歩夢「1.2.3」
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「ねぇねぇ!」
「ねぇったら!」
ガラガラッ
「ふあ〜ぁ……」
歩夢「おはよ〜」
「土が乾いてる!」
歩夢「ん?」
「カラカラだよ!」 歩夢「うん」
歩夢「今日は、いいお天気だもんね」
「朝日がさんさん!」
歩夢「ふふっ、待っててね?」
歩夢「今、お水あげるから」
「お水!」
侑「ありがとう!」 侑ちゃんが花になって一週間
今日も、私は彼女の植木鉢に水をやります。 侑「あ、蟻が行進してるよ。動いてる!」
歩夢「うん」
侑「空は高くて街はでっかい。ここはキミんちのベランダ。素敵だね!」
歩夢「あはは、うちは素敵じゃないよ」
侑「家ってステキ!」
歩夢「そうかな?」
侑「ステキ!」
侑「キミが居るって分かる場所。それってステキ!」
歩夢「フフッ、なにそれ」 ある朝、いつもの様にベランダへ出た私は
手摺りの下に、ポツンと置いてあった
一つの、植木鉢を見つけました。 侑「わぁ!」
歩夢「え?」
侑「トリだよ!トリ!」
侑「前の私とおんなじ!」
歩夢「?」
侑「飛んで食べて生きて、たまーに暇が出来る。不思議!」
侑「暇って不思議!」
歩夢「不思議……?」 そして、侑ちゃんが居なくなったと知ったのも
同じ日のこと 歩夢「ねぇ、侑ちゃん」
侑「わたし!」
歩夢「侑ちゃんのお父さんもお母さんも、凄く心配してると思うの」
歩夢「うぅん。ご両親だけじゃない、同好会のみんなだって心配してる」
侑「あはは」
歩夢「本当に、他の人たちには分からないの?」
侑「私と君の繋がり。君との!」
歩夢「んん……?」 入れ替わる様に現れた、この子は
しかし、他の人の目には映らず
今の様に顔のある花を開いては、よく分からない言葉を、私へ投げかけて来るのです。 侑「つながり!つながり!」
侑「私とキミの花!」
歩夢「……えっと」
歩夢「侑ちゃんは、そのお花が好きなの?」
侑「お花も好き!」
歩夢「も?」
侑「贈り物!証明だよ!」
歩夢「わ、分かんないよぉ」 そもそも、なぜこんな事になったのか。
この子は、本当に私の知ってる彼女なのか
その辺の問答も、何度か繰り返してみたのですが 歩夢「侑ちゃんは、さ」
侑「ゆうちゃん!」
歩夢「侑ちゃんは、どうしてお花になったの?」
侑「最初の交差点!」
歩夢「へ?」
侑「縁もたけなわ!」
歩夢「???」
侑「えへへ」
歩夢「あー……」
歩夢「じ、じゃあ、花になった時の事は覚えてる?」
侑「わかんない!」 この、あまり要領を得ない喋り方のせいで
未だによく分からないままです。 「だって、一週間だもんねぇ」
愛「ゆうゆ、ホントにどこ行っちゃったのかなぁ……」
エマ「あ、愛ちゃんっ」
愛「!」
歩夢「……」
愛「ぁ……ご、ごめんね?」
歩夢「え?」
エマ「歩夢ちゃん、あんまり思い詰めないでね?」
歩夢「あ、いえ。少し考え事をしてただけですよ」
エマ「そ、そっか」 せつ菜「大丈夫ですよ」
エマ「!」
せつ菜「侑さんは、必ず戻ってきます」
せつ菜「私は、そう信じてますから!」
かすみ「かすみんもです!」
璃奈「同じく」
歩夢「……」
果林「歩夢。私たちも居るんだから、辛くなったら何時でもいらっしゃい」
歩夢「え?あ、ありがとうございますっ」 彼方「まぁ、ちょ〜っと旅でもしたくなったんだよ〜」
彼方「彼方ちゃんもそういう時ってあるから、な〜んとなく気持ちは分かるな〜」
せつ菜「いいですね!私も当て所ない旅、してみたいです!」
かすみ「お供します!かすみんの可愛さを、全国区に知らしめるために!」
果林「黙って行くのだけはダメよ?」
エマ「あ、あはは」
歩夢「……」 私が学校に行ってる間って、
侑ちゃん、なにしてるのかな?
ちゃんと、お留守番出来てるかなぁ
寂しくなったりしてないといいんだけど 歩夢「……」
歩夢「……大丈夫かなぁ」
せつ菜「もちろんです!」
歩夢「!」
せつ菜「侑さんは、大丈夫に決まってます!」
歩夢「そ、そうだよね」
せつ菜「そうです!」
せつ菜「信じる事も、大切な事ですから!」
歩夢「……」 ……分かってはいる。分かってはいるのだけど
こうして、彼女の顔を見るたびに、合宿で見たあの光景が蘇る。 せつ菜「どうしました?」
歩夢「え?」
せつ菜「なんだか、少しぼーっとした様な顔をしてますけど」
歩夢「う、うぅん。そんな事ないよ?」
せつ菜「う〜ん……、そんな事ある気がするんですが」
歩夢「な、ないない。大丈夫」
せつ菜「……」
歩夢「あはは……」 ──あの日、
侑ちゃんは自身の心の裡を、私ではなくて、せつ菜ちゃんへ打ち明けていた。
アレが悪い事だとは、決して思わないけれど
それでも、何となく私の胸はモヤモヤしたまま
気が付けば、彼女との会話を忌避し続けている
そんな自分の心の狭さに、ただ嫌悪だけが募って行く そして、月明かりの差す自室で、不意に自身の将来を告げた侑ちゃん。
そんな彼女へ、思いの丈をぶつけた後も、私は未だに後悔していた。
アレは、本当に正しい事だったのか。
気持ちを伝える事が、あんなにも後ろ暗く、冷え冷えと感じるものなのか
そんな、日々懊悩する私に寄り添うかの様に
花となった彼女は、突然現れた。
「やぁ」 もちろん、最初は酷く取り乱した。
もう、元へは戻れないの?普通にお話しする事も出来ないの?
そう言った不安が、次々と押し寄せては吐き出されて、彼女自身も、それに応えようとアレコレ反応してくれたのだが
やはり、と言うか
それは、余り意味を成さない時間として、ただ今日まで消費されただけだった。 「ただいまぁ」
歩夢「うわぁ、もうこんな時間かぁ」
歩夢「暗くなるの早くなって来たかも。陽がないと少し肌寒いね」
歩夢「──よいしょっと」ガチャ
歩夢「侑ちゃん、遅くなってごめんね」
「かぜ!」
歩夢「え?」
侑「かぜ!」
歩夢「か、風邪引いちゃったの?」
侑「風が強いよ。乾いちゃった!」 歩夢「あ、そっちか」
侑「そっち!」
歩夢「ごめんごめん。今お水あげるからね」
侑「お水!うるおい!」
歩夢「ふふっ、た〜っぷりあげますからねぇ〜」
侑「多いのはダメ。ともだちブクブク」
歩夢「ともだち?」
侑「縁の下のともだち。住みやすくする!」 歩夢「???」
侑「栄養!」
歩夢「……あっ」
歩夢「も、もしかして……虫?」
侑「むし!」
歩夢「ひっ!い、いるの!?」
侑「縁の下!」
歩夢「ダメダメ!早く取らなきゃ!」
侑「ともだち!縁の下の!」 歩夢「だっ、だけど、取らなくちゃ部屋に入っちゃうし」
侑「ともだち!」
歩夢「ご、ごめんねっ」
侑「……」
侑「うぅっ!」ユサユサ
歩夢「!」
フワワ…
歩夢「ゆ、侑ちゃんっ、それやめて?」
侑「うぅぅっ」ユサユサ
歩夢「侑ちゃ〜んっ」 困ったことに、
この侑ちゃんは機嫌を損ねると、ユサユサと顔の……
もとい、花の部分を揺らして花粉を飛ばします。 侑「うぅうぅぅっ!」ユサユサ
歩夢「ごめんね侑ちゃん、取らないから」
歩夢「だから、それやめて欲しいの」
侑「うぅ……」
侑「……」
歩夢「お、落ち着いた?」
侑「お水!」
歩夢「あ、はいはい」
歩夢「……その前に、換気しなきゃ」 歩夢「でも、どうして虫が友達なの?」
侑「近くで生きてる。ぶつからない」
歩夢「んん……分かんない」
侑「お水!」
歩夢「あ、あぁうん。ごめんね」
侑「乾いちゃった。かぜが強いの!」
歩夢「は〜い、どうぞ〜」
侑「しっとり!しとしと!」
歩夢「ふふっ」 こうして、お水をあげる時
彼女は決まって、鼻歌を歌う。
侑「〜♪」
歩夢「ららら〜♪」
こんな彼女を見ている時は、
何故だか、ちょっとだけ幸せな気持ちになります。 歩夢「あ、侑ちゃん」
歩夢「ほらほら、虹が出来てる!」
侑「ひかり!色々!」
歩夢「うん!綺麗だねぇ」
侑「綺麗って感じる。そんな余裕!」
歩夢「ホントに綺麗だよねぇ」
侑「色の橋!虹!」
歩夢「……」 彼女の言うこと、その全てを理解出来ている訳じゃないけれど
感じている事は、きっと私と同じ
それだけは、今も変わらない
そう、信じている。 すみません、書き溜めがあまり無く、申し訳ありませんが明日の夜にまた更新しますので、どうか宜しくお願いします。 IDが変わってるの演出の一部かな?
雰囲気が名作の予感だから期待しとるぞ ごめんなさい
何故かIDがコロコロ変わるんです
念のためトリップを付けておきます。 話がどっちにも転がりそうで怖くもあり楽しみでもあり ある日の学校でのこと
校舎の入り口で、不意に呼び止められた 「間に合ったぁー!」
歩夢「!」
「ごめんねぇ〜、いきなり声掛けちゃって」
歩夢「ううん、大丈夫だよ」
「あ、もしかして、いま急ぎ?」
歩夢「それも大丈夫。なにも急いでないよ」
「良かった〜」
「えっとね?実は……」
歩夢「?」 兼ねてから、私のファンだと言ってくれていた
二人の同学年の子たち
その内の一人が、
今、私の前に何かを差し出した。 「これ、受け取って欲しいの!」
歩夢「え?」
「実はね、」
「歩夢ちゃんのステージを作ろうって、侑ちゃんから相談されてたんだ」
歩夢「!」
「でね?その時、私達みんなでお花を渡そうって、そう言って準備してたんだよ」
「でも、あんな事になっちゃって……」
歩夢「……」 「ちょっと!」
「あ、ご、ごめんっ」
歩夢「……」
「この子もね、悪気はなかったの」
「だ、大丈夫だよ!侑ちゃんすぐに戻ってくるから!」
「歩夢ちゃん、ホントにごめんね?」
「ただ、侑ちゃんの気持ちを無駄にしない為にも、枯れる前に渡したかったの」
歩夢「……うん」 なにか、謝っている様な気がしたけど
なにかは、良くわからなかった。
それよりも、私の知らない所で、侑ちゃんが色々な事を考えていてくれていたと言う、
その事実に、私は強い衝撃を受けていた。 「……あの、コレ」
歩夢「あ」
そんな私の様子を見守っていた彼女は、包装紙に包まれた、綺麗な黄色い花を差し出してくれた。 歩夢「これって……」
「ガーベラって言うお花だよ」
歩夢「……」
「私たちからの。受け取ってくれる?」
歩夢「も、もちろんだよ!」
歩夢「わぁ、綺麗なお花……ありがとう」
「そ、それでね?」
歩夢「え?」
「本当は、侑ちゃんが用意してたお花もあったんだけど……」 歩夢「!」
「だけど、そのお花だけ何処を探しても見つからないの」
「"ローダンセ"?ってゆー名前の」
歩夢「……」
「侑ちゃんと一緒に準備してたから、同じ場所にあった筈なんだけど」
「も、もしかしたら、侑ちゃんが持ったままなのかも」
歩夢「そ、そっか」
「お花を用意してる時の侑ちゃん、とっても楽しそうだったんだよ!」 「……でも」
歩夢「え?」
「居なくなる直前の侑ちゃん、なんだか凄く悩んでる様な感じがしたの」
歩夢「ど、どう言うこと?」
「ボソッとね、独り言みたいに聞いてきたんだ」
『人って、そんな簡単に変われるのかな』
『もし変われなかったら、どうなっちゃうのかなぁ』
「てさ」
歩夢「……」 歩夢「侑ちゃーん、おはよー」
歩夢「今日もいいお天気──」
侑「ちゅん!」
歩夢「え?」
侑「ちゅんちゅん!」
歩夢「侑ちゃん?」 チチチチッ
歩夢「!」
チュンチュン!
侑「とりがないてる!とり!」
歩夢「あぁ、アレはスズメだねぇ」
侑「すずめ!」
歩夢「可愛いねぇ」 周りの事情を、一切考慮しなければ
それは、只々凪いだ日々だったんだと思う。 侑「そら!くも!」
歩夢「晴れてるねぇ〜」
侑「空はあお!あおいろ!」
歩夢「うん。とってもいい天気」
侑「でも、あおじゃなかったかも!」
歩夢「え?」
侑「色ってなにいろ?」
歩夢「???」 この、特になんでもない日々を
私たちは、当たり前の様に消費していた。 歩夢「あ、侑ちゃん」
侑「なにいろ?」
歩夢「ほらほら、猫だよ?猫」
歩夢「可愛いねぇ〜♪」
侑「自由!二面性のかたわれ!」
歩夢「へ?」
侑「はこいり!はこいり!」
歩夢「は、箱入り……娘?」
侑「はこいり!」 慣れと言うのは、本当に恐ろしいもので
どんな不自然でも、やがては馴染んで行き
この国の、土地の、様々な人たちが織りなす
ある種、恒常性に似た力によって
それは、自然なものへと作り変わって行く。 歩夢「あっ」
歩夢「涼しい風……」
侑「きたからきた!きたかぜ!」
歩夢「ふふっ、愛ちゃんみたいな事言ってる」
歩夢「前の侑ちゃんなら、お腹抱えて笑ってたと思うよ?」
侑「きたからきたかぜ!」
歩夢「……」 歩夢「……」
私の心には、今もあの日の感情が
汚泥の様に沈んでいるんです。 すみません、寝てしまっていました
申し訳ありませんが
明日の夜にまた参ります。 昨日は申し訳ありません。
少しですが更新させて頂きます。 「はーい!」
果林「それじゃあ、今日の練習はここまでにしましょう」
エマ「みんなお疲れ様ー」
かすみ「うへぇ……つ、疲れたぁ……」ゴロン
しずく「大丈夫?」
璃奈「運動直後に寝っ転がるの、あんまり良くない」
かすみ「じゃあおんぶしてぇ〜……」
彼方「ついでに彼方ちゃんもぉ〜」 愛「よーし!」
愛「それじゃあ、愛さんがおんぶしてあげようかな!」 ヒョイ
かすみ「うわっ!?」
彼方「おぉ〜、お姫様抱っこ」
愛「かすかす軽〜い!」
かすみ「は、恥ずかしい……っ///」
かすみ「──って!かすみんです!!」 彼方「彼方ちゃんもおぶっておくれぇ〜」
愛「はいよ!」
彼方「ぉお〜!楽チンだぜぇ〜」
愛「ぐるぐる〜」
彼方「うわぁ〜、人力ゴーランド〜」
しずく「私もして貰おっかなぁ」
璃奈「愛さん、私も」
愛「いや〜、愛さんモテモテだねぇ〜♪」
歩夢「あはは」 彼方「オェ……」
愛「き、きもちわる……っ」
かすみ「やり過ぎです!最後ジャイアントスイングになってましたよ!!」
しずく「とか言って、かすみちゃんも笑って見てたじゃない」
果林「彼方の髪がね、ムチみたいに飛んできたの……」ヒリヒリッ
璃奈「ヨシヨシ」
歩夢「ふふっ」
「歩夢さん」 歩夢「え?」
せつ菜「……」
歩夢「なに?」
せつ菜「……突然、侑さんが居なくなって悲しいですよね」
歩夢「!」
せつ菜「だから、そんなに無理して普段通りに振る舞う事はないですよ!」
歩夢「あ、あのっ」
エマ「せつ菜ちゃん!」 果林「せつ菜。急にそんな事言われたって、歩夢がただ困るだけよ?」
せつ菜「……」
彼方「まぁまぁ」
かすみ「っ」
せつ菜「……やっぱり、私たちじゃ力不足でしょうか」
歩夢「そ、そんな事ないよ!」
せつ菜「じゃあ!どうしてそんなに落ち着いていられるんですか!!」 歩夢「それはっ……」
せつ菜「歩夢さん。本当に、なんとも思ってないん──」
「せつ菜ちゃんっ!!!」
せつ菜「!?」
エマ「……」
せつ菜「は、はいっ」
エマ「……そんな事ないって、せつ菜ちゃんも分かってるでしょう?」
せつ菜「ッッッ」 せつ菜「うぅぅ……嫌ですぅ……」
歩夢「せ、せつ菜ちゃん」
せつ菜「もうっ、会えないかも知れないって……ずっと頭の中に響いてるんです……っ」
しずく「っ」
せつ菜「侑さん……嫌ですよぉ……」
せつ菜「"あの時"のお話が最後だなんて……」
歩夢「──ッ!!」
あぁ、ダメだ せつ菜「うっ……っ」
歩夢「……」
歩夢「ねぇ」
「あの時って?」
せつ菜「え?」
歩夢「それって、いつの話?」
せつ菜「い、いつの……ですか?」
せつ菜「侑さんが居なくなる前の日、侑さんからピアノのお話を聞いた時です」
歩夢「……っ」
止まって お願い 歩夢「せつ菜ちゃん、知ってた?」
せつ菜「は、はい?」
歩夢「侑ちゃんはね、せつ菜ちゃんのライブを見て、憧れて」
歩夢「そして、スクールアイドルに興味が湧いたんだ」
せつ菜「えっ……そ、そうだったんですか?」
歩夢「そうなんだよ」
果林「あ、歩夢……」
エマ「っ」 底の底で、物言わず潜んでいた汚泥が
静かに、表層へと舞い上がって行く 歩夢もそうだし2人一緒だったから踏み出せたんだよね
そのことを思い出して 侑ちゃんが花に!なんて言い出したら
ストレスでおかしくなった扱い不可避 短くて申し訳ありませんが
一旦区切らせてください
明日の夜にまた参ります。 皆さんありがとうございます。
進められるだけとなってしまいますが
どうか宜しくお願いします。 かすみ「ぇ……えっ」
しずく「っ」
璃奈「愛さん……」
愛「大丈夫。大丈夫だよ……」
心の縁がざわついて
歩夢「……」
もう、どうにも止まれない。 歩夢「……最初は、二人だけだった」
歩夢「私と侑ちゃんの、二人だけ」
せつ菜「っ」
歩夢「それが、ステージの上で踊る、貴方の歌とダンスを目の当たりにして」
歩夢「侑ちゃんは、彼女の言うところの"ときめき"を、アイドルに見出してた」
歩夢「それがきっかけで、私達は同じ目的で動き始めたの」
せつ菜「そ、それは光栄ですが……」
歩夢「でもね」
せつ菜「!」 歩夢「じゃあ、私にとってのアイドルって、なんだろうって、改めて考えてみたら」
歩夢「それは、やっぱり侑ちゃんの気持ちを汲む為の行いだって、そう思ったんだ」
歩夢「私の夢を、すぐ隣で見ていてくれる。そして、それを応援してくれる」
歩夢「コレは、彼女が言う"ときめき"を、ただ守る布石でもあったんだって」
せつ菜「なっ、なんですかそれ……っ」
歩夢「……」
歩夢「だって、そうしないと一緒にいれそうになかったから」 歩夢「あのプロジェクトも、合宿の事も、ピアノの事だってそう」
歩夢「彼女は、いつの間にか一人で歩き始めてたんだよ」
歩夢「同じ場所にいたのなんて、ほんの少しだけだった」
歩夢「彼女は、彼女の思いを日々強めながら、その視線の先に色んな人を捉えていたの」
歩夢「もう、こんなに離れてたんだって、今さら気付いたんだ……」
せつ菜「〜っ」 歩夢「……」
歩夢「……もし」
歩夢「もしも、侑ちゃんと一緒に居れなくなる日が、これからやって来るのなら」
歩夢「それなら──」
『もう、夢なんて見なくていいかな』
果林「そ、そんなこと……」
彼方「っ」
しずく「うぅっ」
エマ「あ、歩夢ちゃん……っ」 他の子達から見たら一番近くにいるのは変わらず歩夢だろうにね かすみ「っ……っっ」
璃奈「……」
愛「ッ」
せつ菜「──ッ!!」
せつ菜「馬鹿なこと言わないでくださいっ!!!」
歩夢「……どうして馬鹿なの?」
せつ菜「だって!二人で始めて、そして今ここまで来たんでしょう!?」
せつ菜「だったら、最後まで貫いてくださいっ!!!」 歩夢「……」
歩夢「……うるさいな」
せつ菜「!」
歩夢「せつ菜ちゃん、よく知らないでしょう?私のことも、侑ちゃんのことも」
歩夢「私が、どう言う気持ちでここまで来たのかも。当然だよね」
せつ菜「関係ないですっ!!」
歩夢「っ」
せつ菜「よく知らないのなら、これから知ればいいだけじゃないですか!!」 せつ菜「一緒に活動してる仲間なんですから、そんなの当たり前の事ですよ!!」
歩夢「……信じてなかったクセに」
せつ菜「!」
歩夢「侑ちゃんが帰ってくるって、信じてなかったクセに」
せつ菜「そっ……れは……っ」
歩夢「つまり、そう言う事なんでしょ?」
歩夢「結局、せつ菜ちゃんって──」 「歩夢っ!!!」
歩夢「!」
果林「アナタ、なに言おうとしてるのよっ!!」
果林「おかしいわよ!?さっきから聞いてたら、私たちみんなの事なんとも思ってない様な言い方してるっ!!」
せつ菜「ッッッ」
果林「もう、絶対にそんな事言ったらダメよッ!!!」
歩夢「……」 みんなのこと。わたしのこと。
ゆうちゃんのこと
高咲侑ちゃん
スクールアイドル同好会
大切な、彼女との時間
同好会のみんなとの時間
いつまで経っても
何処まで行ったって
この均衡は崩れない。
暖かくて、重たい価値
そう。私たちだけの…… 歩夢「……」
エマ「……今日は、もう解散しよう」
エマ「せつ菜ちゃんも歩夢ちゃんも、気持ちを整理する時間が必要だよ」
歩夢「……」
スッ
果林「あっ」
エマ「……」
「お疲れ様でした」
バタンッ エマ「……」
果林「っ」
かすみ「ヒゥ……ッ」
璃奈「ッ」
愛「……」
しずく「……」
彼方「……」
せつ菜「……歩夢さんっ」 歩夢「……」
ほんのちょっと、不思議な事が周りで起こってる
ただ、それだけのお話なんだろうと
だって、例え花でも侑ちゃんは側に居てくれるし
学校だって、部活だってそうだもん。
何も変わり映えなんてない。だから、大丈夫
そう思ってた
思おうとしてた。 ガチャン
歩夢「……」
歩夢「……ただいま」
…………。
歩夢「……」
歩夢「侑ちゃん、ただいま」
…………。 歩夢「?」
歩夢「侑ちゃん?」
「ゆうちゃん」
歩夢「あ、良かった」
歩夢「侑ちゃん、ただいま」
歩夢「遅くなってごめんね?今日は少し雨が──」
歩夢「!?」
「えへへ」 歩夢「ぁ……えっ」
花びらの色が燻んでる
葉も、大分しな垂れている。
侑「あめ。てんとよつゆのうた」
なにより、
侑ちゃんの声に、いつもの元気がない。 すみません、一旦区切らせてください。
明日の夜にまた参りますので、
どうか宜しくお願いします。 皆さん、ありがとうございます。
これから更新させて頂きますので、
どうぞよろしくお願いします。 歩夢「どっ、どーしたの!!?」
侑「どうしたの」
歩夢「侑ちゃん!!どこか具合悪いの!!?」
歩夢「お水!?お水が足りてない!!?」
侑「うるおってる。たっぷり」
歩夢「えっと……じゃ、じゃあ病気!?虫とか!?」
侑「したはともだち。あとはゆうちゃん」 歩夢「ッッッ」
侑「きまった数とおわり」
歩夢「どーゆーこと!?分かる様に言ってよ!」
侑「つながり。少ないかも」
侑「しょーがない」
歩夢「っ」
歩夢「…………侑ちゃん」 侑「あのね」
歩夢「侑ちゃんは、どうしてお花になろうと思ったの?」
歩夢「どうして、私の前だけに現れてくれたの?」
侑「最初の交差点だよ」
侑「縁もたけなわ」
歩夢「分かんないっ」
歩夢「分かんないよぉ……」 歩夢「なんで?ちゃんとお話しようよ……前みたいに」
侑「お水をたしても、お湯にはなれない」
歩夢「急にお花になんてなれるんだもん、元に戻ることだって出来るんでしょ?」
侑「まえの。なごり」
歩夢「そ、それにさ?お花だと色々不便だったでしょう?大変だったもんね」
侑「私だけど、わたしじゃない」
歩夢「大丈夫。私も一緒に、侑ちゃんのご両親に説明するし、一緒に怒られるからさ?」
歩夢「だから……っ」 歩夢「〜っ」
歩夢「ぅ……うぅぅぅっ、ゆ、ゆうちゃん……っ」
侑「ゆうちゃん」
歩夢「わたしっ……もう何処にも居られない……っ、だれもいない……」
歩夢「お願いっ、側にいて……ずっといてよぉ……」
侑「かふかの水」 歩夢「悲しいよっ……すごく苦しいのぉ……っ」
歩夢「だから、もう……何処にも行かないで……」
侑「となりととなり」
歩夢「ぅ……うぅ……っ」
侑「惹かれあった」
侑「──でもね」
歩夢「!」
侑「このままじゃ、なんにもならないから」 歩夢「侑……ちゃん?」
侑「だから、願ったの」
歩夢「な、なにを?」
侑「キミの窓に映る景色が、ちゃんと出来上がるまで、私が入らない様にって」
侑「そう願った」
歩夢「まど……?」
侑「でも、今はまだちょっとだけ映ってる」
侑「きっと、コレをキミに渡したかったんだ」
歩夢「コレって……」
侑「花。ゆうちゃん!」
歩夢「……」 前に、私が調べた
今、侑ちゃんが侑ちゃんでいる、この花
"ローダンセ" 侑「私だった時はね、何かを見つけなきゃって思ってた」
侑「何もないのが嫌だったから、ただずっと探してた」
歩夢「……」
侑「いつか終わりが来るまで、とにかく走って、走って、探し回ってたんだ」
侑「キミは、別に走りたくなかったのにね」
歩夢「!」
侑「あ、ヒトだ」 侑「私だった時はね、何かを見つけなきゃって思ってた」
侑「何もないのが嫌だったから、ただずっと探してた」
歩夢「……」
侑「いつか終わりが来るまで、とにかく走って、走って、探し回ってたんだ」
侑「キミは、別に走りたくなかったのにね」
歩夢「!」
侑「あ、ヒトだ」 侑「アッチもつがい。コッチもつがい。みんなくっ付いてる。変だね」
歩夢「……ぁ」
侑「わたしんち、キミんち、別々。当たり前だよね」
歩夢「……」
歩夢「……侑ちゃん」
そうだ
きっと、そうだったんだ。
侑「あはは、風。葉っぱ」
侑ちゃんが、花になったのって 私が、侑ちゃんに甘え続けた所為で
彼女は、自分の人生を捨ててしまった 侑「あはは」
歩夢「っ」
私が、そうさせたんだ。
侑「気持ち、前のわたしの」
歩夢「……っ」
侑「そうであって欲しいって、その気持ち」
侑「花は枯れちゃっても、気持ちは枯れない。あはは」
歩夢「〜ッ」 ローダンセ:
花言葉は、変わらない思い
終わりのない友情
なのに…… 侑「でも、キミの窓辺はキミの。それだけ」
侑「キミの生活はキミの」
侑「それだけ」
歩夢「ッッッ」ギリッ
どうして
なんで、そんな事ばっかり言うの? 侑「空が見えて、床からビルが生えてて」
侑「葉っぱとスリッパ。そして、」
侑「わたしは、そこに居なくて──」
「やめてよっ!!!」
歩夢「わたしはっ!!」
侑「あはは」
歩夢「私は、そんなの望んでないっ!!」
歩夢「侑ちゃんを否定する様なこと、絶対にしたくないっ!!」
侑「はははっ」 歩夢「したくないのに……っ」
侑「キミ。キミとわたし。別々」
歩夢「別なんかじゃないっ!!」
歩夢「私は、侑ちゃんと一緒に歩いて行ければ、それで良かったの!幸せなのっ!」
歩夢「だからっ……侑ちゃんには、侑ちゃんのままでいて欲しいかったのっ」
侑「違うよ、別々」
歩夢「ッ」
侑「べつべつ」 歩夢「…………ねぇ、侑ちゃん」
侑「ゆうちゃん」
歩夢「こんなの、もうやめよ?元に戻ろうよ」
歩夢「私も、頑張るからっ」
侑「ゆめ、ときめき」
歩夢「侑ちゃんが、私と違う夢を見るのは本当に寂しくて、悲しいけど……それでも、」
歩夢「侑ちゃんにはっ、幸せでいて欲しいからっ」 歩夢「…………ねぇ、侑ちゃん」
侑「ゆうちゃん」
歩夢「こんなの、もうやめよ?元に戻ろうよ」
歩夢「私も、頑張るからっ」
侑「ゆめ、ときめき」
歩夢「侑ちゃんが、私と違う夢を見るのは本当に寂しくて、悲しいけど……それでも、」
歩夢「侑ちゃんにはっ、幸せでいて欲しいからっ!」 歩夢「それに、本当は終わりになんてしたくない!」
歩夢「みんなの夢も、私たちの夢もっ!」
歩夢「ずっとずっと、追いかけてみたかったよっ!!」
侑「!」
歩夢「だからっ、お願いっ……戻って……っ!」
侑「……」
歩夢「ゆうちゃん……っ」
歩夢「うぅ……」 「──歩夢、」
歩夢「え?」
侑「……」
歩夢「い、いま、名前……」
侑「ねぇ、歩夢」
歩夢「な、なに?」
侑「枯れる前に決心が付けばって、そう思ってた」
侑「だって、このまま終わりになるだなんて、そんなの悲し過ぎるもんね」 歩夢「なんのはなしを……」
侑「1.2の3だよ」
侑「まずは、ゆっくり目をつぶって」
侑「それから、三つ数をかぞえるの」
歩夢「ゆう……ちゃん?」
侑「そうしたら──」
侑「私は、ここから居なくなるから」 歩夢「!?」
侑「高咲侑は、上原歩夢の幼馴染じゃなくなる」
侑「歩夢の生活は、似てるけどまったく新しい、別の形に生まれ変わるんだ」
侑「また、夢を追いかける為にね」
歩夢「そっ──!」
歩夢「そんなのっ、出来るわけないよ!!」
侑「……」 歩夢「侑ちゃんはね!?私の大切な幼馴染なんだよっ!!」
歩夢「私は、元通りにっ……今まで通りに戻って、やり直したかっただけなのっ!」
歩夢「それを、全部失くすだなんて……っ」
侑「あのね」
歩夢「ッ」
侑「ずっとずっと、歩夢と同じ道を歩いて来た。それなりの時間をかけて」
侑「それが、当たり前だと思えるくらいには」
歩夢「そ、それの……なにがダメなの……っ」 侑「当たり前になり過ぎてて、気付かなきゃいけない事まで、私たちは気付けなくなってたんだよ」
侑「あの日、君に言われるまで」
歩夢「あ、あの日……?」
侑「私の夢を伝えた時、歩夢はとっても悲しそうだった」
侑「当然だよね。歩夢の心を裏切ってたんだもん」
歩夢「っ」
侑「私は、私の夢を見つけた事に夢中になってて、その分、歩夢を蔑ろにしてた」 歩夢「そ、そんなことっ」
侑「私が、どっち付かずな態度を取ってる内に、歩夢は自分の夢まで見失っちゃって」
侑「そして、とうとう私なんかに依存しちゃったんだ」
歩夢「違うっ!依存だなんて……っ」
侑「こんな事になったのも、元を正せば全部、歩夢をその気にさせた私が悪いの」
歩夢「〜っ」
侑「私が、歩夢の自由を奪ったんだ」
歩夢「わたしっ、は……」
歩夢「私は、侑ちゃんと一緒に居られれば……それで……っ」 侑「……」
侑「だから、歩夢が見ている窓辺。この外に出ようって、そう決めたんだ」
歩夢「っ」
侑「写ってる景色を、隅々までちゃんと見られる様になったなら」
侑「そうすれば、また歩夢は自分で歩き出す事が出来るって」
歩夢「そんなっ……」
侑「……」
侑「今にして思えば、歩夢に抱きしめられた時、あの時がきっと」
侑「お別れの合図だったんだよ」 歩夢「ぁ……」
侑「だから、もう行かなくちゃ」
侑「ここをね、私と歩夢との最初の交差点にする為に」
歩夢「最初……の……?」
侑「そう」
侑「私と歩夢の時間は、一度おしまいにしなくちゃならない」
侑「縁もたけなわって奴だね」
歩夢「そんなっ……そんなのって……」 侑「私達の道が、またいつ交わるかは分からないけど」
侑「それが、君の自由になるのなら」
歩夢「……」
侑「それにさ」
侑「歩夢にだって、待ってる人たちがいっぱいいるんだもん」
歩夢「でも……っ」
歩夢「でもっ!!」
侑「歩夢」 侑「君は、本当に凄い子なんだよ?」
侑「その気になれば、何処までだって歩いて行けちゃう様な」
歩夢「ッ」
侑「自分の力で夢を見つけて、それに向かってずっとずっと歩いて行ける。そんな凄い子なんだ」
歩夢「違う……っ」
侑「だから、私一人の事で思い悩んでたら、ダメなんだよ」
歩夢「違うっ!!」
歩夢「私は凄くなんかない!みんなと一緒だもん!」 歩夢「それに、侑ちゃんは友だち!私の一番のっ!!」
歩夢「思い悩むのなんて、そんなの当たり前だよっ!!!」
侑「ふふっ」
歩夢「ねぇ!」
侑「……」
侑「さようなら、歩夢」
歩夢「──ッ!」
侑「最後に、君を抱きしめたかったな」
歩夢「ま、まって!!」 侑「さぁ、目を閉じて」
侑「私が枯れちゃう前に」
歩夢「待ってったらぁ……っ」
侑「そして、三つ数えたら、きっと何もかもを忘れられるから」
歩夢「待ってよぉ!待ってったらぁ!!」
侑「歩夢を縛ってるものは、もう全部無くなってるよ」
歩夢「侑ちゃんっ……イヤだ……っ!」
侑「そうしたらさ」
「あとは、思う様に歩いて行って」 歩夢「ゆぅ…ちゃん……っ」
侑「歩夢」
歩夢「いやだっ……わたし……っ!」
侑「どうか、変わる前に」
侑「私たちの絆が、枯れない様に」
歩夢「ゆぅ……ちゃ……」
侑「……」
歩夢「っ」
歩夢「ッッッ」 侑「これまでの私達は、今日ここで終わるけれど」
侑「きっと、直ぐにまた逢えるからさ」
侑「だからね、その時はまた……」 すみません、一旦ここで区切らせてください
明日の夜に最後の下りを更新しますので、
どうかよろしくお願いします。
そして、また間違えてしまいました。
>>197と>>198の間
「2」
が抜けてしまいました
本当に申し訳ありません。 昨夜は申し訳ありません
今から少しづつ更新させて頂きますので
どうぞよろしくお願いします。 ──────
───
─
チュンチュン!
チュン…チュンチュン
ピピピピピピッ!
「…………ん……」
ムクッ
「……」
「ふあ〜ぁ」 「……」スッ
ガラガラッ
「……ん〜っ!」
歩夢「今日は、いいお天気だなぁ」
歩夢「風も穏やかだし、お散歩したくなっちゃうね」
歩夢「──あれ?」
歩夢「わわ!もうこんな時間!?急いで準備しなきゃ!」 歩夢「なんでアラームズレてたんだろう?何かしたっけ?」
歩夢「昨日は犬猫動画観てぇ……ちょっと勉強して、それから……」
歩夢「んん〜」
歩夢「ま、いっか」
歩夢「それより、早くみんなと会いたいなぁ〜♪」 なんだか、恥ずかしくなる言葉だけども
思ってるんだから、しょうがないよね。 歩夢「おはよー!」
「あ、歩夢ちゃんおはよー」
「ねぇねぇ、今度のライブ絶対観に行くから!」
歩夢「ふふっ、ありがとう」
「見てよコレ!歩夢ちゃん一色でしょ!?」
歩夢「え?……うわ!?」
「アンタ、本当よくやるよ」
「当然じゃん!わたし、歩夢ちゃん推しですから!」 歩夢「あ、あははは……」
「他のファンの子たちには申し訳ないけど、このポジションだけは死んでも譲んないから!」
歩夢「こ、このポジションって?」
「推しと毎朝一緒に登校できる!教室も一緒!放課後もたまに遊びに行ける!お家デートも可!」
「冨は我が手に!!音を立てて崩壊するマルクス主義っ!!」
歩夢「〜っ」
「ハァ……」 「この、冨の偏在を私は──」
「ウザい」ドスッ
「あぅっ!?」
歩夢「!?」
「いっつもごめんね?この子アホだからさ」
歩夢「う、ううん。好きだって言ってくれるのは嬉しいから」
「私はせつ菜ちゃん推しだけど、歩夢のことも勿論応援してるから」
歩夢「うん。私もせつ菜ちゃん大好きだもん!」 「……ねぇ、」
歩夢「ん?」
「今度さ、せつ菜ちゃんも連れて四人で遊びにとか……その……」
歩夢「ホント!?私もずっとそれ思ってたんだ〜!」
「!」
歩夢「せつ菜ちゃんにも、そのお話伝えておくね!」
「あ、ありがとう!」 歩夢「あ、そろそろ行かなくちゃ!」
「分かった。朝練頑張ってね」
「うぅ……歩夢ちゃ〜……」
歩夢「二人も、また後でね」
日課の手ぇつなぐのまだぁ〜っ!!
アンタうるさいからっ!!
歩夢「うふふっ」
歩夢「──よし!」 今年の春に、同い年の子のライブを見て
私は、アイドルになる。と言う夢を手に入れた。
それ程に、ステージ上の彼女は
燦然と輝く一番星の如く、圧倒的な存在感を放っていたんだ。
……まさか、そのすぐ後に友達になるとは
夢にも思っていなかったんだけど
気が付けば、
目指すべき人は、私の先生の一人にもなっていた。 そして、志しを同じくした
八人の仲間たちと共に
私はいま、ここにいる。
歩夢「……」
……でも、 「さて」
果林「9人揃った事だし、そろそろ練習を始めましょうか」
歩夢「……」
彼方「ん〜?どうかしたのぉ〜?」
歩夢「……いえ」
歩夢「なんだか、少しだけ違和感がある様な気がして」
せつ菜「違和感ですか?」
歩夢「うん。なんて言うか」
歩夢「この部室に、何かが足りない様な……そんな感じがして」 かすみ「こ、怖い話なら、流しそうめんの部室でして下さいっ!」
愛「なんであそこなの?」
かすみ「だって、あの会って年がら年中夏仕様じゃないですか!」
しずく「別に夏仕様では無い気が……」
かすみ「流しそうめんって言ったら夏でしょ!?冬なんて寒くて無理だもん!」
せつ菜「では、お湯を流して温そうめんにしましょう!」
せつ菜「これなら寒くないですね!」
かすみ「ぉお!!」 璃奈「たぶん、倍の速度でふやける」
せつ菜「!?」
かすみ「ぇえ!?」
歩夢「……」
エマ「悩み事?」
歩夢「え?」
エマ「いつもの歩夢ちゃんと少し違ったから、何か悩んでるのかなって」
歩夢「……悩み、悩んでる事」
璃奈「さっきの違和感のことも気になる」
彼方「良かったらぁ〜、お姉さんに話してごらぁ〜ん?」 歩夢「……」
歩夢「何に悩んでるんでしょう」
エマ「へ?」
歩夢「何に悩んでるのか、それが全然分かんないんですよね」
かすみ「ハァ?」
歩夢「何か、悩んでる様な気もしたんですけど、コレと言って特には……」
しずく「歩夢先輩って、たまに面白い感じになりますよね」
歩夢「んん……」 侑ちゃんの言葉通りならここにはいなくてもこの世界にはいるのかな せつ菜「大丈夫です!」
歩夢「!」
せつ菜「思い出したらでいいんですよ」
せつ菜「いつでも聞きますから!」
歩夢「……ありがとう。せつ菜ちゃん」
果林「ねぇ、歩夢」
歩夢「はい?」
果林「この地図のね、スイーツ店まで行きたいんだけど」
果林「コレ、どういう風に見たらいいのかしら」
歩夢「……」 果林「一応ね?上下回転しながら見てるんだけど、この子回転してくれないのよ」
果林「上って北よね?そうよね?」
歩夢「……果林さん」
果林「え?」
歩夢「このお店には、いつ行くんですか?」
果林「えっと、今週の日曜に行こうかなって……」
歩夢「私も行っていいですか?」
果林「あら、デートのお誘い?」 歩夢「そうです」
果林「!?」
果林「そ、そう。一緒に来てくれるのなら、私も嬉しいけど」
歩夢「分かりました。待ち合わせ時間は後で決めましょう」
果林「あ、はい……」
エマ(歩夢ちゃん、ありがとう)パチッ
歩夢(気にしないでください)パチッ
果林「?」 ほんの少しだけあった引っかかりも
この、なんでもない日々のやり取りのお陰で
綺麗さっぱり流れていきました。
そのくらい、とても楽しく過ごせています。 「歩夢ちゃ〜ん!」
「これからまた練習あるんでしょ?」
歩夢「うん。今日は軽めだけどね」
「じゃあさ、ちょっとだけ時間ある?」
歩夢「大丈夫だけど、どうしたの?」
「次のライブの為に、みんなからのプレゼントがあるんだよ」
歩夢「次のライブのため?」
「女子力高めだよ〜」
「ほら、コレ!」サッ 歩夢「!」
「ガーベラだよ」
「かわいくて、純粋で、いつも頑張っていて……」
「私たちは、そんな歩夢ちゃんが大好きなんです!」
歩夢「みんな……っ」
「あはは、なんか恥ずかしくなってきたね///」
「歩夢。受け取ってくれる?」
歩夢「ッッッ」
歩夢「……ありがとう。本当にありがとうっ」 出会ってきた、色々な人達との
感じた時間の流れと、その清濁
様々な、出逢いと別れの中で
私の窓に映る、この景色が出来上がった。 歩夢「うぅ……っ」
「ヤバッ……わたしも……っ」
「嬉しいねぇ」
歩夢「〜っ」
「……あーあ!ライブの為にとっといた涙だったのになぁ!」
「水いる?」
「トイレ行きたくなるからいらなぁーい!」
「ハイハイ」 それは、生活と言う線で縁取られ
感情と言う絵の具で彩られた
私だけの景色。 歩夢「ぁ、この花って」
「んん?そんなんあったっけ?」
「あぁ、それはローダンセだね」
歩夢「……」
「花言葉は、変わらない思い。あと、終わりのない友情だって」
歩夢「ローダンセ……」
「綺麗だよねぇ」
歩夢「うん……」 「そういえばさ」
「明日、フェスの相談で東雲学園の人が来るんだって」
歩夢「そうなんだ。どんな人?」
「生徒会長だって」
「高咲さんって言うらしいよ」
歩夢「……」
「知ってる人?」
歩夢「え?う、うぅん」
「なんかね?歩夢ちゃんの大ファンなんだって!」
歩夢「な、なんか恥ずかしいなぁ///」 「凄いよね!校外の人までファンになっちゃったんだよ!」
「しかも生徒会長だからねぇ」
歩夢「うぅ〜っ///」
「あとは、ライブに向けて目一杯歩夢ちゃんを盛り上げて行くだけだ!」
「歩夢。応援してるからね」
「頑張って!」
歩夢「うん!」
歩夢「えへへ」 「歩夢ちゃーん!」
歩夢「!」
「オーイ!!」
「せんぱーい!練習始めますよー!」
「置いてっちゃうからねー!」 きっと、これからもずっと
夢を目指して、それに向かって歩いていけたら そうしたら、何かを果たせる様な
そんな気がします。 ──あ、
貴方、上原歩夢ちゃんだよね!?
私、高咲侑っていいます!
実はわたし、貴方の大大大ファンなんです!
ステージの貴方、すっごくキラキラしてて私、一目でトキメいちゃったの!
……ねぇ、もし良かったら、私と 元ネタ
伊藤サチコ【1.2.3】/sm2692687 @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リどんな世界でも結ばれる運命なんだね 元ネタ聴いたら何となく侑ちゃんの気持ちがわかった気がする
乙でした おつ
ハラハラしながら読んでたけどハッピーエンドになりそうで良かった 歩夢が侑ちゃんをやっちゃってて体の一部を花に見立ててるとか怖い想像してしまってた
そんなことなくてよかったわ お花の侑ちゃんがかわいい
お花じゃなくてもかわいい 謎のセリフ、悲劇に見えた不可逆展開でかなり混乱しましたが、希望が持てる結末になって良かったです。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています