すみれ 「ギャラクシー!?」 宇宙 「」ゴゴゴゴゴ
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恋 「……えっ?」
かのん 「……え、今、宇宙が収縮して、一日もしないで世界が終わるって言った?」
すみれ 「はは、冗談はよしてよ……」
可可 「どうせ陰謀論デスヨ」
千砂都 「で、でも、ネットでも大ニュースになってるしNASAも本当に言ってるみたいだよ?」
一同 「「……」」
可可 「すみれ、可可のほっぺつねってクダサイ」
すみれ 「いいの?」
可可 「早くするデスヨ!」
すみれ 「おりゃぁぁぁぁーーーーー!」 グググ
可可 「痛いデスゥ!」
すみれ 「そりゃあそうよ……」 かのん 「ってことは夢じゃない?」
恋 「そ、そんな……」
千砂都 「信じたくないけど、本当みたいだね」
すみれ 「ようやくフォロワーも増えたのに……」
可可 「ようやく念願のスクールアイドルとして活動デキタノニ……」
恋 「わ、わたくしだって、ようやくご褒美の牛乳プリンを月一から週一に増やせましたのに!」
かのん 「でも世界が終わるなんて、私たちにはどうしようも……」
一同 「「……」」 千砂都 「みんな落ち着こう」
すみれ 「あんたさっきからやたら落ち着いてるけど、どうしたのよ」
かのん 「もしかしてちぃちゃん、何か解決策でもあるの!?」
千砂都 「……」
千砂都 「……宇宙は丸いよね」
かのん 「はい?」
千砂都 「膨張してるってことは、風船みたいなはずだから、きっと宇宙は丸いんだよ。だから宇宙が収縮して、全て一点になっても、私は宇宙の中、丸の中の一部になるだけなんだ。つまり今からみんな宇宙丸教に入れば問題ないんだよ。マルマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
かのん 「うわぁぁぁぁぁーーーーーーん!!! 落ち着いてるどころか狂ってたよぉぉぉぉーーーーー!!」 ポロポロ 恋 「一番冷静な千砂都さんさえこうなってしまうとは……やっぱりあまりにも突然すぎます」
すみれ 「……」
すみれ 「どうするのよ、みんなは」
一同 「「!」」
すみれ 「どうやら一日もないみたいだし、いつ消えてもおかしくないこの状況で、みんなはどうするの? 家に帰る?」
可可 「……」
可可 「可可は今、メールを送りマシタ。特別でもない、普通の、感謝の言葉デス。どちらにせよ可可は今からでは家族に会えることもアリマセン。なのでここに残りマス、残ってLiella!との思い出に浸りマス……」
かのん 「可可ちゃん……」
恋 「……私も今矢文でサヤさんとチビに感謝を述べました。そこに父への言葉も書きましたので、きっとサヤさんが伝えてくれるはずです」
すみれ 「そう……二人ももう気持ちを届けたのね……」
かのん 「ってことはみんな、部室から出る気はないってことだね……」
恋 「……それほどLiella!の活動が大きかったんですよ、きっと。たとえ期間は短くとも」
一同 「「……」」 トントン
かのん 「……はい、どうぞ」
ガチャ
理事長 「みなさん、大丈夫ですか」
かのん 「理事長……」
理事長 「こんなときに申し訳ありません。あなた方に用があるという方が」
賢い人 「みなさん、はじめまして」 スッ
すみれ 「あなたは?」
賢い人 「私は、大学で様々な研究をしている……」
璃奈 「天王寺璃奈と言います」
Part1.『絶望からの一歩』 完 かのん 「ええっ!? 天王寺さんって私たちと年齢が近いの!?」
璃奈 「大学教授と言っても海外で飛び級だから……」
すみれ 「それってつまりは何歳なのよ」
璃奈 「それは秘密。アイドルに年齢を聞くのはご法度」
可可 「アイドル?」
璃奈 「私もスクールアイドルだったから」
かのん 「! あなたも!?」 すみれ 「なら検索すればすぐ年齢も分かるわね」
璃奈 「あっ」
一同 「「……」」
璃奈 「……」
すみれ 「だ、大丈夫よ、だからって調べたりしないから!」 アセアセ
璃奈 「ありがとう」
恋 「それでなぜ大学教授の天王寺璃奈さんがこんなところに……?」 璃奈 「……私はこの世界が消えてしまうのを防ぎたい」
一同 「「!」」
かのん 「この世界が消えるのを……?」
可可 「防ぐデスカ……?」
千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
璃奈 「Liella!のみなさんの力を借りれば、それが叶うかもしれない」
かのん 「それって一体どういうこと!?」
璃奈 「まずはすみれさん。あなたが世界を救うカギ」
すみれ 「ええっ、私!?」 璃奈 「そう。あなたの十八番、ギャラクシーのことなんだけど」
すみれ 「いや十八番って……」
璃奈 「それが今回の宇宙収縮のきっかけとなった」
すみれ 「ええっ!?」
恋 「ギャラクシーが!?」
璃奈 「だけどどうか自分を責めないで欲しい。宇宙はいつでも収縮へ向かう可能性はあった。たまたま、地球から発せられたエネルギー、ギャラクシーというあなたの想い、それが最後の重さとなって宇宙を引き寄せたに過ぎない」
すみれ 「わ、私のギャラクシーで宇宙が……? そ、そんな」
璃奈 「もう一度言う。あなたは悪くない、どうか自分を責めないで欲しい」
すみれ 「い、いやそんなの無理よ……だって私のせいで世界は……」 可可 「情けないデスヨ! すみれっ!」 ドンッ
すみれ 「!?」
可可 「今のちゃんと聞いてなかったのデスカ!? 原因かもしれない、でも、同時にすみれが世界を救うカギになると!」
すみれ 「可可……」
可可 「なら自分を責める前に世界を救ってクダサイ!!」
すみれ 「……」
可可 「グソクムシならデキマスっ!」
すみれ 「……なによそれ、無茶苦茶じゃない」 フフ
可可 「なにか文句デモ?」
すみれ 「いいえ、おかげで気持ちを取り戻したわ。ありがとね、可可」
可可 「なっ……!/// お礼なんて要らないデス!///」 フンッ 千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
恋 「それで具体的にどうすれば宇宙は救えるのでしょうか」
璃奈 「……簡潔に言ってしまうと、すみれさんが宇宙の端に行って、ギャラクシーと叫びながらこの装置をぶん投げる。それだけで宇宙は元の形に戻っていく」 スッ
恋 「その装置の機能は何なのです?」
璃奈 「これは宇宙自体の因果を戻す装置。ここに宇宙の波長と奇跡的に一致しているすみれさんのギャラクシーパワーを加えれば、宇宙は膨張に動きを戻し、消えてしまった星々も戻る」
かのん 「ってことは全て無事に戻るってことだね……!」 璃奈 「そう。完全に無かったことにはならないから、記憶とかは残ってしまうけど、宇宙の収縮によるダメージは全て無かったことになり、さらに宇宙は収縮から膨張に戻って無事平和になる」
かのん 「おおっ!」 パァァ
すみれ 「たしかに上手くいけば願ったり叶ったりね……でも宇宙に行く? それ自体難しいことなんじゃないの?」
かのん 「あっ、そうか……」 ショボーン
璃奈 「それに関しては協力者を呼んでいる」
可可 「協力者デスカ?」 司会 『サニーパッションさん。このスイーツなんですが……』
悠奈 『まさかスタジオに用意してあるとか!?』 パァァ
司会 『残念っ、用意してません!』
悠奈 『ええっ〜〜ショックだなぁ』
摩央 『テレビは非情さ。そのくらいのことは考えてある』
専門家 『あんたら世界が終わるんだぞ? 流石に呑気すぎん?』
摩央 『……世界が終わる。それは誰が決めたんだ?』 専門家 『えっ、そりゃあ、予測すれば誰だって分かるだろ! 宇宙が収縮するんだから!』
悠奈 『……動き出すんだね、摩央?』 ニコッ
摩央 『ああ。どんな予測だって……当たらなければどうということはない』
司会 『ちょっとサニーパッションのお二方、どこに行くんですか!? まだ番組の途中ですよ!?』
悠奈 『ごめんね、私たち途中で抜けさせてもらうよ! だって』
摩央 『世界を救うんだからな、待ってろ』
摩央 『璃奈』
Part2.『起死回生は一人じゃない』 完 ガラッ
摩央 「まさかこのような形でLiella!と再会するとは……」
悠奈 「パァ! みんな久しぶり!」
可可 「サニーパッションのお二人がなぜここにいるのデスカァァァ!?」
すみれ 「ちょ、急に叫ぶな!」
璃奈 「二人は前から知り合いだった。このときのためにずっと待っていてくれた」
摩央 「璃奈は以前から宇宙が収縮へ向かう可能性を察していた。そして大学ではそれを阻止する研究をしていたんだ」
悠奈 「その研究の途中で私たちのことを知ったみたいなんだ♪」 かのん 「なんで宇宙の収縮を阻止する研究にサニーパッションさんが……」
摩央 「璃奈から聞いたろ? 阻止するためには宇宙に行く必要がある。それもロケットなんてもんじゃなく、もっと機動性があるものが……つまりモビルスーツが」
かのん 「ええっ!? モビルスーツ!?」
恋 「色々と大丈夫なのですか!?」
千砂都 「同じサンライズだし問題ないYO!」
かのん 「急に喋り出したと思ったらまた意味分かんないこと言ってるよぉ〜〜!! うぅ、ちいちゃ〜〜ん!! そろそろ戻ってよ〜〜!!」 ポロポロ
悠奈 「日本でモビルスーツを所有している人は数少ないからね〜。そこで持ち主および操縦もできる摩央に声がかかったっていうわけ」
摩央 「……まあ私も悠奈のサポートなしにはなかなか操作できないのだがな」 可可 「サニーパッション……スクールアイドルだけじゃなくモビルスーツも動かせるなんて……流石すぎて目眩がするデスゥ」 クラクラ
かのん 「ちょ、大丈夫!? 可可ちゃん!?」
悠奈 「まぁとりあえずみんなが元気そうで良かったよ!」
摩央 「万全の状態で挑みたいからな。世界を救うのも、ラブライブも」
千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
悠奈 「……えっと、あれは?」
かのん 「狂っちゃったみたいです。どうかスルーしてくれると……」 璃奈 「摩央さん、時間が……」
摩央 「! ああ、申し訳ない。璃奈、計画をみんなに話してくれ」
璃奈 「うん。じゃあ計画を話すね。まず、すみれさんと摩央さんは、モビルスーツで宇宙へ向かう」
悠奈 「私は遠隔だけどちゃんとサポートするからね、摩央!」
摩央 「ああ、頼りにしているよ」
璃奈 「その間に私は常にパソコンで装置を打ち込む座標を計算しないといけない。だから動けない。そこで恋さんと可可さんに力を貸して欲しい」
恋 「わたくしと」
可可 「可可デスカ?」 璃奈 「うん。いくつものパソコンを同時に操作しないといけないから、Liella!で頭が良いと言われている二人に頼みたい」
恋 「えっとちなみにそれは誰が言ってるのです?」
璃奈 「ネットでそう書いてあった」
かのん 「私とかちぃちゃんは頭良く見えないってこと!?」
すみれ 「まぁまぁ、かのんや千砂都にだって長所短所があるわけだし……」
かのん 「なっ! すみれちゃんだって頭良いって言われてないでしょ、多分!」
すみれ 「ちょ! そんなの分かんないでしょ!?」 ガヤガヤ
悠奈 「喧嘩してる場合じゃないよ!」
摩央 「ふふっ、でも良いじゃないか。Liella!らしさがあって。それに変に緊張するよりよっぽど良い」
璃奈 「そしてかのんさんと千砂都さん、二人にもお願いしたいことがある」
かのん 「!」
璃奈 「もう既に地球の一部が飲み込まれるまで、宇宙は狭くなっている」
かのん 「ええっ!?」
璃奈 「でも地球というたくさんの生命体がいる星に対して、上手く説明できないけど宇宙の収縮のスピードは事実遅くなっているからまだ安心していい。問題は受信塔の存在」
恋 「受信塔ですか?」 璃奈 「宇宙において、装置を投げる場所を計算するためには、リアルタイムの宇宙の動きを計測する必要がある。でも、それを計測するための受信塔がいくつかもう既に呑まれてしまった。これは想定外」
悠奈 「なるほど! じゃあ今からその受信塔を所定の位置に設置する必要があるってことだね!」
璃奈 「うん。この学校から少し離れたところに絶好の設置ポイントがある。そこに二人で向かって受信塔を設置して欲しい」
かのん 「……分かった。私、頑張るよ。ねぇ、ちぃちゃん?」
千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
悠奈 「……璃奈、私も二人について行っても良い?」
璃奈 「でも悠奈さんは摩央さんのサポートが……」
悠奈 「大丈夫。私のサポートが必要なのは最後の段階くらいでしょ? 宇宙で待機するくらいまではできるよね、摩央?」
摩央 「……もちろんだ。悠奈は二人をサポートしてあげてくれ」 かのん 「じゃあ行ってくるね、みんな」
恋 「気を付けてください、いつこの近くにも宇宙の収縮の影響が来るか分からないですし……」
璃奈 「ここを私たちが移動してないのは、東京でこの場所が比較的収縮が遅いから。でも、かのんさんたちが向かう道中はそうとは言えない。パニックも起きてると思う。だけど、どうしても受信塔が必要だから……ごめんなさい」
悠奈 「そう自分を責めないでよ。大丈夫、私たちならすぐ戻るから」
かのん 「うん! 悠奈さんまでついてきてくれるなら安心さ百倍だよ! それに」
千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
かのん 「今はこうだけど、ちぃちゃんはどんな時も私を支えてくれるから、絶対大丈夫!」
可可 「可可も一緒に行きたいくらいデスガ……適材適所という言葉がアリマスシ……」 ムムム
恋 「わたくしたちはわたくしたちで、できることをしましょう!」 璃奈 「じゃあ改めて確認するね」
一同 「「!」」
璃奈 「すみれさんと摩央さんは、モビルスーツで宇宙へ。そして、指示があるまで待機してて欲しい」
すみれ 「分かったわ」
摩央 「任せて」
璃奈 「そして私と可可さんと恋さんは、ここで座標の計算をする」
可可 「うぅ〜……緊張するデスゥ」
恋 「頑張ります!」
璃奈 「かのんさんと千砂都さんと悠奈さんは、受信塔を設置しに行く」
かのん 「……」 かのん (きっと、危ない道のりになる。それはとても怖いけれど)
かのん (もう逃げっぱなしの私じゃない!)
かのん 「任せてっ!! 行こっ、ちぃちゃん! 悠奈さん!」 タタタ
悠奈 「おおっー、やる気満々だねー! 私も負けないよっ!」 タタタ
璃奈 (この世界を救いたい)
璃奈 (だから、誰も失敗しちゃいけない。お願い、どうか)
璃奈 (うまくいきますように……)
Part3.『作戦会議っ!』完 かのん 「こ、これは……!」
悠奈 「なんとなく察していたけれど、まさかここまでとはね……」
キャァァーー!
タスケテェェーー!
ザワザワ
かのん 「そうだよね、宇宙が収縮してるんだもん……太陽の光とかも変わっちゃうし、災害並みになってもおかしくない……」
悠奈 「……でも。今の私たちにできることは苦しんでる人々を助けることじゃない。宇宙の因果を戻せば全て元通りになる。それならこの街の凄惨な風景も、怪我をしてしまった人々も、助けられるはずなんだ。だから、こんなところで立ち止まっちゃダメ。進もう」
かのん 「う、うん……」 悠奈 「そんなに遠くない。たしかこの道をまっすぐ進めば……」
グラグラ
悠奈 「!」
悠奈 「二人ともっ!! 早く行って!!」 ドンッ
かのん 「へっ?」
ドシャーーーーーン 悠奈 「あ、危なかった……まさか建物が崩れてくるなんて……」
かのん 「今、私、悠奈さんに押されてなかったら……」
かのん (そしたら……)
かのん 「……」 ガクガク
悠奈 「とりあえずここら辺は危ないから急いで行くに越したことはないよね……ってどうしたのかのんちゃん!?」
かのん 「悠奈さん……ごめんなさい……あ、足が、なぜか動かなくて……」 ガクガク
悠奈 (今ので明確に死を意識しちゃったんだ……!) かのん 「私は置いて行ってください。そして早く受信塔を……」
悠奈 (どうする……! 置いていく? 一秒でも早く行かないといけない。さっき私も言ったはず。世界を救って戻すために、今の多少の犠牲は仕方ないって。でも)
ナンダコノクラヤミハ!?
悠奈 「!」
悠奈 (もしかしてあれは宇宙の収縮!? もうここまで来たの!? しかもかのんちゃんが動けなくなっているときに!?)
悠奈 (今私が急いで行けばかのんちゃんは助けられるか? でもかのんちゃんは自分を置いていけと言っている。それに私には摩央のサポートという使命があって、ここで消えるリスクを負うわけには……)
千砂都 「マンマル〜宇宙はマンマル〜♪」 アハハ
千砂都 「……」
千砂都 「 ……カノンチャン」 タタタッ
悠奈 「えっ!?」 かのん 「ちぃちゃん!?」
千砂都 「カノンチャン!」 スッ
かのん 「手?」
千砂都 「かのんちゃん。私が知ってるかのんちゃんなら、こんなところで諦めないよ」
かのん 「!」
千砂都 「だからこの手を握って、立ち上がってよ。私のヒーローなんだから!」
かのん 「ちぃちゃん、元に戻ったの!?」 正確には嵐千砂都は戻ってはいなかった。
恐怖で精神を病み、最高の親友であるかのんや、Liella!のみんなと別れる未来を想像してしまった彼女は、何もかもが耐えられなくなり宇宙丸教を信仰してしまった……その状況は今も変わっていないのである。
だが、狂いながらも、まるで宇宙のことを考えるように瞑想していた彼女の中にも、揺るぎなき真実が一つあった。 千砂都 「いいからかのんちゃん! 早く私の手を握って!」
かのん 「う、うん!」 ギュッ
かのん (あっ……ちぃちゃんの手、暖かい)
かのん 「! 足の震えが止まった! 今なら行ける、走れるっ!」
千砂都 「良かった、それでこそかのんちゃんだ!」 ニコッ
悠奈 「二人ともっ!! 早くっ! 早くこっちに来て!! 後ろを見てっ!!」
かのん 「えっ」 フイッ そこには闇。いや実際光がないからそう見えるだけであって、闇すらも存在してない無が存在していた。
呑み込まれた者はどうなるか、それは分からない。だが、分かることは、それは明確に終わりを示唆していたことだけである。
悠奈 (スピードはまちまちだ……! だからなんとも言えないけど、急いで走ればきっと助かるはず……!)
千砂都 「いや、これは間に合わないよ」
ドンッ
かのん 「へっ?」
その瞬間、道は崩れた瓦礫に塞がれ、嵐千砂都は逃げ道を失った。
そして少しずつ、目の前に近づく収縮を、待つことしかできなかったのである。 千砂都 「……」
かのん 「ちぃちゃん!? ちぃちゃん!! なんで!? なんで! なんで私を突き飛ばして助けたの……! 道が塞がれることが分かってたなら、急いで自分だけでも走れば良かったのにっ!!」
千砂都 「……私は宇宙丸教の信者だから、かのんちゃんほどこの収縮が怖いわけじゃない」
かのん 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? 全員で、全員で戻るって思ってたのに! これじゃちぃちゃんが!」 千砂都 「……」
千砂都 「よろしくお願いします、悠奈さん」
悠奈 「……まだ出会って歴が短い私でも分かる。かのんちゃんにとってあなたは特別だよ? なのに私なんかに任せて、君は先に去るの?」
千砂都 「……信用しています。それにかのんちゃん、かのんちゃんは私が助けるって、今度は私が助けるって、決めてたから。これで間違ってないよ、うん」
かのん 「ちぃちゃん……」 ポロポロ
悠奈 「……っ。かのんちゃん、行こう。千砂都ちゃんが助けてくれたことが無駄になっちゃう。収縮は近づいてるよ」 かのん 「で、でも! ちぃちゃんが……」 ポロポロ
千砂都 「かのんちゃん」
かのん 「!」
千砂都 (もう私は呑み込まれる。なら一言だけ)
千砂都 「大丈夫、私はいつもかのんちゃんのそばにいる。寂しい時は」
千砂都 「さっきの手の温もりを、思い出してね」 彼女の中には揺るぎなき真実が一つあった。
それは彼女の長い瞑想が語る。
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
教科書かどこかで読んだそんな言葉が浮かびながら、ブランコの、小さい頃二人で漕いだブランコの、その音だけが、今の嵐千砂都の、生きる意味だった。
ノスタルジア。
だから狂ってもなお、彼女はカノンチャンと呼び続けたのである。
千砂都 (さようなら……またね、かのんちゃん!)
Part4.『親友と思い知って』完 恋 「わたくしたちはわたくしたちで、できることをしましょう!」
可可 「……」 カタカタ
璃奈 「……」 カタカタ
恋 「それにしてもみなさん大丈夫でしょうか……道中は危ないですし、宇宙なんてもってのほか……。何もできないわたくしがもどかしいです」 ソワソワ
可可 「……」 カタカタ
璃奈 「……」 カタカタ 恋 「あぁ、まさか世界が終わる危機が来るなんて……毎日更新の『禁断のセカイ』も止まってしまいましたし……本当に許せません」
可可 「……」 カタカタ
璃奈 「……」 カタカタ
恋 「そう思いませんか? 可可さん」
可可 「うぅぅるさいデスヨォォォーーーー!!! レンレンっ!」 ドンッ
恋 「ひっ!」 可可 「さっきから何なんデスカ!? 可可たちは今忙しいのデスヨ!?」
恋 「うぅ……ごめんなさい、つい手持ち無沙汰で……」
可可 「レンレンが機械に弱いのをすっかり忘れてマシタ……まさかここまで役に立たないトハ……」
璃奈 「これは想定外」 カタカタ
可可 「でもパソコンを手伝えないなら璃奈サンの計算を手伝ってあげればいいじゃないデスカ。レンレンは頭はすごく良いのデスカラネ」
恋 「そ、それは……その……」
璃奈 「今はこの計算は一人でやった方が早い」 カタカタ
恋 「らしいですし……」
可可 「……」
璃奈 「……」 カタカタ
恋 「……」 可可 「璃奈サンと可可のためにミルクティー二つ買ってくるデスヨ! ほら四百円ヤルノデ、早く!」
恋 「は、はい!」 タタタ
可可 「……」
璃奈 「……」 カタカタ
可可 「レンレンはいつもは頼り甲斐があるのデスけどね……ごめんなさい、取り乱してしまいマシタ。すぐ再開しマスネ」
璃奈 「うん、ありがとう」 カタカタ
…
…
… 恋 「自販機は少し遠い位置にあるんですよね」
恋 (それにしても)
恋 「……はぁ、わたくしは本当に何もできないのでしょうか。なんて不甲斐ない」
恋 「ん?」
恋 「あれはなんでしょう……廊下が真っ暗なような……って!?」
恋 (あれは収縮というやつじゃないですか!? もうここまで!?) 恋 「大変です! 早くみなさんに教えなければ……」
恋 「!」
恋 (いや思ったよりも収縮のスピードが速いっ! わたくしは逃げることはできても、パソコンや様々な装置を持った璃奈さんや可可さんが逃げるには、わたくしが戻って伝えてからでは遅すぎる! こうなったら……!)
恋 「常に持ち歩いてるこの弓矢と紙・筆一式で……!」
恋 「届けっ! 矢文っ!」 ビシュッ
…
…
… パリィーーーーーン
可可 「ェ?」
ピキーーーン
可可 「ひぃぃぃ! 可可の目の前に弓矢がァァァァァァァァァ!?」
璃奈 「紙が結ばれてる」 スッ
璃奈 「!」
璃奈 「可可さん、必要最低限なものだけ持ってここから離れよう。収縮が来てるみたい」
可可 「えっ!? でもレンレンが……」
璃奈 「大丈夫。きっと恋さんとも合流できる。今分かるのはここが安全な場所じゃないということ。急いで」
可可 「うぅ……分かったデスゥ」 璃奈 (ここはもっと計算だと収縮が遅い場所だった……なぜ? やっぱり受信塔が無くなってしまったことが大きかった……途中で収縮の仕方が変わったんだ。収縮が遅いエリアは移動した、変化した。ならその場所を計算して私たちも移動するしかない。でも)
璃奈 (その計算にも結局受信塔が必要だから、かのんさんたち次第になる。お願い、かのんさん。どうか早く受信塔を……)
可可 「えっとサニパのグッズと、かのんの写真アルバムと、グソクムシの帽子と……」 ドタバタ
璃奈 「……」
璃奈 「とりあえずパソコンや各機種だけ持っていこう、可可さん」
可可 「りょ、了解デス!」
…
…
… ゴゴゴゴ
すみれ 「モビルスーツってすごいのね……」
摩央 「ふふ、滅多にない経験だからね。せっかくだからドライブを楽しんでよ」
すみれ 「他のみんなも乗せてあげたいくらいなんだか爽快です。まるでジェットコースターのような。可可なんて酔いそうだけど。だけどみんなで乗ったらきっと楽しいはず」
摩央 「二人乗りだからねぇ、一人ずつだけどそれでも良いなら」
すみれ 「はい、是非!」 ゴゴゴゴ
摩央 「……」
すみれ 「……」
摩央 (なぜかカッコつけてしまう手前、正直操縦が不安定なことは言えないわね。やっぱり悠奈の指示なしでは私は体勢を保ちながら飛ぶことすら上手くできないのか……)
摩央 (そもそもジェットコースターみたいって不安定と言われてるようなものだし……)
摩央 「……ん?」 摩央 (何か飛んでるな……? もしかして隕石? それとも宇宙ゴミ? って)
摩央 「こっちに来てる!? すみれさん、頭を下げてっ!!」
デューーーーン
摩央 「!」
摩央 (まずいっ! 避けれたものの重心が……!)
ガラッ
ドタッ
すみれ 「ひぃぃぃぃ! 上に下に体が!」
ゴツンッ
すみれ 「って今の何の音!?」 摩央 「……」
すみれ 「摩央さん……?」
すみれ (もしかして今の衝撃で頭をぶつけて気絶したの!?)
すみれ 「摩央さん! 起きてください! 摩央さん!」
摩央 「……」
すみれ 「ど、どうしよう……」
すみれ 「私操縦なんてできないし、摩央さんが起きてくれないんじゃ私たち……」
すみれ (このまま宇宙を彷徨ったまま……)
すみれ 「まずいったらまずいわ……」
Part5.『それぞれのピンチ』完 りなりー……!
りなりー!!
愛 「りなりー!!」 ピピピ
愛 (電話に出ない……どうして!) 侑 「私が神だ」
歩夢 「あなただったのか」
侑・歩夢 「「ふ」」ドッww
愛 「二人とも何やってるのさ……」
侑 「あ、いやさ、どうせ世界が終わるなら、せっかくだから『歩夢とやってみたいことリスト』を一つずつ埋めようと思ってさ」
歩夢 「今は侑ちゃんの、コントをやりたいっていう夢を叶えてあげてたの」
愛 「えぇ……」 摩央はノーマルスーツとかヘルメットとかしてないんか せつ菜 「みなさん!! 良ければクッキー食べませんか??」
侑 「クッキー、買ってきたの?」
せつ菜 「はい!!!! 店の人がどうせ世界が終わるからってタダでくれました!!!!」
愛 「やっぱりみんなヤケクソになっちゃってるんだね……」
歩夢 「世界が終わるんだから仕方ないよ……」
侑 「いただきまーーす!」 モグッ 侑 「ウグッ」
侑 「」 チーン
歩夢 「って侑ちゃん!?」
せつ菜 「なんちゃって! 実は私が家で作ってきた手作りクッキーでした!!」 ペカー
愛 「おおっー、冗談じゃ済まないやつだ。危なかった」
侑 「セツナチャン……オイシカッタヨ……」 グッチョブ
せつ菜 「それは何よりです!!!!」 ペカー 歩夢 「さっきから愛ちゃん、何してるの?」
愛 「りなりーに連絡を取ってるんだ。いつもはすぐかけ直してくれるんだけど……繋がらなくて」
歩夢 「……璃奈ちゃんに電話、やっぱり最後だから?」
愛 「それもあるけど、それだけじゃなくて……」
愛 「……」
愛 (りなりーは勉強を頑張ってあっという間に研究できる立場になった。ずっと宇宙を中心に研究してたと思う)
愛 (だからきっと今も、まだどこかで必死に頑張ってるはずなんだ。それをりなりーの一番の理解者である愛さんが、支えてやれなくてどうする) 侑 「それにしても元二年生組でショッピングしたいって言った途端、宇宙の収縮なんて、本当についてないなぁ」
せつ菜 「そうですね……こんな衝撃……収縮ならぬ、収shockです」
侑 「……」
せつ菜 「……」
歩夢 「……えっ?」
愛 (なんだ、今の致命的なギャグは……)
侑 「……w……っwww ふ、わ、笑いが止まら……収shockって……wwww!」 ピクピク
愛 「えぇ……」
愛 (もしかして愛さんのダジャレも普段こんなレベルなのだろうか……) 歩夢 「これからどうしようか、みんな」
せつ菜 「せっかくだから食べ歩きでもします?」
侑 「ww っ、だけど今はみんなパニック状態だから……っwww」
歩夢 「侑ちゃん、とりあえず落ち着いてから喋ろう?」
愛 (とりあえずりなりーに連絡つかないとなぁ……いつここも収縮に巻き込まれるか分からないし、どうすれば……) ムムム
愛 「せっつー、クッキー愛さんにもちょうだい?」
愛 (もしとんでもない料理でも、一応クッキーだから甘いはず。深く考えるときには当分、糖分がないとね……とうぶんだけに)
せつ菜 「はい、どうぞ」 スッ
愛 「いただきます!」 モグッ 愛 「! って、おいしい!」
せつ菜 「良かったです!!!! 侑さんにあげたのは私が作ったクッキーですが、このクッキーはさっき言ったように本当にお店で貰ったんです。あのお店のクッキーはネットで評価が高かったんですよ!!」
歩夢 「私も食べていいかな?」
せつ菜 「はい、どうぞ」 スッ
歩夢 「本当だ! すごくおいしい!」 モグッ 愛 (ってことはゆうゆにあげたのだけ手作りクッキーってことだよね)
せつ菜 「侑さん! 手作りクッキーおかわりどうですか……?」
侑 「ぜ、是非、いただこうかな……」 ゲッソリ
せつ菜 「嬉しいです!!///」
愛 (へぇ……世界の最後に自分の手作りクッキーを好きな人にだけプレゼントなんて)
愛 (せっつーもロマンがあるねぇ)
愛 「やるね、せっつー♪」 トントン
せつ菜 「あ、愛さん……!///」 ピピピ
愛 「!」
愛 「りなりーから電話!?」
侑・せつ菜・歩夢 「「ええっ!?」」
愛 「今どこで何をしてるのりなりー!!」
璃奈 『愛さん、急でごめんなさい。だけど時間がない、頼みたいことがある』
愛 「え、頼みたいこと?」
璃奈 『うん』
…
…
… >>67
摩央さんはモビルスーツの所有者であり、操縦できる人間です。
ですが、実際は戦闘経験もなく、操縦も悠奈さんの指示なしには不十分なくらい慣れてません。
そもそも軍人でもない、という設定なので、ヘルメットなど着けるべきものも着けてない、という設定でよろしくお願いします。 梨子 「曜ちゃん」
曜 「……何かな」
梨子 「ここの展開、どうしたらいいかな? 新しいライバルを出現させる? それともここまででハッピーエンドにしとく?」
曜 「自分で決めればいいんじゃないかな」
梨子 「……冷たい」
曜 「あのね」
梨子 「うん」 曜 「正直どうでもいいんだよそんなことは!!!!」
梨子 「良くなーーーい! 良くないのっ! 私の手に全てが懸かってるんだから!!」 ドタバタ
曜 「何の全てが懸かってるの!?」
梨子 「世界の全てがっ!!!!」
曜 「その世界が今消えかかってるんだよ!!」
梨子 「その通りよ。ここで私が続きを描かなければ、この作品の世界は無くなってしまう!!」
曜 「そっちの世界じゃなくてね!?」 梨子 「だって私が描かなきゃ誰が『禁断のセカイ』の続きを描くのよ!? 今日世界が終わるからって慌てて最終回まで描こうとしてるのよ!?」
曜 「そんなことより早く逃げようよ!? 禁断のセカイより私たちの世界でしょ!?」
梨子 「仮にもアシスタントなんだから私の指示には素直に従ってくれないかしら」
曜 「黙れ!! 私の命を賭けるにはあまりにも薄すぎるっ!!!」
梨子 「たしかに本は薄いけど……」 曜 「とにかく避難しようよ!! ここは危ないって!」
梨子 「……で、どこに逃げるの?」
曜 「えっ?」
梨子 「宇宙が収縮するんでしょ? 逃げ場なんてないじゃない。どこに逃げるの?」
曜 「そ、それは」
梨子 「ね? 逃げても無駄でしょ? なら禁断のセカイのラストを描き切ったほうが良くない?」
曜 「それは違うと思うけど……」 梨子 「ただ、まぁ、漫画を描いてる場合じゃないのは確かね。仕方ない、とりあえずここで完結ってことにして、会社に送ってしまいましょ」 ピッ
曜 「……」
梨子 「……」 ピッ
曜 「……」
梨子 「……」 ピッ
曜 「画面、動かないね……」
梨子 「……通信障害だわ」 曜 「なら仕方ないよね、早く避難して……」
梨子 「はぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!?」
曜 「梨子ちゃん!?」
梨子 「ふざけないでよ!? 私が丹精込めて作り上げた傑作が納品できないってこと!? ふざけないで、このヘボ通信っ!!」 ドンッ ドンッ
曜 「梨子ちゃん! パソコン叩いても意味ないよぉ」
梨子 「もしかしてこれも宇宙からの影響?」
曜 「多分そうじゃない?」 梨子 「……」
曜 「……」
梨子 「世界を救っちゃおうか」
曜 「……一応聞くけど何のため?」
梨子 「もちろん世界のためよ」
曜 「嘘つき。原稿のためでしょ」
梨子 「……あなたの中ではそういうことになってるのね」
曜 「客観的に見てもね?」 梨子 「で、どうすれば世界を救えるの曜ちゃん」
曜 「私に聞かれても」
梨子 「曜ちゃんはなんでもできるんじゃないの!?」
曜 「無茶言うなぁ」
ピピピピピ
梨子 「ってうるさいのよ!? 近所迷惑なのよっ!!」 ドンッ ドンッ
曜 「って隣の壁叩いちゃダメだよ梨子ちゃん!!」
梨子 「もう頭きた! 隣部屋、誰も住んでる様子がないのにやけに機械音がいつもうるさいのよ!! 文句の一個くらい、世界が終わるし証拠も無くなるから怒鳴りつけてやるわっ!!」
曜 「考え方が悪どい……」 ガチャ
タタタッ
ドンドンッ
梨子 「すいませーーん! 近所迷惑なんですけど!!」
曜 「梨子ちゃん! 流石に直接怒鳴りに行くのはやばいって!」
梨子 「私の創作の邪魔をするものに、慈悲など要らない!」
?? 『ピピピピピ……なんて幸運。どうかあなたの力を貸して欲しい』
梨子 「え?」
曜 「扉が喋った!?」
…
…
… ビューーーーーーーン
絵里 「ハラショー。久しぶりの日本は空気が良いわね。まあ帰ってくる理由は史上最悪なんだけど……」
絵里 (世界が消える前に、μ'sに会いたい。その一心で帰国した)
絵里 (連絡は誰ともつかなかったけど、メールを返す余裕もないのか、それとも既に……考えたくないけど場所によってはもう十分ありうるのよね……)
?? 「おーーい!!」
絵里 「! 穂乃果!!」
穂乃果 「えへへ、久しぶり」 絵里 「穂乃果、どうしてここに……」
穂乃果 「絵里ちゃんが帰国してくるってメールで見て、急いで空港に来たんだ!」
絵里 「あぁ穂乃果……無事だったのね。それだけで本当に良かった……」
穂乃果 「穂乃果も絵里ちゃんに会えて本当に嬉しい! そういえば亜里沙ちゃんはどこに?」
絵里 「亜里沙はロシアにいるわ。いつ収縮が来るか分からない、そんな状態で飛行機に乗って日本に来るなんて、私のわがまま。巻き込むわけにはいかないから……」
穂乃果 「絵里ちゃん……」 絵里 「そういえば他のμ'sはどうしたの!? 海未やことりは!?」
穂乃果 「それは……っ、ごめん、連絡がつかなくて」
絵里 「……そ、そうなの。ごめんなさい、穂乃果。つらいことを言わせてしまって」
穂乃果 「ううん、気にしないで。海未ちゃんやことりちゃんなら、きっと無事なはずだから……」
絵里 「穂乃果……家族とは……?」
穂乃果 「私も絵里ちゃんと同じ、家族まで連れてくことはできないよ。逆に家族にはみんなから止められちゃったけど……あはは、私って一度決めたら頑固だからさ」
絵里 「そう……あなたも同じなのね、穂乃果……」
穂乃果 「うん……」
絵里 「……」
穂乃果 「……」 絵里 「でも私は、最後に未練がないように日本に帰ってきたわけじゃないの」
穂乃果 「!」
絵里 「逆。未練ばかりだから、やっぱりここで死ぬわけにはいかない。そう、世界を救いにきたのよ!」
穂乃果 「世界を救いに……?」
絵里 「ええ。と言っても私も確証はないのだけど……それでも、世界を救えるかもしれない人を知ってるわ」
穂乃果 「その人って誰なの!?」
絵里 「海外の大学で仲の良かった日本の子なんだけど、結構前に日本に戻ったのよね。もしかして彼女と連絡を取れれば、世界を救うことだってできるかもしれない……天王寺璃奈って子なんだけど」
穂乃果 「天王寺璃奈……?」
絵里 「ええ。出発前ロシアで一回、空港に到着して一回、合計二回電話したんだけど通信障害もあいまって今のところ繋がってないわ。繋がってさえくれれば……」 ピピピ
絵里・穂乃果 「「!」」
絵里 「……はい、もしもし。絢瀬ですが」
璃奈 『絵里さん、久しぶり』
絵里 「璃奈、本当に久しぶりね。元気にしてた?」
璃奈 『何とも言えない。時間がないのだけど、絵里さん、簡潔に頼める?』
絵里 「分かった。簡潔に言う。私は日本に戻ってきた。現在は〇〇空港にいる。どう? 世界を救うために手伝えることはある?」
璃奈 『……本当に運が良いみたい。絵里さん、頼みたいことがある』
絵里 「了解、任せて」 絵里 (運……か……)
絵里 (そういえば一年前くらいに希と再会した時に)
希 『大予言とかあったけど、ウチの占いによると本当に大変なのは来年あたりやなぁ』
絵里 『来年何か起きるの?』
希 『うん。世界を巻き込んだえらいっこちゃなことが起きるってタロットカードは言っとる』
絵里 『ふふ、なによそれ』 クスッ
希 『ちょ、えりち! 本当なんやって! 占いは当たらないものだけど、たまに本当に当たるから……そして、今回は当たる気がするんよ。でもそれを避けるためにウチが今から予言を呼び込むから』
絵里 『予言?』 希 『うん。称してノゾトラダムスの大予言』
絵里 『……バカにしてる?』
希 『してない。じゃあ念じるね、ぐぬぬ』
絵里 『……』
希 『……』 ムムム
絵里 『ちょ、大丈夫なの? 希?』
希 『見えたっ!! 執筆!!』 シュシュババ
絵里 『おおっ、速いわね』 各地に散らばりし偶然が
それぞれ命を削り真っ直ぐな柱を立てる
それは受け取ると共に伝えることもし
要となる
しかしそれを阻むはあらゆる壁
挫けかけても諦めるべきにあらず
道を切り拓くは人々の信ずるものを探せ
扉を開けるは光の速さに乗せた暗号を望め
音を忘れたのならば絵に隠せ
音を頼るのならばそれに身を任せただ舞え
さすれば多くのつき従う者たちが君の背中を押すだろう 希 『……完成やね』 キリッ
絵里 『これが大予言……!』
希 『うん……!』
絵里 『バカバカしい。早くカフェに行きましょ、希』
希 『ちょ、えりち〜〜!!』
絵里 『それともノゾトラダムスさんの方が良かったかしら?』
希 『なっ!?/// もう忘れてっ!///』
絵里 『ふふ』
絵里 「……まさかね」
Part.6『ノゾトラダムスの大予言』完 これは天王寺璃奈が各地に連絡を取れるようになる少し前のことである。
かのん 「はぁ……はぁ……!」 タタタッ
千砂都 『大丈夫、私はいつもかのんちゃんのそばにいる。寂しい時は』
かのん 「……っ! もっと! もっと! 速く走らないとっ!!」 タタタッ
千砂都 『さっきの手の温もりを、思い出してね』
悠奈 「かのんちゃん!!」
かのん 「!?」 悠奈 「流石にペース上げすぎだよ。ここは道も崩れてて車も通れない道。そこを歩いてるんだから、体力も食うし怪我もしやすい。急がなきゃいけないのはもちろんだけど、その調子じゃ体力がもたないよ」
かのん 「で、でも……! 私は、ちぃちゃんの分までっ!!」
悠奈 「……それは分かるけど、でもダメ。いつまた大きなハプニングがあるか分からない、そのときに逃げる体力がないとここで途絶えてしまう。大事なのは、この三人の誰か一人でも生き残ること、そして受信塔を立てることなんだから」
かのん 「っ……」 悠奈 「もはや通信障害もすごくて、璃奈とも連絡が取れない。まずは受信塔がないと、私たちも連絡ができない。受信塔は宇宙からの情報を入手する機能と、同時に電波塔として発信する機能もあるからね。つまり、これからの私たちの行動のためにも受信塔は必須なんだ。分かるでしょ?」
かのん 「……ごめんなさい」
悠奈 「謝らなくて良いよ。こちらこそ、ごめんね」
悠奈 (……私らしくもない。やっぱり私も気が立ってるんだ、なぜ? 焦ってるから? 違う。きっと、さっき)
かのん 『私は置いて行ってください。そして早く受信塔を……』
悠奈 (私はあのときかのんちゃんを見捨てようとした。自分には使命があるからと……だけど千砂都ちゃんは迷わずかのんちゃんを助け、そして消えてしまった) 悠奈 (そう、私は迷ったのに、千砂都ちゃんは迷わなかった……)
悠奈 「じゃあ行こう、かのんちゃん。収縮が近づいてきてる。でも無理はしないでね」
かのん 「は、はい!」
タタタッ
タタタッ
悠奈 「……」
かのん 「……」
悠奈 (私は、スクールアイドルとして、ステージに立っている。可可ちゃんみたいな、心から応援してくれているファンがたくさんいる)
悠奈 (そう、スクールアイドルはヒーローのようなものなんだ。人を笑顔にさせる、そんなような……。なのに、そんなスクールアイドルが、人を見捨てるなんて……間違ってる)
悠奈 (やっぱり、間違ってるよ……) 悠奈 「! 見えた、あれが璃奈が言っていた受信塔を立てられる絶好のポイント……!」
かのん 「あの建物の屋上に行けば……!」
タタタッ
悠奈 「……ようやく目的地に着いたね。じゃあ建物に入ろうか」
かのん 「はぁ……はぁ……悠奈さんはやっぱりすごいなぁ。こんなに走っても呼吸も乱れてないなんて」
悠奈 「あはは、やっぱりスクールアイドルとしてたくさんトレーニングはしてきたからね。元々島っ子なのもあるかもしれないけど」 かのん 「サニーパッションのお二人はすごいです……私ももっと頑張らなくちゃ!」
悠奈 「……」
かのん 「? 悠奈さん?」
悠奈 (かのんちゃん、私はそんなすごい人じゃないよ。だって私はさっき、かのんちゃんを見捨てようと……)
かのん 「悠奈さんっ!」
悠奈 「……! あはは、ごめん、少しぼっーとしてたみたい、どうしたのかのんちゃん?」
かのん 「悠奈さん、何か思い詰めてることはありませんか……?」
悠奈 「えっ?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています