愛「恋バナしようよ!」 せつ菜・かすみ・しずく「!?」
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◆
それから私と侑先輩で懸命に編みぐるみを探し回った。
歩いてきた道中を辿り、ライブ会場まで戻った。
でもどこを探しても見つからなかった。
かすみ「ライブが始まる前に、侑先輩のバッグについてるのは見た気がするんです」
かすみ「だからきっとこの道のどこかに……」
侑「……」
侑「かすみちゃん、一緒に探してもらっちゃってごめん」
侑「でももう遅いから、帰ろっか……」
かすみ「……」
かすみ「嫌、です……」
侑「かすみちゃん?」
かすみ「私絶対見つけますから! もう1回ライブ会場戻ってみます!」タタッ
侑「あ、ちょっと、かすみちゃん!」
諦めたくなかった。
どうしても見つけたかった。
だって、あれは…… もう一度ライブ会場をくまなく探す。
入口からステージ裏まで。
それでも見つからない。
歩夢先輩手作りのあの……
なんで。
なんで、なんで、なんで!!
お願い!
お願い、出てきてよ!
かすみ「ああっ!」ヨロッ
焦りのあまり足が躓いて転んでしまう。
かすみ「いてて……」
侑「かすみちゃん、大丈夫!? 怪我はない?」
かすみ「うぅ……」
顔を上げたその時。
その先の花壇の隅に。
かすみ「あ……」
かすみ「あったああああああ!!」 ◆
侑「かすみちゃん、本当にありがとう!!」
侑「ごめんね、洋服汚れちゃったよね」
かすみ「服は洗えばいいだけですから!」
侑「でも、私のために、こんなに……」
かすみ「えへへ、侑先輩のためなら当然です!」エヘヘ
かすみ「それに歩夢先輩のためにも……」
侑「え……?」
かすみ「もしその編みぐるみを侑先輩がなくしちゃったら」
かすみ「歩夢先輩、きっとすごく落ち込んじゃうと思うんです……」
侑「……」
かすみ「かすみん、歩夢先輩のことも大好きだから」
かすみ「侑先輩とかすみんが付き合うことで、歩夢先輩が寂しい思いするのだけは絶対嫌だなって……」
かすみ「ずっとそう思ってて……」
侑「かすみちゃん……」
かすみ「だから……」
かすみ「2人の宝物が見つかって、本当に良かったです!」ニコッ
侑「……!」 彼方「まさかしずくちゃんに聞かれてたとはね〜」
しずく「すみません。盗み聞きするつもりはなかったんですが……」
あたりはすっかり暗くなっていた。
公園のベンチで2人。
彼方さんは弱々しい表情でずっと下を向いていた。
こんな彼方さんは初めてだった。
彼方「彼方ちゃん、カッコ悪いよねー」
しずく「そんなこと、ないです……!」
この前私が感じたとおり、彼方さんの中には未練があったのだろう。
その相手には正直驚いたけど……
彼方「しずくちゃんにこんなこと言うの、彼方ちゃんひどいと思うけど……」
彼方「私、あの子のことまだ好きだったみたい」
彼方「今日話してみて、やっぱり好きだなって、思っちゃった……」
しずく「彼方さん……」
しずく「で、でも、部長もずるいですよね。幸せだったなんて言われたら、その気になっちゃいますよ」
彼方「ふふっ、しずくちゃんは優しいね」
彼方さんの頭が私の肩にもたれる。
彼方「少しだけ、こうしてていい? しずくちゃん」
しずく「……」 あまりにも弱った彼方さん。
私が慰めなきゃって、肩に乗る彼方さんの頭を優しく撫でる。
柔らかい髪。ふわふわとした感触が心地良い。
優しく、優しく。彼方さんに触れる。
そして、彼方さんの熱を感じる。
その熱にもっと触れたくなって。
指先をゆっくりと首筋まで移動させる。
さらさらな肌。そこをまた、慰めるように撫でた。
彼方さんはじっとして、黙っている。
指先はさらに彼方さんの熱を求める。
彼方さんに触れたい。
もっと先へ。奥深くへ。
しずく「……!!」
そこでピタリと手が止まる。
今、私はいったい何をしようとしてたんだろう。
最低なことをしようとした。
彼方さんの傷付いた心に付け込もうとしたんだ。
今なら、彼方さんが手に入る気がして。
しずく「……!!」グッ
そんな愚かな考えが一瞬でも脳裏を過った自分を恥じる。
欲望をぎゅっと堪える。
この時ばかりは、彼方さんへの気持ちを忘れないと。
そして、1人の後輩として、友達として、彼方さんの頭を優しく撫で続けた。 失恋直後は最大のチャンスとはいうけどなかなかいけないよね 侑の部屋
侑(かすみちゃん……)
侑(歩夢のことそんなに考えてくれてありがとう……)
やっぱりかすみちゃんって本当に良い子なんだな。
心の優しい子なんだ。
それにしても……
(かすみ『本当に良かったです!』ニコッ)
侑「……」トクン
あの時感じた、この胸がざわつくようなトキメキ。
せつ菜ちゃんのステージを観た時のトキメキとはまた違ってて…… 数日後
今日は侑先輩に夜ご飯に誘われていた。
侑先輩の方からそんな風に誘ってくれるのは珍しい。
以前なら頬が緩んでしまうところだけど、今回は素直に喜べなかった。
きっと侑先輩の方から何か話があるんだろうなって予感できたから。
それがいつなんだろう。いつ侑先輩の口から出るんだろうっていつも怯えてた。
今日がその日なんだ。
侑「これ美味しいね」
かすみ「そうですね!」ニコッ
侑「……」
かすみ「……」
料理は美味しかったけど、いつも楽しいはずの先輩との会話はまったく弾まなかった。
当然だよね。
侑先輩だって、私がこれから言われることを覚悟してるって、雰囲気で伝わっているんだと思う。
食事中はずっと重い空気だった。 侑「来て欲しい場所があるんだ」
そう言って侑先輩が食後に連れてきてくれた場所。
お台場の夜景が一望できる静かな場所だった。
かすみ「キラキラで素敵ですねー!」
侑「うん、そうだね!」ニコッ
こんなところで侑先輩と2人きり。
ロマンチックなはずなんだけど、今日は違う。
ここが最後の思い出の場所になるんだから。
侑「かすみちゃん、話があるんだ」
きた。
かすみ「なんですか? 侑先輩」
できるだけ明るく返事する。
最後は笑顔の可愛い私を見て欲しくて。 侑「この前泣かせちゃったこと、本当にごめん」
侑「かすみちゃん、辛かったよね」
かすみ「い、いえ、それはかすみんが勝手に……」
侑「ううん、私がしっかりしてないから、かすみちゃんのこと不安にさせちゃった」
かすみ「……」
侑「私、付き合うとか初めてだったし、よくわかってなかったんだ」
侑「かすみちゃんへの好きが、どっちの好きなのかなって、ずっと考えてた」
かすみ「はい……」
侑「それでね、答えが出たんだ」
かすみ「……」
だめだ。
堪えられない涙が、今にも溢れ出しそうだった。
侑「私……」
侑「かすみちゃんのこと、大好き!」
かすみ「…………」
かすみ「それって、どういう……」
侑「かすみちゃんのこと、彼女として、恋人として大好きだってこと」
何が起きてるのかわからなかった。
侑先輩にぎゅっと抱きしめられる。
侑「愛してるよ、かすみちゃん」 かすみちゃんはきょとんとしていた。
そうだよね。突然私がこんなこと言ったらビックリするよね。
でもね、これが今の私の本当の気持ちなんだ。
かすみ「ゆ、侑先輩……」ギュッ
かすみ「かすみんも、侑先輩のこと大好きですううう!!!!」ポロポロ
嬉しいけど、そんなに泣いたら、せっかくの可愛い顔が台無しだよって、そっと涙を拭ってあげる。
かすみちゃんはなかなか泣き止まなかったけど、顔をくしゃくしゃにして笑顔を見せてくれた。
そんな彼女が愛おしくて。愛おしくて。
堪らなくて。
侑「かすみ……」
かすみ「…………っ!?」
その頬を撫でながら、静かに口づけする。
初めて触れ合う互いの唇。
甘くて爽やかな香りがした。 ◆
2ヵ月後
◆
虹ヶ咲学園 放課後
愛「……」テクテク
愛(今日は同好会も休みだし、これからどうしよっかなー)
歩夢「〜♪」テクテク
愛(あ、歩夢だー! 遊び誘っちゃお♪)
愛「おーい、あゆ……」
せつ菜「歩夢っ!!」バッ
愛「!?」
歩夢「あ、菜々ちゃん!」ニコッ
歩夢「生徒会の方は大丈夫なの?」
せつ菜「はい! 今日は生徒会もお休みです!」
歩夢「そうなんだ!」
せつ菜「では行きましょうか」
歩夢「うん!」
歩夢「今日は菜々ちゃんに似合うコート選ばせてね!」
せつ菜「歩夢の選んでくれた服はどれもお気に入りになるので楽しみです!」
歩夢「菜々ちゃんはいろんな服が似合うから、選ぶのも楽しいんだよ♪」
せつ菜「あ、私も歩夢の服選びたいです!」
愛「……」
愛(これからデートだったのね!) かすみと歩夢への呼び捨ていいね
そっちの二組はもう大丈夫そうだからあとは愛さんとしずくちゃんか 璃奈「……」ポツン
愛(あ、りなりーだ!)
愛「おーい、りな……」
浅希「ごめん璃奈! 待った?」スタッ
愛「!!」
璃奈「ううん。今来たところだよ」
浅希「そっか! それじゃ行こ!」
璃奈「うん」
璃奈「浅希ちゃん、今日はうち泊まっていくでしょ?」テクテク
浅希「うん。そのつもりだよ♪」テクテク
愛「……」 エマ「あ、愛ちゃん!」
果林「そんなとこでどうしたの?」
愛「エマっち、カリン!」
愛「いやー……」
愛「みんな青春してるねー!!」アハハ
愛「愛さんも青春しちゃうぞー!!」イエーイ
果林「やけに元気ね」
エマ「良い事でもあったの?」ニコニコ
「あ、愛ちゃんだ!」
「愛ちゃーん!!」
「みんなでこれからカラオケ行くんだけど、愛ちゃんも来てよー!」
愛「いいねー! 行く行くー!!」ピース
愛「それじゃあね、エマっち、カリン!」タタッ
果林「ええ」
エマ「じゃあね!」
愛「ねーねー、カラオケの後はみんなでカフェで恋バナなんてどう?」
「えー、なにそれー」クスクス 果林「あら、あそこにいるのは……」チラッ
エマ「侑ちゃんとかすみちゃんだね! これからデートなのかな?」ニコッ
かすみ「今日のスイーツビュッフェ、かすみんずっと楽しみにしてたんです!」
かすみ「今日のために、コッペパンを1週間我慢しましたから!」
侑「おお! すごい気合いだね、かすみ」
かすみ「美味しくて可愛いケーキがたくさんあるんですよ!」
かすみ「どれを食べようか迷っちゃいますー!」
侑「ふふっ」
かすみ「どうしたんですか、侑先輩?」
侑「ううん!」
侑「かすみ、今日も可愛いなーって思って」ニコッ
かすみ「……っ!」
かすみ「もうっ! 侑先輩、好き好きー!」ギュッ
侑「あはは」
侑「そうやって甘えてくれるかすみも最高に可愛いよっ!」ナデナデ
かすみ「あーんっ! 侑先輩ー!!」ギュッギュッ
イチャイチャ イチャイチャ
果林「……」
エマ「……」ニコニコ 中庭
しずく「彼方さん、みんな帰ってますよ?」
しずく「まだここにいるんですか?」
彼方「うーん、今はすやぴな気分なんだ〜」
中庭のベンチで彼方さんと2人きり。
横になる彼方さんの膝枕をしてあげて。
彼方「しずくちゃんの膝枕は格別だよ〜」スリスリ
もう2度とできないと思っていた膝枕。
でもこうしてまた彼方さんのお昼寝を見守らせてくれるくらい、私と彼方さんは元の関係に戻っていた。
仲良しの先輩と後輩、友達の関係に。
彼方「だんだん瞼が重く……」
しずく「いいですよ。ゆっくり休んでください」
今でも、彼方さんは世界一美人で、世界一可愛い女の子だって本気で思う。
いつだって私は魅了される。
もちろんすぐ何かが起こるなんて思ってない。
それでも、彼方さんが私を傍にいさせてくれる限り、この気持ちを伝え続けたい。
彼方さんのことが大好きだって。いつも幸せを貰ってるって。
例え言葉にせずとも、伝え続けたい。
彼方「すやぁ……」zzz
しずく「おやすみなさい。彼方さん」ニコッ 愛「さすがしずく、凄かったねー!」
よく晴れた昼下がり。
しずくの主演舞台を観る為に、久々に同好会の面々が集まった。
みんなと会えたのは嬉しかったけど、今はこっそり2人で抜け出して……
璃奈「うん。しずくちゃんの演技、さらに磨きがかかってたと思う」
隣にいるりなりーが言う。
そよ風が気持ちいい。
私は大学2年に上がり、りなりーも大学生になって、お互いバタバタしていたから、私たちも会うのは久々だ。
”あの頃”に比べたら、りなりーも大人っぽくなったなって思う。
背も少し高くなったし、髪も伸びた。
まだ幼さみたいなのも残ってるけど、立派な大人の女性になっていた。
璃奈「愛さんも変わらず元気だね」
愛「愛さんはもちろん元気だよ! りなりーは大学どう? 楽しい?」
それから、お互いの大学のことや同好会のみんなのことを話す。
心が温かくなる時間だ。 愛「あの2人も結婚しそうだよねー!」
璃奈「うん。変わらず仲良しだった」
りなりーと話して思い出すのは、あの時のこと。
私にあと少しの勇気が足りなかったあの時のこと。
あれからもう3年が経つ。
思えばお互いいろんな事を経験したよね。楽しいことも、悲しいことも。
そして、こうしてりなりーと親友でいられている。
それが何より嬉しいことで。
だからこそ……
愛「私さ、りなりーにずっと話したいことがあったんだ」
璃奈「話したいこと?」
愛「うん。実はさ……」
もう、迷わない。
おしまい 乙
読み初めからは想像できない展開になって面白かった 以上で完結です。
4組ともハッピーエンドとバッドエンドをそれぞれ考えてから書き始めましたが、当初とは全然違うエンドになる組もあって、書いてて楽しかったです。
過去作紹介
・歩夢「浦の星女学院と合コン!?」
・歩夢「せつ菜ちゃんとエッチしちゃった」
・愛「ゆうゆ、ナンパに繰り出すよ!」 侑「え!?」
お読みいただきありがとうございました! 面白かった
もっと色々読みたかったし話を膨らませる余地もまだありそうだけど、作者さんが書きたかった事は書き切ったんだろうね
お疲れ様でした 璃奈ちゃんの経験した悲しいことというのは浅希ちゃんとは別れたのかな
色々想像の余地を残した結末もいいね 彼方ちゃん達はどうなったんだろう
スピンオフまで読みたくなる展開だった
乙 りなあいとかなしずは想像の余地を残してて良いね。乙です 推し以外でも基本ハッピーエンドが好きだけどたまには悪くないかも
希望も感じられるし ここで完結か〜!
ゆうかすとせつぽむは上手くいってよかった!
かなしずとあいりなは想像の余地残ってて色々考えられそうでこういう終わり方も良いね
にしても最初はどの組をどういうエンドにするつもりだったのか気になりますねぇ すごくよかったので過去作も全部読んできたが全部面白かった 次回作楽しみにしてます とても面白かった。
複数の恋が同時進行するの好き。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています