栞子「お見合い、ですか?」
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お待たせしてしまい、すいません。
明日の深夜で更新します。 私が湯舟に入ってから、栞子ちゃんはずっと自分の膝を見つめている。
こっちを見ないようにしてくれてるみたい。
まだ意識してくれているってことでいいのかな?
それなら、ものすごく恥ずかしい思いをした甲斐があった。
いや、現在進行形でしているんだけど。
栞子「それで歩夢さん、あの…話しというのは」
歩夢「あ、うん。…今から話すね?」
勢いでここまで来たけれど、いざ言うとなれば緊張する。
あの子の時は混乱していたのもあったし、するつもりもなかったから、考えてみれば面と向かって誰かに告白するとなると初めてのことだ。
それに、なんとお互い全裸。
流石にやりすぎだったかな…。
栞子ちゃん、引いてないといいんだけど。
でも、今言うって決めてお風呂場まで来て、出ようとする栞子ちゃんも引き留めた。
これまで逃げてばっかりの私だったけど、ここからはもう逃げないよ。 歩夢「私ね、ずっと好きな人がいたんだ。…って、栞子ちゃんには今更な話だよね」
栞子「…ええ、まぁ」
歩夢「小さな頃から一緒にいたから、いつまでもそうなんだろうなって、勝手に思ってた。虹ヶ咲に入っても、スクールアイドルをしている時も、そして卒業してからも…」
だからあの子が音楽のために海外に行くと言い出したとき、本当は行ってほしくなかった。
けれど、スクールアイドルをしている間、あの子はずっと私たちのために走り回ってくれていた。
もちろん、それもあの子自身がやりたいことではあったんだろうけれど。
でも、私たちの夢のために青春すべてを費やして頑張ってくれていたあの子が見つけた夢を、今度は私が応援しないといけないと思った。
だからあの日、私はあの子を笑顔で送り出した。
最後には私の隣に帰ってきてくれる未来を信じて。
歩夢「あの子がいなくなってからは、なんだか毎日に穴がぽっかり開いちゃったみたいだった。なんとか頑張れたのはね、栞子ちゃんがいてくれたからだよ」
きっとあの頃の私は、傍からみても抜け殻みたいになってしまっていたんだろう。
同好会の皆がなにかと理由をつけては、私を外へ連れ出してくれるようになった。
中でも栞子ちゃんは、ほぼ毎週お出かけや遊びに誘ってくれて。
良くないことだけど、あの頃の私は栞子ちゃんを少しあの子の代わりにしてしまっていた部分があったから、連絡が来る度に安心していたのを覚えている。
でも、しばらくしてあの子の結婚を知った私は、自分を失って…。
それからは、またあの子から連絡を貰うようにはなったけれど、心にはぽっかりと穴が開いたままだった。
あの子がいない間にどれだけ栞子ちゃんに救われていたのかを自覚したけれど、弱い私には連絡すらできなくって。
あの日偶然に薫子さんに会えて、本当に良かったと思う。
歩夢「私、これまでずっと栞子ちゃんに支えてもらってた。なのに私は、栞子ちゃんにほとんど何もしてあげられてない。それどころか、傷つけてばっかりで…でも、優しいあなたに甘えて、それを良しとしてきた」
あの子にフラれて、間違いを起こしてしまった時も、二人で私の家で遊んだ時に何気なく傷つけてしまった時も、いつだってこの子は私を気遣ってくれていた。
ひとえに私を好いてくれていたこの子に、今まで私はどれほど残酷なことをしてきただろう。
栞子「そんなことはありません。それに私だって…」
歩夢「栞子ちゃんは、優しいからそう言ってくれるよね。でも、私は嫌だったんだ」
だから。 歩夢「だから、栞子ちゃんの告白を断ったんだ」
栞子「そんな…」
歩夢「うん、最低だよね。また栞子ちゃんをすごく傷つけたと思う。でも、それでもあの時の私は、それが本当に正しいことだって、そう思ってた」
栞子「そんな訳、ないじゃないですか…」
歩夢「そうだよね。…ねぇ、覚えてる?私はね、栞子ちゃんにあの日貰った言葉、全部覚えてるよ」
栞子「え?」
歩夢「私の好きなところだって、栞子ちゃんが言ってくれたところだよ。優しいところ、可愛いところ、しっかりと強い芯をもっているところ。そして、一途なところ。…すっごく嬉しかった。でもね」
そこで私は身体を起こした。
歩夢「これ全部、栞子ちゃんのことだよ」
湯舟の中、膝立ちになって栞子ちゃんの方へ近づく。
栞子「え?あ、歩夢さん?何を…」
歩夢「1か月も経っちゃってごめんなさい。でも、その間に私いろいろ考えて、決めたの」
そして、栞子ちゃんの手を取った。
歩夢「栞子ちゃん、大事な話があります」
栞子「み、見えちゃいますから!歩夢さん!」
歩夢「…いいの」
栞子「え?」
歩夢「栞子ちゃんになら、見られてもいいの。本当は、すっごく恥ずかしいけど、栞子ちゃんになら、いいよ」
栞子「あ、歩夢さん、何を言って…」
歩夢「栞子ちゃんが別の人と結婚するかもしれないって聞いた時、すっごく悲しくなった。他の人を好きになったらって思うだけで、胸が締め付けられたみたいだった。勝手にも程があるよね、自分からフッておいて。でも、言わせて?」
栞子ちゃんの手を握る力を少し強める。
私の想いが少しでも伝われって、そんな気持ちで。
歩夢「栞子ちゃん、私はあなたのことが好きです。付き合ってください」 栞子ちゃんが目を見開いた。
そうだよね、少し前に自分を振った相手が急に告白してきたんだもん。
驚くだろうし、それに怒るかもしれない。
…正直、不安で胸が張り裂けそうだよ。
あの日の栞子ちゃんは、これよりももっと勇気を出して、傷ついたんだね。
栞子「…私は、夢を見ているんですね」
栞子ちゃんは少し黙って、その口を開いた。
栞子「だって、こんなの、私に都合が良すぎますよ。もう二度と会えないと思っていた歩夢さんに会えて、その歩夢さんから告白されるなんて…」
そのきれいな瞳から、一筋の雫がこぼれた。
思わず左手を栞子ちゃんの頬に添えて、それを受け止める。
歩夢「栞子ちゃん、じゃあ…」
栞子「はい。私も、歩夢さんのことが、好きですっ。忘れようと思っても、忘れられませんでした…。だって、あなたは、私にを初恋を教えてくれた人ですから」
そう言って、栞子ちゃんは涙を流しながら微笑んだ。
その表情がすごく綺麗で、愛おしくなって。
歩夢「…栞子ちゃん、嫌なら避けてね?」
添えた手で、そのまま栞子ちゃんの顔を持ち上げる。
栞子「あ、歩夢さん?…んむっ…」
思わずそのまま顔を近づけて、その唇にくちづけた。 !!!!!!!!!!!!!!!!
しおっ!!!!しおーーーーー!、!!!!!!!!!、!!! ほんと…作者様ありがとうございます…
丁寧なこの作品楽しませてもらってます !!!!!!!!!!!!!!!!
しおっ!!!!しおーーーーー!、!!!!!!!!!、!!! 目を開けると、見覚えの無い天井。
心地の良い疲労感を引きずりながら布団をめくると、下着しか身に着けていないにも関わらず、部屋は季節にそぐわない温かさだった。
…はて。下着を穿いた記憶がないが。
いや、実際に穿いているのだから、自分で穿いたに決まっている。
そうでなければ…深く考えるのは止そう。
そのままベッドを降りて、サイドテーブルに置いてある服を身に着けていく。
昨日着ていたものとは異なるものなので、おそらく歩夢さんが荷物の中から出して用意して下さったものだろう。
歩夢さん…。
昨日のことを思い出すだけで、身体が熱くなるのを感じる。
好きな人と結ばれるということは、こんなに幸せなことだったなんて、知らなかった。
今でも夢みたいだ。
いや、本当に夢なのではないか?
なにせ、昨日からの流れの都合が良すぎる。
一抹の不安を抱えながら扉を開くと、キッチンに立つ歩夢さんの後ろ姿が見えた。
歩夢「ん?あ!おはよう、栞子ちゃん!よく眠れた?」
料理中だったようで、髪をポニーテールに纏めてのエプロン姿が実に魅力的だ。
思わず近寄った私を、少し不思議そうに見つめている。
歩夢「ん?どうしたの?」
幸せ過ぎて夢ではないか不安になったなんて、恥ずかしくて言えない。
栞子「…いえ、すいません。おはようございます、歩夢さん」
歩夢「うん。あ、朝ごはんもうできるからね」
栞子「あぁ、すいません。昨日に引き続き作っていただいて…」
歩夢「ううん、気にしないで。それに、もう私は栞子ちゃんの…彼女なんだし」
少しはにかみながらそう言う彼女があんまり愛おしくて、これが夢でもいいから永遠に覚めないでほしいと思った。 相変わらず歩夢さんの手料理は美味しい。
味ももちろん良いのだが、なんと言うかそれ以上にぬくもりを感じるのだ。
朝からそんな料理を食べられることに限りない幸福を感じていると、ふと歩夢さんがこちらを見つめているのに気が付いた。
栞子「歩夢さん?どうしましたか?」
ごはんつぶでも付いていただろうか、と思い自分の口元に手をやりながら尋ねる。
歩夢「あ、ううん。ごめんね、なんでもないの」
栞子「そうでしたか」
歩夢さんが何でもないというのであれば、何でもないのだ。
味噌汁の椀を手に取り、口に含む。
これも美味しい。
もしや、朝から出汁を取ったのだろうか?
歩夢「ただ、昨日の栞子ちゃん、可愛かったな〜って」
栞子「っ…、ごほっ、ごほっ」
なんとか御椀をテーブルに置く。
吐き出さずに済んで良かった。
歩夢「ああっ!どうしたの!?むせちゃった!?」
栞子「コホン…い、いえ、大丈夫です…」
そうだった…。
昨夜は、歩夢さんにキスされて、そして…。 今続きを書いていますが、この後ベッドシーンを入れるか迷っています。
もちろん書くのは初めてです。 しお!?////
……………………しぉ♡//////// お待ちしております。
明日夕方以降に更新予定です。
が、次回更新分は丸々前回と前々回の間の回想なので読み飛ばして下さって結構です。 歩夢『ん…ふふ、キス、しちゃったね』
唇を離した歩夢さんが、照れたように微笑む。
私はというと、突然の出来事にまだ混乱しているのもあって、ぼーっと歩夢さんを見つめることしかできなかった。
歩夢『…あ、暑いね!そろそろ出ようかな!栞子ちゃんはまだ入るの?』
栞子『はい…』
歩夢『そっか…ねぇ、栞子ちゃんさえ良ければなんだけど、この後私の部屋に来ない?』
栞子『はい…』
歩夢『そ、そっか。じゃ、じゃあ、その…私先に行って準備してるね?』
栞子『はい………え?』
歩夢さんが浴室の戸を閉めた音でようやく我に返る。
今、歩夢さんは何と言っただろう。
聞き間違いでなければ、お部屋に誘われたような…。
いや、確かに言っていたはずだ。
というか、この流れで部屋に呼ばれるということは…。
頭の中にピンク色の妄想が広がる。
…なんだかのぼせてきた気がする。
そろそろ私も出よう。 脱衣所にはもう歩夢さんはいなかった。
身体を拭き、下着を身に着ける。
そして脱衣所に備え付けてあったドライヤーを手に取ったところで、鏡に映る自分の姿のあんまりな色気の無さに気が付いた。
正確には着ている下着の、だ。
いつも寝る時に身に着けているのによく似たグレーのナイトブラとショーツ。
入浴前に準備する時に、女中さんが用意してくれた荷物の中から引っ張り出してきたものだ。
まさかこんな展開になるとは思ってもいなかったから何の気も無しに選んだけれど…。
もし万が一そういう事に及ぶことになったとして、歩夢さんにこれを見せるのか?
栞子『まだ服を脱ぐようなことになるとは決まっていませんが…』
とりあえず髪が乾いたら、自分の部屋に着替えに行くことを決める。
女中さんがそういったことを考えて衣類を選んでいるとは思えないが…。
今着けているものより、少しはマシなものがあると祈ろう。
…いや、まだそういうことをするとは決まっていないが。 ノックをすると『はーい』という声が帰ってきたので、ドアを開ける。
栞子『…歩夢さん、失礼します』
歩夢『うん、いらっしゃい。待ってたよ』
部屋の中は薄暗く、ベッドの脇にあるランプ1つだけが光源だった。
間取りは私が使わせてもらっているものとほぼ同じで、テレビとテーブルが1つずつにクローゼット、壁端にベッドが一つあり、歩夢さんはそこに座っている。
そしてその恰好は、薄いピンク色のパジャマだった。
可愛らしいが、いやらしさを感じる類のものではない。
そのことに少しホッとしたような、残念なような微妙な気持ちでいると、それが顔に出てしまっていたのだろうか。
入口でぼーっと立っている私を、歩夢さんがベッドの自分が座っている隣を手でポンポンと叩いて招いてくれた。
歩夢『ここ、おいで?』
栞子『し、失礼します…』
意気地の無い私は、少し距離を開けて座ってしまったが、歩夢さんは自分の座る位置を少しずらして距離を詰めてきた。
けれど、その後は何も言わず、私も何を言ったら良いのか分からず…。
二人の間に少しの間、無言の時間が流れた。 先に静寂を破ったのは歩夢さんだった。
歩夢『…ねぇ、栞子ちゃん、改めて確認してもいいかな?』
栞子『な、なんでしょうか』
歩夢『うん。私たち、さっきので付き合った、ってことでいいんだよね?』
そうだ。
歩夢さんから告白されて、私が受けた。
まだ実感があまりないけれど、私たちはついさっきから恋人同士になったんだ。
栞子『…はい。その、不束者ですが、よろしくお願いします』
歩夢『あ、え、うん。こちらこそ、末永くよろしくお願いします』
お互いに頭を下げ合う。
なんだか照れ臭いやり取りだけれど、これまで曖昧な関係を続けてきた私たちだから、明確に言葉にすることは大事なことなのだと思う。
だって、今もの凄く幸せを感じているから。 歩夢『…それでね、1つお願いがあるの』
栞子『ええ。何でもおっしゃてください。歩夢さんの頼みなら、何でも…』
歩夢『今度は、栞子ちゃんから、してほしいなって』
栞子『す、するというと…』
歩夢『…キス』
そう言うと、こちらを向いて目を閉じた。
これまで何かと受け身だった私だけれど、覚悟を決める時だ。
栞子『い、いきます!』
歩夢『ふふ、はーい』
…いきます、は言わなくても良かったかもしれない。
栞子『…ん』
触れているところから歩夢さんの体温を感じる。
ただ触れるだけのキスなのに、自分の身体が熱を帯びていく。
何秒そうしていただろうか。
した時と同じようにゆっくりと唇を離して目を開けると、歩夢さんが微笑んでいるのが見えた。
歩夢『…ありがとう』
栞子『い、いえ。私の方こそ、ありがとうございました』
歩夢『ふふっ、じゃあ、そろそろ寝よっか』
栞子『えっ、その…もうですか?』
壁に掛けられている時計はまだ22時を少し回ったところだ。
歩夢『うん。そんな気分なんだ』
栞子『そ、そうですか。では…お休みなさい』
少し残念だが、キスだけでも十分幸福な気分になれた。
付き合った初日に最後までするというのも、私たちには飛ばし過ぎな気もする。
恋人同士になれた以上はこれからも時間は十分にあるのだし、ゆっくり付き合っていけばいい。
そう自分の中で納得することにして、ベッドから立ち上がろうとすると、手を掴まれた。
栞子『え?あの、歩夢さん?』
歩夢『…一緒に寝よ?』
栞子『ええと…』
歩夢『…だめ?』
上目遣いでそんなことを聞いてくる歩夢さん。
そんなの、決まっている。
栞子『だめじゃ、ないです…』 二人並んでベッドの上で横になる。
2人で寝るには少し手狭だけれど、歩夢さんの体温が感じられる距離感は悪くない。
歩夢『ねえ、覚えてる?高校の時にも、二人でお泊りしたよね』
栞子『ええ。あの時は、歩夢さんがベッドを貸してくださると譲らなくって』
歩夢『うん。結局2人で同じベッドで寝たんだよね。懐かしいな〜。…あの頃とは、関係性も変わっちゃったね』
栞子『…私はあの時から、ドキドキしているのが歩夢さんにバレないか心配でなりませんでした』
歩夢『え?そうだったんだ』
栞子『本当ですよ。なのに歩夢さんたら、無邪気に身体を寄せてくるんですから』
歩夢『ええ〜?そんなこと、したかな?』
栞子『もうっ』
お互い向き合って、二人で笑いあう。
ああ、幸せだなぁ…。 歩夢『…でも、今は違うよ』
栞子『え?』
歩夢『だって、私も今すっごくドキドキしてる』
栞子『歩夢さん…』
私が腰に手を添えると、歩夢さんも私の肩に手を置いた。
顔を近づけると、歩夢さんはまた目を閉じてくれる。
栞子『んっ、ちゅっ…』
そしてその唇に、再び口づけた。
歩夢『ちゅ、ちゅっ…、ん…』
顔を離すと、歩夢さんもキスを返してくれる。
そのまま私たちは、ついばむような短いキスを繰り替えした。
でもそのうちに、1度のキスの間隔が長くなってゆく。 歩夢『ん……ぷはっ…ねぇ、栞子ちゃん、舌、出してくれる?』
栞子『した?…んべ…』
歩夢『うん、そう。…ちゅうっ 』
言われた通りに出した舌を、歩夢さんが口に含んだ。
舌の先に歩夢さんの歯や、口の中の粘膜の感触が触れる。
栞子『ちゅぱっ、ふー…あむぁ…あゆむひゃ…?』
歩夢『れる…ちゅっ…ひおりこひゃん…』
歩夢さんの口の中で私の舌が弄ばれ、思わず開いた口の隙間から今度は歩夢さんの舌が侵入してくる。
そのまま中に受け入れ、私たちは夢中になってお互いの舌を絡め合った。
慣れない深いキスに私は唾液を受けとめきれず、それが二人の間を落ちてシーツに染みを作った。
歩夢『ぢゅ…はっ…汚れちゃったね…ん ちゅぅ…』
栞子『ご、ごめんなひゃ…れむ…ゅぷ…っはぁ』
歩夢『はぁ、ううん、はぁ、明日洗うから、ふぅ大丈夫だよ。だから、もっと…ちゅぅ』
さっきのキスでは息を止めていたけれど、今回はそんな余裕はない。
私たちの周りの空気だけがやたらと湿度を伴っているような気がする。
お互いの息が荒いのもあり、息を吸うと一方の吐いた空気がそのまま流れてくる。
歩夢さんから吐き出された甘い香りを吸うと、私はさらに全身が熱を持っていくのを感じた。 どれほどの時間そうしていただろう。
流石に息苦しくなり、どちらともなく顔を離した。
二人揃って肩で息をする。
歩夢『はっ、ふぅ…はぁはぁ…』
栞子『ん…はぁ、はふ…』
歩夢さんの少し濡れた口の周りが薄暗い部屋の中で照らされ、非常になまめかしい。
息を整えながら、少しの間無言でお互いに見つめ合った。
そして、歩夢さんがまた顔を近づけてきたため、私もキスを待ち受けようと目を閉じると。
歩夢『ちゅっ』
今度は耳元で音が響いた。
栞子『ひゃっ、あ、歩夢さん?』
そのまま歩夢さんは耳から首筋にかけてまた啄むようにキスを落としてくる。
栞子『く、くすぐったいです』
歩夢『え?ふふ…』
キスされた側の耳を手で押さえながらそう言うと、歩夢さんはクスクスと笑った。 栞子『…ちゅぅ』
仕返しという訳ではないが、このままではペースを持っていかれると思った私も、真似して歩夢さんの鎖骨に口づけてみる。
歩夢『んっ…栞子ちゃん?』
栞子『…お返しですよ…っちゅ、ぇろ…』
そして首筋にキスをし、舌を這わせる。
やってみると、うなじが近く歩夢さんの匂いが濃いせいだろうか、舐めたりキスをしたりしているだけの私の方が興奮してきた。
歩夢『お返しって…もう』
戸惑った様子ではあるが、歩夢さんは拒否する様子はなく、されるがままにしている。
栞子『ゅぱ…かぷっ』
昂ぶった私は、思わず歩夢さんの首筋を甘く噛んでしまった。
歩夢『ひぁんっ…』
その瞬間、歩夢さんはピクリと身体を震わせた。
驚いた私が口を離し歩夢さんを見ると、顔を真っ赤にしている。
歩夢『…栞子ちゃんの、えっち』
やりすぎてしまった!と思いながら歩夢さんの様子を伺うも、怒っている様子ではない。
むしろじゃれ合いに少し喜んでいる様子に、私は内心胸をなで下ろしていた。
栞子『あ、歩夢さんからしてきたんじゃないですか…』
歩夢『もう…よいしょ』
おもむろに歩夢さんはベッドの上で起き上がってぺたんと座った。
栞子『歩夢さん?』
そして、自分のパジャマの上のボタンを上から1つずつ外し始める。
パジャマの上を脱ぐと、歩夢さんによく似合うピンク色のブラジャーに覆われた豊かな胸が現れた。
花柄をあしらった清楚な可愛らしいデザインのランジェリーが、その上に見える肌色の谷間のセクシーさを際立たせている。 歩夢『栞子ちゃんも、脱いで?』
栞子『え?』
好きな人が目の前で服を脱ぎ、下着姿になっていく様子に釘付けになっている私に、歩夢さんが頬を膨らませる。
歩夢『私だけだと、恥ずかしいよ…脱いで?』
栞子『え、ええと、はい…』
私は慌てて起き上がり、言われるままに自分のパジャマのボタンを外す作業に入った。
その様子を確認して、歩夢さんは今度は下を脱ぎ始める。
少しして、お互いベッドの上で下着姿でになった。
歩夢『わぁー、栞子ちゃんのブラ、可愛いね。すっごく似合ってるよ』
栞子『そ、そうでしょうか』
歩夢『うん。懐かしい、栞子ちゃんのイメージカラーだね』
言われて自分の姿を見下ろす。
レースをあしらった翡翠色のブラジャーは、確かに自分の好みなデザインをしている。
歩夢さんに褒めてもらえたのなら、態々お風呂上りに部屋に戻って着替えてきた甲斐があったというものだ。
元々用意したのは私ではないが。
栞子『そういう歩夢さんも、その、素敵です…』
歩夢『え?…ふふ、さっきからずっと見てるもんね』
そういって、歩夢さんはご自身の胸に手をやった。
気を抜くと視線がそちらに行きそうになるのを必死に我慢していたのに、バレていたらしい。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています