愛「カリンってさ、恋とかってした事ある?」
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果林「……………はぁっ!?」
愛「だからさ、恋だよ。恋」
果林「…………///」パクパク
愛「どーしたのそんな口パクパクして」
愛「……あっ!もしかして鯉のマネ!?『こい』だけに!?」
果林「違うわよっ!!絶句してるの!!」
果林「何よ急に!!え、まさか愛、好きな人できたの!?」
愛「あー、いや、そーじゃないんだけどさ」 愛「昨日部屋を片付けてたら、けっこー昔の物とか出てきてさ」
愛「なつかしーなんて思いながら見てたんだよ」
愛「アタシ、昔は人見知りで引っ込み思案だったって話したじゃん?」
果林「えぇ、美里さんが言ってたわね」
愛「そそ。だから小さい頃は両親がよく旅行に連れてってくれたんだ」
愛「少しでも外で遊ぶ楽しさを知ってほしいっていうんでね」
果林「良いご両親じゃない」
愛「えへへ、ありがと!」 愛「その時の思い出のものとかもいっぱい出てきたわけさ」
果林「旅行の時の……お土産とかかしら」
愛「うんうん。ホントいろんなトコ行ったからね」
愛「その中に旅行先で撮った写真が1枚出てきてね」
愛「……旅行先で会った男の子と2人で映ってるやつ」
果林「えっ……まさか恋っていうのは……」
愛「……うん」
愛「今思えば、それがアタシの初恋だったのかなーって」
果林「(な、何ソレ甘ずっぱぁ〜〜〜〜……!!)」 果林「そ、その話詳しく聞かせなさいよ」
愛「えっ!?でも別に面白いエピソードとかなんもないよ!?」
果林「それはあなたが決める事じゃないわ」キリッ
愛「漫画の悪役みたいな返し!!」
愛「てゆーかアタシは果林の初恋の話とか聞きたくて……」
果林「まだよ。はい、話したわ」
愛「え、ええ〜〜っ!?う、嘘だぁ〜〜!!」
果林「愛ぃ……はやくぅ……も、もうガマン、できなっ……///」
愛「セクシーの技術をそういう使い方すんのやめろっっ!!」 愛「はぁ……じゃあ話すけど、ホントただの旅行話だからね」
果林「えぇ!!」ワクワク
愛「あれはアタシが……いくつだろう。小学校1年生くらいだったかな」
愛「どこに行ったかももううろ覚えなんだけど、多分どっかの島だったと思う。あったかい所」
果林「へぇ……沖縄とか?」
愛「うーん、でも飛行機じゃなくて船で行ったと思うんだよね」
愛「あ、ごめん!そこも記憶あやふやだ」
愛「まぁとにかく、そこに旅行に行った時の話だよ」
−−−
−−
− 愛ママ「ほら愛、ここがこれから私たちが泊まる旅館よ」
愛(6)「うん……」
愛「…………」トボトボ
愛ママ「どうしたのよ、せっかく旅行に来たのに」
愛「……おねーちゃんとおばーちゃんも、いっしょがよかった」
愛ママ「仕方ないでしょ。おばあちゃんはもう年だし」
愛ママ「美里ちゃんは病気しててあんまり外には行けないんだから」
愛ママ「その分、愛がいっぱい楽しんで、思い出持って帰ってあげなきゃ!」
愛「……はーい」 愛パパ「よし、愛!今からお魚さんを釣りに行こうか!」
愛パパ「これだけ綺麗な海だ!おいしいお魚さんいーっぱいいるぞ!」
愛パパ「『うおーっ!』って驚くくらいな!『魚(うお)』だけに!!」
愛「…………」
愛ママ「…………」
愛パパ「う、うん。よし。じゃ、行こうか……」
この時の愛さんはホントにおとなしい子だったんだ。
今では大好きなダジャレにも無反応なくらいにね。 それからアタシとおとーさんで魚釣りをしに海に行ったんだ。
そしたらおとーさんはそこにいた他の釣り人とすぐ友達になっちゃってね。
アタシに構うより、自分が一番楽しみ始めちゃった。
愛「…………」ボーッ
愛「…………(うみみるのもあきちゃった)」
愛「…………やっぱり、つまんないや」
愛「りょかん、もどりたいな」
愛「…………」スタスタ
釣りに飽きちゃったアタシはそのまま一人で旅館に帰ろうとしたんだ。
旅館から海へは歩いてそう遠くない距離だったからね。
でも小さい頃のアタシの足には十分な距離で、
案の定迷子になっちゃったんだ。
……え?道がわからないなら、闇雲に動くべきじゃない?
カリンが言うと説得力あるなー、それ。 愛「……どうしよう、みち、わかんなくなっちゃった」
愛「う……ここ、どこ?」ジワ
愛「う、う……うぇぇええええええ」ポロポロ
迷子だって気づいた時には日もだいぶ落ちていて、
お腹もすいてきたアタシはその場で泣き出しちゃった。
誰かに道を聞く、なんてこと当時のアタシにはできなくってさ。
そんな時だったんだ。
???「おい、おまえ!」
愛「………ふぇ?」グス ???「なにこんなとこで泣いてんだ?」
???「ていうかおまえ、島の子じゃないだろ。親は?」
青みがかった黒の短髪に、日焼けで真っ黒になった肌。
服装はランニング1枚に短パン。
いかにも活動的な感じのする男の子に出会ったんだ。
愛「おとーさん……いるけど、わたし、ひとりで出てきちゃって……」
愛「それで……それで………」ウルウル
男の子「げっ」
愛「うぇぇぇぇええええーーーーーーーっ」ビー 島時代の果林さんは日焼けランニング短パンという謎の共通認識 男の子「あー、わかったわかった!迷子だな!」
男の子「いっしょに探してやるから!泣くなって!」
愛「うぇええええーーーーおなかすいたぁあああああ」ビィィィ
男の子「そっちかよ!!!」
愛「だって、だってぇえええええええええ」ビィィィィ
男の子「えぇーっと、じゃあまずごはんだな!」
男の子「とりあえずウチ来な!お母さんにたのんで、おまえの親も探してもらうから!」
男の子「だから泣きやめって!」 男の子「……あ、そうだ!ほらこれ!」ゴソゴソ
愛「……?なにこれ、きれい……」
男の子「今日海でひろってきた貝がら!すげぇだろ?こんなに!」ジャラジャラ
愛「……すごい!」
男の子「な?」ニカッ
男の子「もっとおもしろいもの、ウチにいっぱいあるからさ!行こうぜ!」
愛「うん!!」
その男の子のおかげで泣き止んだアタシは、
その子の家にお邪魔して、ご飯をいただいたんだ。
それがすっごくおいしくてさ!
ずっと不安だったアタシも笑顔になれたの! その後、その子の親から旅館に連絡を入れてくれて、
すぐにアタシはおとーさんおかーさんと再会できた。
……おとーさんはその時すっごくおかーさんに怒られてたなぁ。
で、旅行中はアタシのワガママをなんでも聞いてくれるって事になって、
アタシは「あの子と遊びたい」ってお願いしたんだ。
もちろん両親も、そしてあの子もOKしてくれて、
島にいる間中、その男の子とずっと一緒に遊びまわったの。 その子はアタシに色んな遊びを教えてくれてさ。
魚釣りとか、虫取りとか、
他の島の子も交えて鬼ごっこやかくれんぼもしたな。
東京にいた時からあんまり外で遊ぶことがなかった愛さんにとっては
何もかもが新鮮なことでさ。
友達もあまりいない方だったし、
もしかしたらその子は初めてできた友達でもあったかも。 でも滞在の期間は限られていて、
楽しい時間はあっという間に過ぎちゃった。
お別れの時はさみしくてさみしくて、いっぱい泣いちゃったよ。
でもあの子はアタシをまっすぐ見て、笑って言ってくれたんだ。
「いつかまた、いっしょに遊ぼうな」ってさ。 そして約束の印として、あの子が宝物って言ってた
きれいな色の貝がらをアタシに預けてくれたんだ。
……ま、小さい頃の思い出すぎて、
どこの島だったかもわからないくらいだから
約束は果たせないままなんだけどさ。
それでもあの時会った男の子の顔は今でもずーっと覚えてて。
思い出す度に胸がキューっとするんだよね。 −
−−
−−−
愛「まぁ、そんなわけで」
愛「その子が多分、アタシの初恋の子だったと思うんだよね」
果林「…………」
愛「どう?オチもないし、別に面白い話じゃないっしょ?」
果林「…………ねぇ愛、ちょっと聞きたいんだけど」
愛「ん?何?」 果林「その宝物の貝がらって、こう……スベスベした平たい、オレンジ色のヤツだったりする?」
愛「えっ!?よくわかったね!!」
愛「マジでなんでわかったの!!?エスパー!!?」
果林「あ、あー……いや、まぁ。なんかそんな気がして?」 愛「なんかさ、その男の子が言ってくれたんだ」
愛「『その色みたいに、元気な笑顔の方が愛は似合うよ』って……///」
果林「あーーーーーやめて!!」
果林「なんか!なんか思い出してきた!!あーーーーーーー!!!」
愛「ど、どーしたのさカリン急に……」 愛「でもホントその子のおかげで今のアタシがあるっていうか……」
愛「はぁ……今頃何してるのかな………」フゥ
果林「そのアンニュイな感じ出すのをやめなさい!!!」
果林「愛!!もうこの話終わり!!やめっ!!!」
愛「な、なんだよ〜。カリンがしつこく聞くから話したのに」
果林「も、もういいのよ!!わかったから!!」
果林「あとそれは恋じゃないわ!!ただの子供時代の思い出っ!!」
愛「えぇぇ!?なんでよ!?」
果林「そうじゃないと私もうDiverDivaなんてやってたら頭おかしくなるわっ!!!」
愛「ホントになんで!!!?」ガーン ◆その日の夜、ニジガク学生寮
果林「……もしもし?お母さん?」
果林ママ『果林?どうしたのよ、急に』
果林「あのね、私が小さい時、旅行で来てた迷子の子を連れてきたの、覚えてる?」
果林ママ『え?……あーっ!あの金髪の可愛い子?覚えてる覚えてる!』
果林ママ『あなたあの子が帰っちゃった後、ずーっといじけてたものね!』
果林「そ、そうだった?」 島育ちとかいう幼馴染勢に遅れをとる設定を逆手に取るのいいぞ 果林ママ「そうよ!それで事あるごとに『私もいつか東京行くんだー!あの子に会いに行くんだー!』って言い出して」
果林ママ「それで東京が似合う女になるっていうんで、モデル雑誌に投稿までするようになって」
果林ママ「あんなに男の子みたいだったあなたが、今では読モでスクールアイドル!信じられないわよね」
果林「……そ、そうだったかしら」 果林ママ「でもあなた、肝心のその子の名前も忘れちゃうんだから」
果林ママ「なんだったかしらねぇ。確か……あ……あ……」
果林「思い出さなくていいからっ!!!」
果林「用はそれだけっ!じゃあね!!」ピッ 果林「…………」
果林「………でも、そっか」
果林「愛が、『あの子』だったのね」
愛は私のおかげで今の愛があると言ってくれたけど、それは私もそう。
私もあの時出会った『あの子』の家があると言っていた東京へ行く為、
東京にふさわしい人になる為に、私は『女』を磨くようになった。
日焼けもしないし、傷も作らない。
言葉遣いも、所作も女性らしく。
いつか『あの子』に会った時、恥ずかしくないような私を目指して努力をし続けた。
果林「いつの間にか努力そのものが目的になってて、本当の目的を忘れちゃってたけどね……」 あの時、あんなにも弱々しかった『あの子』も、
島で男の子と一緒にバカばっかりやっていた私も、
今はどちらもスクールアイドルとして人を沸かせている。
しかも、同じ学校、同じ同好会の、同じユニットとして。
愛。
私たちはここで出会うよりずーっと昔に出会っていて、
ずーっと昔からお互いを意識して競ってきていたのね。
私の目的は今も昔も変わっていないわ。
『あの子』……いえ、『愛』と一緒にいて恥ずかしくない自分になること。
だからあなたも、あの時島で出会った『男の子』が言っていたような
元気いっぱいで、人をみんな笑顔にさせる素敵な女の子になりなさいよ!
モタモタしていると、置いて行っちゃうんだから! ◆翌日、部室
愛「……カリン。わかったよ」
果林「何が?」
愛「昨日、おかーさんに確認したの。アタシがあの時行った旅行先、八丈島だって」
果林「ブッッッッッッ」
果林「……へ、へぇ〜〜、そ、そうなの〜?」プルプル
愛「カリンって確か、八丈島出身だったよね……」
果林「ドッキーーーン!!」ビクッ
果林「え、えぇ〜〜!?ぐ、偶然ね〜〜!?ぐうぜーーーん!!!」
愛「昨日から急に叫んだりカリンの情緒どうなってんの……?」 愛「だから今度さ、一緒に八丈島行こう!」
果林「な、なんで!!?」
愛「ほら、昔の事すぎてあんまり島のこととか覚えてないからさ」
愛「だからカリンが案内してよ!綺麗な貝がら取れる所とか!!」
愛「ていうか多分あの男の子、アタシと同じくらいだったし、カリンとも同年代だよね!?」
愛「ヤバッッ!!じゃあもしかしたらカリンも知ってる人かもじゃん!!」
愛「えーどうしよ……。たぶんめっちゃカッコよくなってる気するんだよなぁー……///」
果林「…………」 愛「カリン!そしたら……ね!改めて愛さんの事、紹介する感じで……」
果林「行かない」
愛「え?」
果林「愛と八丈島なんて絶対行かないからっ!!!!」
愛「え、えぇぇぇ!!?ど、どうしてよ〜〜!!」
果林「ていうか愛!!あなたマジなの!?そこまでわかってて……マジなの!!!?」
愛「ま、マジマジ!!マジで会いたいよ!!あの『男の子』に!!」
果林「……もう!!」
果林「愛の思ってるあの子より、ぜっっったいカッコよくなってやるわーーーーーー!!!!」 おまけ
エマ「もう〜、果林ちゃんたら。またお部屋散らかして〜……」
エマ「アルバムもこんな下の方に行っちゃってるよぉ〜」
エマ「………ん?あれ、この色黒の子と、金髪の子……」
エマ「果林ちゃんと、愛ちゃんじゃん!!」
その後、ひょんな事がきっかけでエマの口からこの事が漏らされ、
真実に気づいた愛が羞恥で顔から火を吹く事件が起き、
その日から数日間、愛は果林と顔を合わせる度に恥ずかし気に目をそらす様になった。
せつ菜「まるで久保田未夢さんと村上奈津実さんみたいですね!!!!!」
果林「なんかその例え、わかっちゃいけないのにわかる気がするわ」
おしまい エマさんはこういうの運命だよ!!エモエモだよ!!って積極的にバラしていきそうなの分かる うーんいいですねぇ。良き良き。
素晴らしいSSでした。乙です。 ____ r っ ________ _ __
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 ̄ ̄ く_/ \ `フ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | |____丿く / <´ / `- 、_// ノ\ `ー―--┐
`´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'  ̄ ` `´ `ー' `ー───-′ 最初からエマさんにバラされてしまう最後まで素晴らしい
これもう運命の出会いでしょ ときどき男口調で愛をからかったりしてそう
そのたびに愛が顔真っ赤になっちゃうんだ 愛「カリンってさ、恋とした事ある?」
こう見えた俺は汚れてる 心がポカポカするよ〜
悪意もなく善意のつもりで果林ちゃんの秘密をバラしてしまうエマちゃん好きだわ バラされた時の2人のリアクションを詳しくですね!! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています