しずく「本当の自分ってなんだろう?」
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――本当の私を見てください。
なんて、インタビューでは答えたけれど。
何が本当の自分なのか、今はまだよくわからない。
原点を思い返すと、私は役を演じることが楽しかったから演劇をするようになった。スクールアイドルを始めたのは、舞台上の彼女たちが輝いて見えたから。
役を演じる演劇。
自分を晒け出すスクールアイドル。
二つを両立することで表現の幅が広がるし、私自身の成長に繋がるはず。
この考えはきっと間違いじゃない。
でも、考えれば考えるほどわからなくなる。
私らしさってなんだろう?
一人で悩んでいても仕方ないし、同好会のみんなに訊いてみようかな。 「自分らしさかぁ。難しい質問だね」
学園のベンチに座っていた侑さんに訊いてみると、すぐに「むむむ」と渋い表情を浮かべました。
「私もそこまで個性的じゃないからなぁ……」
そんなことはないかと。
歩夢さんの幼馴染だし、ときめきを感じたときの行動力は鬼気迫るものがありますよね。
「しずくちゃん、それって褒めてる?」
褒めてますよ。
それに、ランジュさんに厳しいことを言われたときも、すぐに切り返していましたよね。私なんて大ダメージを受けたのに。メンタルが強いというか、図太いというか。
「しずくちゃん、私のこと嫌い?」
大好きですよ。 「自分らしさ……? うーん、難しい質問だね」
歩夢さん、それはさっき聞きました。
「私もそこまで個性的じゃないんだよね……」
それもさっき聞きました。
歩夢さんは気持ちを内側に秘める根暗タイプだから、ライブのときに明るい表情を浮かべるとギャップ萌えがありますよね。
「しずくちゃん……それって褒めてる?」
褒めてますよ。
歩夢さんは笑うときも静かに微笑んでるような気がして、たまに深意があるように感じるんですよね。誰かが侑さんと話していると、よくミステリアスな表情を浮かべてます。
「そ、そうかな? 最近は少ないと思うけど……」
内側に何かが潜んでいるような雰囲気って素敵ですよね。
歩夢さんは普段穏やかで優しいので、時折見せる狂気が良い味を出してると思います。
「しずくちゃん……私のこと嫌い?」
大好きですよ。 「いや、しず子は十分個性的だと思うけど?」
かすみさんは睨むように私を見つめてきました。
そんな……私なんてぜんぜん無個性だよ。
かすみさんみたいにテストでわんわんなんて出来ないし、かすかすなんて面白ネームもないし。
「どっちも不名誉だし、わんわんじゃなくてにゃんにゃんだからね!?」
にゃんにゃんかすかす(笑)
「絶対バカにしてるよね!?」
そう、そういうところだよ。
ぶりっ子ボケとツッコミを両方こなせるのもかすみさんの強いところだよね。
「どっちかというと弄られキャラになってない!? あと、かすみんはぶりっ子じゃないから!!」
あ、弄られキャラなのは自覚してたんだね。 「個性なんてなくてもいいんじゃない?」
果林さんはあっさりとそう言いました。
でも、個性がないと読モにも選ばれませんよね?
「しずくちゃんは読者モデルをやってみたいのかしら? 大切なのは『自分が何をしたいのか』であって、『自分らしさを作ること』じゃないと思うけどね」
言われてみればその通りです。
流石果林さん、先輩らしいところもありますね。
「そうでしょう? 変に自分らしさを作っちゃうと『その自分』を演じちゃうこともあるかもしれないしね。あまりオススメはしないわ」
なるほど。
果林さんも実はポンコツキャラを演じていたりするんですか?
「いえ、そんなことはないけれど……」
じゃあテストの点数が低くて意外とビビリで地図アプリもろくに使えないのは素だったんですか!? まさか、そんなわけないですよね!? クールな果林さんのイメージが崩れちゃいそうです。
「もちろん演技に決まってるじゃない。そう。私はあえてポンコツを演じているの。あえてね」
すごいです。
果林さんは名女優ですね。
「ねえ、しずくちゃん。わざとだったりしないわよね?」
?
何がですか? 「個性かぁ。やっぱり攻勢に出るしかないんじゃないかな? 個性だけに!」
愛さんはすごく個性的ですよね。
ダジャレのゴリ押しをしてるだけで愛さんらしさが出てくるんですから。
「でも、ダジャレだけが愛さんじゃないけどね!」
例えば何がありますか?
「え!? それは、ほら……優しい!とか……?」
でも、自分で自分のことを優しいなんて言っちゃう人って詐欺師みたいじゃないですか?
「それはそうかも……じゃあ、明るい!愛さんは明るいよ!」
でも、美里さんと喧嘩したときはかなり暗かったですよね?
それに、昔は陰キャだったって自分で言ってましたよね?
それって今は陽キャを演じてるってことじゃないんですか?
「しずく、けっこうキツくない!?」
私は優しいですよ。 「しずくちゃんは今のままで大丈夫だよ~」
彼方さんはふんわりした笑顔でそう言ってくれました。
嬉しいですけど、今の私は自分探しをしているんです。
彼方さんから見て、私ってどんな人間ですか?
「しずくちゃんはしっかり屋さんだよね~」
まあ、だらけている彼方さんから見ればそう見えるでしょうね……。
「たはは~手厳しいね~。でも、彼方ちゃんだってやるときはやるよ~」
それって妹が絡んだときだけですよね?
遥さん以外のことで自分から動いたことなんてありませんよね。
「え~? そんなことないよ~」
せつ菜さんとかすみさんが喧嘩して部が消えたときも寝てるだけでしたよね?
あれ、普通にありえなくないですか?
「うっ……あのときのことは反省しております……でもでも、その後は彼方ちゃんも頑張ったよ? 侑ちゃんの相談に乗ったし、歩夢ちゃんにも助言したよ~」
それって彼方さんから動いたわけではありませんよね?
近づいたのは侑さんの方でしたし、歩夢さんの様子なんて気付いてもいませんでしたよね。
「うぅ……今日のしずくちゃんは厳しいね~……」
私は正論を言ってるだけですよ。 「え!? しずくさんは今のままでも個性的ですよ!!!自信を持ってください!!!!」
声でっか……もう少し声量下げてください、せつ菜さん。
「す、すみません!!さっきまで果林さんの『Starlight』を聴いていたもので!!『足りないわぁボリューム上げて!』のところ、すごく熱いですよね!!!!」
だからって日常会話でまでボリューム上げないでください。
せつ菜さんは個性の塊って感じですよね。スクールアイドル大好きですし、オタクですし、ギャグみたいに料理下手ですし、声でかいですし、二重人格ですし。
「私ってギャグみたいに料理下手だったんですか!?!?」
あ、言い間違えました。
ええと、そう……現実的ではないですよね。
「!?!?!?」
芸術的で現実離れしてるって意味です。
「なるほど!!!!そういうことですか!!!!!」
あれって自分で味見とかしてるんですか?
「してるに決まってます!!!!!!美味しすぎて食べた直後の意識がなくなりますね!!!!!!!!」
なるほど。
くれぐれも健康には気を付けてくださいね! 「個性かぁ~難しいよね~」
エマさんは自分らしさで悩んだことなんてなさそうで羨ましいです。
「えー? どうしてそう思うの?」
留学生ですし、そばかすですし、胸もでかくて体もでかいですし、すぐ変な日本語覚えますし、たまにドン引きするようなこと平気で言いますし。
「私ってそんなに変なこと言ってたの? でも、日本語って難しいから仕方ないよね~」
「アイスはすぐ溶けてなくなるからいくら食べても太らないよ~」とか言ってましたよね? あれ日本語が難しいとか関係ないですから。ただのデブ理論ですから。
「ひ、ひどいよしずくちゃん……」
公式サイトに体重載ってなくてよかったですね。 「しずくちゃんボード、作る?」
そんなの作っても璃奈さんの二番煎じにしかならないよ。というか私は璃奈さんと違って表情を完璧に動かせるし。
「たしかに」
よく考えると笑えないってやばいよね。なにかの病気なんじゃないかな? 顔面神経麻痺とかさ。病院には行ったの?
「行った。けど、特に問題は見当たらなかった」
ふーん。じゃあ心因性なんだね。ストレスが原因なら、スクールアイドルは控えた方がいいかも。
璃奈ちゃんボードのせいで顔の形まで変形しちゃいそうだしね。
「……璃奈ちゃんボード、しょんぼり」 栞子さん、私には何の適性があると思う?
「演劇とスクールアイドル、どちらにも適性はあると思いますよ」
じゃあ大女優の適性はあるかな?
「もちろん。しずくさんならなれますよ」
ふーん、なれなかったら?
「え」
栞子さんが責任取ってくれるの?
「いえ、それは……」
取ってくれるんだよね?
「……はい」 ミアさんはいいよね。
ジャップとかファックとか言ってるだけでキャラ立ちするんだから。
「……どうしたんだしずく? やけに荒れてるじゃないか」
ねえミアさん、いつもみたいにジャアアアアアアップとか叫んでみてよ。
「いや、そんなことは一回も言ったことないよ」
嘘つき。ほら、このSS見てよ。
「ん?」
ほら。この海外の友人ってキャラの台詞。これどう見てもミアさんだよね?女なのに男口調だし、アメリカ人だし。
「た、確かに…? 言われてみると、これが正しい形のような気がしてきたよ。日本ではこれがアメリカ的なんだね?」
そうだよ。
「よししずく、行くぞ。――Hey、ジャップ!ジャップ!!ジャアアアアアアアアア!!!!」
ファックだよ。 ランジュさんはいきなり弱体化しましたよね。
「ランジュは別に弱くなんて……」
最初は強気だったのに、いきなり弱々しくなっちゃうんだもん。あれ、せつ菜さん並みの二重人格じゃないですか?
「しずく、それはせつ菜にも失礼だわ」
自分からいきなり喧嘩売っておいて実は寂しがり屋でしたは無理ないです? せっかく強キャラだったのにあれのせいでキャラ死んじゃいましたよね。
「ちょっと待って! いつの間にかしずくの個性の話からランジュの個性の話に逆転してない!?」
言われてみれば。
じゃあランジュさんから見た私ってどういう人間ですか?
「あなた、かわいいフリして意外と辛辣なところあるわよね」
はい?
「わんわん(笑)とか、せつ菜スカーレットストーム(笑)とか。あと、セリフの最後に♡が付いてるように思える声だから、愛玩動物扱いされてる気もするわ」
そんなことないですよ♡
「それにね、妄想癖も個性だし、捉えどころがないのも個性だと思うの。理想に邁進する姿勢はランジュ好みだし、本当の自分について葛藤するなんて根が真面目な証拠じゃない」
ランジュさん……♡
「あと、モノクロームって清濁合わせ呑んだ存在みたいでかっこいいわよね! ブラックとホワイト! 白しずくと黒しずくが合体して最強になるの! きゃあっ!」
良い雰囲気が台無しです♡
中二病は中学生で卒業してください♡
「それはせつ菜にも失礼だわ!」 みんなに相談してみて、本当の自分がなんなのか……少しわかった気がします。
優しくて真面目で、しっかり者の後輩系スクールアイドル……それが私。
凡庸かもしれないけど、それでもいいんです。
ありのままの自分を受け入れることこそが「本当の自分」なんだって、みんなに教えてもらいましたから。
同好会を良い方向に導いていけるように……私はこれからも、理想に向かって進み続けます♡
~fin~ >>30
キチガイになりきれてないよな
っぱ中途半端なクソより突き抜けたクソだわ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています