侑「Persona」
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プロローグ。
体がまるで燃えているようだ。
目の前にいる、2メートルはある漆黒の化け物にさっきまで臆していたのに、今は怖くない。
全身の血液は燃えたぎるように勢よく循環しているのが分かる。
頭の中で誰かが語りかけている。
すぐ近くで倒れている歩夢を守るように化け物の目の前に立ち、私は着ている服を掴む。
額に汗が滲み出て、滴る。
だが、眼光は強く鋭く刺すように化け物へと向いている。
・・・汝は我、我は汝。
侑「歩夢、大丈夫!私が・・・なんとかする」
力いっぱい服を引っ張ると私のどこにそんな力があったのかと疑問に思うぐらい簡単に破け、避けた服を宙に投げる。
侑「・・・ペルソナ」
なぜこの言葉が自然と出たから分からない。
だが言わなければならない気がした。
それよりも。
普通ならば私は下着姿になるはず、アニメのヒーローの変身シーンのように光が私を包み、収まり。
私はスーツ姿に。
そして、宙を舞う服は人の形になり。
服から形成されたそれは完全に形をなし、胸に大きく描かれている旭日旗を輝かせていた。
・・・ヒューペリオン。
脳内で告げられた名前だ。 4/11
長い休み明けはとにかく気怠く、私は始業式が始まってから終わるまでに何回欠伸をしただろう。
他の生徒はクラス替えに騒いでる中、私は張り出されたクラス名簿を見て一喜一憂もせずに教室へと向かった。
すでに教室には何人かは徒党を組んでおり、どの人も忙しそうにスマホを片手にラインの交換をしている。
ふっ、馬鹿馬鹿しい。
私は名簿に書かれていた自分の席へ座ると、鞄からアメコミを取り出して読み始める。
侑(あぁ、なんて素晴らしい絵なんだろう)ホヤホヤ 1ページ1ページ丁寧に時間をかけて読む。
もう何回も読んだのだが何回読んでもかっこいい。
ざわざわとクラスメイトの声が大きくなっていく。
これは私をにとってとても気分を害する雑音で、アメコミの世界に浸っていたのにすぐに引き戻される。
クラスメイトA「あ、ねぇねぇ」
この声は私に向けられた声だと気付くのに20秒は掛かった。
侑「は、はひっ!?」
クラスメイトA「あ、ごめんびっくりした?」
侑「あ、あのあのえと・・・あの」
クラスメイトA「一年の時、隣のクラスだったよね?今年は同じクラスだね。よろしくね」
侑「あ、は・・・はい!よ、よよよよろしくお願いします!」
クラスメイトB「あ、ねぇその子・・・」
クラスメイトA「ん?」
クラスメイトB「静かな人だから、あ!ねぇ、あの人!」
クラスメイトA「きゃー!まさか一緒のクラスだなんて!」
侑「・・・・・・」 なんだったのだ一体。
静かな人とは私の事なのか?
私は静かなんじゃなくて必要な事意外は喋らないようにしているだけだ。
初対面なのに失礼な人だ。
だいたい、学生の頃に出来た友達なんてみんな上辺だけの付き合いしかしないとネットで見た。
みんな、なんでそんなに友達を作りたがるんだ。
それに危険意識も足りていない。
もし、この学校に異形の生物が現れたりしたら冷静に対処出来るのは私ぐらいだろう。
勿論、そんな事はあり得ない。
前に流行ったテレビに将来の運命の人が映る事なんて有り得ないし。
夜中の12時になると化け物も現れたりしないし、噂が現実になる事も悪人を改心させたり出来る事もない。
全てフィクションの話で、私はそれを分かっているが、私はかっこいいヒーローになるのが夢だ。
このアメコミのヒーローのように。 ・・・それにしても。
さっきから更に教室が騒がしいぞ。
本当に化け物が攻めて来てるんじゃと思い辺りを見渡すと、一人の女の子に何人も群がっている。
歩夢「もう、みんな密だよ」
きゃーかわいい。
歩夢ちゃんと同じクラスになれて幸せー!
歩夢ちゃん・・・す、好き。
そんな声が一人の女の子に浴びせ続けられている。
本人は困ったようにはにかみながらそんなことないよーとか言っている。
そんな事あるくせに。
取り囲まれている人物。
苗字は・・・えーと分かんないや。
同じクラスじゃなかったしみんな歩夢ちゃんと呼んでいるし。
とにかくこの歩夢ちゃんはみんなのアイドルであり、圧倒的な清純ビジュアルで学年のヒエラルキートップに君臨する人だ。
まぁ、もっとも私は学校のヒエラルキーなんて社会に出たら関係ないし一瞬の輝きだと思っている。 歩夢「もう、みんな先生来ちゃうよ〜」
彼女は身振り手振りで囲みを追い払おうとしているが囲みは山のように動かない。
とても困っている。
その困っている顔はとても愛らしく、彼女が人気なのも分かる気がした。
囲みにたどたどしく対応する彼女を何となく見ていると、彼女も私の視線に気付いたようで、目が合う。
侑「こっちこっち!」
・・・え?
私は声高らかに何を言った・・・?
無意識に出た彼女を呼ぶ声に囲みは私を一斉に見て、私は思わず委縮してしまう。
どうしたんだ私・・・。
歩夢「あ、ありがとー!」
と言い、動きが止まった囲みの隙を見逃さず。
彼女は囲みをかき分けかき分け、私の隣の席へと座った。
歩夢「あ、ありがとう。えーと私の隣の席だから・・・」
彼女は席の名簿を見た。
歩夢「高咲侑さん?」
侑「わわわっ、あのあのすみません」
歩夢「えっ、なんで謝るの。助けてくれたんだよね?」
侑「た、助け?え、助け・・・?」 歩夢「あ、ほら。こっちこっちって!」
侑「あ、あのあれはその・・・」
歩夢「ふふふ。ありがとう!お隣同士仲良くしようね!」
侑「は、はいぃ・・・」
アップテンポの曲のように私の心臓がバクバクとビートを刻んでいるのが聞こえてないかと不安になりながら絞り出した返事がとてもか弱い。
まさか学年の人気者と隣の席で、しかも仲良くなるだなんて・・・。
私の静かな学園生活は今年は騒がしくなりそうな予感がした。
【コミュ 上原歩夢:悪魔】
レベル1 もしかして安価とかでルート選ぶタイプか
だとしたら面倒だな 4/12(火)
侑「はぁ」
早朝、早々にため息が天に昇ったのは彼女のせいだ。
あのあと、私と歩夢さんはラインを交換した。
意気投合したとまではいかないし、歩夢さんの一方的な会話だったが仲良くなったらしい。
歩夢さん曰く私はとても話しやすいらしく。
一緒にいると、とても落ち着くらしい。
それは私も何故か感じた事だった。
陰と陽。
決して交わる事がないこの二つが噛み合う事なんてないと思っていたのに。
いや、そもそも私が避けてただけで歩夢さんのような陽の人は誰でも分け隔てなく接する事が出来るから誰とでも噛み合う事が出来るんじゃないだろうか。
そんな事を考えながら、私は昨日歩夢さんと登校する約束を一方的にされたので仕方なく待ち合わせ場所で待っている。 歩夢「おはよう!侑ちゃん!」
侑「お、おはようございます!」
手を可愛らしく小さく振りながら近付いて私にぴたりとくっ付いた。
侑「わぁっ!えぇぇっ!」
歩夢「・・・?どうしたの?」
侑「あ、あのあのえとえと・・・ち、近くないですか?」
歩夢「・・・あっ!ご、ごめんね!」
侑「い、いえ・・・」
急なスキンシップにドキッとして思わず顔が火照る。
陽の人はみんなこうなのだろうか?
歩夢「行こっか!」
未だに距離は近いまま、私達は歩きだす。 歩夢「ふふふっ!」
なんだか歩夢さんとても楽しそうだ。
昨日何かいい事があったのだろうか・・・。
それにとても良い匂いがする。
侑「こ、香水ですか?」
頑張って私から声を掛けてみた。
歩夢「香水?」
侑「あ、いえ。良い匂いがするなと思ったので」
歩夢「そうかな?多分、ボディソープ変えたからかなぁ」
侑「昨日の夜からこんなに匂いが持続するボディソープあるんですね」
歩夢「朝入って来たんだよ」
侑「えっ、朝お風呂入るんですか?」
歩夢「侑ちゃんは入らない派?」
侑「そんな派閥あるんですか・・・」 歩夢「入ったほうがいいよ?気持ちいいよ」
侑「でも、お風呂入る時間あるならちょっとでも長く眠りたいです」
歩夢「そうかなぁ?寝不足なの?」
侑「あ、いえ。寝る時間いつも遅いので」
歩夢「いつも何時に寝てるの?」
侑「えーと。3時とかですかね」
歩夢「えぇっ!?いつも?」
侑「まぁはい」
歩夢「でもすごく肌が綺麗だよ!」
侑「あ、ありがとうございます・・・」
意外と会話続くもんだ。
私はこんなにスムーズに人と会話出来る事に驚きつつ、学校が見えて来て。
この二人だけの登校が終わる事に落胆してる自分に更に驚いた。 歩夢「ねぇ、侑ちゃん・・・?」
侑「・・・はい?」
歩夢さんは立ち止まる。
歩夢「ちょっと変な事言っていい?」
侑「変な事とは・・・?」
歩夢「私、侑ちゃんと凄く親しい友達だったような気がするの」
侑「わ、私とですか・・・?」
歩夢「う、うん。こうして登校するの初めてだよね?でも、ずっと前から侑ちゃんと登校してたような気がするの」
侑「・・・?」
歩夢「あはは。ごめんね。そんな気がしただけだから・・・」
璃奈「こら、そこ。・・・遅刻するよ。早く行け」
歩夢「あ、ごめんなさい!」
侑「い、行きましょう!」 侑「さ、さっきの人誰ですか?」
歩夢「うーん。名前は分かんないけど、結構噂になってる人みたいだよ。入学してすぐ風紀委員長になったって聞いた」
侑「竹刀持って守り神みたいにしてましたね。怖かったです」
歩夢「だねー。あ、さっきの話なんだけど気にしないでね」
侑「は、はい」
歩夢が感じた事。
私には良く分からなかった。
でも、昨日私が歩夢さんに声を掛けたあの時。
まるで昔から知っているみたいに私は声を掛けていた。 4/13(水)
朝
歩夢「侑ちゃんおはよー!」
侑「あ、おはようございます!」
歩夢「んー!今日も良い天気だね!さ、行こっか」
昨日も今日も歩夢さんと登校だ。
もしかしたらこれが毎日続くと思うと学年の人気者を独り占めしているみたいでなんだか悪い気がしたが、しばらく続けば気にならなくなるだろう。
歩夢「あ、侑ちゃん今日私のお家に来ない?」
侑「えっ、えっーー!お家にですか?」
歩夢「うん!侑ちゃんとしたいゲーム沢山あるんだ!」
侑「歩夢さんゲーム好きなんですね」
歩夢「うん!古いゲームが特に好きなの!あ、それにサスケも侑ちゃんに会いたがってたの」
侑「さ、サスケェ?」
歩夢「飼ってる蛇の名前なんだぁ」 侑「えっ、歩夢さん蛇飼ってたんですか!?」
歩夢「うん!こーんなに大きくてかわいいんだよ!」
歩夢さんは両手目一杯広げている。
侑「何だか意外でした・・・」
歩夢「そうかなぁ?あ、蛇苦手?」
侑「苦手というよりかは初めて見ます」
歩夢「じゃあ見に来て!お目目もくりくりでかわいいんだよ」
侑「あの、ゲームは何やるんですか?」
歩夢「私のコレクション!侑ちゃんにも触って欲しいんだぁ・・・来てくれる?」
侑「は、はい。暇ですし良いですよ」
歩夢「ありがとう!」
まさか歩夢さんのお家に招待されるとは・・・。
そして私今日お風呂入ってきたのに気付いてくれない・・・。 【昼休み】
侑「・・・・・・」
歩夢さんは囲いに囲まれて身動きが取れていない。
この前みたいに声掛ける勇気はでないし、収まるまでネットでも見ようとするとラインに通知が入った。
最初は歩夢さんかなと思ったけど、知らない人でアイコンは青一色。
タップしてみると、ようこそベルベットチャットルームへとメッセージが届いていた。 侑『誰ですか?』
『ほう、これは一際特別なお客様がおいでのようですね』
侑『間違えてます』
『ここはベルベットチャットルーム。電子と現実、精神と肉体の狭間の世界』
侑『間違いです』
『間違いではありません。あなたは断固たる契約をしこちらへいらしたのです』
侑『私は高咲侑です』
『ある存在の影響により文字でしかあなたと干渉できない事をどうかお許しください。あなたは今、決定付けられた運命により、この世界の時に縛られています。時を元に、偽りの人生を本来の人生に戻すのです。それがあなたを縛る運命へ抗う一つの道。それではまたお会いしましょう』
侑「・・・スパム?」 スクフェスくんが何かを言いたそうにこちらを見ている 侑「何だったんだろう・・・」
恐らくいたずらだろう。
そもそも私のラインには家族以外は歩夢さんしか登録されていないはず。
こんな不気味なの登録した覚えがない。
歩夢「侑ちゃん?」
侑「わあっ!」
歩夢「あ、ごめんね。びっくりさせて。どうしたの?なんかボーってしてたよ」
侑「うん、ちょっと・・・」
どうやら歩夢さんは囲いにようやく解放されたらしい。
侑「なんか変なラインが来てたんです。ほら」
と言って画面を見せるも、さっきまでやり取りしていたベルベットチャットルームとやらは消えていた。
歩夢「うん?私だけだよ?」
侑「本当だ・・・あ」
それよりも家族と歩夢さん以外いないラインの画面を見せてしまった事に気付いて恥ずかしくなる。
侑「な、なんでもないです!やっぱり!」
歩夢「そ、そっかぁ。今日楽しみだね!」
侑「はい!」
本当に楽しみだ。
歩夢さんのお家はどんなかんじなのだろう。 >>40
ペルソナは異性全員と恋人になって股かけられるぞ 基本男主人公だけどないな
唯一女主人公が選べたP3Pではヒロインの一番大事な所を触らせてもらえたりするぞ PSPでまたpersonaやりたくなった
ペルソナ3以降も好き 【放課後 上原歩夢の家】
歩夢「さ、入って入って〜」
侑「お邪魔します!」
同性なのに何故か緊張している私の事なんか知らずに歩夢さんは手を引いて自宅へと招き入れてくれた。
ワンルームの部屋の中は割とスッキリしていてある物を除いて必要な者しか置いていないと言う印象だ。
もっと言うなら女の子の部屋らしくない部屋だった。
歩夢さんの部屋だから、なんかぬいぐるみとか沢山あってオシャレな部屋だと思っていた。
ぬいぐるみやオシャレな小物なんかはなく、テレビの前に置かれた複数のゲーム機。
大きなガラスケースに入れられた大蛇がかなり異質で、この部屋だけを見たら誰も歩夢さんの部屋だと思わないだろう。
歩夢「えへへ、女の子っぽくないよね」
侑「まぁ、はい・・・」
こう言う時にそんな事ないよと言える人になるべきだと思うが、私にそんな勇気はない。
でも、私はこう言う誰に媚びるでもない。
自分の趣味だけが大半を占めている部屋はとっても好きだ。 歩夢「あはは、だよねー。だから他の人とかは入れれないんだー。学校のみんなは私の事をイメージでしか接してくれないから・・・」
歩夢さんは悲しそうに呟いていた。
彼女が学校で持たれてるイメージはオシャレで可愛く学年のアイドルだ。
この部屋にはそれらが全く無い。
歩夢「あ、ごめんごめん見てサスケって言うんだよ!」
侑「おーおっきいですねー」
蛇は微動だにしない。
でも、歩夢さんをじーっと見つめている。
歩夢「サスケ友達連れて来たよ。侑ちゃんって言うんだ」
侑「あ、よろしくです」
びっくりしたのは私の言葉に反応するかのようにサスケはコクリと会釈した事だ。
なんて紳士的な蛇。 侑「餌とかはどうしてるんですか?」
歩夢「ネズミとか食べさせてるよー。あ、冷蔵庫とか勝手に開けちゃダメだよ。サスケのご飯が入ってるから慣れてない人はびっくりしちゃうかも」
キッチンに置かれた冷蔵庫を見てみる。
あの中にネズミの死骸が沢山・・・それを想像して少し身震いした。
侑「あ、あのあの。どうして私をこの部屋に呼んでくれたんですか?」
歩夢「それは・・・侑ちゃんなら私に勝手なイメージを持っていないかなって思ってたから」
侑「そ、そんな事は・・・」
歩夢「ううん。あるんだ。侑ちゃんは私を特別扱いしていない。普通のクラスメイトとして接してくれてるから・・・それに侑ちゃんかわいいし」
侑「ぴょえーっ!私がかわいい!?」
歩夢「ぴょえー?・・・かわいいよ侑ちゃんは」
侑「うぅ・・・ゲーム好きなんですか?」
何だか恥ずかしさで死にそうになり、話題を無理矢理切り替える。 歩夢「うん、毎日やってるよ。まだ最新ゲーム機は気になるゲームが出ていないから買っていないんだけど、一通りはあるよ」
侑「私も結構ゲームやるんですよねー」
歩夢「うん!そうだろうなぁって思ってた!」
侑「えーとどれどれ・・・」
テレビ横の棚に綺麗に入れられているゲームソフトを見て私は愕然とした。
全てクソゲーと呼ばれるゲームだ。
歩夢「あはは、ちょっとおかしいよね」
侑「な、なんでクソゲーばかり?」
歩夢「ふふ、私クソゲーオタクなんだ」
歩夢さんのような人からクソゲーって言う言葉が出たのも驚きだが、えらく尖った趣味を持っている事に更に驚いた。 侑「でも、何がどうなってクソゲーを集め始めたんですか?常人じゃ考えられない境地ですよ!」
歩夢「うーん。なんか初めてやったゲームがクソゲーでね。すっごく苦労してクリアしたの!そこからもうクソゲーの虜になったの!」
侑「その初めてやったゲームとは?」
歩夢「えっとねー」
歩夢さんは棚から一本のゲームを取り、ジャジャーンと私に見せる。
歩夢「これ!海未の挑戦状!」
侑「で、伝説のクソゲーだ!」
このゲームの内容は一言で言えばあまりにも理不尽でめちゃくちゃ。
攻略本が無いとクリア不可能と言われていて、ゲーム開発者でタイトルの名前にも使われている園田海未と言う人がゲームの開発中にぬるいぬるいこれじゃだめです!と口出しして出来た結果がこれだ。
園田海未はクソゲーだと思っていないらしい。 歩夢「ふふふ、やっぱり知ってたんだね。このゲームを・・・あのね。私ね。会いに行ったの!園田海未さんに!」
侑「えぇっ!?」
歩夢「とてもいい人だったよ!サインもくれてμ'sの中にも入れてくれたんだ!」
侑「えぇっ!?あのμ'sに!?」
μ'sとはゲームソフト開発会社で、そんなに有名なメーカーでは無いがコアなファンがおり、よく言われているのはμ'sのゲームは音楽がいいとの評判だ。
歩夢「開発者のみんなもすっごく優しくて・・・私もμ'sに入りたいなぁ」
侑「歩夢さんなら入れるよ!」
歩夢「本当?」
侑「はい!絶対入れます!」
歩夢「ありがとう!」
歩夢さんは私の手を取り感謝してくれた。
歩夢「あれ?侑ちゃん腕時計なんてしてたっけ?」 侑「あれ、本当だ」
私はアクセサリーの類いは一切付けない。
今日も何も付けていないはずだが・・・。
黒い革製のベルトに銀のフレーム、そして白い文字板。
普通の時計だ。
でも、腕時計の針は今の時間と大きくズレている。
侑「私はこう言うの気になっちゃうんだよね」
いつの間にか着いていた得体の知れない時計をダイヤルを使って時刻を合わせて始める。
歩夢「それ、合わせ終わったら一緒にゲームしよ?」
侑「うん!」
今は18時丁度だ。
短針を6に長針を12に合わせる。
侑「・・・!?」
瞬間、世界が暗転する。 序盤ですでにおもしろいから完走するまで頑張ってくれ 書き溜めてない感じか?
これは時間掛かりそうな予感 歩夢「えっ・・・えっ・・・?」
まるで高い所から落ちているような感覚だ。
世界が暗転した瞬間、私達が立っている地面が消え、アスファルトの地面に着地した。
歩夢「あいたたた・・・」
歩夢さんは上手く着地出来なかったようで尻餅を着いている。
侑「だ、大丈夫ですか!?」
すかさず駆け寄り、手を差し出すと歩夢さんは私の手を握り私は歩夢さんを引き上げた。
歩夢「あ、ありがとう・・・。何が起こったの・・・?」
侑「分からない・・・」
目の前の景色はまず階段。
一段一段、ライトアップされている。
歩夢「ここは、この場所は・・・」
侑「あ、歩夢さん・・・!?」
歩夢さんは握っていた手を離し、何かに導かれるように階段を上がる。 ベルベットルームは条件さえ満たせば誰でも入れるんだっけ 歩夢「ここは・・・私が・・・」
歩夢さんは頭を抱えてその場にうずくまる。
侑「歩夢さん・・・!?」
私達に何が起こったのかは分からない。
さっきまで歩夢さんのお部屋にいたのに、急に何も見えなくなるぐらい部屋が暗くなったと思ったら知らない場所にいた。
様子がおかしい歩夢さんに近付く為に階段を登る。
記憶が・・・私が経験していないような記憶が一段登るごとに次々と甦る。
歩夢さんとコッペパンを食べた事。
歩夢さんとお隣のお部屋だった事。
歩夢・・・さんとスクールアイドル同好会に入った事。
歩夢が歌ってるのを見て感動した事。
そう、歩夢と私は親友だった。
昨日今日の話じゃない、私は毎日毎日歩夢と一緒だった。
登校も下校も、放課後に毎日二人で街をぶらぶらして何をするときもずっと一緒だった。
小さい頃からずっとずっと・・・。
侑「歩夢っ!」 歩夢にも記憶にある場所か
何か不穏な感じになってきたな 私は何で忘れていたんだろ・・・。
大切な事をどうして忘れてしまっていたんだろう。
歩夢の事も、同好会の事も何もかも忘れていた。
いや、忘れていたと言うよりは消えていた。
私がみんなと過ごした日々はこの世界では無かった事になっているんだ。
私はずっと一人だった。
斜に構えて友達なんていらないと思っていた。
でも、違う。
本当の私はそうじゃない。
みんなと、歩夢と過ごした日々を思い出してこれまでの一人ぼっちの時間がとても空虚のように思える。
歩夢「・・・・・・」
頭を抱えていた歩夢は事切れるようにその場に倒れる。
侑「歩夢っ!!!」
私は歩夢を抱き抱える。
侑「歩夢、全部思い出したよ!私と歩夢は親友だったんだよ!」
目を瞑ったまま歩夢は動かない。
街灯と月夜に照らされた私達に大きな影が包む。
2メートルはある黒い化け物が覗き込むようにして私達を見ている。 本能でこの化け物は私達の命を奪う恐ろしい存在だと分かった。
だけど、このまま歩夢を抱えて逃げる事はとても難しく。
かと言って歩夢だけを残して逃げようだなんて考えは私には無かった。
体が震えている。
死の恐怖に直面して私は歩夢を抱えたままの私はどうにかしてこの場から逃れようとしても体が言う事を聞かない。
せっかく思い出したのに・・・歩夢の事を思い出したのに、私はここで歩夢と二人で死んでしまう。
私にはまだ歩夢と喋りたい事もやりたい事も沢山ある。
100年生きたって叶えられないぐらい沢山ある。
私は私は・・・。
また思い出した。
歩夢の事や同好会のみんなの事じゃない。
それは、今まで生きてきた私の到底叶えられそうにない夢。
私は私は・・・。
かっこいいヒーローになりたい。
歩夢を守るかっこいいヒーローに私はなるんだ。
侑「歩夢は私が守る!!!」 体がまるで燃えているようだ。
目の前にいる、2メートルはある漆黒の化け物にさっきまで臆していたのに、今は怖くない。
全身の血液は燃えたぎるように勢いよく循環しているのが分かる。
頭の中で誰かが語りかけている。
すぐ近くで倒れている歩夢を守るように化け物の目の前に立ち、私は着ている服を掴む。
額に汗が滲み出て、滴る。
だが、眼光は強く鋭く刺すように化け物へと向いている。
・・・汝は我、我は汝。
侑「歩夢、大丈夫!私が・・・なんとかする」
力いっぱい服を引っ張ると私のどこにそんな力があったのかと疑問に思うぐらい簡単に破け、避けた服を宙に投げる。
侑「・・・ペルソナ」
なぜこの言葉が自然と出たから分からない。
だが言わなければならない気がした。
それよりも。
普通ならば私は下着姿になるはず、アニメのヒーローの変身シーンのように光が私を包み、収まり。
私はスーツ姿に。
そして、宙を舞う服は人の形になり。
服から形成されたそれは完全に形をなし、胸に大きく描かれている旭日旗を輝かせていた。
・・・ヒューペリオン。
脳内で告げられた名前だ。 侑ちゃんだけじゃなくて歩夢も記憶を取り戻したのかな
続きが楽しみ まず私には考えなきゃならない事が沢山ある。
スーツ姿になってるのもそうだし、私の服が変身したこのヒューペリオンについてもだ。
何故、歩夢や同好会の事を忘れていたのかも考えなきゃならないし。
急に何の前触れもなくここにワープしたのも大きな疑問だ。
だが、それよりも先に優先すべき事がただ一つ。
そう、一つだけ。
それは目の前の異形の化け物をぶっ倒す。
侑「いけっ!ヒューペリオンッ!!!」
私の背後に召喚されたこの不思議な生物は私の合図と共に化け物に殴り掛かる。
侑「私の歩夢に指一本触れさせない!!!」 ヒューペリオンは雄叫びをあげ、拳を大きく振りかざす。
侑「ど、どうしたの・・・?」
が、おかしい。
ヒューペリオンは拳を振りかざしたままピタリと止まってしまった。
侑「な、何で・・・」
次の瞬間、黒い化け物は大きく後ろの吹き飛ぶ。
いや・・・まだヒューペリオンが殴っていない,
が化け物の顔面は大きく凹みその巨体が地面に沈んだ。
侑「な、何がどうなって・・・」
変わらずヒューペリオンは止まったままだ。
そして、やっと動く。
空を殴る動作をして、それから私の背後に瞬間移動をした。
な、何で・・・?
さっきまでそこにいたのに・・・。
訳も分からないまま、考えていると私はいつの間にか銃を右手に握ってる事に気付く。
黒い化け物がまた立ち上がる。
私には何が起こっているか分からない。
だけど、さっき怪物を吹き飛ばしたのは間違いなくこのヒューペリオンの仕業だ。
でも、何で遅れて殴る動作を・・・?
黒い化け物はまたこちらへ襲いかかる。
侑「ヒューペリオン!」
何が起こっているのか分からないが、化け物にダメージを与えたのは間違いなく私だ。
だったらもう一度。 今度はヒューペリオンは一度も動いてすらいない。
だが、化け物はさっきよりも大きく吹き飛び。
その巨体は私が見上げる程高く浮いた。
私は銃を化け物に向かって構える。
使い方は分からない。
だが、引き金を引けば弾があの化け物の脳天を貫く事は理解出来ている。
ヒューペリオンはさっきまで怪物がいた場所へ移動し空を殴る動作をしてまた私の背後に瞬間移動する。
この一連の動き、何かで経験した事があるなと思った。
なんだろう・・・。
いいや、今はあの化け物を倒す事だけを考えよう。
私は化け物の頭部目掛けて引き金を引く。
バンッ。と音と共に銀色の弾丸が真っ直ぐ化け物の脳天を貫き。
化け物は地面に激突する間もなく、黒い塵となって空に消えて行った。 侑「はぁはぁ。た、倒した・・・?」
他にも化け物がいないか辺りを見渡すが私達以外は何もいないようで一先ず安心してその場にへたり込む。
侑「あ、歩夢・・・?」
体を揺らし問い掛ける。
歩夢「・・・んっ」
微かに息遣いが聞こえる。
どうやら寝ているみたいだ。
それにしても・・・。
ヒューペリオンを見上げる。
本当に危なかった。
ヒューペリオンがいなかったら今頃死んでいた。
いつの間に握っていた銃も消えて、私の力じゃ歩夢を持ち上げられないのでヒューペリオンに歩夢を担ぐように命令する。
ヒューペリオンはカクカクと左右に揺れ動いたかと思うとコマ送りのような動きで歩夢を担いだ。
そこで私は気付いた。
このヒューペリオンの動きはまるで・・・ゲームで凄くラグい相手と戦っている時に見た動きだ。
侑「とりあえずここから脱出しなきゃ・・・」
そう口に出した瞬間。
眩い光が私達を包み込み、私達は歩夢の部屋へと戻っていた。 【高咲 侑】
武器:銃
属性:貫通
ペルソナ:ヒューペリオン
破壊力B
スピードB
射程距離C
精密動作性B〜E
能力:ラグを自由自在に操る能力
実際は動いているのに相手からは止まって見える。
止まっているのに相手からは動いて見える。
移動の際は瞬間移動しているかのように見える。
(全てそう見えているだけで、実際にはきちんと動いている)
その他、カクカクとコマ送りのような動きをしたかと思えばスムーズに動いたりできるし、ゆっくり動いているかと思えば急に速く動く事も出来る。
もちろん普通に動く事も出来る。
攻撃のタイミングを掴むのは難しく避ける事は安易ではない。
ただし、侑にも相手と同じようにスタンドが見えているのでラグを使えば使う程、ヒューペリオンの実際の位置や動きを把握するのが難しくなり最終的には完全にヒューペリオンの動きを見失ってしまうので適度に普通に動かし位置や動きを把握する事が大切。
複雑な動きでラグを使うと途端に操作が難しくなる。
故にラグを使う際は直線的な動き単純な動きになってしまうのでこれを見破る事が出来れば避けるのはグッと楽になるだろう。
普通に動かした場合の精密動作性はB
ラグをフルに活用した場合はE かなりトリッキーなスタンドだな
使いこなすのが難しそう すいません。
スタンドと書いてますがペルソナです。
姿形はペルソナですが、能力はペルソナのように魔法を使わずに一人一人ジョジョのスタンドのように固有の能力を持っています。
それとかなり長くなりそうなので、春夏秋冬と四部に分けて考えてます。 意図的にラグを引き起こすのってチートみたいで面白いな 侑「な、なんだったんだろう・・・」
まるで夢でも見ていたみたいだ。
でも、夢ではない。
とても夢のように感じられない。
歩夢「・・・んんっ」
すぐ側で横たわっていた歩夢が目を擦りながら起き上がる。
侑「あ、歩夢っ!大丈夫っ!?」
歩夢「侑ちゃん・・・?ちょ、えっ!?えぇーっ!?」
侑「ど、どうしたの!?」
歩夢は信じられない物でも見たかのように、目をパチクリと瞬きさせている。
そして、私から少し距離を取り近くにある毛布で体を隠した。
まさか、特に違和感はないが私の身に何か起きているのかもしれない。
歩夢の顔はまるで信じられないといった様子だったが、まるで温度計が上がってくかのように顔が赤くなっていくのが見て分かった。
歩夢「ど、どうして下着姿なの!?も、もしかして・・・侑ちゃんのえっち!!!」
そう言われながら枕を投げられ顔面に直撃する。
そういえば私、服を破り捨てたんだったっけ・・・。
まずは私達に起きた不思議な出来事を話すよりもこの誤解を解くのが先になりそうだ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています