歩夢 「イマジナリーフレンド」 2
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
地層同好会部長 「……勝てないよ、今のままじゃ」
璃奈 「!?」
地層同好会部長 「まあそれでも戦ってもらうけどね」
璃奈 「……何が言いたいの」
地層同好会部長 「だからさっきから言ってるでしょ。感情吸収してきてって。ただでさえ今の君じゃ勝てないのに、私はこの戦いの中でどんどん強くなってる。ますます差は開くばかりだよ」
璃奈 「……」 地層同好会部長 「今のダメージでじゅうぶん分かったでしょ? だからさっさと感情を集めて……」
璃奈 「『怒』っ!!!!」 ブンッ
地層同好会部長 「おっと」
ドガァァァン
璃奈 「……」
地層同好会部長 「……って」
ガラガラ
地層同好会部長 「君、本気……? はあ、信じられない……」 地層同好会部長 (ようやく怒ったと思ったのにこの始末)
地層同好会部長 (この『怒』の威力じゃ私の攻撃は到底止められないし、今も私に攻撃したんじゃなくて、そこの岩を砕いただけ。要するに圧をかけただけってこと)
地層同好会部長 (ダメだ。いくら傷付けようが関係ない。この子は、根本的に戦う気がないんだ。どうすれば良いかな……)
地層同好会部長 「戦う気がないなら、悪いけど上原歩夢のところに」
璃奈 「それは絶対に行かせない」
地層同好会部長 「まあ、そうだよね」 地層同好会部長 (厄介だなぁ)
地層同好会部長 (本気で戦ってくれないと楽しくない。でも、戦う気はなさそう。とはいえ、ここを簡単に通してくれるでもなさそうだし……)
地層同好会部長 「うーん……」
璃奈 「……?」
地層同好会部長 「ならば、仕方ない」
…
…
… マジック同好会部長 「さて、マジックというのは刺激と隣り合わせの娯楽だ」
マジック同好会部長 「脱出マジックにしても、体を半分こにするマジックにしても、そんなスリルを味わいながら、華麗にそれらを避けることに芸術性が生まれる」
エマ 「……ペラペラ」
マジック同好会部長 「まあ、要するにだな」
マジック同好会部長 「持ち歩いてるんだ。ナイフやら剣を」 チャキーン
エマ 「!?」 マジック同好会部長 「……まあそれは冗談だ。今は戦闘用に持ってるがな」
ガラッ
マジック同好会部長 「……誰だ」
歩夢 「エマさんっ!!!!」
侑 「歩夢、気を付けて……! あの人も能力者だよ!」
マジック同好会部長 「上原歩夢。なぜここに」
歩夢 「エマさんに危害を加えないでっ!!!! もし加えたら、絶対に許さない……っ」
マジック同好会部長 「……なるほど」 歩夢 「能力『イマジナリーフレンド』!!」
侑 「……あなたに一つ質問良い?」
マジック同好会部長 「ふむ。イマジナリーフレンドとは強力な能力だな。能力が意志を持ってるのか?」
侑 「質問はこっちがしてるの」
マジック同好会部長 「……いいだろう」 侑 「あなた、いや、あなたたちはつい最近は能力者ではなかったはず。それに、能力が発現したとして、なんでそこからエマさんを狙ったり、歩夢を狙ったりするのかがよく分からない。もしかして誰かに操られてるの?」
マジック同好会部長 「……勘がいいな、その通りだ」
侑 「それは誰?」
マジック同好会部長 「私は悪夢の中の声に導かれただけだ。それが誰かはよく知らない」 歩夢 「悪夢!?」
彼方 『最近色んな人の中で悪夢が増えてるんだって。しかも強い力を感じるから、誰かの意図があるかもしれないとも言ってた』
歩夢 (……本当だったんだ)
歩夢 (彼方さんを夢の世界へ連れて行こうとした存在だから、信じてなかったけど)
歩夢 (本当だった……) マジック同好会部長 「まあ操られてると分かった上でも、私は戦う気でいる。あなたたちは?」
侑 「エマさんを助けるために、そしてあなたも助けるために、私はあなたと戦うよ」
歩夢 「……私も侑ちゃんと同じ。操られてるなら助けなくちゃ」
マジック同好会部長 「その優しさはありがたいが、手加減はしないぞ」
ROUND4 上原歩夢&高咲侑 VS マジック同好会部長
…
…
… 璃奈 「やめて……お願いだから……っ!」
地層同好会部長 「なら私を実力で止めてみなよ」
璃奈 「『怒』っ!!!!」 ブンッ
地層同好会部長 (……ようやく直接殴りにきた。でも)
地層同好会部長 「その威力じゃ、私の岩の体にはヒビも入らない」 グッ
璃奈 「っっっ!」 地層同好会部長 「早く感情を集めてくればいいのに。じゃないと、本当に校舎にいる生徒に攻撃を仕掛けるよ?」
璃奈 「関係ない人を巻き込まないで……! あなたは勝負がしたいんでしょ!? なら勝負ができない人を攻撃するのはおかしい!」
地層同好会部長 「あなたがやる気にならないから仕方なく、だよ。無理にでも怒らせるしかないでしょ?」
璃奈 (このままじゃ……なにも関係ない人が怪我をしてしまう……)
璃奈 (だけどこの人から感情を奪うのは難しいし、関係ない人から感情を奪うのは本末転倒だ……! それに何より……) 地層同好会部長 「後ろめたいなら、後で返せばいい。少し借りるだけだよ」
璃奈 「私は前……」
地層同好会部長 「?」
璃奈 「……怒りのあまり人から感情を奪ったことがある」
地層同好会部長 「へえ、じゃあ今回もそれで行こう」
璃奈 「……でも私はそれをずっと後悔してる。感情は何よりも大事なもの」 璃奈 「もう二度と、そう、いくら悪い人相手だったとしても」
璃奈 「感情は奪いたくない。もちろん、あなたからも」
地層同好会部長 「……奪わせるつもりはないけど」
璃奈 「知ってる。でも仮に奪えたとしたって、私はあなたからも奪わない、ということ」
地層同好会部長 「甘ちゃんだ」
璃奈 「……」 地層同好会部長 「別にどう考えようとあなたの自由だけど、じゃあ君は私を止められないまま、関係のない生徒が怪我をしていくのを黙って見てるってこと?」
璃奈 「……それもさせない」
地層同好会部長 「強くなってから言って。私はどんどん進化していく、そして上原歩夢とも戦う! 誰よりも強くなる!」 ググググ
璃奈 「……!」
璃奈 (『怒』が押されてる……! 使える手の中では、一番瞬間の攻撃力が高いのに……!)
ザワザワ
ザワザワ
璃奈 「!?」 地層同好会部長 「……あれ、人が集まってきてる?」
生徒たち 「「見て見てー! なにかな、マジック? ショー?」」
地層同好会部長 「探しにいく手間が省けたみたい」
璃奈 「そ、そんな……」
生徒たち 「「それにしても、少しリアルじゃない? 地面壊れてるし……」」
璃奈 「みんな早く逃げて!!!」
生徒たち 「「……?」」 璃奈 「この人はあなたたちを狙ってる!!!」
地層同好会部長 「……遅いよ」 ゴゴゴゴ
璃奈 「地面が揺れてるっ!? ということは」
璃奈 (下から岩が突き出る……! そ、そしたらここにいる人たちは全員……)
璃奈 「っ」 ゾクッ
璃奈 (そんなのダメだっ! 絶対に!) 璃奈 「早く逃げて、お願いぃぃ!!!」
生徒たち 「「演技? 上手いね」」
生徒たち 「「もしかして本当なの……? ちょっと怖くない?」」
生徒たち 「「いやいや、距離あるし、別に問題ないでしょ」」
ザワザワ
ザワザワ
地層同好会部長 「観客はいつも薄情な存在。自分たちは巻き込まれないと思ってる」 ゴゴゴゴ
ゴゴゴゴ
ゴゴゴゴ
生徒たち 「「……? なに、地震?」」
璃奈 (どうしよう……! どうすれば……!)
?? 「お願い!! 早く逃げてください!!」
璃奈 「えっ……」 ?? 「あの子は私の親友なんです!! 嘘を言う子じゃありません!! 早く!!」
生徒たち 「「うわっ……マジの演技怖っ……」」
生徒たち 「「えっ? もしかして本当?」」
?? 「早くっ!!!!」
璃奈 (なんで……)
地層同好会部長 「なんだ、一人信じてくれた子がいたみたいだね」 璃奈 (なんであなたがここにいるの……)
璃奈 「Dちゃん!!!!」
生徒D 「璃奈ちゃんを探してたの……そんなときに人だかりができてたから……」
生徒たち 「「なんか怖いから校舎戻ろ? そうしよ?」」 ザワザワ
地層同好会部長 「……あの子は君の知り合いか」
生徒D 「璃奈ちゃん……咄嗟に反応しちゃったけど、これはいったい……?」
璃奈 「……っ」 璃奈 (そうだ。戦いをどうにかしなきゃいけないのはもちろんだけど、まずこの状況をDちゃんに説明しなくちゃいけない)
璃奈 (でもどうやって? こんな能力者同士の戦いを見られちゃったら……私はもしかして嫌われて……)
地層同好会部長 「……」
地層同好会部長 (……てっきり表情に変化はないものだと思っていたけど、少し変わった? どうやらあの子は君の心を揺さぶる存在)
地層同好会部長 (少し機を待ってみるか……) 生徒D 「……」
璃奈 「……」
璃奈 (嫌われるなんて嫌だ……だったら、本当に何かのショーだって言い張って……)
侑 『だから信じてよ。あなたの思い、ちゃんと届いたって。届いたことを信じてくれないと、いつまでも気持ちは届けられないよ?』
生徒D 『心が笑ってるっていうのかな、璃奈さん、私には見えたよ、本当の璃奈さんの笑顔が!』 璃奈 「……」
璃奈 (届いたことを信じる……そして、Dちゃんなら、きっと、私の真実を知ったって……)
璃奈 (だからあとは、私が、勇気を出して信じるだけ)
璃奈 「……こないだ私の笑顔は、手品みたいなものだって言ったよね」
璃奈 「……聞いてほしいんだ。私の今までのこと。そしてなぜ今こうなったのかを」
…
…
… マジック同好会部長 「能力というのは、実はマジックと相性が悪い」
侑 「……?」
マジック同好会部長 「いまいちわかってないみたいだな。だって考えてみろ、手品というのは種も仕掛けもあるんだ」
マジック同好会部長 「しかし、能力には種も仕掛けもないじゃないか。それは私の流儀に反する」
侑 「だけどそれでも戦うんだよね? 私たち」 マジック同好会部長 「まあ、能力者同士の戦いを望む者に私は操られてるからな、嫌でも戦う。と言っても、この現状を楽しんでる人間もいるみたいだが……」
歩夢 「……」
マジック同好会部長 「ところで警戒しているな、上原歩夢」
歩夢 「!」
マジック同好会部長 「能力者同士の戦いならそれが正しい。いっときも油断してはならない」
マジック同好会部長 「……まず、能力はあまりバレないようにしなくちゃいけないな。そういう点では、今は私が有利だろう」 マジック同好会部長 「だから公平に、というわけではないが、少しアドバイスをあげよう。思うに、君たちの能力には大きな弱点がある」
歩夢 「弱点……?」
マジック同好会部長 「実践してみようか。いや、それは後にしよう。答えもすぐに言うまい。しかし、ヒントを授ける」
侑 「……っ」
マジック同好会部長 「どんなに丈夫な剣も、使えなくするのは意外と楽だ。剣が意味を為さなくなるとき、それはどういうときだ?」 歩夢 「……錆びてるとき?」
マジック同好会部長 「それ以外で」
歩夢 「……地面から抜けなくなったとき?」
マジック同好会部長 「それ以外で」
歩夢 「……じゃあインテリアの一部として使い始めたときだ!」
マジック同好会部長 「大喜利じゃないんだぞ」 侑 「……」
マジック同好会部長 「君は気付いてるみたいだな。まあ、言えるはずもないだろうが」
歩夢 「えっ……?」
侑 「……それは私がさせないよ」
マジック同好会部長 「では、そのように頑張ってくれ」
歩夢 「侑ちゃん? 答えが分かってるの?」 マジック同好会部長 「戦いを始めよう」 ブンッ ブンッ ブンッ
侑 「腕を振り回してる……?」
侑 「! 頬に風?」
ジクッ ジクッ ザザッ
侑 「っ!?」 ピリッ
歩夢 「侑ちゃん!?」
侑 「……大丈夫。私はこんな程度じゃ負けないよ」 歩夢 「侑ちゃんの頬から今血が……!」
歩夢 「ってあれ、ない……?」
マジック同好会部長 「分かってはいたが、厄介な能力だ」
侑 「歩夢……気をつけて。おそらく相手は風の能力……! 腕を振り回した後、急に頬に風が来てそれで刃物に傷つけられたように切られた」
歩夢 「う、うん……? 分かったよ、侑ちゃん……!!」 マジック同好会部長 「気をつけると言っても、避けようがないだろう、これは」
侑 「……私たちを舐めない方がいいよ。いっときも油断しちゃダメなんでしょ?」
マジック同好会部長 「……はは、その通りだ。よし、避けられる可能性も加味して、全力で行こうじゃないか」
侑 「歩夢! シャボン玉を!」
歩夢 「了解!」 ムムム
フワフワ
フワフワ
マジック同好会部長 「なんだ? シャボン玉がいくつも……」 侑 「シャボン玉は軽い。これで風の動きも読めるよ。攻撃自体が見えなくても避けられる」
マジック同好会部長 「考えたな。なら」 ブンッ ブンッ ブンッ
歩夢 (またあの腕の動き……!)
パンッ
侑 「なっ……!」
マジック同好会部長 「いくらシャボン玉を出しても、破れば問題なし!」 侑 「風だ!来る!」 フッ
マジック同好会部長 「ほお、直前で避けたか。だがまだ!」
侑 「後ろからも風が!?」
ジクッ ジクッ ザザッ
侑 「ぐはっ!?」 ピリッ ピリッ
歩夢 「侑ちゃん!?」
侑 「な、なんで……避けたはずなのに……」 マジック同好会部長 「風なんだ。どの向きからでも起こせるさ」
歩夢 「……っ」
歩夢 (この人、強い……)
パンッ
歩夢 「えっ?」
侑 「歩夢! 次はアイス棒で勝負しよう! あの一連の動きがないと風を起こせないみたい! だからその前に……って歩夢?」
歩夢 「……」 歩夢 (なんで今、このタイミングでシャボン玉が割れたの……?)
歩夢 (今割れたのは、相手の右上に浮いてた、さっきの一連の攻撃でまだ割れてなかったシャボン玉……)
歩夢 (それに、どこからでも風を起こせるなら、もっと余裕で攻撃を与えられるはず……侑ちゃんが一回避けれたのが不思議なくらい)
歩夢 (何かが、おかしい……)
マジック同好会部長 『……まず、能力はあまりバレないようにしなくちゃいけないな。そういう点では、今は私が有利だろう』
歩夢 (もしかして、私たち、大きな勘違いをしてたんじゃ……) 歩夢 「侑ちゃん!!」
侑 「歩夢?」
歩夢 「あの人は多分風を操る能力じゃない!」
侑 「えっ?」
マジック同好会部長 「……ほお」
歩夢 (おそらく何かを飛ばしてる……そして、投げた後回収してるんだ! あの時間差で割れたシャボン玉は、その何かを回収した際に当たったに違いない……!)
歩夢 (それに、攻撃を仕掛ける前に、してるあの謎の動き……まるで何かを操ってるみたいな……) 歩夢 「侑ちゃん、あの人は紐で何かを振り回してるのかも!」
侑 「紐?」
歩夢 「紐を結んだきっと刃物を振り回してる……その刃物が近づいてきたときの風なんだよ、あれは!」
侑 「なっ、刃物みたいな風じゃなくて、本物の刃物ってこと……!?」
マジック同好会部長 「……」
マジック同好会部長 (てっきり能力が強力なだけのやつだと思ってたが) マジック同好会部長 (能力者本人も、決して弱いわけではなさそうだ)
マジック同好会部長 「バレてしまったなら仕方ない。ならここからは真の公平だ」
マジック同好会部長 「御名答。私は紐を二本用意し、それぞれの紐の端にナイフを付けてる」
マジック同好会部長 「そして、リーチの長いヌンチャクのような要領で、攻撃を仕掛けてるというわけだ」
侑 「じゃあ一回避けた攻撃が後ろから来たのも……」
マジック同好会部長 「投げたナイフを紐を引っ張り回収する際に、追撃を狙ったに過ぎない」 侑 「でも、その肝心のナイフが見えないんだけど……」
マジック同好会部長 「当然だ。透明だからな」
侑 「!?」
マジック同好会部長 「どうだい。マジックらしいだろ?」 ニヤッ
マジック同好会部長 「……ここからが本格的なショーだ」
…
…
… 生徒D 「璃奈ちゃんが能力者……」
璃奈 「……そう」
璃奈 「……」
璃奈 (感情を奪うことで強くなる力。そんなの)
璃奈 「怖いよね」
生徒D 「そ、そんなこと!」
璃奈 「……前、あの笑顔は手品みたいなものって言ったでしょ。あれは能力のことだったの。あのときDちゃんは笑って受け止めてくれたけど、こんな人智を超えたもの、怖くならない方がおかしい」
生徒D 「……」 璃奈 「今まで嫌われるのが怖くて、言えなかった……ずっと仲良くしてくれてたのに、私はまだ話してない秘密があった」
璃奈 「ごめんなさい……嫌になったならもう無理して私と仲良くしなくていい。でも、私の命を賭けてでも、ここからは絶対に無事に逃すから安心して」
生徒D 「……カ」
璃奈 「えっ?」
生徒D 「璃奈ちゃんはバカだって言ったの!!!」 ポロポロ
璃奈 「Dちゃん……!?」 生徒D 「私言ったよね!? 璃奈ちゃんの笑顔が見えたって! 璃奈ちゃんの心が通じたって!」
生徒D 「嫌いになったりなんかしない! 距離を取ったりもしない! 友達が能力者でもいい!!」
生徒D 「だって大事な、大事な!」
生徒D 「私の一番の親友だもんっ!!!」 ポロポロ
璃奈 「……」
地層同好会部長 (……感情を揺さぶってるようだが、ちょっと期待してたのとは違った)
地層同好会部長 (あの子を攻撃すれば、君は怒って本気を出してくれるだろうか?) 地層同好会部長 「感動的な雰囲気なところ悪いけど」
璃奈 「……! 何する気」
地層同好会部長 「その子、まあ、全治三ヶ月くらいにうまく収めておくから」
璃奈 「……」 ゴゴゴゴ
地層同好会部長 (ふふ、怒ってる、怒ってる♪)
地層同好会部長 「でもさ、いくら怒ったところで、誰かから感情を奪わないと、君が本気を出さないと、私には勝てないよ」 生徒D 「……なら、私がいるよ、璃奈ちゃん」
璃奈 「えっ?」
地層同好会部長 「!」
生徒D 「璃奈ちゃんの能力のことは分かった。それなら、私の感情を、喜怒哀楽を奪って! 璃奈ちゃん!」
地層同好会部長 「あははっ! これは驚いた、自分から狂うことを決めただって? 感情がなくなれば人はまともじゃいられなくなるぞ?」
璃奈 「そんなこと、できるはずないよ……! Dちゃん……っ」 生徒D 「大丈夫っ、私は絶対に璃奈ちゃんを悲しませることはしない」
地層同好会部長 「言っておくが、まあ進化したら別の話かもしれないが、現時点ではそれに抜け道などない! 感情を奪われたら、その間は必ず人としておかしくなる! 彼女が一番望んでないことさ!」
生徒D 「……ううん、絶対にそうならない」
地層同好会部長 「……なぜそう言える」
生徒D 「璃奈ちゃん。感情って喜怒哀楽だけなの?」
璃奈 「えっ……!」 地層同好会部長 「まあどちらにせよ、願ったり叶ったりだ。強い敵であればあるほど、私は進化できる」
生徒D 「璃奈ちゃん! 早く私から感情を奪って!」
璃奈 「で、でも!」
生徒D 「……大丈夫、私を信じて。絶対に勝つの」
地層同好会部長 「かかってこい!! 天王寺璃奈! そして!」 生徒D 「お願い」 ギュッ
璃奈 「……分かった、Dちゃんを信じる」 ギュッ
生徒D 「よく覚えておいて!! 私の名前は」
浅希 「浅希!! 璃奈ちゃんの親友で!!」
浅希 「璃奈ちゃんと一緒にあなたに勝つ者よ!!」
地層同好会部長 「やってみろ!!!!」
…
…
… 果林 「エマっ……エマ……!」 タタタッ
果林 (まさか、歩夢さんを見失うなんて……!)
果林 「こんなところで迷子になるわけには……」
果林 「絶対に、エマを助ける。彼女はそう言ってくれた」
果林 「それなら私も、絶対にエマを助けなくちゃいけないのよ……!」 ?? 「はぁ……はぁ……」
?? (早く小屋に戻らないと……でも、まだ能力者たちが周りをうろついてる……)
?? (いったい何者なの……? 私の企みをことあるごとに妨害するあなたは……!)
果林 「こうなったら……」
果林 「……使えるかしら。いえ、こういうときに使えないなら、何のためにこの力はあるのよ」
果林 「ある日急に手に入った力、迷い込む私にぴったりの力……」 パッ
?? 「!?」
?? (今、そこにいた……消えた……?)
?? (それとも見間違いか……?)
スピー スピー
?? 「……!」
睡眠同好会部長 「……もっと道具を補充しないとぉ」 スピー スピー
?? 「道の真ん中で布団敷いて寝てる人がいる……」 睡眠同好会部長 「……それと、今ならできるかも」 スピー スピー
パッ
?? 「!?」
睡眠同好会部長 「……えへへ、楽しみぃ」 スピー スピー
?? 「枕の隣に急にショートケーキが……! この子も能力者……!」
?? (もしかしてさっき一瞬で消えた人は、この子の能力の何かしらの作用を受けて……?)
?? 「むむっ、この子の能力についても気になるし、とはいえ小屋に戻らないと……だけど追いかけられてる状態だし、どうすれば……」
…
…
… 地層同好会部長 「……」 ドキドキ
地層同好会部長 (一人分の喜怒哀楽を全部吸収した天王寺璃奈はどうなるんだろ……)
地層同好会部長 (考えるだけでワクワクが止まらないよ……)
璃奈 (浅希ちゃんを信じるとは言ったけど)
璃奈 (やっぱり怖い。浅希ちゃんから感情を奪ってしまったら……)
浅希 「言ったでしょ、璃奈ちゃん」
璃奈 「!」 浅希 「……感情は喜怒哀楽だけじゃない。私には分かるの」
璃奈 「それって……」
浅希 「私と璃奈ちゃんの間には絆がある。友『愛』がある。『愛』は喜怒哀楽のどれでもない!」
璃奈 「!」
浅希 「大丈夫っ。喜怒哀楽がなくなっても、璃奈ちゃんへのこの友愛はなくならない。それだけで私らしさは消えないから」
璃奈 「……うん」
璃奈 (その覚悟に応える) 璃奈 「浅希ちゃんから、『喜』『怒』『哀』『楽』をもらうね」 スッ
璃奈 (……入ってくる。浅希ちゃんの気持ちが。どれだけ私を大切に想ってくれてるか)
ゴゴゴゴ
ゴゴゴゴ
地層同好会部長 「ついに……! ついに本気の天王寺璃奈と戦える!」
璃奈 「……あなたには一つ申し訳なく思うことがある」
地層同好会部長 「申し訳ない、だって?」 璃奈 「一対一の戦いではないこと。悪いけど二人で今私たちは戦う。だよね、浅希ちゃん」
浅希 「うんっ……!!」
浅希 (少し気持ちが変な感じ……でも無くなったりなんかしてない。むしろ、璃奈ちゃんと心の奥底で繋がれてるようで……なんだか心地いい……)
地層同好会部長 「よく分からないけど、そっちは感情を失ってない……? どういう手品を使ったんだ?」
璃奈 「……あなたは余計なことを話す余裕はあるの? 『楽』」 ビュンッ
地層同好会部長 「なっ!? はやい!?」 璃奈 「もう手加減はしないっ! 怪我しても許してね、三ヶ月くらい! 『怒』」 ドンッ
地層同好会部長 「がはっ!?」
地層同好会部長 (攻撃が入っただって……!?)
地層同好会部長 「……威力は上がってるみたいだね。でも今は私の油断もあった。ほら見ろ、まだ岩にヒビが入るほどじゃない。それにまだ私にはあの攻撃があること忘れてないか?」
シュッ シュッ シュッ
璃奈 「地面からの岩の攻撃だね……だけど」 浅希 「璃奈ちゃん!! 右左右左左!」
璃奈 「避けられるっ!」 ブンッ ブンッ ブンッ
地層同好会部長 「全方位から攻撃してるのに、なぜ避けられる……!」
璃奈 「……あなたは進化してるって言った」
地層同好会部長 「!」
璃奈 「進化してるのはあなただけじゃない。私たちは」
璃奈・浅希 「「二人で進化してるっ!!」」 璃奈 「『喜』!」
地層同好会部長 「いまさら剣か!? 確かに守りにも使えるし軽いから動かしやすい、便利ではある。しかしだからこそ一撃一撃の威力は……」
ズバッ
地層同好会部長 「へっ……? 岩が切れた……?」
璃奈 「剣なのに、剣みたいな使い方をしたことがないなと思って」
浅希 「私が璃奈ちゃんに教えました!」 地層同好会部長 「ぐっ、しかし、その岩は私全体の岩よりは脆い。だから別に私自身を切れるわけじゃない」
地層同好会部長 (……どうする? 『喜』も『怒』も『楽』も全部が厄介だ。それに、あの浅希とかいう指示役がさらに厄介!)
地層同好会部長 「私は強くなりたい!! だからこの戦いもこうなることを望んでいた!! しかし、勝ってこその勝負だ!! 負ける想定はしていない!!」
璃奈 「勝っても負けても、一歩進む。負ける想定はいつもしてるもの。そこから負けない想定をしなくちゃ」
地層同好会部長 (なんだこいつは……! こんなハキハキ喋るやつだったか!?) 地層同好会部長 (これは本当に能力が進化してる……いやしかし、進化とはまた違うような……)
地層同好会部長 「じゃああいつを狙えばいい!」
ゴゴゴゴ
浅希 「!?」
璃奈 「浅希ちゃん!?」
璃奈 (地面から岩を出せる……これはどこへでも攻撃をできるに等しい! 浅希ちゃんが狙われることも十分考えられたのに!) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています