恋「キスで繋ぐ命」
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恋「ふわぁ…おはようございます、サヤさん」
サヤ「おはようございます。お嬢様」ニコッ
突然ですが私、葉月恋はとある病気にかかっています。
恋「うぅ、やはり寝起きだと少々クラクラしますね…」
サヤ「どうやらそうのようですね…ではお嬢様。早速“今朝の分”を」
その病気とは… 恋「はい…ん…」
サヤ「失礼します…ちゅ…」
恋「んん、ちゅ…んむ…」
どうやら私は、“キスしなければ死んでしまう病”らしいです…///
サヤ「ぷは…お嬢様、お体の具合はいかがでしょうか?」
恋「も、もう大丈夫です///サヤさんから元気を分けて頂きましたから」
サヤ「フフッ、よかったです♪それでは朝食の用意をしてきますね」 この“病気”が初めて出たのは一ヶ月程前…私が練習中に気を失ってしまう事がありました。
記憶にはないのですが、どうやらパニックになってしまった可可さんがじ…人工呼吸///を、したら私がすぐに目覚めたらしく…
それから何回も同じような事が起き、「もしかしたら」とこのような結論に至りました。
サヤ「今日は何時頃のお帰りになりそうですか?」
恋「練習が終わって、その後かのんさんの家に取りに行くモノがあるので…7時頃になると思います」
サヤ「承知しました…体力の方は大丈夫でしょうか?」
恋「心配いりませんよ。皆様がついていますから」
この事を知ってるのは、リエラのメンバーとサヤさんだけです。お医者様にかかることも考えましたが、前例も無いでしょうし何分頓痴気な話ですから…キスをしないままだったらどうなってしまうのかも、本当はわかりません。とても恐ろしくて確かめられませんし。
恋「では行ってきます、サヤさん」
サヤ「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
私の一日は、皆様と繋がる事でなんとかその平穏が保たれているのです… ―――――
可可「レーンレン!おはよーございマス!」
恋「おはようございます、可可さん」
可可「ほらレンレン!午前の分やってあげるデス!!」
恋「…あ、あの。今朝もサヤさんにしていただいたので、そんなに高頻度でなくても…」
可可「よいデハないですか!大は小に勝てる、と言いマスし!」
恋「それを言うなら大は小を兼ねるですよ…あの、本当に大丈夫で」
可可「…やデス」 恋「えっ…」
可可「万が一の事があったら、レンレンはどうなるデスか!そんなの…可可は考えたくありません!!」
恋「可可さん…」
可可「ね、レンレン。目を閉じて」ズイッ
恋「は、はいっ!では、お願いします///」
早朝の、誰もいない生徒会室で。
可可「ふふ。レンレンに可可のパワー、分けてあげマスね♡ちゅぅ…」
二つの影が、重なりました。 可可「はむっ…ん…ちゅ…んぅ…」
可可さんのキスは、短い物の繰り返し…その一回一回に、私を想う気持ちが込められてるようで…
恋「んん、可可さん…」
可可「んちゅ…レンレン…甜的…♡」
それが30秒程続いた後。
可可「はいっ、レンレンへの充電完了デス!」
恋「あ、ありがとうございました…///」 可可「もぉー、レンレンてばまだ照れちゃうデスか?」
恋「ごめんなさい、必要とは言えどうしても慣れなくて…」
可可「いいんデスよ!ゆっくりレンレンのペースで慣れていけば!」
そう言って屈託の無い笑顔を浮かべる可可さん。
思えば、最初に私を助けてくださったのも可可さんで…その時の可可さんは大変な様子だったと後から聞きましたし…本当に、心から私の身を案じてくださってるのですね…
恋「…ありがとうございます、可可さん」
可可「ひょわ」
気づけば、私は可可さんの頬に唇を… 可可「えへへ///レンレンからしてもらったのは初めてデスね」
恋「…はっ!ご、ごめんなさい!する必要もないのに私ったら」
可可「レンレーン♡」ギュッ
恋「あわわ…可可さん!?」
可可「むふふ〜、これからもずっと一緒デスからね!」スリスリ
恋「これからも…えぇ、よろしくお願いしますね。ふふっ」
それから私達は、一限目の予鈴がなるまでずっと抱き合っていました。 恋「〜〜〜♪」
恋(なんだか久しぶりに身体が軽いです♪)
すみれ「あら、恋じゃない」
恋「すみれさん、こんにちは」ペコリ
すみれ「ふふっ、なんだか機嫌がよさそうだけど…何かいいことでもあったのかしら?」
恋「はいっ。その、可可さんからも…えぇっと、“お裾分け”をしていただいたので…」
すみれ「あぁ、そういうこと…だから元気が有り余ってるのね」
恋「ほら、見てください!こんなに激しく動いたって平気なんです!」ブンブン
すみれ「あぁあぁ、そんなに動いたら…」 恋「よっ、はっ!っととと…」ヨロッ
すみれ「言わんこっちゃない…身体の方は大丈夫?」ギュッ
恋「すみません…支えてくださってありがとうございます」
すみれ「…今ので疲れとか出てない?」
恋「あはは、大丈夫ですよ。この程度ならへっちゃらです」 すみれ「…音楽科って、確か3限目は体育よね」
恋「えぇ、そうですけ…ど…」
すみれ「流石にしておいた方がいいと思うのだけれど?本当に大丈夫なの?」
恋「えぇっと、少々不安と言いますか…」
すみれ「なら尚更ね。とりあえず、部室にでも行きましょ」
恋「は、はい!」 すみれ「ふぅ…それにしても不便なものよね。その、キス…しなきゃ倒れちゃうだなんて」
恋「あはは…もう今更ですよ。それに、皆さんとでしたら苦じゃありません」ニコッ
すみれ「んっ///そ、そうなのね」
恋「?すみれさん」
すみれ「何でもないったらないわよ!さ、始めましょ?」
すみれさんが、腰掛けている私のアゴを、クイッと持ち上げる。調べによると、顎クイと言うようですね…眼前の、すみれさんの整った顔を見つめていると、否が応でも緊張してしまいます…
恋「すみれさん…」
そっと目を閉じると、やがて互いの吐息が重なる距離まで近づいて行き。 すみれ「んっ…」
それは、二人の距離が0になりようやく止まりました。
すみれさんとのキスは、長く、静かに。じわり、じわりとエネルギーが流し込まれるような…
恋「んん…」
本能が、もっと欲しがっているのか。時々すみれさんの方に顔を押しやると、
すみれ「ふふっ…」
それに合わせて、すみれさんも力を強めて… すみれ「ぷは…全く、最近の恋はちょっと欲しがりさんなんじゃないかしら?」
恋「うっ、すみません…」
すみれ「まぁ、いいわよ。余計にする分に、損もないものね」
恋「ありがとうございます、すみれさん」
すみれ「お礼なんていいのよ。さ、この平安名すみれが直々にエネルギーを分けてあげたんだから…頑張ってらっしゃい!」
恋「はいっ!」
今度は二人、パチンと手を合わせる。一瞬だけのそれに、必要性なんて無いと思うけれど…それがあると、もっともっと、頑張れる気がするのです。 キーンコーンカーンコーン
恋「ふぅ…もう放課後ですか」
千砂都「恋ちゃーん!うぃっすー!」
恋「あ、千砂都さん。うぃっすー、です」
千砂都「ほらほら、練習行こ。みんな待ってるよ」
“病気“になってから、練習前はこうして誰かが迎えに来てくださるようになりました。
それは勿論… 千砂都「それでね、その時マンマルがねー」
恋「まぁ、そんな事が…」クスクス
他愛もない会話をしながら廊下を進んでいると…
千砂都「…っと、もうそんなに人もいないかな?じゃ、恋ちゃん。ここら辺で」
恋「はい、ではお願いしますね…」
当然、練習中に倒れたりしないよう、こうしてキスをしなければなりません。
今一度、周りに誰もいない事を確認しそっと目を閉じて… 千砂都「…恋ちゃん。ちょーっと意地悪なんじゃないかな?」
恋「…え?」
目を開けると、そこには…背伸びをして、プルプルと身体を震わせる千砂都さんが。
恋「…ぷっ、ふふっ」
千砂都「あー!!恋ちゃん笑ったなー!?」
恋「すみません…ふっ、あまりにも可愛らしかったので…ふふふっ」
千砂都「もぉー!これでもちっちゃいの、結構気にしてるんだからねー!!」 恋「ふぅ…あの、改めてすみませんでした…」
千砂都「…もういいよ。でも、次からはちゃんと覚えるんだよ?」
恋「はいっ、肝に銘じます」
千砂都「よろしい!じゃあ恋ちゃん、屈んで屈んで」
恋「わかりました。では…」
もう一度目を閉じ、今度は、気持ち膝を少し曲げて。 千砂都「よしよし。じゃあ恋ちゃん、行くよー?」
グッと、千砂都さんが背伸びをした気配がすると。
千砂都「ちゅっ…」
その勢いのまま、お互いの唇が触れ合います。
千砂都「よしっ。じゃあ恋ちゃん、今日も練習頑張ろっか!!」
恋「…はいっ!」
…千砂都さんのキスは、いつも瞬きの間に済んでしまうような短さ。でも、その一瞬に爆発的なパワーを感じるのです。 可可「千砂都―!レンレーン!」
千砂都「あれ、可可ちゃんとすみれちゃんじゃん。先に部室に行ったんじゃなかったの?」
すみれ「飲み物だけ買いにね。にしてもあんた達…するのはいいけど、もうちょっと場所を選んだら?誰かに見られたらどうするのよ…」
恋「えっ!?もももも、もしかして今のも見て!?」
可可「バッチリ見えてマシタよ〜♡レンレ〜ン♡」スリスリ
恋「あああぁ…恥ずかしいですぅ…///」 千砂都「…なんだか今日の可可ちゃん、恋ちゃんに甘えたさんだね?」
可可「むっふふ〜ん。可可はなんと、初めてレンレンからキスを貰ったのデスよ!」
すみれ「あら。恋が?想像もつかないわね…見られてこれじゃあ、自分からするのなんて沸騰しちゃわない?」
可可「した後のレンレン、可愛かったデスよ〜。お口を押さえて、顔も真っ赤っかで…」
恋「ちょ、ちょっと可可さん!言わないでくださいっ!!」
かのん「みんな〜、おまたせ〜!」 千砂都「あ、かのんちゃん!やっほー!」
かのん「ごめんね〜、日直の用事で先生に呼ばれてて…みんなで何の話してたの?」
可可「レンレンが、可可にキスしてくれたって話デス!」
恋「可可さん!!これ以上広めないでください!」
かのん「あ、あはは〜…キス、の話かぁ…」
すみれ「…ねぇ、かのんって」 かのん「あ、さっき思いついた歌詞があったんだった!忘れないうちに書かなきゃな〜、先部室行ってるね!」ピュー
恋「かのんさん…」
可可「…かのんって、レンレンと一度でもキスした事ありましたっけ?」
恋「…いえ、一度も」
すみれ「みんなで恋の状態を確かめるときも、頑なにしようとしなかった物ね、キス」
千砂都「う〜ん…何か事情があるのかな?」
恋「…」 ―――――
千砂都「はーいっ、じゃあ今日の練習はこれまで!!」
可可「ダハーッ!疲れたデス…パタリ…」
すみれ「いい加減倒れないようになって欲しいものね」
かのん「あはは…あ、恋ちゃん!約束の本、今日ウチに取りに来るんだよね!」
恋「はい!一度お話を聞いて、是非お借りしたいと…!」
千砂都「学校に持って来れないって事は…あっ」
すみれ「あんた達…そういうのはまだ2年ぐらい早いんじゃないかしら」
かのん・恋「「違いますぅ〜!!」」 可可「じゃあ、レンレン♡気をつけて行ってきてクダサイね、ちゅー♡」チュッ
恋「ひゃわわわわ…///」
千砂都「あはは、ホントに今日の可可ちゃんは恋ちゃんにベッタリだねぇ」
恋「ほ、ほっぺにやっても意味は無いですから!可可さん!!!」グイーッ
すみれ「あんまり恋を困らせちゃダメで…しょっ!」ベシッ
可可「あイタッ」
千砂都「それじゃかのんちゃん、また明日!」
可可「レンレンの事、よろしくお願いしマスね!」
かのん「…うん!それじゃあ恋ちゃん、行こっか」
恋「えぇ」 ―――――
かのん「ほら恋ちゃん、上がって上がって」
恋「はい、お邪魔します」
かのん「えぇっと、確かここら辺に…あった!はいこれ、約束の本!恋ちゃんもこの作家さん、好きだったんだね」
恋「わぁ…ありがとうございます!この方の描く人物描写が素敵でして…」
かのん「あ、私もそれわかるかも!特に主人公と親友がさ…」
恋「そうそう、それです!後はですね…」 カッチ…カッチ…
かのん「っととと、結構話し込んじゃったね」
恋「はい…そうです…ね…」ドサッ
かのん「うわっ、れ、恋ちゃん!?」アタフタ
恋「ぜぇっ…はぁ…れ、練習後にしておかなかったのが、マズかったようです、ね…不覚、です…」
かのん「そ、そんな…」
恋「だ、大丈夫です…すぐに、サヤさんに連絡を…」
かのん「ま、待って恋ちゃん!私が、私がしなくっちゃ…」
恋「…無理を、なさらなくても、よいので、すよ」
かのん「無理してるのはどっち!!」 恋「確かに、キスは…今の私に必要な事ですが、それはかのんさんの気持ちを、蔑ろにしていい理由には、なりま、せん、から…」
かのん「っ…そんなわけっ…」
恋「なにか、あるのですよね?私に、キスしたくない、理由…差し支えなければ、教えて、くださいますか…?」
かのん「…好きな人が、いるの」
恋「それは、リエラのメンバー、でしょうか?」
かのん「…」コクリ
恋「どなたかは…」
かのん「ごめん…そこまでは言えないかな」 恋「そういう、事…だったの…で、すね…」
かのん「で、でも!これは私のワガママだから…恋ちゃんの事、助けなくっちゃ!」
恋「よいの、ですよ…私のせいで、かのんさんがっ…」
かのん「恋ちゃん、恋ちゃん!!!」
誰かが、私を呼んで…だめ、ですね。もう、動けそうにありません… 恋「…」
死ぬ、というのはこういう事なのでしょうか。体がなんだか、温かい物に包まれて…瞼の裏まで焼くような明かりが…
恋「…あれ?」
目を開けて、まず視界に入ってきたのは…三途の川でも、天国への門でもなく。誰かの家の、天井でした。
恋「私、気絶して…」
私に被さっていた布団をめくり体を起こすと、そこには…そっぽを向いたかのんさんが。
恋「かのん、さん…」
かのん「…サヤさんに連絡したから。もうすぐ迎えに来ると思うよ」
私が目覚めて、そこにかのんさんがいた。と言う事は… かのん「別に、人工呼吸みたいなものだから。ノーカンだよ…」
恋「…ごめんなさい、かのんさん」
かのん「恋ちゃんが謝ることじゃないよ。気にしないで?」
恋「ですが…」
サヤ「お嬢様っ!!」バタンッ
恋「サ、サヤさん!?」 サヤ「あぁ、澁谷さんから連絡があって、何かあったんじゃないかと…どこも体の具合はおかしくありませんか?」
恋「はい、特段おかしいところは…」
サヤ「よかった…澁谷さんが助けてくださったのですか?」
かのん「っ…は、はい。恋ちゃん、困ってたので」
サヤ「ありがとうございます…さ、お嬢様。帰ってお食事にしましょう」
恋「はい…それではかのんさん。お邪魔しました…」
かのん「うん。またね、恋ちゃん」
そう言って手を振るかのんさんの目は…どこか、寂しそうな光を湛えていました。 ―――――
サヤ「では、お嬢様。お休みのキスを」
恋「はい…ん…」
夕飯とお風呂を済ませ、眠る前にサヤさんからお休みのキス…これもすっかり習慣になりました。寝ている間に何かあってもいけないので、普通よりも長く、長く…
恋(…かのんさん)
サヤさんとしている間も、頭によぎるのはかのんさんの悲しそうな顔…
サヤ「ぷは…それではお嬢様、お休みなさいませ」 恋「…あの、サヤさん」
サヤ「どうかなさいましたか?」
恋「サヤさんは…無理していませんか?私と、キスすること…迷惑になってたり…」
サヤ「とんでもない。私の使命は、葉月家に仕える事でございますから。それがお嬢様にとって必要な事なら、私は喜んでこの身を捧げます」
恋「そうですか…変な事を聞いてしまってすみません。サヤさんもお休みなさい」
恋(…可可さん、すみれさん、千砂都さんも、迷惑がってる素振りはありませんし、きっと…でもかのんさんだけは)
恋(明日から、かのんさんに会う時は体力が残っている時のみにしなくてはなりませんね。それから…) ―――――
チュンチュン…
サヤ「ではお嬢様、行ってらっしゃいませ」
恋「はい。それで、サヤさん…あの…」
サヤ「はい?」
恋(うぅ…自分からお願いするのは恥ずかしいです。でも…)
恋「い、行ってきますのキス、というのもしていただけないかと///」
サヤ「まぁ…ふふっ、お安い御用です。では目を閉じてください…」 恋「………」スタスタ
恋(おはようの分と、行ってきますの分。これなら余程の事が無い限り大丈夫でしょう)
かのん「あ…」バッタリ
恋「あ…おはようございます、かのんさん」
かのん「うん、おはよ…」
恋「あの、これ…お借りした本です。とても面白かったです」
かのん「ん、ありがと…」
恋「あ、あのっ!昨日は」
かのん「もうやめよ。その話は」 恋「え…」
かのん「恋ちゃんが言ってた事と一緒。私のワガママで、恋ちゃんを蔑ろにしていいわけじゃないでしょ?恋ちゃんの方が大変なんだし」
恋「ですが…」
かのん「初めては好きな人とー、だなんてロマンスなワガママ。私には不相応だったんだよ。ね?」ニコッ
恋「あのっ…私は、かのんさんの事、応援してますから!」
かのん「…―――ちゃんとキスしてるくせに」ボソッ
恋「…?何かおっしゃいましたか?」
かのん「うぅん、なんにも!ありがとね。ほら、学校行こ?」 恋「では、かのんさん。また練習の時に」
かのん「うん…あ、そうだ。今、必要じゃない?キス」
恋「えっ…で、ですがかのんさんには」
かのん「1回したんだもん、2回も3回も変わらないって。私もこれからはするよ。恋ちゃんの助けになりたいから」ニコッ
恋「…で、では生徒会室に」 ―――――
恋「では、かのんさん。お願いします…」
かのん「うん」
腰をかけ、目を閉じた私の肩をガシッと掴む。そのまま、グイッと引き寄せて。
かのん「んむ…」
昨日は気絶していたのでわかりませんでしたが、これが、かのんさんのキス…
恋(…?)
可可さんや、すみれさん。それに千砂都さんにあった温かみのような、何かが。足りないような…
恋(考えすぎ、ですよね)
かのんさんは、私の助けになりたいと言ってくれてるのですし。 かのん「ふぅ…こ、こんな感じでいいのかな?」
恋「えぇ…えっと、ありがとうございました」
かのん「うん。じゃ、またお昼にね」フリフリ
恋「………」
かのんさんが去った後も、私は彼女とのキスの間にあった違和感について、考えていました。
可可「しっつれいしマース!レンレン、今日も可可がしてあげるデスよ〜♡」
恋「あ、可可さん…先程、かのんさんにしていただいたので大丈夫です」
可可「おや、かのんが?今までしたことなかったのにどういう事でショー?」 ―――――
かのん「れーんちゃん。お昼食べた?」
恋「いえ、まだですけど…」
かのん「よかったぁ。でさ、お昼一緒に食べるついでにさ…」ヒソヒソ
恋「あ、あの…かのんさん?朝もしていただいたのですし、昼は他の人でも…」
かのん「いいのっ。今までしなかった分、恋ちゃんにしてあげたいから」グイッ
恋「ふぇ!?ちょ、ちょっとかのんさーん!引っ張らなくても大丈夫ですから〜!!」 すみれ「失礼しまーす…恋いるかしら?」
音楽科生徒「葉月さんなら、さっき澁谷さんとどこか行ったよ?」
すみれ「かのんが…?朝可可が言ってた事は本当だったのね…」
音楽科生徒「?」
すみれ「それにしても、朝昼二連続だなんて…一体どういうつもりかしら?」 かのん「はむっ…んぅ…ちゅぅ…」
かのんさんとキスする時の…違和感。
かのんさんが…私に何かを求めている…?でも、一体何を…
かのん「ふぅ…えへへ。今更だけどさ、結構恥ずかしいね」
恋「お互い様ですよ。私だって、未だに皆さんにリードさせられっぱなしです」
かのん「あー…うん、そうなんだ。あはは…」
恋「では、お昼ご飯にしましょうか。一緒に食べましょう」
かのん「うんっ。今日のお弁当、ハンバーグなんだぁ」
…キスする時以外のかのんさんは、いつものかのんさんなのですが。 恋「…今日はサヤさんとかのんさんとしかしてませんね。べっ、別に他の方ともしたいというわけではありませんが」
千砂都「したいってー?」ヒョコッ
恋「きゃっ!?ち、千砂都さん!?」
千砂都「うぃっすー。あはは、きゃっだって。可愛い〜」クスクス
恋「もぉ〜、ち〜さ〜と〜さ〜ん?」ゴゴゴ
千砂都「あはは、ごめんって。で、なになに?恋ちゃんも欲しがりさんになっちゃったのかな?」
恋「そ、そういうわけでは…///」
千砂都「いいよ、ほらほら屈んで。してあげるから♪」 恋「ふぅ…これで練習の分は大丈夫ですね」
かのん「あ、恋ちゃーん。この後練習でしょ?してあげるからさ」ニコニコ
恋「あ、かのんさん…さっきしていただいたので」
かのん「…誰に」ズイッ
恋「え、えぇっと…」
恋(か、顔が怖いです!)
かのん「……」ガシッ
恋「ひっ、か、かのん…さん?」
かのん「…んっ」 恋「…!?」
恋(む、無理矢理!?な、なんとかした方がよいのですか、これは!?///)
かのん「んっ…ちゅぅ…んむ…んぅ…」グイッ
恋(力、強い…少し、苦しいかもしれません…)
かのん「ぷはっ…はあ…はぁ…」
恋「か、かのんさん…どうして、この様なことを…?」
かのん「…ごめん」スタスタ
恋「…?」
ますます、かのんさんの意図がわからなくなってしまいました… かのん「………」スタスタ
かのん(はぁ…我ながらイヤな考えだなぁ…恋ちゃんは何も悪くないのに…)
かのん(でも、私が恋ちゃんとキスし続ければ…)
かのん「恋ちゃんは…―――ちゃんとキスしなくて済む」
かのん(それに、恋ちゃんとキスすれば…今まで恋ちゃんがあの子としてきた分、恋ちゃんを通じてあの子を感じられるしね…) ―――――
かのん「じゃあみんな、今日も練習頑張ろっか」
すみれ「待ちなさい…その前に、あんたに色々聞きたい事があるのだけれど」
かのん「私に?なにかあったっけ?」
可可「レンレンに聞きマシタ。急にかのんがキスするようになったって…」
かのん「それは…私も恋ちゃんの助けにならなくちゃって」
千砂都「ふ〜ん…ならいいんだけど」
恋(やはり、皆さんかのんさんを訝しんでますね…)
可可「えへへ。これからは、かのんも一緒にレンレンの事を助けまショウね!」 かのん「あー…それ、なんだけどさ」
すみれ「なにかしら?」
かのん「これからは…私一人でやるから大丈夫だよ」
恋「えぇ!?」
千砂都「ちょっと、かのんちゃん?急に何言って…」
すみれ「そうよ。リエラ皆で恋を助けようって言ったじゃない。ましてや、今まで何もしてこなかったあんたが急に一人でだなんて、虫が良すぎるわ」
可可「そうデスよ!可可達だって、レンレンの助けになりたいデス!」 かのん「別に、みんなが無理しなくたって…」
かのんさんの放った、その一言が。
すみれ「はぁ!?無理なんてしてるわけないでしょっ!!」
可可「可可達に無理するなだなんて、それってレンレンに…レンレンに…うぅ、ひぐっ」
千砂都「恋ちゃんに謝ってよ、かのんちゃん!!」
皆さんの怒りに火を付けてしまいました。 かのん「っ…」
恋(かのんさんが…皆さんに攻められてる…)
助けてあげたい。今までしてこなかったのは、かのんさんには好きな人がいるから。でも言えません。だって、かのんさんの好きな人は…
というか、好きな人がいるのに、私にキスしたい理由って…?
恋(もしかして、かのんさん一人でしたいというのは)
かのん「ごめん…なさい…」ダッ
恋「あ…」
かのんさんはそのまま、部室から駆け出して行ってしまいました… 寝落ちてました…
続きはまた今夜。多分完結まで持ってけます。 乙、期待してます
恋、キスしたのか、オレ以外のヤツと… 可可「ぐすっ…うぇぇ…」
千砂都「大丈夫、可可ちゃん。よしよし」
恋「可可さん…」
すみれ「恋、私達は嫌々あんたを助けてるわけじゃないの…」
恋「はい…ですが…」
恋(今のかのんさんは…)
すみれ「ど、どうしたの恋」
恋「かのんさんを追いかけます。話をしなくては!」タッ
すみれ「あっ、あんた待ちなさい!体力は大丈夫なの!!」 かのん「はあっ…はあっ…」タッタッタッ
かのん(やだっ…もうやだよっ…あの子も、私も…何もかもっ…!)
ブゥゥゥゥゥン…
かのん「あっ…」
かのん(バイク…私、死んじゃうんだ…でも、別にそれでも…) 恋「かのんさん!」パシッ
かのん「ふえ」グイッ
「おい!危ないだろ気をつけろ!!」
かのん「えっ…あ、ごめんなさい…あの、恋ちゃん」
恋「はあっ…よかった、です…」ドサッ
かのん「うわっ、ちょ。恋ちゃん!?どうして…」
恋「かのんさんと、同じ、ですよ…貴女がそうしたように、私も…かのんさんの命を…」
かのん「ねぇ、恋ちゃん!しっかりしてよ!!恋ちゃん!!!」
また、意識が遠のいていく…いいんです。かのんさん。
もう誰も、私のせいで…悲しい思いをしてほしくない。なら…私、は…ここで… 恋「ん…ここ、は…」
目を開けて、まず視界に入ってきたのは…暗く広がる曇天でした。そして…
かのん「よかった…目が覚めたんだね」
ひょこっ、と雲間から覗く日差しのような微笑みが…
恋「かのん、さん…また私に…」
かのん「…ごめんね。色々と、謝らせてほしいんだ。恋ちゃんを助けたかったなんて…嘘。本当は」
恋「私と、かのんさんの好きな人がキスするのを…止めたかったんですよね」
かのん「…ふふっ。バレバレかぁ。あとね…恋ちゃんを通して。私の好きな人を感じたかったから」
恋「そういう事だったのですね…」 かのん「…でもね、今からするのは違う。本当に、心から恋ちゃんの助けになりたいから」
そう言って、かのんさんの顔が降りてくる…そういえば、私の体勢って…
恋(膝枕…されてます…!?)
かのん「んっ…」
気づいた時にはもう、かのんさんと私の距離がゼロに…
かのん「はむぅっ…ん…」
涙を流しながら、じっくりと…かのんさんからエネルギーが注ぎ込まれるように。
かのん「恋、ちゃん…」
一度口を離したかと思えば、またすぐにキスの繰り返し。何度も何度も。長く、長く… かのん「ぷは…恋ちゃん、立てるかな?」
恋「んんっ…まだ、少しフラフラするかもしれません…」
かのん「もぉ〜、まだしなきゃいけないの」クスクス
笑いながらも、かのんさんは私との距離をグッと詰め…
かのん「…さっきは、ありがとね」
恋「んむ…もぉ、しながら…喋らないでください…」
かのん「んっ…えへへ…」 恋「かのん、さん…ちゅ…よろしいのですか?本当は、したくないのでしょうに…」
かのん「いいんだよ、もう…言ったでしょ。その人の事は、好きだけど…恋ちゃんの助けになりたいのだって、私の本当の気持ち」
恋「そうですか…ぷは…ふふ、かのんさんから迷いが消えたみたいで私も嬉しいです」
かのん「えへへ。それじゃあ、帰ろっか。練習抜け出してきた事も、謝らなくちゃだし」
恋「はいっ」
その後、かのんさんは先程の言動について謝罪し、事は収まりましたー それから―――――
恋「皆さん、おはようございます」
4人「おっはよー!!」
恋「ふふっ。今日も練習頑張りましょうね」
可可「と、その前に…充電の時間デスよ、レンレン!」
かのん「今日は私の番だね」
恋「で、ではよろしくお願いします」
かのん「オッケー。それじゃあ…ちゅ…んっ…」 恋「あのぉ…み、皆さんの前でやるのは流石に恥ずかしいと言うか」
かのん「いいじゃんいいじゃん。あ、あとね…この前、告白したんだ」ヒソヒソ
恋「んむっ…!?ど、どうなったんですか!?」ヒソヒソ
かのん「オッケーもらっちゃった♪今、凄い目で見てるけど…」
恋「えぇっと…あっ」
視線の先には、私とかのんさんを複雑な顔で見つめる…
かのん「まぁ、私はもっと怖い顔してるだろうしお互い様なんだけどね」
恋「あ、あはは…」
尚更皆さんの前でやるのが怖くなってしまいましたね… かのん「はいっ、おしまい!それじゃ、練習始めよっか!」
千砂都「ねぇねぇ、今日は新しいステップ持ってきたんだ!それを練習しない?」
すみれ「ふっ、いいわね。この私の腕の見せ所だわ!」
可可「まぁーたいつものショウビズデスか。今日は可可も張り切っていきますよー!」
恋「…ふふっ」
かのん「?どうしたの、恋ちゃん」
恋「あぁ、いえ。ただ…私の命を皆さんが繋いで、こうして皆さんと繋がれてる毎日が…とても、幸せだなと」
ふと、そんな風に思えたのです。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています