千歌「志満姉」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ある日の高海家。
千歌「志満姉、志満姉、志満姉〜」
美渡「うるさいわね。何騒いでんのよ」
千歌「ねえ、机の上に私のノート置いてなかった?」
美渡「知らないわよ。自分の部屋じゃないの?」
千歌「違うから聞いたんじゃん。学校から帰って来てこの部屋で開いた記憶があるんだよ」
美渡「ふ〜ん」
千歌「だから志満姉知ってるかなと思って」 美渡「へ〜そう」
千歌「で、志満姉は?」
美渡「さあ?」
千歌「部屋に戻ったのかな?」
美渡「そうじゃない?」
千歌「行ってみよう」バタバタバタ〜
美渡「だから走るなって!!!」 ガラガラガラ
志満「ただいま〜」
千歌「あっ!志満姉!」
志満「あら、千歌ちゃん。お出迎え?」
千歌「え…うん。出掛けたの?」
志満「うん」
千歌「そっか。部屋に居るのかと思ってたよ。どこに行ってたの?」
志満「ちょっとね。それより、ほら。お土産買って来たわよ」
千歌「わっ!もしかしてケーキ!」
志満「正解!冷蔵庫にしまって置いてくれる?荷物部屋に置いて来るから」
千歌「うん。あっ、志満姉…………ん?」 千歌「………ん〜」
美渡「志満姉出掛けてたの?」
千歌「みたい。ケーキ買って帰って来たよ」
美渡「へぇ…そりゃあラッキーだね」
千歌「うん…」
美渡「何?嬉しくないの?って言うかノートあったの?」
千歌「あっ…聞くの忘れた…」
美渡「何やってんのよ」
千歌「いや…あのね…」
美渡「何よ?」 千歌「志満姉…多分香水つけてた…」
美渡「………ふ〜ん。で?」
千歌「志満姉も香水つけるんだね」
美渡「そりゃあ…大人だし。香水くらいつけるでしょ」
千歌「そうだけど…。近所に行くのにつけないだろうし…」
美渡「何が言いたいのよ?」 千歌「もしかして…デートだったりして…」
美渡「いや……デートって…あんたが学校から帰って来た時には家に居たんでしょ?」
千歌「うん」
美渡「だったら、この短時間でデートはないでしょ」
千歌「そうかなぁ。でもさ…ご近所に行くのに香水つける?しかもケーキまで買って来るなんて…近場じゃないよね?」
美渡「そうだけど…」
千歌「デートじゃなくても……男の人に会って来たとか…」 美渡「え〜…いやいや…そんな…まさか…」
千歌「でも…志満姉だって恋人居てもおかしくないし…」
美渡「まあ…そうだけど。今まで聞いた事ないし」
千歌「美渡姉みたいにベラベラ言わないだけかもしれないじゃん」
美渡「は?何ですって?」
千歌「いや…だって美渡姉は恋人出来たらすぐに…」
志満「なぁに?喧嘩?」 千歌「あっ、志満姉…」
美渡「お、お帰り…」
志満「ただいま。ダメよ、大声出しちゃ。お客様に迷惑よ」
美渡「は、はぁい」
千歌「志満姉には弱いんだから」
美渡「うるさい」
志満「美渡?」
美渡「あはは…はは…はい。あのさ、志満姉…どこ行ってたの?何も言わないで出掛けるからさ」
志満「あっ、ごめんね。ちょっと人に会ってたの」 美渡「人に?それって…」
プルルル
志満「あら」チラッ
千歌「志満姉のケータイだよ」
美渡「…出ないの?」
志満「出るわよ。カレー作ってあるから用意しておいてくれる?」
美渡「あっ、はい」 志満「じゃあ、よろしくね」
スッ、パタン
千歌「ねえ、美渡姉」
美渡「何よ?」
千歌「電話の相手誰だと思う?」
美渡「さあ?」
千歌「ここで電話すればいいのにね」
美渡「そうね。まあ…でも、聞かれたくない話だってあるんじゃないの?」
千歌「恋人との会話とか?」 美渡「まあ…聞かれたくはないわね。聞きたくないし」
千歌「聞きたくない?」
美渡「嫌でしょ。志満姉が恋人と甘々トークしてる所なんて」
千歌「別に気にならないけど」
美渡「あっ…そう」
千歌「私…ちょっと行ってくる」
美渡「は?ちょっと…怒られるわよ」
千歌「志満姉に怒られた事ないもん」
美渡「あんたはね…ってバカ………知らない」 千歌「………部屋に居るみたいだね」
そろ〜り、そろ〜り
千歌「声…聞こえるかな〜」
志満「うん…うん……そう……お……」
千歌「やっぱり扉越しだと聞こえづらいなぁ。声小さいしなぁ、志満姉は」
志満「うん……私も……あい……て……」
千歌「え…今…愛してるって…」
ガチャ
志満「あら?千歌ちゃん…………何してるの?」
千歌「あっ…えっと………志満姉……ノート…ノート見なかった?私のノート…」 志満「ノート?あぁ…居間に置きっぱなしだったから部屋に戻して置いたわ」
千歌「そ、そ、そうなんだ」
志満「ダメよ。ちゃんと片付けなきゃ」
千歌「は、はい」
志満「さあ、ご飯にしましょうか」
千歌「う、うん」 翌日
千歌「と言う事があったの」
梨子「へ〜そうなの」
千歌「へ〜って。リアクション薄いなぁ」
梨子「だってねえ?志満さんに彼氏が居たって不思議じゃないし。ねえ?」
曜「そうだね」
千歌「私も最初はそう思ったよ。でも、なんか想像つかなくて…志満姉が男の人と一緒に居る所なんて…」
梨子「そうなの?」
千歌「だって…今まで一度だって恋人の話とか聞いた事ないしさ…」 梨子「言わないだけでしょ」
千歌「でも…」
曜「ふふふっ」
千歌「あ〜、曜ちゃん今笑った?」
曜「ごめん、ごめん。千歌ちゃん可愛いなと思ってさ。ね、梨子ちゃん?」
梨子「そうだね」
千歌「ちょ、え〜なあに?」 梨子「大好きなお姉ちゃんを奪われちゃうんじゃないかって不安なんでしょ?」
千歌「なっ、ち、ち、違うし。そんな訳ないじゃん。なんでそんな話になるの?」
梨子「何でって…誰でもそう感じると思うよ?」
曜「うん…気が付いてないの千歌ちゃんだけだよ」 千歌「二人ともなんか誤解してるよ。別に良いけど」
梨子「素直じゃないわね」
千歌「……でさ、私としてはハッキリさせたいんだよね」
梨子「ハッキリ?」
千歌「志満姉に恋人が居るのかどうかを」
梨子「聞けばいいじゃない?」
千歌「聞ける訳ないじゃん」
梨子「どうして?」
千歌「どうしてもなの」 曜「じゃあ、どうやってハッキリさせるの?」
千歌「尾ける」
曜「尾ける……?あっ、尾行するって事?」
千歌「うん。今週末って練習無しでしょ?」
梨子「そうだけど」
千歌「一生のお願い!私に付き合って」
ようりこ「えーーーーっ!!!?」 〜日曜日〜
千歌「と言う事で志満姉を尾けて商店街まで来ています」
梨子「誰に説明してるの?って言うか商店街って普通に買い物じゃないの?」
千歌「そうなんだよね。出掛けるって言うからチャンスかと思ったら商店街だもんね」
曜「千歌ちゃん!」
千歌「どうしたの?」
曜「見て!」
千歌「ん?あっ!」 曜「だよね?」
千歌「志満姉が男の人と喋ってる…」
梨子「知り合いと会っただけじゃないの?」
千歌「後ろ姿しか見えないけど…若いよね?志満姉が若い男の人と喋ってる…」
梨子「驚く事?」
曜「普段背景にすら出て来ないからね」
梨子「そう言う事言うのはやめよう?」 千歌「……なんか志満姉…楽しそうに話してる」
梨子「良いことじゃない」
千歌「そうだけど」
曜「あっ、こっち向いた」
千歌「え?あっ…」
梨子「あぁ……これはこれは……」
曜「爽やか…」 千歌「あの人……うちが野菜を仕入れてる所の息子さんだよ。たまに配達に来るんだけど」
梨子「へ〜じゃあ、ただの知り合いかな?」
曜「凄く楽しそうだけどね」
梨子「そうね。恋人って言われても違和感はないわよね」
千歌「ありまくりだよ」
梨子「え?そう?」 千歌「なんて言うか…よく分かんないけどあの人は違う様な気がする」
梨子「よく分からないのに…でも、イケメンのお義兄さんが出来たら嬉しいんじゃないの?」
千歌「別に…イケメンかどうかは重要じゃないよ」
梨子「まあ…そうだけど」
千歌「それにあの人…前にうちに配達に来た時にみかん嫌いって言ってたから。農家なのに」
梨子「それは…仕方ないんじゃないかな?」 曜「あれ?」
梨子「どうしたの?」
曜「別れちゃったけど…」
千歌「やっぱり偶然会っただけなんだよ」
梨子「決めつけるのは早いと思うけど」
千歌「そうだけど…それよりほら!志満姉が行っちゃうよ。追いかけよう」 千歌「どこ行くんだろう…志満姉」
梨子「志満さんって散歩好き?」
千歌「どうなんだろう?」
曜「あっ!」
千歌「何?何かあった?」
曜「……男の人に話しかけられてるよ?」
千歌「本当だ…」
梨子「なんか様子が変だけど……もしかしてナンパじゃない?」 千歌「ナンパ?ここ静岡だよ?」
梨子「静岡だってナンパくらいあるでしょ…」
千歌「仮にナンパだとして志満姉は…」
曜「ねえ…男の人について行っちゃったよ」
千歌「嘘!!?」
梨子「こ、これは意外だわ」 曜「まさかだね…」
千歌「ど、どうしよう…」
梨子「どうしようって言われても…」
千歌「と、止めなきゃ」
梨子「ええ…嘘?」
千歌「早く」タッタッタッ
梨子「ちょ、ちょっと…待って…千歌ちゃーーん」 ワイワイ ガヤガヤ
梨子「結構歩いたわね…」
曜「休日だからそこそこ人居るね」
千歌「…志満姉どこに行っちゃったんだろう」
曜「あっ!あれ、そうじゃない?」
千歌「え?あっ…」
曜「楽しそうに話してる…」
梨子「って言うか…なんか…建物に入ろうとしてない?」
曜「してるね…」
梨子「あれ…子供が入っていい場所じゃないわよね」
曜「そうだね…」
梨子「まずい所…見ちゃったかも…」 曜「あれ?千歌ちゃんは?」
梨子「え?」
千歌「志満姉ーーーーー!!!!!」
志満「え?千歌ちゃん?」
男「へ?誰?」
志満「妹です」
千歌「志満姉をどこに連れて行く気ですか!!!!」
男「え?えっと…あはは」
志満「ちょっと…千歌ちゃん?」
千歌「ダメだよ、志満姉。変な所に行っちゃ」
志満「変な所って…道を聞かれたから案内してただけよ」
千歌「道?」
志満「うん。そしたら急に体調が悪くなったみたいでどこかで休憩したいって言うからね」 梨子「それ…多分常套手段ですよ」
曜「危ない所でしたね」
志満「あら?梨子ちゃんと曜ちゃんまで。危ない所って?」
男「いや…あっ、なんか体調治ったかも。それじゃあ!!!」
志満「え…道は大丈夫なんですか…?行っちゃった…」
梨子「多分大丈夫だと思いますよ」
志満「ならいいんだけど」 千歌「良くないよ。もう心配したんだから」
志満「……なんだかよく分からないけど。心配してくれてありがとう、千歌ちゃん」
千歌「所で志満姉。こんな所で何してたの?」
志満「う〜ん…」
千歌「言えない事なの?」
志満「今日はね、人と会う約束をしてたのよ」
千歌「それって…やっぱり…」 高海母「千歌!」
千歌「へ?お、お母さん?なんでお母さんがこんな所に…」
志満「お母さん」
高海母「なかなか来ないから探しちゃった」
千歌「どう言う事?東京に戻ってたんじゃ…」
高海母「また暫くこっちに戻って来る事になったのよ」
千歌「な、な、だったら言ってよ」
志満「千歌ちゃんを驚かせようかって」
高海母「実はこの間も帰って来てたのよ。その時、思いついたの」
千歌「この間って………あっ!もしかして、志満姉が出掛けてたのって…」
志満「お母さんと会ってたのよ」 千歌「そ、そう言う事か…」
梨子「千歌ちゃんの早とちりって事ね」
志満「え?」
曜「良かったね、千歌ちゃん」
千歌「なんか疲れたよ」
志満「どう言う事?」
千歌「てっきり志満姉…恋人と会ってるのかと思って」
志満「ええ?」
高海母「え、やだ。恋人居るの?」
志満「いや…」
高海母「志満にお見合いの話持って来たのに」
千歌「え?」
志満「お見合い?」 〜高海家〜
美渡「どひゃぁぁ。お、お、お見合い?」
志満「うん」
美渡「相手は?どんな人なの?」
志満「老舗の料亭の板前さんだって」
美渡「歳は?」
志満「33歳」
千歌「だいぶ歳上だね…」
美渡「どう言う経緯なの?」
高海母「お得意さんの紹介でね。ぜひ、志満にどうかって」
美渡「お得意さんの…お父さんは何て?」
志満「私の好きにしろって」 美渡「ど、どんな人なの?」
千歌「写真とかないの?」
高海母「写真なら、はい」
千歌「わぁ…」
美渡「………志満姉じゃなきゃダメなの?」
高海母「向こうも志満を気に入ってくれたんですって」
千歌「大人の男性は志満姉みたいな落ち着いた人が好きなんだよ」
美渡「私は落ち着いてないと?」
千歌「その振り上げた拳が何よりの証拠じゃない?」 美渡「志満姉…受けるの?」
志満「う〜ん…会わずに断るのも失礼だし」
千歌「じゃあ…会って良かったら志満姉結婚しちゃうの?」
志満「話が飛躍し過ぎよ、千歌ちゃん」
千歌「だって…」
志満「会ってみるだけだから、安心して」 〜千歌の部屋〜
果南『ふ〜ん。それで志満姉お見合いするんだ』
千歌「うん。お母さんも酷いよね」
果南『どうして?』
千歌「だってさ…志満姉の気持ち無視して」
果南『志満姉が嫌って言ったの?』
千歌「言ってないけど…」
果南『もしかしたら、喜んでるかもしれないじゃん』 千歌「え〜志満姉が?まさかぁ」
果南『どうしてそう言い切れるの?良い条件の人なんでしょ?』
千歌「そうだけど。なんかさぁ」
果南『なんか…何?』
千歌「何でもない」
果南『幸せなんてどこに転がってるか分からないんだからさ。このお見合いがそうかもしれないじゃん?」
千歌「うん……。果南ちゃん…なんか東京行って変わったね」
果南『変わってないよ。私はどこに居たって千歌の三人目のお姉ちゃんだよ』
千歌「うん」
果南『じゃあ、明日も早いから電話切るよ。おやすみ』
千歌「おやすみ」 翌日、、、。
千歌「おはよう」
美渡「おはよう」
高海母「おはよう。ご飯出来てるわよ」
千歌「今日はお母さんが作ったんだ」
美渡「千歌…。あんた、昨日夜遅くまで電話してたでしょ?」
千歌「果南ちゃんだよ。元気でやってるってさ」
美渡「そう」
千歌「何?」 美渡「別に」
千歌「って言うか今日は起きるの早いね。毎日これなら慌てて家出なくてもいいのにね」
美渡「これからは自分の事は自分でやらなきゃいけなくなるかもだからね」
千歌「ん?」
美渡「志満姉がいつまでこの家に居るか分からないでしょって言ってんのよ」
千歌「あぁ…」
志満「何言ってるの。話が飛び過ぎよ。会ってみるって決めただけだから。千歌ちゃんおはよ」
千歌「志満姉…おはよう」 美渡「……いつまでも突っ立ってないで早く食べたら?」
千歌「分かってるよ。いただきま〜す」
高海母「はい、どうぞ」
志満「美渡、千歌ちゃん」
美渡「何?」
志満「今日、お母さんと出掛けるから。帰りは遅くなると思うの」
美渡「え?そうなの?」
千歌「どこに行くの?」 志満「東京に行ってくるわ」
千歌「東京?なんで?」
美渡「勘が悪いわね。見合い相手に会いに行くってんでし?」
志満「うん」
千歌「え?だって昨日の今日だよ?」
高海母「昨日あの後に連絡したらすぐにでも会いたいって言うから」
千歌「それにしたって急過ぎない?何をそんなに急いでるんだろうね」
美渡「まあ確かにね。女には準備ってもんが必要だってのに。35歳でしょ?分かってないわね」
千歌「ね」
志満「二人とも。そんな言い方しないの」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています