歩夢「愛だけに!!」
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歩夢「だから、何も言えなかった…」
歩夢「でも愛ちゃんは、元から結果が分かってたんだ…気持ちだけでも伝えたかったから…」
歩夢「だから、無理に聞こうとなんかしなかった…」
侑「…そっか」
歩夢「っ…」ツー
侑「!…」
歩夢「……ずるいよ…」ポロ
侑「……」
歩夢「ずるいよ、愛ちゃん…っ」 歩夢「私ずっと…ずっと愛ちゃんに心を掻き乱されてばっかりだ…っ」ポロポロ
歩夢「このままでいようって…そう思ってたのに…っ…!」
歩夢「グスッ…そう決めたのに…っ!…決心が鈍っちゃう…っ」
侑「歩夢…」
歩夢「…っごめん…、侑ちゃん…っ」
歩夢「やっぱり私……愛ちゃんが好きだ…っ」ポロポロ 歩夢「どうしようもないくらい…っ」
歩夢「でも、そんなこと言えないよ…」
歩夢「もう…っ…私どうしたらいいのかわかんなくなっちゃった…っ…」ポロ ポロ
侑「……」
侑「……知ってた」
侑「歩夢の気持ち…知ってて何も言えなかったんだ…」
侑「ううん、言わなかったんだ…」
歩夢「っ…」ポロポロ 侑「…歩夢があの時、思い違いだって言ったのは、私の為だって事も分かってた…」
侑「あの時もほんとは少し不安で…ずっと不安だった、だから…歩夢のあの時の言葉に縋っちゃってたんだ」
侑「…ごめんね」
侑「気持ちの問題のはずなのに、当たり前だったものが崩れてくのが怖くなってたんだ」
侑「二学期になって、環境が変わって…歩夢と話す回数が減り始めてから、そうなっちゃってたんだと思う」
侑「ほんと…どうかしちゃってたんだ、最近の私…」 歩夢「っ、…ゆうちゃん…」
侑「…」ギュ
俯く歩夢の目の前にしゃがみ込んで、優しく手を握る
すっかりその手は冷たくなっていた
侑「……ねぇ、覚えてる?」
侑「歩夢が初めてそのお団子の髪型にした時さ、私すごく可愛いって褒めた事あったでしょ」
歩夢「…っ……」コクン
侑「…歩夢はどんな髪型にしても可愛いけどさ…初めて褒めた髪型が、今の歩夢の髪型だった」
侑「歩夢、すごく嬉しそうだったよね」 侑「嬉しかったから、思い入れが強いから…今も歩夢はその髪型にしてくれてるよね」
侑「私が言いたいのはさ、初めてって…すごい力なんだと思う」
歩夢「…っ…」
侑「どんな些細な内容でも、良くも悪くも事実以上に大きく見せるんだ」
侑「自然と特別なものになっちゃう…」
侑「はたから見たらたとえ小さなものだとしても、自分にとっては特別で…大きくて…傷付けたくない、大切にしたいって思う」 侑「…その特別なものが自分にとっては弱点だけど、すごく強い力になるから…」
侑「私と歩夢だってそう」
侑「お互いに…初めて出来た幼馴染で…友達で、親友だからさ」
侑「歩夢の存在は今でも、私にとって原動力だから…」
侑「今なら歩夢も私に対してそう思ってくれてるって思える…自信もって言える」
侑「だから、すごく悩むこともあるし…必死で守りたいって思うんだよね」 侑「そんな気持ちがぶつかり合うと、今回みたいに不安定になっちゃうけど…」
侑「そんな時はちゃんと、我儘になって…本音をぶつけなきゃいけなかったんだって改めて思った…」
歩夢「……っ…」
侑「……私の今の本音を言うね」 侑「これは私の我儘…愛ちゃんに自分の本当の気持ちをぶつけて欲しい」
歩夢「っ…へ…」
侑「…ほんとは知ってたんだ、歩夢が愛ちゃんとここで会ってることも…愛ちゃんの気持ちも、愛ちゃんが今日何をするのかも」
歩夢「…っ!」
侑「さっき学校でせつ菜ちゃんに会ってね、全部聞いたんだ」
侑「愛ちゃんから、璃奈ちゃんと二人で相談に乗ってたんだって…だから、今日のことも知ってたらしくて…」 侑「…聞いててさ、相当思い詰めてたんだなって思った…あの愛ちゃんがだよ?」
侑「それこそ初めてだったから…初恋だったからすごく悩んで…泣くほど我慢してたんだと思う」
侑「きっと歩夢に迷惑をかけるから…歩夢の笑顔を守りたかったから」
侑「傷付けたくなかったから…必死に我慢して、気持ちに蓋をしてたんだと思う」
侑「それでもやっぱり、伝えたいって思ったんだよ…初めての恋だったから」
侑「自分のことよりも真っ先に誰かを助けに行っちゃう愛ちゃんが…今回は自分を助けに行ったんだ」 侑「傷付けるかもしれないのに…嫌われちゃうかもしれないのに、それでも伝えたかったから」
侑「愛ちゃんも…歩夢がすごく、どうしようもないくらい大好きだから…」
侑「だから、自分の我儘を通して…歩夢に気持ちをぶつけたんだと思う」
侑「だからさ…歩夢も愛ちゃんに気持ちを伝えて欲しい」
歩夢「…っ……侑ちゃんは…いいの、それで…」 侑「歩夢だって耐えられなかったんでしょ?耐え切れなくて今、私に愛ちゃんが好きだって、本音を吐露してくれた」
侑「歩夢は…私も特別で、愛ちゃんも特別で…だから心が揺れて…やっぱり好きで…」
侑「だから耐えられなくなったんだよね」
侑「大切で特別だから、両方守ろうとしたんでしょ?」
歩夢「……っ」
侑「…ありがとね…でも私はやっぱり、歩夢には笑っていて欲しいよ」
侑「同じように愛ちゃんにも笑ってて欲しい」 侑「…私なら大丈夫だよ、歩夢」
侑「私と歩夢はちゃんと繋がってる…すごく強い糸で…」
侑「切れることなんてないって、ちゃんと分かってるから」
侑「でも愛ちゃんとの糸は…ちゃんと繋ぎ止めなきゃね」
歩夢「……っ」
侑「…ほらほらっ、立ってっ」グイ
歩夢「へ……ぁっ…」スタ 侑「……次は、歩夢が我儘になる番だよ」
歩夢「…我儘……」
侑「うん…大分前に言ったでしょ?我儘な歩夢も可愛いって」
侑「そんなめんどくさい歩夢だって…愛ちゃんは受け止めてくれると思うし」
歩夢「ぅ……私、やっぱりめんどくさい…?」
侑「うんっ、めんどくさい!…でもそこがいいんだよ」
侑「ていうか私も愛ちゃんも十分めんどくさいから人のこと言えないけど…」
歩夢「……」 侑「でも…もし今後、歩夢がこれから自分を許せなくなっちゃったとしてもさ…私が許すよ」
侑「…私が歩夢の免罪符になるから」
侑「だからもう、泣かないで」
歩夢「…っ、侑ちゃん…」
歩夢「…もう…っ…どうして…」
歩夢「どうして二人して…そんなに真っ直ぐなの…」 侑「二人して歩夢が大好きになっちゃってるからだよ」
侑「せつ菜ちゃんっぽく言うなら…自分の好きを貫いてるんだよ」
歩夢「……っ…」
侑「だからさ…貫いてよ、歩夢も」
侑「両方大切なら…もっと欲張っていいんだから」
歩夢「……」
歩夢「…侑ちゃん」
侑「ん?」
歩夢「…私も、侑ちゃんの免罪符だよ…いつまでも」 侑「…ふふ…うん、分かってる。だから安心して我儘言えるんだよ」
侑「…それから、愛ちゃんのも…でしょ?」
歩夢「………」
侑「………」
歩夢「……」コクン 歩夢「…私も、ほんとは心のどこかで思ってた」
歩夢「愛ちゃんに…気持ちを全部知って欲しいって…」
歩夢「侑ちゃんとの事があったのもそうだけど…怖かったんだ、私も、知られて嫌われちゃうのが…」
侑「…歩夢の気持ちはちゃんと受け止めてくれるよ、愛ちゃんなら」
侑「愛ちゃんだって、歩夢を信じたから伝えたんだと思うし」
侑「だから、歩夢も愛ちゃんを信じて伝えればいいよ」
歩夢「……ありがとう、侑ちゃん」 歩夢「私、ちゃんと伝える…やっぱり伝えたい…愛ちゃんに…」
侑「うんっ」ニコ
侑「ならさ…ほら!急がなきゃ日が暮れちゃうよ?」ズイ
歩夢「!…えっ…ぇ…い、今…から?」
侑「…今じゃなきゃ…でしょ?」
歩夢「………」
歩夢「………そうだよね」 歩夢「今じゃなきゃだよね…」
侑「やっぱりちょっと怖い?」
歩夢「…少しだけ、でも大丈夫」
歩夢「侑ちゃんが背中押してくれたから…大丈夫」
侑「…そっか」ニコ
侑「あ…そうだ、愛ちゃんに伝言!」 歩夢「へ…?」
侑「ウチの歩夢をたぶらかしたんだから絶対責任取ってよね!って伝えといてっ」
歩夢「…ふ…なにそれ…」
侑「えっへへ…よろしくねっ」
歩夢「…」
歩夢「……ありがとう、侑ちゃん」
侑「んーん…こっちこそ、ありがとう」 侑「ほらっ、早く行ってきな!歩夢!」ニコ
歩夢「!…うん…っ」コクッ
侑「………」スッ
握りあっていた手をお互いに離すと
歩夢はそのまま、愛ちゃんの元へと駆けていく
不思議と…あの時の不安感が嘘だったみたいに、私は綺麗な気持ちで見送ることが出来た
今はもう、応援したいという気持ちだけ
侑「……がんばれ、歩夢」
そう呟いて微笑むと、残された歩夢の荷物を持って…そのまま帰路に着く
…なんだか、今日はいつになく夕日が一際綺麗に見えた 侑ちゃん切ない…
順番次第で別の結末もあっただろうからなおさら つまらん上にそこまで需要ある組み合わせでもないしようやるな ────
─
歩夢「…はぁ…っ、はぁ…っ…」
タッタッタッ…
歩夢「…っ…はぁ…っ…はぁ…っ!」
…… ─……思い返せば
侑ちゃんとの相談に乗ってくれたあの日からずっと…
愛ちゃんは私の傍に居てくれていた
二人きりになった事はほとんどなかったけれど
この2ヶ月近くの時間はほとんど、愛ちゃんと過ごした時間だったと思う
愛ちゃんはずっと…傍にいてくれて…見守ってくれて、気にかけてくれてた いつだって笑顔にしようとしてくれてた
私はずっと与えられてばかりで
そんな愛ちゃんに何も返せてないって思ってた
けど愛ちゃんは、こんな私と居るだけで
それだけで満たされてて…幸せだって言ってくれた
すごく嬉しかった
でも… ──ずっと大切な友達でいてくれる?
……きっと、あの時の私の一言は
愛ちゃんにとってすごく重たい一言だったと思う
愛ちゃんにとっても初めてのことだったはずだから、尚更
そう考えたら、愛ちゃんの気持ちを知らなかったとはいえ
辛い思いをさせちゃってたんだ
それに気付いたはずなのに…愛ちゃんの気持ちを受け止める事が出来なかった
…愛ちゃんに謝りたい それから、やっぱり自分の気持ちを伝えたい…伝えなきゃ
歩夢「…っ…はぁ……はぁ…っ」
歩夢「はぁ……っはぁ…」
…侑ちゃんに見送られてから相当走った
けれど、愛ちゃんの姿は見当たらなかった 愛ちゃんと別れてからそこそこ時間は経過してるから
もう家に着いてる頃かもしれない
愛ちゃんの家に行くなら、先にある横断歩道を渡らなきゃいけないけど…
歩夢「はぁ…っ…は…っ…」タッタッ…
歩夢「………っ!」 そう思考していた矢先に辺りを見渡していると
すぐ近くの歩道橋を渡る愛ちゃんの見慣れた姿があった
愛「………」テクテク
歩夢「っ…!」
歩夢(愛ちゃん…!)
歩夢「っ…」ダッ 歩夢「……はぁ…、はぁ…っ…!」タッタッ
伝える言葉は見つかってない…心の準備だって出来てないけれど
そんな事を考える間もなく私は無我夢中で走って、階段をかけ上った
歩夢「っ…はぁ…はぁ…っ」
上り切る…そして、向かい側の階段を降りようとする愛ちゃんに向けて
辺りに響くほどの声を張り上げた
歩夢「……っ、愛ちゃんッ!!!」 愛「…っ…!?」ビクッ
歩夢「っ…はぁ…はぁ…っ!」
愛「……びっ、くりした…」フイ
歩夢「…っ…はぁ…っ」
愛「ぇ…」
愛「ぁ、歩夢…?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています