事「証拠が無いなら現行犯で捕まえるしかないね」
刑事の男は私を見てハッキリとそう答えた。 刑事さんいいキャラしてるな
こういう被害者の遺族とか友達に同情するだとか感情を汲むだとか一切しない薄情者で、犯人に関する情報にしか興味を示さない刑事好きだよ
モデルがいたら教えて欲しいな 侑ちゃんも親しい人がどんどん消えていってかわいそうだな
その上で歩夢だけはいなくならないで…って思考になってる可能性もあるけど 歩夢とコンタクトを取ったのは刑事の男と別れてから1時間後だった。話したい事がある旨をLINEで伝えた所、分かったとだけ帰って来た。
そして、今私はせつ菜の血痕が見つかった第二視聴覚室で歩夢を待っている。
果林「遅いわね」
スマホで時間を確認すると15時14分だった。 これから全てが明らかになる。元凶は歩夢なのか、それともただの思い過ごしなのか。ああ、神様。どうか全て夢だったら。
歩夢が現れたのはそれから六分後だった。
歩夢「遅れてごめんなさい」
息を切らせて来た彼女はいつも通りの顔をしている様に見えた。
歩夢「それで話ってなんですか?」
そう聞かれて何から話そうか迷った。しかし、私は単刀直入に話を伝える事にした。
果林「エマが殺されたの。知ってるわよね?」
歩夢「あぁ、エマさん残念でしたよね」
果林「単刀直入に言うわ。エマを殺したは歩夢じゃないの?」 嘘でも良いから否定して欲しかった。せめて、ほんの少しでも良いから隠す素振りをして欲しかった。私が問い質した時、上原歩夢は笑っていた。
果林「そう言う事で良いのね?」
上原歩夢はコクリと頷いた。じんわりと目に涙が溜まって行くの気がついていたけれど、色んな感情が頭の中でこんがらがって、その理由が余りよく分からなかった。
果林「どうして?」
私は何とか声を振り絞って上原歩夢に質問をした。
歩夢「エマさんの話?それとも…」
果林「エマも、他の皆んなも…」 上原歩夢は顎に人差し指を当てて小首を傾げる素振りを見せた。
歩夢「結構鋭いんだなぁ。皆んな侑ちゃんにちょっかい出すからさ」
刑事の男の言う通りだった。トリガーは高咲侑。
歩夢「エマさんもそうだよ。侑ちゃんに構ってもらいたくて怖い怖いって馬鹿みたいにさ」
果林「そんな事でエマを?」
私がそう言った瞬間、今までヘラヘラとしていた上原歩夢の表情がガラリと変わった。
歩夢「そんな事?そんな事って何?私にとって侑ちゃんは全てなの。それなのに皆んな…どうして平気で人の大事なモノを奪おうとするの!!」
果林「大事なモノを奪ったのはあなたじゃない」
歩夢「じゃあ、私を殺す?奪った奪われてまた奪って。繰り返しだね!」 果林「一緒にしないで!!!!歩夢、あなたは狂ってる」
歩夢「何も知らないくせに!!!!知った様な事言わないで!!もういい…何も聞きたくない」
上原歩夢は肩にぶら下げていたスクールバッグからナイフを取り出すと私に向かって歩き始めた。
歩夢「さよなら」
バァーーーーーーン。部屋中に何かが破裂した様な音が鳴り響く。目の前で上原歩夢が血を流して倒れている。部屋には花火の様な匂いが立ち込めている。
刑事「良くやった」
声の方に目をやると刑事の男が倒れた上原歩夢に銃を向けて立っていた。
刑事「やっと終わったよ」 果林「はあ…はあ…終わり?」
刑事の男はまだ上原歩夢に拳銃を向けている。
刑事「長かったよ。ずっと…この日を待ってたよ」
果林「待ってた?」
引っ掛かる言い方だった。何か腑に落ちない、まるでずっと前から上原歩夢に対して怨恨がある言い方だった。
果林「どう言う事ですか?ずっと待ってたって?」
刑事「こいつは…この女は…」
刑事の男が語り始めたと思ったら、急に黙り始めた。私が不審に思って近づくと彼は口から血を吐き出した。背後には血だらけの上原歩夢が立っていた。
私は怖くなってその場から逃げ出した。 先日、虹ヶ咲学園の校舎内で刑事の男の死体が発見された。警察は今までの事件を含めて犯人を歩夢で間違いないとして捜査中。歩夢は行方をくらませている。
侑「果林さんは?」
彼方さんは首を横に振る。
彼方「部屋から出たくないって」
無理もない話だ。親友が殺され、その犯人が友人で、しかも目の前で人が殺されたのだから。 ここまで真っ直ぐな展開だとまだ何か裏がある思えてくる 彼方「私は侑ちゃんも心配だよ」
彼方さんはそう言って心配そうに私を見つめる。でも、私は意外と冷静と言うか、今まで何かおかしいと思いながらも自分に言い聞かせて生きて来たのでどこか開放された気分だった。
果林さんの証言に間違えがなければ歩夢はもう長くないだろう。どこかで息絶えてるかもしれない。もし、生きているなら歩夢は私の前に現れるはずだ。そしたら、私が全てを終わらせよう。 侑「彼方さんはどこまで知ってるの?」
私の問い掛けに彼方さんは「一応、全部」と答えた。彼女の言った全部の範囲は知らない。どこで誰から聞いたのか、こんな残酷な事を教える必要はあったのだろうか。
歩夢は刑事の男に拳銃で撃たれたらしいが、幸い致命傷にはならず男を背後からナイフで刺して逃亡。死亡した刑事の娘は12歳の頃に車に轢かれて死亡しており、その光景を私と歩夢は目の前で見ていた。何かの拍子にバランスを崩し車道に飛び出した。私は一瞬の出来事で何が起きたのか鮮明に思い出す事は出来ないが、刑事の男は歩夢が何かをしたと疑っていたのだろう。何をキッカケに歩夢を疑い始めたのかは今となっては不明だけど、確かに歩夢の周りでは不審な事故が多かった。 果林さんの証言では、歩夢の犯行は全て私への嫉妬心が原因だと本人が言っていたらしい。歩夢の深すぎる愛情には私も気がついていた。それを友愛と呼ぶには異常だと思っていても、私には拒否する事は出来なかったし、殺人犯となってしまった今でもその気はない。だって歩夢は、両親が事故死して天涯孤独となった私の唯一の心の拠り所なのだから。
だから、一刻も早く誰よりも先に歩夢と会わなければ。
彼方「侑ちゃん…何を考えてるの?」
彼方さんが不安そうな顔をしている。私は「大丈夫。もう終わるから」と呟いてスマホを取り出した。
「二人だけで会いたい。私の部屋で待ってる」
最期に歩夢は私の前に現れるはずだ。 別に人外とかそういうわけじゃなくて運良く即死しなかったのか ここまでそのまま進んでるだけだからオチで何かあると思いたい 20xx年10月2日 22時18分。歩夢が私の前に姿を現したのは彼女が死亡する一時間だった。
明かりの消えた自室のソファベットで横になっていると、インターホンが鳴ったのでモニターで確認した所、今にも倒れそうな歩夢の姿が映っていた。
私は急いで玄関の施錠を外し扉を開けた。
侑「待ってたよ。遅かったね」
歩夢「えへへ、歩くのが大変で」
私が少し意地悪っぽく言ってみると歩夢は辛そうな表情を何とか抑えながら少し笑ってみせた。
私は歩夢をリビングへ招き入れた。服も体も血で汚れていたのでシャワーを浴びるか尋ねると「傷に染みるから」と断られた。 歩夢はソファに座ると今にも目を瞑りそうだった。
侑「何か飲む?」
歩夢「いらない。時間ないでしょ」
侑「そっか」
少しの間、沈黙が続いた。それを破ったのは歩夢だった。
歩夢「もう知ってるんだよね?」
歩夢の問い掛けに静かに頷く。
侑「一応聞くけど。なんでこんな事したの?皆んな友達だったでしょ?」
歩夢「私にとって一番大事なのは侑ちゃんでそれ以外は取るに足らない存在ってだけの話だよ」
果林さんが言っていた通りだった。 歩夢「侑ちゃんはすぐに色んな人の所に行っちゃうから不安で仕方なかった。自分が周りと比べてオカシイって事には気が付いてるよ。でも…しょうがないでしょ?抑えられないんだもん。侑ちゃんの事が…大好きなんだもん」
歩夢の言葉は弱々しくて、なんとか力を振り絞っている感じだった。
侑「しょうがないじゃすまないんだよ。どんなに愛を叫んだって歩夢は殺人犯なんだから。殺された人達も皆んな誰かの大切な人で歩夢はそれを奪ったんだよ」 私の正論に歩夢は「分かってるよ」と呟くのが精一杯だった。
侑「でも、偉そうに言ってるけど私も共犯者みたいものだね」
私がそう言うと歩夢は立ち上がって「違う。侑ちゃんは何も悪くない」と力なく叫ぶ。
侑「違くないんだよ。友達を…仲間を殺されてるのに…私は歩夢を…最後の最後で拒否出来ない。だって…私にとっても歩夢は一番大事な人だから」
私がそう伝えると歩夢は驚いた表情をした後、少し嬉しそうに笑った。けど、その後の私が発した言葉にすぐにその表情は崩れる。 侑「歩夢。これで私を殺して」
私は部屋に隠してあった包丁を取り出して歩夢に差し出す」
歩夢「何言ってるの侑ちゃん」
侑「歩夢が居ない世界で私は生きてなんていけないよ。だから、歩夢の手で私を殺して」
歩夢「無理だよ。侑ちゃんを殺すなんて私には無理だよ」
侑「無理でも殺すんだよ。罰として大事な人が死んでいく悲しみを味わいながら歩夢は死んでいくんだよ」 歩夢「出来ない。出来ないよ」
平然と人を殺せる歩夢が目の前で私を殺したくないと泣いている。
侑「ダメだよ歩夢。殺して」
歩夢は涙を拭うと唇を噛み締め、ついに私が渡した包丁を手に取った。
侑「先に待ってるから」
歩夢は震えながら小さく頷く。まるで幼い子供の様だった。
目を瞑りゆっくりと深呼吸をする。今までの人生が走馬灯の様に蘇る。楽しかった事、嬉しかった事、悲しかった事。きっと、私と歩夢のせいで不幸になった人間は沢山居る。けど、勝手だけれど悪くない人生だった。 冷たい刃の先端が私の喉元に触れる。後、数ミリ突き立てれば私は死んでしまう。
侑「………死にたくない」
気がつくと私はそう呟いていた。涙が頬を流れる落ちる。そして歩夢がその場に倒れ込んだ。
侑「歩夢…歩夢!!?」
倒れた歩夢を抱き抱えて私は彼女の名前を連呼した。
歩夢「侑ちゃん。覚えてる?」
侑「何を?」
歩夢「初めてあった時の事…イジメられてた私を…助けてくれた。驚いたな。まさかその子が隣に住んでいたなんて」 私だって覚えてる。まさかこんなに可愛い子が隣に住んでるなんて思わなかった。
歩夢「それからずっと一緒だったね。大人になっても一緒だと思ってたけど」
侑「私もだよ。ずっと一緒に居たかった」
歩夢「…もう疲れたな。そうだ…今度のお休みは皆んなで遊園地に行こう。かすみちゃんにパンの作り方教えて貰ったから作って持っていこう。あぁ…ちょっと眠くなっちゃった。おやすみ…侑ちゃん」
そのまま、歩夢は目を開ける事は無かった。 「以上が事の顛末ですか」
少女の問い掛けに私は静かに頷く。少女は真っ直ぐ私を見つめると淡々と喋り始めた。
「なるほど。しかし、不可解な点が多過ぎますね。結局、どの様にして犯行が行われたのかも死体がどこにあるのかも殆ど分かっていない。そもそも、一人の少女の犯行とは思えないですし、上原歩夢が最後まで警察に捕まらなかった事も解せない。謎が多過ぎる」
確かに彼女の言う通りだと思う。しかし、歩夢が死んでしまった今、真相は闇の中だ。
「世間ではあなたの事を被害者だと言う人達も居ますが、正直私はあなたの事を許せません。中川会長…一緒に活動したのは短い期間でしたが私は彼女の事を尊敬していました。いっその事こと上原歩夢と一緒に死んでいればとさえ思います」
それが正しい。私だってそう思う。けれど、私は土壇場で怖がって歩夢を裏切った。
「けれど、あなたは生きている。きっとこれには何か意味があるのでしょう」 侑「意味?」
「あなたはこれから人の為に生きていくのです。私はあなたを一生許さないけど、あなたは私と一緒に人を助ける為に行動するのです」
人の為に生きろ。生徒会室の片隅で少女は私にそう言った。その言葉は強く固く真っ直ぐだった。
これが罪滅ぼしになるのかは分からないけど、私はやってみようと思う。
「生徒会へようこそ。これからよろしくお願いします」
侑「こちらこそよろしく、三船さん」
愛情は沢山貰って来た。これからは私の番だ。 俺も完全に副会長で再生してたww
乙、どんでん返しとかはなかったけどよかった 乙
歩夢が一人で犯行可能だったとは考えにくいけどそこは闇の中か 乙
手口の詳細が書いてないからこそ見せたい物語が際立つ
あると思います >>220
それに加えて実は共犯が?とか色々考える余地もあって面白いね そばにいた侑ちゃんがこっそり証拠隠滅とかしてないと
高校までバレないとか無理だろ 歩夢をもっと支離滅裂で話の通じない感じにするつもりだったのに気が付いたらこんなになってました。 支離滅裂なシリアルキラーなら真犯人を別に用意するくらいしないとつまらなさそう 正直ただの殺人狂にしか見えない、ヤンデレ化も度を過ぎるとキャラ崩壊のヘイトSSだわ
5chは色狂いのレズが拗らせまくったり犯罪沙汰になるのが持て囃される傾向だけど 本編の延長線みたいな感じならともかくそもそも別世界って感じだし別になんとも思わない ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています