千砂都「長い待ち時間」
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部室――
恋「ふむ…」
千砂都「ういっすー!」
恋「あ、千砂都さん」
千砂都「あれ、恋ちゃん一人?」 恋「ええ。かのんさんたちは、ご一緒ではないのですか?」
千砂都「うん、先に行くねーって教室出て行ったんだけど…あ、そう言えば去り際に、音楽室に寄っていくとか話していたような」
恋「次のライブに向けた準備でしょうか?」
千砂都「おそらくね。きっと面白いアイデアがあるんだよ」 恋「では、みなさんが来るまで、もうしばらく待つとしましょう」
千砂都「そうしよっか。あ、読書してたの?」
恋「はい、好きな小説の新刊が出ましたので」
千砂都「恋ちゃんは本が似合うねぇ」 恋「そうですか?」
千砂都「イメージどおりの読書美人って感じ」
恋「おだてても何も出ませんよ」
千砂都「本気で言ってるのにー」 恋「千砂都さんは読書などは?」
千砂都「私は文字より絵が多い方が好きかな。要するに漫画派」
恋「なるほど。逆に私の場合、そういうものには疎くて」
千砂都「それもイメージどおりだね。そうだ、一つ提案なんだけど、今度お互いのオススメの一冊を交換してみない?」 恋「小説と漫画を、ですか?」
千砂都「うん!漫画にも色々あるから、きっと恋ちゃんが気に入るものもあると思うんだ」
恋「その逆もまた然り、千砂都さんがお気に召す小説もあるかも、というわけですね」
千砂都「そういうこと!どうかな?」
恋「良い考えです。新たな本との出会いを通じて、お互いの世界が広がりそうです」 千砂都「決まりだね、じゃあ次の月曜日に持ち寄るってことで!」
恋「明日でも良いですよ?」
千砂都「恋ちゃんに読んでもらう本だから、じっくり選びたいんだ!」
恋「ありがとうございます。では、私も真剣に選んでみますね」 ……………………………………
千砂都「ういっすー!」
恋「千砂都さん、ういっすーです」
千砂都「あっ、恋ちゃんが眼鏡かけてる!」
恋「ああ、今日は読み書きする仕事が多かったもので」 千砂都「ふーん、いいね、いいね!」
恋「何がいいのです?」
千砂都「眼鏡の恋ちゃん!なんか実にそれっぽい!」
恋「ふふっ。なんですか、それ」 千砂都「私も眼鏡しようかな。恋ちゃんに倣ってさ、賢さアップみたいな!」
恋「試しにかけてみますか?」
千砂都「かけるかける!」
恋「はい、どうぞ」 千砂都「ありがと!おおっ、視界がぐわんぐわんする」
恋「あら、そこまで度は強く無いはずですが」
千砂都「視力には自信があるからねー。ありがと」
恋「なかなかお似合いでしたよ」 千砂都「ん、何が?」
恋「眼鏡です」
千砂都「えっ、本当?」
恋「はい、とても可愛らしかったです」 千砂都「そ、そっかぁ…!」
恋「それにしても、みなさん遅いですね」
千砂都「ああ、3人ともそれぞれ少し遅れるからって!」
恋「そうなのですか。お忙しいのでしょうか」 千砂都「かもね、気長に待ってようよ!」
恋「なんだか嬉しそうですね、何かいいことでも?」
千砂都「なんでもないよ、えへへっ!」 ……………………………………
千砂都「今日も今日とて」
恋「みなさん、なかなか来ませんね」
千砂都「普通科は小テストがあったばかりだからね、少し羽を伸ばしてるのかも」
恋「むぅ、勉強は勉強、練習は練習ですよ」 千砂都「まあまあ、今のうちに私たちも一息つこうよ」
恋「あの、千砂都さん」
千砂都「なぁに、恋ちゃん」
恋「今飲んでいるそれは、コーラですか?」 千砂都「ああ、これ?」
恋「はい。炭酸飲料のようですが、見慣れないデザインだったので」
千砂都「新発売のエナドリだよ」
恋「えなどり?」 千砂都「エナジードリンク。知らない?」
恋「ええ。どういうものなのですか?」
千砂都「んー。うまく言えないけど、飲むと元気が湧いてきて、頭も冴えてパフォーマンスがアップする、みたいな感じかな」
恋「なるほど。名前のとおり、エネルギーを補給するイメージでしょうか」 千砂都「そんな感じ。ものは試し、一口飲む?」
恋「いいのですか?」
千砂都「初めて飲んだ感想も聞きたいしね。はい、どうぞ」
恋「これは、かなり独特な香りですね。刺激的で、コーラともジュースとも違う…」 千砂都「案外やみつきになるかもよ」
恋「では、いただきます――うぐっ」
千砂都「あはは、その顔じゃあ、お口に合わなかった?」
恋「炭酸といい味といい、あまりにも刺激が強すぎます…」 千砂都「パンチが効いてるよね。カフェインも多いから、眠気覚ましにもってこいなんだ。ん、美味しい」
恋「普段からこのようなものを飲んでいたら、夜眠れなくなりますよ」
千砂都「心配ご無用。練習やダンスで体をフルに動かせば、どんな時だってぐっすり快眠だよ」
恋「ふふ、アクティブな千砂都さんらしいですね」 千砂都「良く動き、良く休む。これがちぃちゃん流の健康術ってね!」
恋「そういう姿勢、私も見習わなければです」
かのん「ごめん、お待たせー!」
千砂都「あ、かのんちゃん!」 可可「遅れてすみません。飲み物を買っていたのデスが、すみれがあれは嫌だこれも嫌だと駄々をこねるもので」
すみれ「飲むカレーとか炭酸コーヒーとか、あんたが微妙なのばかり薦めるからでしょ!」
千砂都「みんな揃うと、やっぱり賑やかだね!」
恋「はい、さっそく練習開始です!」 ――――――――
葉月家、夜――
恋「ふぅ、今日も充実した一日でした。練習に勉強に…エナジードリンク、というものの味にはびっくりしましたが」
恋「私は一口頂いただけですが、ほぼ一本飲み切った千砂都さんはちゃんと眠れるでしょうか…ふぁぁ、おやすみなさい…」
恋「…」
恋(…あれ?今の今まで気付きませんでしたが、もしかして、あの時) 千砂都『エナジードリンクだよ。ものは試し、一口飲む?』
恋『いただきます』
恋(千砂都さんから借りた漫画に、似たような場面がありました。ひょっとして、もしかして)
千砂都『ん、美味しい』
恋(か、かかか、間接キス…!?) ――――――――
翌朝――
千砂都「ういっすー!おはよ、恋ちゃん!」
恋「おはよう、ございます…」
千砂都「えっ、どうしたの?元気ないみたいだけど」
恋「昨晩は全く寝れませんでした…」 千砂都「どうしてまた。あっ。まさか、昨日あげたエナドリのせい?」
恋「!」
千砂都「いや、流石にそれはないか。飲んだのは日中だし、量も一口だけだったんだし」
恋「…」 千砂都「うーん、何か思い当たる原因とかあるの?」
恋「…まあ、悩み事というか、考え事というか」
千砂都「そっか。恋ちゃんもそういうお年頃なんだね。けど、あんまり思い詰めたらダメだよ」
恋「…誰のせいだと思っているのです」 千砂都「ん、何か言った?」
恋「いえ…」
千砂都「んー?」
恋(まったく、人の気も知らないで…でも、千砂都さんは気にならないのでしょうか。私が飲んだ後に口をつけたはずなのに…) ……………………………………
恋「部室に一番乗りしたものの、みなさんやって来ませんね…こういうとき、科が違うことの寂しさを感じずにはいられません」
ガチャ
恋「あっ、千砂――」
かのん「お待たせー!」 恋「ん、んんっ。ごきげんよう、かのんさん」
可可「レンレンはいつも早いデス!すみれも見習って、ついでに部屋の掃除や書類整理をしておくくらいの心構えが必要デス」
すみれ「その言葉、熨斗とリボンとラッピングをして返送してあげるわよっ!」
恋「あれ、千砂都さんは…」 かのん「ちぃちゃんは急な用事が入っちゃったって、今日は欠席だよ」
恋「そう、ですか」
可可「さあ、練習を始めましょう!」
恋(…ここのところ、ずっと千砂都さんと一緒だったからでしょうか)
すみれ「ほら、恋も行くわよ」
恋(なんだか、心に穴が空いたような気分です) ……………………………………
恋「失礼します」
千砂都「やっほー、恋ちゃん!」
恋「!」
千砂都「昨日は急に休んじゃってごめんね?」 恋「い、いえ。お一人ですか?」
千砂都「見てのとおり、例によって、ね」
恋「そうですか…あの、千砂都さん」
千砂都「ん?」 恋「その…よければ、なのですが…今度の土日、一緒に出掛けませんか?」
千砂都「!」
恋「お食事とか、ショッピングとか。千砂都さんと私の二人で…」
千砂都「…もしかして、デートのお誘い?」 恋「で、デート!?」
千砂都「あれ、違った?」
恋「いや、ええっと、その」
千砂都「あははっ、慌てちゃって可愛いなあ」 恋「い、意地悪しないでくださいっ」
千砂都「ごめんごめん。それで私の答え、なんだけど」
恋「…っ」
千砂都「もちろん、イエスだよ!」 恋「!」
千砂都「誘ってくれてありがとう、よろしくね!」
恋「は、はいっ!こちらこそ、よろしくお願いします!」
千砂都「ふふっ、長く待った甲斐があったみたい!」 恋「ん、何か言いました?」
千砂都「ううん、こっちの話!ああ、楽しみだね、どこ行こっか!」
終わり これは素晴らしいちされん…この空気感めっちゃ好き
乙でした タイトルでもしや……と感じましたが
ちされんで幸せになるお話しで良かったです。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています