ss「心の旅」
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0001名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2022/02/14(月) 21:52:38.97ID:ebfGHadG
スタッフルームの隅に設置された冷蔵庫を開けるとブラックコーヒーの缶が並んでいた。まるで寝ないで働けと言わんばかりに大量に備蓄されている、それを手に取ると真姫は近くの椅子に腰を掛けた。

父の経営する病院に医者として勤務する様になって10年。父の経営する病院と言っても特別扱いされる事はなかったし、真姫自身も誰に言われる訳でもなく毎日馬車馬の様に働いた。それが響いているのか近頃、体が岩の様に重く、心は鈍く、何かを見て感動する様な事は一切なかった。

そんな真姫が最後に泣いたのは4年前、父が病に倒れた時だった。幸い、一命は取り留めたけれど父は一生インスリンポンプを手放せない身体となった。逆を言えばインスリンポンプさえあれば父は日常生活を普通に送る事が出来る。しかし、血糖値の変動があればオペに影響する。父はより一層経営に専念する事になった。

それ以前に真姫が涙を流したのは6年前の親友の結婚式だった。彼女の友人代表として手紙を読んだ時、思わず涙が溢れてしまった。嬉しさとそれから寂しさの涙だったが、当時の真姫はそれが理解出来ず困惑したものだった。

友人とも多忙を理由にもうずっと会えていない。
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