歩夢「愛だけに!」
レス数が1000を超えています。これ以上書き込みはできません。
歩夢「……」
侑「…」テクテク
歩夢「あっ、侑ちゃん!お疲れ様」
侑「……歩夢」
侑「終わるまで待っててくれてたの?」
侑「もう、先帰っててって言ったのに…」
歩夢「うん、でも…やっぱり一緒に帰りたいなって思って…」
侑「……ごめん、歩夢」 歩夢「え…?」フイッ
タカサキサーン!!
侑「あっ、ごめーん!すぐ行くね!」
歩夢「……」
侑「…音楽科で出来た友達なんだ、これから遊びに行こうって話しててさ」
歩夢「…そ、そう…なんだ…」
侑「…うん、だから待たなくても良かったのにさ…ていうか…」
侑「こうして待たれるの、困るんだよね」 歩夢「え…?」
侑「待たせちゃうのも申し訳ないし…」
侑「やっぱりこういうことも増えてくと思うから」
侑「今ね、すごく楽しいんだよ」
侑「音楽の勉強も勿論楽しいし、出来た友達とお話する時間も楽しくて…」
侑「……正直、歩夢との時間よりすごく楽しい」
歩夢「……!」 歩夢「っ…ど、どうして…そんなこと言うの?」
侑「前から話そうと思ってたんだけどさ…重いんだよね、歩夢って」
歩夢「へ…」
侑「そろそろさ…一定の距離感がほしいなって、歩夢とは」
侑「このまま進む道も変わってくるだろうし、ていうか変わるし」
侑「いつまでも一緒にいるわけにはいかないでしょ」
歩夢「そんな…で、でも…私は侑ちゃんがいないと…侑ちゃんがいたからここまで…」 侑「私がいないと何も出来ないっの…?じゃあ、私は一生自由になれないんだね」
歩夢「っ!そういう意味じゃ…!」
侑「…ごめんね。友達待たせちゃってるし…そろそろ行かなきゃだから」テクテク
歩夢「…まっ…待って…!」
侑「…ほんとにごめんね、歩夢といるのはちょっと…息苦しい」 侑「歩夢のこと、一番に応援したいけど…遠くから見てるくらいがちょうどいいや」
侑「もう、お願いだからさ。いつまでも私にばかり構わないでほしいんだ」
侑「…ほんとにごめんね、もう私の事は待たなくていいから…じゃあね」
歩夢「……っ、侑ちゃっ…待っ…」
─── 歩夢「ッ…まって侑ちゃ…っ…!!」ガバッ
歩夢「はぁ…はぁ…っ」
また、夢…
私は、悪夢を見ることが増えた
最初は怖いピエロに追われるとか
クマに襲われるとか
そんな怖い夢を見てきた
けれど、今回のようなリアルな夢が…最近ではとても多くなった
本当に嫌な夢だ… ─歩夢といるのは息苦しい─
歩夢「っ、ぐ、ぅ……!」ドクドク
どうしよう…すごく、胸が締め付けられる…
止まない動悸と汗が鬱陶しい…
窓から差し込む日差しすらも、照らされるだけで嫌な気持ちになった
……落ち着け、落ち着かなきゃ…たかが夢なんだから…深呼吸…
歩夢「はぁ……ふぅ…っ」 歩夢「は…っ…もう、なんなの…っ」
歩夢「はぁ…っはぁ…、じっ時間…」チラ
チクタク…
……あぁ…学校か…
準備しなくちゃ
…行きたくないな… ────
───
─
放課後
歩夢「………」
ピロン
侑:歩夢ごめん!また遅くなっちゃうから練習終わったら先帰ってて!
歩夢「……」スッ
歩夢:うん、分かった。帰り気を付けてね?
侑:うんっ、帰ったら連絡するねーっ
歩夢「………はぁ」
歩夢(やっぱり…また一人かぁ) 侑ちゃんが音楽科に転科して以降、侑ちゃんとまともに話せる機会が減っていった
ゆっくり話せる時間といえば…メッセージのやり取りを除くと一緒にお昼を食べる時間くらいかな
朝も侑ちゃんは早めに登校して…少し遅めに下校してしまうから、本当にお昼の時間くらいしかまともに話すタイミングがない
それも今だけかもしれないけれど でもこれから音楽を勉強するんだもんね
多くの人はきっともっと昔から勉強しているんだろうし
侑ちゃんは相当勉強しなきゃいけないんだと思う
…侑ちゃんのことは応援したい
でも、この状態が続いて
そのままどんどん同好会にも顔を見せなくなって…ゆくゆくは幽霊部員みたいになって
私よりももっと仲のいい友達が出来たりして、同好会とも私とも疎遠になって… 今朝見た悪夢のように…なっちゃうのかな、なんて。
またあの夢のせいで…するはずもなかった不安が募っていく。
どっと気分が落ち込んでいっちゃうな…
こんな事、何度目だろう
……たかが夢だもん
振り回されちゃダメだ 余計なことは考えないようにしなきゃ
…うん、分かってる
分かってるけど…
歩夢「………ほんとダメだなぁ」
はぁ…結局私は…
───
─ 練習時間
せつ菜「はっ、はっ…あと一周!頑張りましょー!!」
歩夢「はぁ…はぁ…!」ダダダダッ
かすみ「はぁ…はぁ…っ、歩夢先輩早っ…冒頭からずっとペース落ちてなくない?」
しずく「は…っ、確かに…すごい…ずっと愛さんと並走してるね…」
璃奈「…はぁ…っ…いつにも増して、元気…というか…」
愛「は…っ、は…おーい歩夢ー?めっちゃ苦しそうだけど大丈夫?無理するとこの後の練習に響いちゃうよー?」 歩夢「はぁっ…はぁ…!止まれないの…!」
愛「えっ?」
歩夢「今止まったら…!色々考えちゃうから!!今の私は誰にも止められないよー!!」ピューッ
愛「!?…あははっ!すごいよ!見てせっつー!いつもの歩夢じゃないー!」
せつ菜「はぁっ…はぁ…ホントにすごいです!やる気に満ち溢れてますね歩夢さん…!」 せつ菜「私達も愛さんと歩夢さんには負けてられませんね!頑張りましょう!」
せつ菜「やっぱりあと二周で!」ダッ
かすみ「しょ、正気ですか…」
彼方「ひ、ひえぇ〜…彼方ちゃん壊れちゃう〜…」
果林「…もう言い出したら聞かないし、頑張りましょ…」 エマ「大丈夫!自分のペースでいこう?彼方ちゃん」
彼方「うん〜…」
璃奈「……」
しずく「はぁ、はぁ…ど、どうしたの?璃奈さん」
璃奈「ううん…なんでもない」 ───
─
休憩
歩夢「はぁ……はぁ…うぅ〜…」グッタリ
愛「ほーらバテた…」スト
愛「はい歩夢、水持ってきたよ」
歩夢「はぁ…はぁ…愛ちゃん…ありがとう…」ゴクゴク
愛「まぁそれヨーグリーナだけどね」
歩夢「ぶふっ!?」 歩夢「あっま…!!」
愛「あっはは!引っかかった〜!」
歩夢「もっ!もぉ、愛ちゃん!」プクー
愛「ごめんごめん、でもそんなにいいリアクション見せてくれるとは思わなかったよ〜」
歩夢「誰でもこうなるよ…ほんとに水だと思ったんだから」 愛「ごめんってー、はい!ちゃんと水あるよー」
歩夢「ぁ…ありがと…」ゴクゴク
愛「あ…てか、どしたの?今日の歩夢めっちゃ元気っていうか…がむしゃらだったっていうかさ」
愛「なんかあったん?」
歩夢「…あぁ…ううん、その…普通に今日はすごく走りたい気分だったから…」
愛「またまたー、ごまかしちゃって〜!」背中パンパンッ 歩夢「!ちょっ…もう、またこぼしちゃうよ…」
愛「あっはは、ごめんごめん!」
愛「で、ずっとゆうゆのこと考えてたんじゃないの?歩夢は」
歩夢「うぇっ………別に、そんなんじゃ…」
愛「走ってる最中ずっとゆうゆの名前呼んでたじゃん」
歩夢「え!?うそ…ほんとに…?」 愛「嘘だけど」
歩夢「なんなの!?」
愛「歩夢って面白いね〜」
歩夢「え、ええ…そんなに私をからかうのが楽しいの?」
愛「いやー歩夢ってからかいがいがあるというかさ」
歩夢「わぁ否定しないんだぁ…」 愛「…で、最近ゆうゆと会話の回数が減っていって寂しくなって余計な不安に駆られ始めてるとかそんなとこかな?」
歩夢「え、は…?な、なんで……分かっ…」
愛「えっ、嘘!当たり!?」
歩夢「当てずっぽうだったの!?…わぁぁ…すんなり認めちゃったよ…」カオカクシ
愛「別に隠す必要ないじゃんかー、丸わかりだし 歩夢「ま、丸わかりなんだ…でも、大体そんな感じかな…」
歩夢「私ってそんなにわかりやすい?」
愛「うーん少なくとも愛さんにはなんとなくわかったよー?本当に当てちゃったからびっくりはしたけど」
歩夢「そうなんだ…」
愛「まぁ、愛さんには二人ほど仲のいい幼なじみが居ないから正直わかんないけどさ…」 愛「やっぱり昔からずっと隣にいたゆうゆと一緒じゃないと多少は寂しくなるもんなのかなぁって思って」
歩夢「そっか…正直愛ちゃんの言う通り…ちょっぴり、ね」
歩夢「……でも、その…私ね?同好会に入ってから、みんなと出会えて本当に良かったって思うんだ」
歩夢「みんなと出会えて、私を大好きだって言ってくれる人にも沢山出会えて」
歩夢「毎日が楽しいことの連続で、嬉しいことも沢山あった」 歩夢「大好きなものも、大好きな人も増えていってね」
歩夢「それは勿論侑ちゃんのおかげだし、侑ちゃんも一緒なんだ。だから…」
歩夢「侑ちゃんがしてくれてるように…私も侑ちゃんの好きなこと、やりたいことを応援したい」
歩夢「でもやっぱり、…お互いに遠くなっていく気がして、恐くなってる自分がいるの」
歩夢「17年間一緒にいたし…元々これからもずっと一緒だって思ってたから」 歩夢「侑ちゃんの事が見えなくなっちゃうのは…今でもやっぱり、少しだけこわい」
歩夢「…大好きな人は沢山できたけど、やっぱり侑ちゃんは私にとってすごく特別な人なんだって改めて思ったんだ…」
歩夢「…侑ちゃんは、私の世界そのものだったから」
愛「…そっか」 歩夢「…!な…なんてね!ごめんね?」
歩夢「やだな…こんな話するつもりじゃなかったのに変なこと言っちゃった」
歩夢「もう、何言ってるんだろうね…私」
歩夢(本当に、私は何を言ってるんだろう) 愛「…ううん、歩夢からそういう話聞けるのって愛さんとしては貴重だったし」
愛「歩夢の本心が聞けて嬉しかったかな」
歩夢「本心…そうだね、正直私も愛ちゃんにこういう話するとは思わなかった」
愛「ふふ、だね」
愛「まぁさ…大丈夫だよ歩夢」 歩夢「え?」
愛「ゆうゆは同好会の事も、何より歩夢のことを何より大切に思ってるもん」
愛「やりたいことも一番大切な人とのことも中途半端にはしないでしょ」
愛「17年も一緒にいた歩夢なら分かるんじゃない?」
愛「二人を見てて感じるけど、やっぱりちょっとやそっとじゃ無くなる繋がりじゃないって思うな、愛さんは」
歩夢「……」 愛「…まぁ、不安とか悩みがあるならそれをゆうゆにぶつけるのもいいと思うよ?」
愛「知らず知らずに溜め込んじゃうタイプだと思うし、それで爆発しそうだもん。歩夢って」
歩夢「ぅっ…とても心に刺さるお言葉…」
愛「ん?」
歩夢「そっ、そうだよね…今度話せる時間があったら、話してみようかな」 歩夢「聞いてくれてありがとう、愛ちゃん」ニコ
愛「うんうん、歩夢はやっぱり笑顔が可愛いね〜っ」
歩夢「ふふ、口説き文句みたいだよ愛ちゃん」
愛「えー口説いてないよー、本心で言ってるもん」
歩夢「あはは、分かってるよ。ありがとう」
歩夢「愛ちゃんと話してたらなんだか元気になった気がする」
愛「そーお?話聞いてただけだけどね」 歩夢「そんな事ないよ、すごく励みになった…」
歩夢「愛ちゃんって、相手を話しやすい空気にしてくれるっていうか…なんだろうね」
歩夢「話してるだけで人を元気にしてくれるんだと思う」
歩夢「こうして話していて初めて知ったかも…」
歩夢「…本当はもっと…」 愛「…ん?」
歩夢「…ううん」
歩夢「…だから、同好会のみんなとも打ち解けてるし……」
歩夢「特に璃奈ちゃんにはすごく懐かれてるし、皆に人気があるのもわかる気がするなぁ」
愛「………えっへへ。よせやい、照れるじゃんか〜」 愛「歩夢もどんどん懐きにきていいんだぞー?」
歩夢「…うん、行けたら行くね」
愛「わー絶対こない言い方じゃーん!」
歩夢「ふふっ…冗談だよ」
せつ菜「歩夢さーん!愛さーん!練習再開しますよー!」
愛「はいはーい!歩夢動けそ?」スク 歩夢「うん、大分楽になってきたから平気だと思う」
愛「そっか、でも無理しないでよー?」
歩夢「うん、ごめんね?ありがとう愛ちゃん」
愛「じゃ、行こっか!」
歩夢「うん…!」 やはり愛さんはみんなの頼れるヒーローであるべきなんよ ────
──
数日後
歩夢「うーん……」
愛「あーゆむ!」ピトッ
歩夢「ひょあぁぁ!?」
愛「おぉおぉ、すごい声」
歩夢「あ、愛ちゃん!?びっくりした…いきなり頬っぺにジュース当てないでよ…」 愛「ごめんごめん、隙だらけだったからつい」
歩夢「もぉ……あれ?そういえばどうして普通科の方にいるの?愛ちゃん」
愛「ん?いやー歩夢達とお昼食べようかなーって思ってさ!たまには!」
歩夢「…そうなんだ、いいよ?でも、今日は侑ちゃんと一緒じゃないんだ、やることあるみたいで…」
歩夢「それで、教室で一人で食べるのもなぁって思って…どこで食べようか悩んでたところなんだ」 愛「お、そうなん?じゃあ愛さんと食べよーよ!」
歩夢「うん、そうだね。誰かと一緒の方が美味しいし」
愛「でしょー?で、歩夢はお弁当?」
歩夢「あ、うん、お弁当だよ…。愛ちゃんは?」
愛「アタシはさっき購買で買ってきた!パン!」ズイッ 歩夢「それだけで足りるの?」
愛「これしかなかったんだよね〜、足りなかったら最悪歩夢から分けてもらおうかなって」
歩夢「…もしかして私のご飯を当てにしてた?」
愛「えへへー、半分?くらいそうかなー」
愛「一緒に食べたいのは本当だよ?」
歩夢「もぉ、愛ちゃん…全然いいけどね。とりあえずどこで食べようかな?」 愛「やった!んーじゃあ部室とか?」
歩夢「あ、いいね。部室行こっか」
愛「おっけ!」
歩夢「………」テクテク
愛「…そういえば、歩夢さ」テクテク
愛「今もそうだけどここの所めっちゃ眠そうだよね」 愛「…寝てないの?」
歩夢「ぇっ…あっ…う、うん…眠れないというか…スマホゲームで夜更かししてるからかなぁ…最近ハマっちゃって…」テクテク
愛「へぇ歩夢ってゲームとかやるんだ?」
歩夢「まぁ…たしなむ程度にはね?」 愛「ほーん知らなかったなぁ。でも程々にしてちゃんと寝なきゃダメだぞー?」
歩夢「あはは…そうだね、ありがとう」
愛「じゃさ、食べ終わったらちょっとだけお昼寝した方がいいよ、スッキリするし」
歩夢「う…うん、そうだね…」 ─────
─
璃奈「……」カタカタ
カチャ
璃奈「ん……?」フイッ
歩夢「あ、璃奈ちゃん」
愛「お、りなりーじゃん!今日は部室いるんだ?」
璃奈「あ…うん、少しだけ編集作業しておこうと思って」
璃奈「二人は…どうしたの?」 愛「歩夢とご飯食べよーと思って、りなりーはもう食べたの?」
璃奈「ううん、これからだよ」
愛「お昼ある?」
璃奈「うん、ここ来る前に買ってきた」
愛「おっ、じゃあこっち来なよりなりー、三人で食べよ!ねっ、歩夢!」 歩夢「…うん、一緒に食べよ?」
歩夢「あ、でも…作業遅れちゃうかな?」
璃奈「ううん、大丈夫」
璃奈「私も二人と一緒に食べたい」 ───
モグモグモグ
愛「んっ!歩夢の卵焼きすごいおいしいー!ごちそうさまっ」
璃奈「うん、すごく…おだしが効いてておいしい…歩夢さん、ごちそうさま」
歩夢「ほんと?良かったぁ。うん、今日は和風にしてみようかなって…白だし使ったんだ」
愛「へぇ、形も綺麗だし、ここまでレベル高いとは思わなかったよー」
歩夢「高いかなぁ?でも料理するのは好きなんだ。侑ちゃんすごく褒めてくれるし」
歩夢「あ……」 愛「へぇ、ゆうゆが絶賛するなら間違いないね〜」
歩夢「う、うん…二人は料理とかしないの?」
璃奈「うん、あまりしないかな…出来ないわけじゃないけど」
愛「愛さんはまぁ家の手伝いとかしてるからそれなりにねー、でもカナちゃんや歩夢ほど上手いってわけでもないかも」
歩夢「そっかぁ……愛ちゃんと璃奈ちゃんの料理食べてみたいなぁ」 璃奈「私も、愛さんの作る料理食べてみたい」
愛「おっ、いいよいいよ!じゃあ三人各々お弁当作って持ち寄ってさ、明日のお昼シェアしようよ!」
璃奈「それ、楽しそう」
愛「でしょーっ」 歩夢「…うん…確かに、楽しそうだね……」
歩夢「でも、その…あんまり期待し過ぎないでね…?」
愛「えー歩夢のお弁当に関してはもう期待しかないけどなぁ〜」
璃奈「…うんうん、間違いない」
歩夢「……もぉ、そこまで期待されるとプレッシャー、だよ…」ウツラウツラ
璃奈「……歩夢さん?」 璃奈「……その、少し寝た方がいいと思う」
歩夢「え…?」ピクッ
璃奈「今の歩夢さん、すごく眠そう」
歩夢「あっ…ああ、あはは…うん、ちょっと寝不足で…」
璃奈「……そっか、じゃあ少しだけ眠った方がいいよ。歩夢さん、今にも眠っちゃいそう」 愛「ほら、ここで少し横になりなよ。食後だからちょっと行儀悪いかもだけど」
愛「予鈴なったら起こしてあげるし」
愛「はい、どうぞどうぞー」ササッ
歩夢「……うん…ありがとう」
歩夢「じゃ、じゃああちょっとだけお言葉に甘えようかな…」ゴロン 璃奈「うん、おやすみなさい。歩夢さん」
歩夢「……うん、ありがとう。おやすみ…」
愛「はーい、おやすみ!」
璃奈「………」
愛「………」
歩夢「スー…zzZ」 愛「おっ、もう寝ちゃった」
璃奈「それくらい寝てないのかも」
愛「そうだろうねぇ…」
璃奈「……歩夢さん、何かあったのかな」
愛「え?」
璃奈「ここの所…少し元気がないみたいだったから」
璃奈「最近の練習も、正直…動きにキレがなかった気がする」 愛「あー…見てたらわかるよねぇ、やっぱり」
璃奈「うん…きっと、侑さんと関係があるんだよね」
愛「うん、この間練習の時に歩夢とちょこっと話したけど、やっぱりゆうゆとの事で悩んでたみたいだったから」
璃奈「…そうなんだ」
愛「でもさ、ゆうゆの方ももう少ししたら落ち着くと思うし」 愛「また同好会にも前みたいに顔出すようになったら、歩夢も本調子に戻れるよ、きっと」
璃奈「うん、そうだね」
璃奈「…そうだと、いいな」
愛「うん」
璃奈「………?」
愛さんは頷きながらも、珍しく一瞬だけ浮かない表情を見せた ───
─
侑「」
歩夢「…侑ちゃん」
侑「」
歩夢「…おーい、侑ちゃん」
侑「」
歩夢「侑ちゃん…起きて」ユサユサ 歩夢「ねぇ、どうして寝たきりなの?ねぇ起きてよ侑ちゃん…」ユサユサ
侑「」
歩夢「侑、ちゃん?ねぇ、侑ちゃん…!?」ユサユサ
かすみ「何やってるんですか歩夢先輩」
歩夢「っ!かすみちゃん…!?侑ちゃんが動かないの!」
かすみ「いやいや、正気ですか?」 果林「誰のせいだと思ってるのよ」
歩夢「へ…」
愛「…歩夢がゆうゆを刺したんじゃん」
歩夢「!?な、何言ってるの…?」
彼方「とぼけちゃダメだよ?歩夢ちゃん」 歩夢「っまっ、待って…!どっ、どうしてそんなこと…言うの?私は何もしてな」
エマ「歩夢ちゃん、この状況で嘘ついても無駄だと思うな」
しずく「…歩夢さん、鏡見てください」スッ
歩夢「へ…」
歩夢(っ…!血…?)
歩夢「なに、これ…」 璃奈「あれだけやってたのに…もしかして…覚えてないの…?」
歩夢「ぅ、嘘だよ…そんなの…私は本当に何も」
せつ菜「右手に持ってる包丁はなんですか?」
歩夢「へっ…」
せつ菜「血がついてますよね、歩夢さんの顔にも」 歩夢「ぁっ…ぁ…」
歩夢「…私じゃ、ないよ…っ」
愛「私の傍にいない侑ちゃんなんかいらないって言って、刺したんだよ?歩夢が」
歩夢「…!嘘つかないでよ!!私そんな風に思ったこと一度もないよ!!?みんなデタラメ言わないでよ!」
かすみ「でも歩夢先輩はハッキリとそう言いましたよ?」
せつ菜「身勝手にも程がありますよ、歩夢さん」 歩夢「っ…う…あ、あ…」
璃奈「…人殺し」
歩夢「っ…!」
しずく「人殺し」
歩夢「ゃ…」
彼方「人殺し」 歩夢「やめて…」
エマ「人殺し」
果林「人殺し」
かすみ「人殺し」
愛「人殺し」
歩夢「やめて…やめてっ、やめてよ!」 せつ菜「人殺し…」
せつ菜「…あなたが死ねばよかったんですよ」
歩夢「ぁ…っ…あ…」
侑「……」ガバッ
歩夢「!?ゆう…ちゃ…っ」
グサッ… 歩夢「へ…」
侑「……コノヒトゴロシ」
侑「一生呪ってやるからね、歩夢♪」ニコ
歩夢「」
歩夢「うわあああああぁぁあああぁぁああああ」 ─歩夢さん…!
──歩夢!!
愛「歩夢!!!」ユサユサ
歩夢「いやぁぁあ…っ!」ガバッ
歩夢「っ…〜っ」ギュゥゥ
璃奈「ぁ、歩夢、さん……?!」
歩夢「はぁ…っ、はぁ…」ダラダラ 愛「あっ…歩夢!?大丈夫…!?すごいうなされてたよ!?」
歩夢「っ、だ…っ」
璃奈「え…?」
歩夢「っ…もう、やだよ…っ!!」ギュウッ
璃奈「…っ…歩夢さん…」サスサス
歩夢「うぅ…っぅ…」
璃奈「……愛さん」チラ
愛「……歩夢…」 放課後
─生徒会室
菜々「……」カキカキ
トントン
菜々「はい」
カチャ
愛「やっほ」
菜々「…愛さん」
愛「ごめんまだ仕事中だった?」 菜々「大丈夫ですよ?あと少しで終わりますし」ニコ
愛「そっかそっか」
愛「じゃあ終わるまで待っとくよ」
菜々「いえ、私が呼び出したんですし…1度中断します」
菜々「こっちの方が重要ですしね…」
菜々「…愛さん。さっきの電話でのこと、聞かせてもらえますか?」 愛「……いいの?ここで話しちゃって」
菜々「はい、大丈夫ですよ。私一人だけですから」
愛「そっか…」
菜々「その……歩夢さんは、今は家に?」
愛「…うん、ずっと顔色が悪くてさ、すごく具合悪そうだったから」 愛「家の人呼んで、早退したよ」
菜々「そうですか…それほどまでに…」
愛「うん…」
菜々「愛さん、言ってましたよね?電話でさきほど…」
菜々「…歩夢さんがうなされていたって」
愛「うん、結構うなされ方がさ…辛そうだった」 愛「…見てるこっちも辛かったよ」
菜々「何かこわい夢を見たって事ですよね」
愛「歩夢さ、ここの所寝不足っぽかったんだよね」
愛「今日なんかも…見ててめちゃくちゃ眠そうだったし」
愛「だからお昼寝した方がいいって言ったんだけど。あんまり眠りたそうじゃなかったっていうか…」 菜々「ということは…寝不足の原因が」
愛「うん、りなりーも言ってたけど。多分今回だけじゃないのかも」
菜々「そう、ですか…ここの所少し様子がおかしかったのはそのせいだったんですね…」
愛「やっぱ気付いてた?」
菜々「正直、確信にまでは至らなかったですが…きっと皆さんも薄々気付いていたと思います」 菜々「侑さんだったら違ったのでしょうけど…」
愛「…そうだね」
菜々「きっかけはなんだったんでしょう」
愛「え?」
菜々「もし歩夢さんが悪夢を頻繁に見るようになったのなら、やっぱりストレスが関係してると思うんです」 菜々「それが部活のことなのか…家庭のことなのか…」
菜々「…友達のことなのか」
愛「………」
菜々「…侑さんに連絡は?」
愛「…変に心配かけたくないから絶対言わないでって、歩夢に」
菜々「そう、ですか…」 菜々「そうですよね…侑さんは、音楽科の方でも頑張っていますし…今後のイベントの事でも色々動いてくれていますから」
菜々「歩夢さんとしては、そう言うしかないのかもしれないですね」
菜々「それでもやっぱり、歩夢さんには侑さんが…」
愛「かもね、でも…」
菜々「…愛さん?」 愛「…んーん、やっぱりなんでもないや」
菜々「…そうですか」
菜々「少し気にかけておいた方がいいですね…歩夢さんのこと」
愛「そうだね、愛さんもそうするつもり」
菜々「ありがとうございます、愛さん。話して頂いて」 愛「ううん、元々歩夢が練習休むことは伝えなきゃなって思ってたし」
愛「あまり話して欲しくなかったかもしれないけど…」
愛「せっつーだけには話しておいた方がいいかなぁって思ったから」
菜々「……私はもう部長じゃないですよ?」
愛「…うーんそういうんじゃなくてさ」 愛「やっぱりせっつーはゆうゆと同じくらいみんなの事見れてる子だと思ってるから、アタシは」
菜々「……買い被り過ぎですよ、愛さん」
愛「ふふっ、そんな事ないよ。せっつーはすごい子だよ」
菜々「……」
愛「…よし!じゃあそろそろ練習行ってくるね」 菜々「…あ、はい。私もこっちが終わったらすぐ行きますね」
愛「分かった!じゃあ、また後でね!」ガチャ
菜々「はい」ニコ
パタン
菜々「…愛さんだってよっぽど皆さんのこと見れてますよ」 ────
──
─歩夢さんって、侑さんの話ばっかりですね
─…また侑の話?
─二言目には侑ちゃんだよね
─侑先輩しか友達いないんですか?
歩夢「………は」パチッ 歩夢「…………」ムク
歩夢「…はぁ…」
またか…
…もう、何回目だろう…この夢も
ちゃんと薬飲んでおけばよかった…
…お昼、二人にも迷惑かけちゃったし
…なんかもう、何もかもどうでも良くなってきた ピロン
歩夢「………ゆうちゃん」
歩夢「…未読三通」ポチ
侑:歩夢ー!今夜ちょっと話せるかな?
侑:今帰ったよー、もう家いる?
侑:起きてる?
歩夢「……」ポチポチ 歩夢:起きてるよ
……ピロン
侑:少しだけ話せる?
歩夢「………」
歩夢(…今は話したくない)
…… trrrrrr…
歩夢「っ…!」ビクッ
trrrrr…
歩夢「…はぁ……」ポチ
歩夢「…はい」
侑「あ、出た…歩夢?今大丈夫?」
歩夢「…っ…ぅ、…うん」 侑「…?なんか…元気無さそうだけど、既読もずっとつかなかったし…今日具合悪かった?」
歩夢「…ごめん…侑ちゃん、用件だけ伝えてくれるかな」
侑「歩夢…?」
歩夢「……大丈夫だから」 侑「…あの、さ…私ね、最近まで試験があったんだけど」
歩夢「うん」
侑「何とか合格点までいけて、そろそろこっちの方が落ち着きそうなんだ」
歩夢「そうなんだ、お疲れ様」
侑「ありがとう、少ししたら同好会にも顔出せるから、久しぶりにみんなとも走ったりしたいし」 歩夢「そっか……」
歩夢「用件はそれだけ?」
侑「…?う、ううん。まだあるんだけど…」
歩夢「……」
侑「その、音楽科で出来た友達にね、作曲の仕方を教わってるんだ。それで」
歩夢「……やっぱり聞きたくないや」ボソ 侑「え…?」
歩夢「…ごめん、今は侑ちゃんの声も…話も聞きたくないよ」
侑「っ……あ…歩夢…?どうかしたの?」
侑「様子おかしすぎない?」
侑「ていうかここの所元気も無さそうだったし…」 歩夢「…もう嫌なんだよ」
侑「……」
歩夢「こうして侑ちゃんの声を聞いてるの…嫌になるの」
侑「…どういうこと?」
歩夢「…ごめん、今は私のことはほっといて」
侑「ま…待ってよ歩夢!」 歩夢「……」
侑「少しだけベランダで話さない?」
歩夢「無理だよ…」
侑「…なんでよ」
歩夢「今は誰の顔も見たくない、話したくもない…」
侑「…本当にどうしちゃったの歩夢…もしかして私が何か」 歩夢「…もういいでしょ、侑ちゃんが今楽しそうで安心したよ…私といる時間よりも楽しいでしょ?」
歩夢「だから、私の心配なんかしてないで切り捨てちゃえばいいよ…私の事なんて」
侑「…なに、それ…」
侑「そんなふうに思ってるの…?」 侑「…さすがに怒るよ、歩夢」
歩夢「…」
歩夢「……もう、切ってもいいかな」
侑「………」
侑「…………落ち着いたら、ちゃんと話そ」
歩夢「………じゃあね」 侑「……」
歩夢「……」
ブチッ
歩夢「…」
…昼間の悪夢の影響で、侑ちゃんの声を聞くことが怖かった
でも次第に侑ちゃんの優しい声を聞いていて
少し安心してしまっている自分が腹立たしくなった そのおかげで侑ちゃんに当たっちゃった、何も悪くないのに
結局侑ちゃんに心配掛けちゃってるし…きっと傷付けてしまった
もう、取り返しがつかないかもしれない。
本当に私は何をやってるんだろう…何がしたいんだろう…。
歩夢「……バカみたい」ポロポロ
もう頭の中がぐちゃぐちゃだ…
私は更に、自己嫌悪に陥った ────
───
─数日後 昼休み
部室
愛「……」モグモグ
璃奈「ん……愛さんのお弁当、すごくおいしい」モグモグ
愛「おっ、でしょでしょ?」
璃奈「愛さんがアスパラベーコンを作れるとは思わなかった」 愛「ちょこーっと作り方調べたけどねー」
璃奈「じゃあ初めて作ったんだ…初めてなのにこのクオリティ…私も愛さんを驚かせたい」
愛「あ、でもでも!りなりーの作った卵サンドもすごいおいしーよ!」
璃奈「え、ほんとに…?ちょっと緊張したけど、これでもすごく頑張ったんだ」 璃奈「愛さんのお口にあって良かった…璃奈ちゃんボード[ウキウキ]」
愛「えっへへ、りなりーは可愛いなぁ」ナデナデ
璃奈「ん……」テレテレ
璃奈「……」 愛「…?りなりー?」
璃奈「……歩夢さん、今日も来てないのかなって思って」
愛「あぁ…ずっとメッセージ入れてみてるんだけどね、全く反応なくて」
愛「だからさっき教室に行ってみたんだけど…今日も体調不良で休みだって」 璃奈「…そっか」
愛「やっぱり心配だよね」
璃奈「うん…あんな歩夢さん、初めて見たから」
愛「…うん、アタシもだよ」
璃奈「…愛さ」
ガチャ 侑「……あ、璃奈ちゃん、愛ちゃんも」
璃奈「?…あ、侑さん」
愛「…お、ゆうゆじゃん」
侑「部室で食べてるんだ?」
愛「うん!ゆうゆはもう食べたの?」 侑「うん、軽くね」
愛「そっかそっか」
璃奈「なんだか侑さん、久しぶりな気がする」
侑「あはは…確かにね、ごめんね?しばらく顔出せなくて」
愛「いいよいいよー、ゆうゆは今頑張りどころだしね」 愛「…まぁかすみん達も寂しがってるからさ、たまには顔見せてあげてよ」
侑「ふふ、そうだね…でももう少ししたら落ち着くから、そうしたらすぐ戻るよ」
侑「やっぱり私もさ、みんなともっと居たいし」
璃奈「そっか…侑さんが戻ってきたら、みんな喜ぶと思う」 侑「あはは…そうかな、そう言われちゃうとなんだか照れるなぁ…」
愛「…あ、ていうか…どうしたのゆうゆ」
愛「部室に用事あったんだよね?」
侑「あー…まぁ、あはは…」 侑「ふとね、ちょっと部室に来てみたくなっちゃって」
侑「でも二人の顔見れてなんだか安心しちゃった」
璃奈「…侑さん、あの…歩夢さんとは最近…話せてる?」
侑「ああ…最近はちょっとね…でもこの間電話で話したよ」
侑「まぁその…ちょっと喧嘩しちゃったけどさ…」 愛「えっ、喧嘩…?」
侑「いや、喧嘩っていうか……はぁ…」
侑「どうしてこうなるんだろうね…」
璃奈「…何があったの?」 愛「…とりあえず座りなよ、ゆうゆ」
侑「うん…」スッ
侑「私にも正直よく分かんないんだ」
侑「この間の夜にね、いつもみたいに歩夢と話そう思って、電話したんだ」 侑「でも、私と話したくないって言われちゃってさ…」
愛「!」
侑「今までこんなことなかったから、流石に動揺しちゃったよ」
侑「17年間もずーっと一緒にいた子にさ…こんなに急に嫌われちゃうだなんて思ってもみなかった」 侑「私が何度も歩夢を悩ませてたのが悪いんだよね、きっと…当然今回も悩ませてたんだと思う」
侑「愛想つかされちゃったのかもね」
愛「そんなことないよゆうゆ」
愛「…嫌われてなんかないよ」
侑「そうかな…」 璃奈「うん…2人がどれだけ仲良しなのかはみんな知ってるから」
璃奈「しっかり会って話した方がいいと思う」
侑「…そう、だね…」
愛「……あのね…ゆうゆ、話しておきたいことがあってさ」 璃奈「愛さん…?」
愛「やっぱりゆうゆに黙っとくのもさ…歩夢には悪いけど」
璃奈「…うん、そう…だね」
侑「…?どういうこと…?愛ちゃん」
璃奈「……」
愛「…あのね」 侑ちゃんからしたら唐突すぎてどうして…って感じだろうな ───
─
trrrrrrr…
歩夢「……」
trrrrrr…
歩夢「…はい」
愛「うお!出た…!もしもし?歩夢?」
歩夢「何度も電話かけてこないでよ…愛ちゃん」 愛「だって歩夢中々出ないんだもん…」
愛「ゆうゆも心配してたよ?歩夢が電話に出んわーって」
歩夢「………今人と話せる気力がないの」
愛「こうして出てくれたのに?」
歩夢「愛ちゃんがしつこいからだよ…」
愛「あはは…それはごめん。でも電源は切らないでいてくれてたんだね」
歩夢「………」 愛「体調の方は平気?」
歩夢「そこそこ…かな」
愛「…そっか」
歩夢「それで、用件は何?」
愛「今から会えないかな?」
歩夢「…どうして?」
愛「二人でちょっと話そうよ、聞きたいこともあるし…謝りたいこともあるから」 歩夢「このまま電話でいいと思うけど…」
愛「でももうさ、今歩夢んちの近くにいるんだよね」
歩夢「は…?」
歩夢「え、なんで?」
愛「なんでって、歩夢に会いたいからじゃん」
歩夢「ええ……」 愛「ほんの少しでいいからさ」
歩夢「…はぁ…もう…分かったよ、ちょっとだけだからね…?」
愛「やった!ありがと!じゃあ今行くねー」
ピッ
歩夢「………」チラ 鏡
はぁ、見た目酷いなぁ…流石にちょっと直さなきゃ
ていうか、どうして今からなんだろう
まだ夕方だけど、外も暗くなってきてる時間だし…
………ちょっと、面倒だなぁ。 ───
─
ガチャ
愛「おっ、やっほ」フリフリ
歩夢「うん…」
愛「…酷い顔してるね、歩夢」
歩夢「え…」
愛「その様子だと休んでる間一歩も外出てないでしょー?」
歩夢「……そんなに酷いかな…」サワサワ 愛「うん、めっちゃ表情暗いし」
愛「それに…」チラ
歩夢「…何?」
愛「ううん、やっぱなんでもない!ちょっと気分転換にその辺歩かない?」
歩夢「いいよ、別にここで」
愛「でもちょっとは外歩いた方がいいって」
歩夢「いいってば…」 愛「あー…ほらっ、一緒に外歩いてくれたらダジャレ100連発してあげるから!」
歩夢「………分かった、行くからダジャレ100連発だけはしないで」
愛「………思いがけない返答で愛さんびっくりしちゃったよ」
愛「でもやった!じゃあちょっと散歩しながら話そ!」
歩夢「…うん、いいけど…その前にちょっと上着とってくるから待っててくれるかな?」
愛「うん!おっけ!」 ────
──
─
…
テクテク
歩夢「……」
愛「……」
歩いて数分くらい無言だった
なんか、ちょっと気まずい
聞きにくいことなのかな、それに謝りたいことって…。
一体なんなんだろう、侑ちゃんから何か聞いたのかな ヒュォォ…
歩夢「寒…」
愛「あー…まだ10月半ばだけど、もうすっかり冬って感じになってきたもんねー」
歩夢「…そうだね」
歩夢「…ねぇ…愛ちゃん、この間は迷惑かけてごめんね」
愛「んー?」
歩夢「お昼休みの時、見苦しいとこ見せちゃったから。愛ちゃんと璃奈ちゃんには」 愛「…んーん、でも本当に辛そうだったからさ。めっちゃ心配したよ」
歩夢「ごめん」
愛「謝んなくていいって」
愛「やっぱり…初めてじゃないんだよね?あんな事になるの」
歩夢「……うん」 歩夢「この間病院に行って診てもらったんだ」
歩夢「私、軽い悪夢障害らしくて」
愛「え…?」
歩夢「…原因は恐らく積もりに積もったストレスのせいかもしれないって」
愛「そうなんだ…じゃあやっぱり、この間話してくれた悩みと関係ある?」 歩夢「かな…始まったのは夏休みが明けて少し経ってからだから」
愛「そっか…」
愛「歩夢。アタシさっきさ、聞きたいことがあるって言ったよね」
歩夢「う、うん…」
愛「…ちょっと、そこの公園行かない?ベンチあるし。そこで聞いてもいいかな?」
歩夢「…ん、分かった。いいよ」 ──
街頭一つに遊具が滑り台だけ
あとベンチ一つ…
その横に自動販売機
こんな小さな無名の公園に来るのなんていつぶりだろう…こんな所、存在すら知らなかった
けど、なんだか懐かしい
…ベンチかぁ…このくらいの気温だと冷たそうだなぁ
そう思ってたら、愛ちゃんが自分のハンカチを敷いてくれた。
急なレディファーストに戸惑う。愛ちゃんもレディなんだけど…
レディにレディファーストされるなんて 歩夢「え…いいよ、汚れちゃうよ?」
愛「いいのいいの、冷たいしさ。座って座って」
歩夢「ええ…え、じゃ、じゃあ…座るね?ありがと」スッ
愛「うん、ちょっと温かいの飲もっか」
歩夢「別にいいのに…」 愛「いいのいいの!…えーっと、歩夢何がいーい?」
歩夢「えっ、ぇ…じゃあ、ココアで…」
愛「おっけ、じゃあアタシもこれにしよ」ポチッ
ガコン
愛「おーあったか…ほい、歩夢」
歩夢「ありがと。えっと、お金…」 愛「別にいいよ、飲んで飲んで」
愛「横座るねー」スッ
歩夢「う、うん…ありがと」
横で缶の蓋を開ける愛ちゃんに続いて
自分もカチッと蓋を開けて、一口呷る
冷えた身体にジーンと沁みる感覚がとても心地良かった
歩夢「…ほっ、おいしい…」ボソッ 愛「うんうんっ、久々に飲んだけどめっちゃおいしいよね、ココア」
愛「でも急にこんな寒くなるとは思わなかったよ、今更言うのもなんだけどごめんね?無理に連れ出しちゃって」
歩夢「ううん、別に平気だよ、そんなに辛くないし」
歩夢「わりとここ落ち着くかも…」
愛「そう?」 歩夢「うん、それよりお尻…大丈夫?冷たくない?」
愛「ん?大丈夫大丈夫!愛さんの全身はぶ厚い皮膚で出来てるから!」
歩夢「ふふ…何それ」
愛「おっ、笑った」
歩夢「…笑ってないよ」
愛「わーうそつきー」ジー 歩夢「……も…もぉ、聞きたいことあるんだよね?」
愛「あっ…はは、そうだね」
愛「じゃあ、聞くね?」
歩夢「うん」 愛「あのさ、歩夢が話してくれた悩みの事なんだけど」
愛「ゆうゆがいないと不安だ。って言ってたでしょ?」
歩夢「…うん」
愛「ずっと思ってたんだ、それだけじゃないんじゃないかなって」
歩夢「え?」 愛「あの時の歩夢との会話の中でちょっと引っかかる部分があったから」
歩夢「引っかかる部分…?」
愛「アタシが同好会のみんなと打ち解けてる…皆に人気があるって」
愛「歩夢、そう言ってくれたよね」
愛「…その時一瞬悲しそうで、ちょっと辛そうな顔してたから」
歩夢「…!」 愛「気のせいかとも思ったんだけどね」
愛「で…ゆうゆから今日聞いたんだ、歩夢に拒絶された、嫌われたって」
歩夢「……」
愛「アタシの聞いた歩夢の悩みが全部なら、そんな事になんないんじゃないかなって思ったからさ」
愛「もし他に悩みがあるんだとしたら、その悩みと関係があるのかなって」 愛「ねぇ歩夢…ストレスの根源ってもしかしたら別にあるんじゃないの?」
歩夢「………」
愛ちゃんは、意外と人をちゃんと見てる
ここまで鋭いとは思わなかったけど…
ごまかそうと思った
でも、向けられた愛ちゃんの真剣な眼差しには、どうしてか逆らえなかった 歩夢「…実は…あの時もね、嫌な夢を見たの」
歩夢「私が侑ちゃんをころしちゃう夢」
愛「…!」
歩夢「同好会のみんなに白い目で見られて」
歩夢「沢山責められて」
歩夢「死んだはずの侑ちゃんに…刺されて」 歩夢「今でも鮮明に覚えてるの…おかげで侑ちゃんの顔も」
歩夢「みんなの顔も見るのが怖くなって」
歩夢「だから、この数日間学校にも行きたくなくて、ずっと引きこもってた」
歩夢「怖くて、怖くて堪らなかった…」 愛「思い出させちゃってごめん」
歩夢「ううん…」フルフル
愛「…今は、アタシの顔見ても平気?」
歩夢「うん…なんとか大丈夫」
愛「そっか…」
愛「……」 愛「その夢のせいで、ゆうゆと?」
歩夢「…ううん、それだけじゃないよ」
愛「……話せる?」
歩夢「……」コク
─
─ 私は、あの夏の大型イベントの出来事を経て…侑ちゃんだけのスクールアイドルとしてじゃなく
私は私を応援してくれるみんなの為にも、精一杯歌って踊りたいと思えるようになった
侑ちゃんと同様に、自分も本当にやりたい事を見つけられたから
侑ちゃんが新しい道で頑張るなら
私もこの道でこれからどんどん成長して、変わっていきたい
ファンのみんなともしっかり向き合っていきたい それと、これまで私は侑ちゃんとの関係にばかり固執してた
だからこれからは、これまで以上に同好会のみんなの事ももっと知って…知ってもらって…より親密になりたいって思った。
けど…あれから実際みんなと接してみて気付いた
私は無意識に侑ちゃんの話ばかりしていて
侑ちゃんの事ばかり考えてた …これじゃダメだって思った
だから、相手と話す時は極力侑ちゃんの名前を出さないようにしたかった
でも…いざ話そうとしても、どういう風にみんなと接していいのか分からなくなってた。
これまで普通に話せてたはずなのに
かといって侑ちゃんの話をしてしまえば“またか“って呆れられるかもしれない 私に対してつまらないって思って見えない壁を作られるかもしれない
そう思ったら不安で堪らなくて、上手く踏み込めなかった。
本当はもっとみんなに歩み寄りたいのに、歩み寄る勇気を出すことが出来なかった。
侑ちゃんがいなきゃ何も出来ないのかって、そんな自分に辟易した
そんな後ろ向きにばかり考えるようになった自分が…心底嫌で 侑ちゃんの不在が増えてからそんな気持ちが募りに募っていって
そんな時に、私は悪夢を見るようになった。
不安が募る度に頻度も増えて、おかげで寝不足も続いて…練習にも身が入らなくなって
出来ていたダンスも、歌も満足に出来なくなった
侑ちゃんがいないとここまで自分は不器用だったのかと…何も出来ないのかと、私は焦燥感に苛まれた それでも、やりたいことを止めちゃいけない…止まっちゃいけない…侑ちゃんがいなくても、一人でも出来るって
そうやってプレッシャーを自分に掛けて頑張ろうと思った。
でも、それもかえって私のストレスになってたのかもしれない。
そこから、侑ちゃんに拒絶される夢を見始めた
それがとてもリアル過ぎて、私の抱えていた不安も、ストレスもまた一つ増えた 侑ちゃんが離れていっちゃう、私には侑ちゃんが必要なんだ…
またそんな風に思い始めてしまう自分が更に情けなくなった
…私は結局、未だに侑ちゃんに固執してるんだ
…あの時からまるで変わってない。
本当に、こんな弱くて醜い自分が本当に嫌になって、全てがどうでも良くなった
そんな秘めていた私の胸中を全部、愛ちゃんに向けて話した
きっと引かれても仕方ないと思う 愛「………」
歩夢「…本当はもう、このまま同好会もやめようって思ってたんだ」
歩夢「このままの精神状態だと楽しいって思えてたことも、楽しめなくなっちゃうから」
愛「…でも、まだやりたいんだよね?」
歩夢「…やりたくない」
歩夢「もう何もやれる気がしないよ」
歩夢「幻滅したよね、みんなともっと仲良くなりたいって思ってたのに」 歩夢「結局みんなの事に最初から興味なんて…知ろうだなんて思ってなかったんだよ、私は」
歩夢「結局ずっと侑ちゃんのことばかり考えて…」
歩夢「その結果勝手にイライラして…」
歩夢「勝手に侑ちゃんに当たって、傷付けて…拗らせて」
歩夢「ほんとに、何もする気が起きなくなっちゃった」 歩夢「馬鹿みたいだよね…本当に…」
─あなたが死ねば良かったんですよ
歩夢「…っ、本当に…死んじゃえばいいんだよ、こんな私なんか」ボソッ
愛「バカ言わない」ベシッ
歩夢「っ…いっ……!?ぇ…っ?」 愛「滅多なこと言うもんじゃないよ」
愛「次そんなこと言ったらホントに許さないぞ?」
歩夢「……ごめん」
歩夢「でも、もう私のことはほっといてよ…」
愛「ほっとけないからここに来たんじゃん」
歩夢「……」 愛「…ていうか、ちゃんとみんなと繋がってるよ、歩夢は」
歩夢「え…」
愛「歩夢が歩み寄ろうとしてくれた時点で…ううん、スクールアイドルを始めた時点から、ちゃんとみんなと繋がり始めてるって思うな」
愛「少なくとも愛さんは、歩夢と繋がってるつもり」
歩夢「それにりなりーも」
愛「この前りなりーと3人で話したじゃん」
愛「3人でお弁当作ってシェアしよーって」 愛「歩夢がアタシとりなりーのお弁当を食べたいって言ってくれて…歩み寄ってくれたから出来た約束だよ?」
愛「その時歩夢と約束が出来て、愛さん達はすごく嬉しかったんだから」
歩夢「……」
愛「…歩夢はゆうゆがいなきゃ何も出来ないんじゃないよ、そう思い込んじゃって考えすぎて、結果自信を無くしちゃってるだけ」
愛「それにいいじゃん、ゆうゆの話をしたって」 愛「ずっと一緒にいた歩夢にしかゆうゆは語れないんだよ?」
愛「歩夢だけの特権じゃん」
愛「歩夢が話したいことを話せばいいんだよ」
愛「持ってるもの全部出さなきゃ、相手だって受け取ることすら出来ないし」
愛「ちゃんと愛さん達は聞くよ?聞きたいもん、歩夢の話も…歩夢が話してくれるゆうゆの話も」 愛「歩夢がどれだけゆうゆが大好きか…これまで二人でどんな体験をしてきたのかって」
愛「やっぱり気になるもん」
愛「だから、自分に規制をかけようとなんかしなくていいよ」
愛「かけちゃったらそれこそつまんないじゃん」
愛「だから歩夢の好きなことを語ってけばいいんだよ」
歩夢「……話したって、こんな私に誰も興味なんて持たないよ」 侑が必要というのを否定する必要はないよな
侑しかいらない、にならなければ 愛「こんなって…そんな卑下しないの。わかんないよ、それは」
愛「少なくともアタシはさ、歩夢にすごく興味あるんだよ?」
歩夢「えっ?」
愛「あっ…いや、変な意味じゃないよ?」
歩夢「う、うん、分かってるよ…」 愛「…アタシはさ、歩夢と仲良くなってみたいなーってずっと思ってた」
歩夢「……」
愛「なんなら、ゆうゆを超えてやるー!って気持ちでね」
歩夢「……愛ちゃんが…?」
愛「うん、そのくらいの心意気ってこと」 歩夢「そう、でも……無理だと思うな」
愛「え?」
歩夢「一人の人にしか執着できないこんな私と」
歩夢「誰とでも仲良くなれて、誰にも固執しない愛ちゃんじゃ」
歩夢「前提として釣り合わない…相性なんか良くないって思うし」
ああ、だめだ私…すごく嫌なこと言ってる… でも、愛ちゃんが私となんか…
歩夢「だから…」
歩夢「愛ちゃんが私にとって、侑ちゃん以上の存在になるとは思えない」
愛「わかんないじゃん!」
歩夢「っ…わかるよ」
愛「わかんないってば」 愛「それくらいの心意気でって言ったけどさ、やってみなきゃそれはわかんないもん」
愛「アタシだって正直…同じこと考えてたよ、歩夢とまるで正反対だなぁって」
愛「でも…だからこそそんな自分と違う歩夢がずっと気になってたし」
愛「もっと歩夢のことを知ってみたいって思ったんだよ?」
歩夢「愛ちゃん…」 歩夢「…私」
歩夢「…私ね、本当は誰とでも仲良くなれる愛ちゃんがどこかで羨ましいって思ってた」
歩夢「…羨ましいなって思うだけだった」
歩夢「でも、愛ちゃんはそんな風に思ってくれてたんだね…」
歩夢「ありがとう、愛ちゃん」 素直に嬉しい
愛ちゃんのその気持ちが…言葉が、今の私にはとてつもなく温くて、救いになったと気がした
愛「…わ、わぁ、なんか、ちょっと照れるね」
愛「…でも、言ってることは無茶かもしれないけどさ、完璧に無理だなんて思いたくないんだ、愛さんは」
愛「だからさ、歩夢も今悩んでることを無理だって簡単に諦めないで」
愛「…止まりたい時は止まってもいいんだから」 愛「そしたら一緒に止まって耳を傾けてくれる人がちゃんといる」
愛「勿論ゆうゆだっているし…愛さん達だっている」
愛「だからさ…やめようだなんて言わないでよ、歩夢」
歩夢「…」
歩夢「………」コク 歩夢「……もっと、もっと早くからこの話を皆にしておけば良かったんだよね」
歩夢「勝手に一人で空回りしちゃってた」
愛「今からでも間に合うって」
愛「愛さんだけじゃなくて、ファンは勿論、同好会のみんなだって歩夢のこと大好きなはずだもん」
愛「だから、ここからもっと広げてこ?歩夢の世界!」 愛「まずは愛さんと大親友になるとこからね!」スッ
歩夢「………っ」
歩夢「くっ…ふふっ」
愛「…?」
歩夢「なんだか、変っていうか…不思議な人だよね。愛ちゃんって」
愛「えー??ちょっとー、それ褒めてるの?」ブンブン その愛ちゃんの言葉も、屈託のない表情も
全てが本気なんだと思った。
ただただ純粋に、なんの計算もなく人の心に触れて、引き寄せて
そんな愛ちゃんだから人から好かれるんだって思った
自覚なんかないんだろうなぁ、だからこそタチが悪いとも思えるけど
でも…だからこそ、つい差し伸べられたその手をとりたくなる かけてくれた言葉を信じてみたくなる
もしかしたら私がちょろいだけなのかもしれないけど
でも、そういう所が侑ちゃんとどこか似てる気がした
見た目も性格も違うのに…もしかしたら同じくらい眩しくて
だから本当に不思議で…
歩夢「ふふっ…やっぱりおかしいよ、愛ちゃん」 愛「あー!絶対褒めてない!」
歩夢「褒めてるよ」
歩夢「だから…もう一度がんばるね」ギュ
私は、伸ばされたままの愛ちゃんの手をとった 愛「お…?」
歩夢「お友達で良かったら」
愛「…ふふっ、じゅーぶんだよ!」ニコッ
そんな嬉しそうに
子供みたいな笑顔を向けられたら、こっちまで釣られちゃうなぁ 愛「あ…てかさ、歩夢」ジロジロ
歩夢「な…なに?」
愛「やっぱりちょーっとだけ太ったよね」ジー
歩夢「」
歩夢「えっ?」 愛「さっきから思ってたんだけどさ、若干丸くなったよねー」
歩夢「絶交」
愛「あー!うそうそ!嘘だよ!」
歩夢「ふふっ…嘘じゃないでしょ、自覚してるもん…」
歩夢「寧ろこっちこそ嘘、冗談だよ」 愛「意外と意地悪だなぁ…」
歩夢「えへへ…ごめんね」
歩夢「でも本当に何もしてなかったし…月曜日からはちゃんと学校も、練習も出るよ」
歩夢「サボっちゃった分、取り戻さなきゃだし」
歩夢「みんなにも謝らなきゃ」 愛「そっか…まぁ、みんな心配してたからね」
歩夢「え、本当に?」
愛「みんなめっちゃ歩夢にメッセージ送ってたと思うよ?見てないの?」
歩夢「えっ、嘘…」スッ
歩夢「…ほんとだ」
歩夢「気付かなかった…完全通知オフにしてたから」 愛「あはは、そりゃ気付かないか」
愛「でも、みんな歩夢の事気にしてるでしょ?」
歩夢「うん…」
愛ちゃんの言う通り、色々後ろ向きに考えすぎてたのかな
歩夢「………」
愛「さ…そろそろ戻ろっか、風邪引いちゃうし」スクッ
歩夢「ん…うん、そうだね」スクッ ─
──
…テクテク
歩夢「…そっか、侑ちゃんとせつ菜ちゃんに話したんだ」
愛「うん、ごめんね?勝手に話して」
歩夢「ううん、逆の立場だったら私も話しちゃってたと思うし…」
歩夢「逆にごめんね、愛ちゃんと璃奈ちゃんに負担かけちゃった」
愛「負担だなんて思ってないって」 愛「でもそれ聞いてゆうゆ…すごい思い詰めてたし」
歩夢「そう、だよね…」
本当に申し訳ないことをした…
でも…
愛「まず…ゆうゆとちゃんと話さなきゃね」
歩夢「うん…でも今は、その…心の準備がしたいから…」 愛「まだ怖い…?」
歩夢「ちょ、ちょっとだけね」
歩夢「気まずいのもあるし…」
歩夢「だから…」
愛「うん、分かった。ゆうゆにメッセージで伝えとこっか?」
歩夢「お願いしていいかな…?」 愛「うんっ」
歩夢「ありがと」
愛「お、到着!結局話が長くなっちゃったね」
歩夢「でも、話せてよかったよ」
歩夢「ありがとね、愛ちゃん」
愛「えへへ…そう言ってもらうとすごい嬉しいよ」 愛「……歩夢はさ、今でも見るの?変な夢」
歩夢「あ…ううん、今は薬飲んでるからなんとかなってる状態なんだ」
歩夢「本当はあまり頼りたくなかったけど…」
歩夢「もうそんな事言ってられないよね、人にうなされてる所見せちゃってるし…」 愛「なるほど…」
愛「…うん、分かった」
歩夢「え?」
愛「歩夢が薬の力に頼らなくてもさ、めっちゃいい夢を見られるくらい一緒に楽しいことやりまくればいいんじゃん」
歩夢「え、え…?」 愛「ねぇね、明日の土曜日って予定空いてる?」
歩夢「それは…勿論、空いてるけど」
愛「やった!」
歩夢「な、何…どうしたの?愛ちゃん…」
愛「ふふん、明日ちょっとお出かけしようよ!歩夢♪」
歩夢「え…ええ…?」 愛さんのイケムーブと歩夢のヒロインムーブが合わさり最強に見える 確かに愛さんと侑ちゃんって歩夢から見たら少し重なるところありそうだな ───
─
愛「─ていうわけなんだ」
侑「……」
侑「そっ…か…」
侑「歩夢がそんな事になってたなんて…気付けなかった」
愛「気付けなかったのはさ、仕方ないんじゃない?だって…」 侑「ほんとはね、愛ちゃん」
愛「……?」
侑「本当は私も不安でいっぱいだったんだ…」
侑「転科してから、最初は色々上手くいかなかった」
侑「落ち込むことも実はあった」 侑「みんなと…歩夢がいないと心細いなって思ったこともあった」
侑「…でも、みんなだって頑張ってるし、自分で選んだ道なんだから弱音なんて吐いてらんないなって思ったんだ」
侑「だから、少しでも周りに追いつく為に…これまでの期間は他の時間を削ってでも必死に勉強も練習も頑張った」
侑「…でも、結果それで歩夢の悩みにも最初は気づけなかったし」
侑「歩夢が相談し辛い状況にもしてたんだよね」 侑「…私のせいだよね…」
愛「そっか…同じだったんだね、二人とも」
侑「……」
愛「そういう時こそさ、二人には愛さん達に頼って欲しかったなー」
侑「…ごめん」 愛「…ふふ、ほんと変なとこ不器用さんだなー二人とも」
侑「うぅ…返す言葉もないよ…」
愛「歩夢もそうだけどさ…もう、一人で抱え込まないでね?ゆうゆ」
侑「…うん」 愛「まぁ、また抱え込んでたとしてもこっちから気付いてやるけどね」
侑「え…?」
愛「お節介かもしれないけどさ…大切なメンバーだし、少なくともアタシは勝手に助けに行っちゃうからね?」
侑「かっこいいなぁ、愛ちゃん…」 愛「ほっとけないだけだよ、おばあちゃんっ子だからかな?」
侑「ふふ、それもあるかもね」
侑「でもかっこいいよ、ほんとにヒーローみたい」
愛「…えへへ」
愛「まぁ、だからさ、これからも二人のこともうやだーって言われるくらい助けに行っちゃうからね」
侑「うん…ありがと、愛ちゃん」 侑「それと、歩夢のこともありがとう」
愛「愛さんがいても立ってもいられなかっただけだって」
侑「愛ちゃんが悩みに気付かなかったら、下手したら歩夢が本当にやめちゃってたかもしれないもん」
侑「だから、ありがとうだよ」
愛「……仲直りしなきゃね」 侑「…うん、歩夢がもう少し落ち着いたらちゃんと直接話すつもり」
愛「その為に歩夢の元気、取り戻してくるよ」
侑「ありがと、情けないけど、歩夢のことお願いね…愛ちゃん」
愛「情けなくなんてないよっ、うん、愛さんに任せて!」 侑「ふふ…じゃあ、明日も早いから切るね?」
愛「あっ、そっか、明日も学校なんだっけ」
侑「うん、やること色々あるからね」
愛「そっか、じゃあもう長くは話せないよね」 愛「分かった!じゃ、またね?ゆうゆ」
侑「うんっおやすみ」
愛「おやすみっ」
プツ
侑「………」 歩夢は精神的に参ってた、完全に私の影響だ…
もう少し傍にいれる時間を作っていれば…
けれど、歩夢はそれを望まないんだろうな
…本当に、愛ちゃんがいてくれて良かったと心底思う
でも、愛ちゃんはどうしてこんなに気にしてくれるんだろう。
本当にお節介だからなのかな ───
──
─翌日 昼
駅前
歩夢「……」キョロキョロ
璃奈「あ、歩夢さん」トテトテ
歩夢「…!…璃奈ちゃん…」
璃奈「こんにちは」
歩夢「こ、こんにちは…」ペコリ 歩夢「え…えっと、あれ…愛ちゃんは?」
璃奈「…まだ、すぐ来ると思う」
歩夢「そっか…」
璃奈「……」ジッ
歩夢「……ぅ」 璃奈「……」ジー
歩夢「……っ」
歩夢(ぅぅ…気まずい…)
事前に璃奈ちゃんもいるっていうのは聞いていたけど…
やっぱり少し不安はあるし、緊張する…
でも、璃奈ちゃんにも心配や迷惑をかけちゃったと思うし…ちゃんと謝らなきゃだよね… 歩夢「り…璃奈ちゃん、あのn」
「あーゆむぅーっ!」ギュムモミーッ
歩夢「こふおおおっ!?」ビクッ
愛「!うおっ…びっくりしたぁ…」バッ
歩夢「へっ…!?あ、愛ちゃん!?」 歩夢「びっ、びっくりしたのはこっちだよ!?もぉっ、変質者かと思ったよ…!!」
愛「ごめんごめん、でもそんなにびっくりするとは思わなかったよ」
歩夢「いきなり後ろから抱き着かれたらびっくりするよ…っ!」
愛「えっへへ、にしても歩夢の驚き方すごいね、愛さんまでびっくりしちゃったよ」 愛「ね、すごかったよねりなりー」
璃奈「コバルオンみたいだった」
愛「ほら」
歩夢「ほらじゃないよ!そんなことよりこれ知り合いじゃなかったら普通にセクハラだよ愛ちゃん!」
璃奈「知り合いでもセクハラだと思う」ジト 愛「あっははは!ごめんってばー」
歩夢「もう、もぉ…まだどきどきしてるよ…」
璃奈「でも歩夢さん、元気そうで良かった」
歩夢「げっ、元気っていうか…今のはびっくりしたから…」
璃奈「…でも良かった」 歩夢「えっ?」
璃奈「今日、元々愛さんと二人で出掛ける予定だったんだけど」
璃奈「昨日歩夢さんも一緒に来るって聞いたから」
璃奈「だから、すごく楽しみで早めに来ちゃったんだ」
璃奈「今まで歩夢さんと出掛ける事なんてなかったし、そのくらい嬉しいなって思ったから」 歩夢「璃奈ちゃん…」
歩夢「あの、沢山心配かけちゃったよね…ごめんね…?」
璃奈「ううん、愛さんから少し聞いたけど、歩夢さんが色々辛かったのは知ってるから」
璃奈「だから、今日は一緒に楽しもう。りなちゃんボード 〔むんっ〕」
歩夢「…うんっ、ありがとう、璃奈ちゃん」ニコ
愛「…ふふっ」 璃奈「じゃあ、とりあえず愛さんを通報した方がいいのかな」
愛「えぇーっ!友達に後ろから抱き着いただけなのに!?ブラックジョークが過ぎるよりなりー!」
歩夢「愛ちゃんどさくさに胸も触ったよね…?ごまかされないよ私は」
璃奈「愛さん…」 从||ㆆ_ㆆ||从 愛「わーわーごめんってばー!お詫びに二人にお昼奢るからさ!」
璃奈「愛さん、好き」
歩夢「…切り替え早いよ」
愛「歩夢もそれで許して〜っ」
歩夢「う、うん…もう別にそんなに怒ってないからいいけど」 愛「ありがとーっ、今度からは告知するから!」
歩夢「二度としないでね!?」
愛「えへっ、冗談冗談♪」
歩夢「もう…でも、ありがとね」
愛「んー?」 …愛ちゃんの事だから
私を見つけた時、瞬時に私が緊張しちゃってる事に気付いたんだと思う。
だから方法はどうあれ、私の緊張を解してくれたんだと思う
ほんとに…愛ちゃんはこう見えて結構人のことを見てるよね
でもほんとにびっくりしたからいつか仕返ししようかな… 歩夢「…ううん、そういえば、これからどこに行くの?駅って事は電車に乗るんだよね…?」
愛「そうだよー、どこに行くと思う?」
璃奈「歩夢さんはあんまり行かないところかも」
歩夢「私があんまり行かないところ…」 歩夢「うーん…難しいよ、せめてそこに行って何をするのかだけ聞いていい?」
璃奈「基本的にはお買い物だよ、久しぶりにいいお天気だから、お買い物びより」
歩夢「お買い物かぁ…そういえば、ここのところ曇りだったもんね…久々の秋晴れだって」
愛「アキバだけにね」
歩夢「うん…」 歩夢「…ん……??あ、あれ…?今答え言わなかった?」
璃奈「やっぱり愛さん面白い」
愛「えっへへ〜!今日の愛さん絶好調だからね!」
愛「でも歩夢がパスしてくれなかったら生まれなかったよこのダジャレ!」
歩夢「別に狙ってパスしたわけじゃないけど…」
───
─ 歩夢って確かに侑ちゃんいなかったらコミュ力めっちゃ低そうだもんな… ザワザワ
愛「到着!」
歩夢「わぁ、人いっぱいだね…」
璃奈「土日はこんなものだよ」
歩夢「さすがアニメの聖地って感じだね、すごい…」
愛「で、どこ行くどこ行くー?」 璃奈「まずはせつ菜さんにラノベのおつかい頼まれてるから、それ買いに行きたい」
歩夢「ラノベ?って…小説だよね?ここでしか買えないの?」
璃奈「本屋さんがあればどこでも買えるけど…これから行くお店でしか貰えない特典がついてくるから」
歩夢「そっか、せつ菜ちゃんはそれが欲しいんだ」 璃奈「うん、私も欲しい漫画があるし…まずはそこに行ってもいいかな?数にも限りがあるみたいだから」
歩夢「そうなんだ、じゃあなくなる前に行かなくちゃだね」
愛「だね、早速行こっか!」
璃奈「うん」 ───
お店
璃奈「あった…!」
愛「お、あったー?」
璃奈「うん、残り僅かで危なかった」
愛「ほんとだ!危なかったねぇ…じゃあ買っちゃおっか」 璃奈「うん」
璃奈「…?あれ?歩夢さんは?」
愛「え…あれ?どっか見てるのかな…ちょっと探してくるから並んでていいよ!」
璃奈「うん、分かった」 ─
歩夢「…ラノベってこういう感じなんだ…」
どれもタイトル長いなぁ…タイトルというよりもはや文章というか…
タイトルだけ見ると妹を題材にしたお話が結構ある
妹…かわいいよね、私も妹が欲しいよ
だからたまに彼方さんが羨ましかったりする… 私にも妹が出来たらあんな風に溺愛しちゃうのかな
私からしたら侑ちゃんが妹みたいなところはあるけど……じゃなくて
…うーん、他にも長いタイトルの作品が多い…
異世界ってワードもすごく目に入る
SF系なのかな?
それと、アイドル系のもある。侑ちゃんならすごく好きそう
…………。 …あと、他にはハーレム系
バトル系とか
……え、えっちなタイトルの作品とかがずらりと並んでる…
加えて際どい感じの女の子の表紙があるけど…あんまり直視できない、恥ずかしくて
せつ菜ちゃんってこういうジャンルのも読んでるのかな…
でもすごいなぁ…中々キャッチーなタイトルの本もあるし
下手したら私まで買って読んじゃうかもしれない。
うーん…こっちは、なんのコーナーだろう?同、人誌…? …………
愛「あゆむー?…」キョロキョロ
歩夢「……」ジー
愛「おっ、いた!歩夢ー!」
歩夢「…あ、愛ちゃん」
愛「探したぞー?」 歩夢「あ…ごめん」
愛「何見てたの?」
歩夢「ちょっと気になるタイトルの本があったから」
愛「ふーん…?」
愛「…なんかめっちゃ本薄いね?どんなタイトルなん?」 歩夢「えっとね…」
歩夢「東京タワー×通天閣〜スカイツリーへの背信〜〈 擬人化作品〉だって」
なんだこれ…
愛「どゆこと?」
歩夢「わかんない…」 愛「この表紙の男の子が東京タワーと通天閣ってこと?」
歩夢「わかんない…」
愛「…」
歩夢「……」
愛 歩夢 (どうしよう得体が知れないけどなんか気になる…) 愛「…買ってみたら?」
歩夢「ええ!?」
愛「気になるんでしょ?」
歩夢「…愛ちゃんは気になる?」
愛「ま、まぁ…気にならないといえば嘘になるかも…」 歩夢「そ、そっか…私も気にならなわけじゃないけど…」
歩夢「………」
愛「………」
愛 歩夢「「買っちゃおっか…」」ボソ
璃奈「二人ともなにしてるの…」ジト 歩夢「っ!?わわっ、璃奈ちゃんっ!?」
愛「!…びっくりしたぁ…!もーりなりーいるなら言ってよーっ」
璃奈「そういうのはまだ見ちゃダメ」
歩夢「えっ、なっなんで?」 璃奈「よく見て、成人向けって書いてある」
歩夢「えっうそ…」
愛「……わ、ほんとじゃん」
璃奈「男の子同士が××する内容だから私達にはまだ早い、刺激が強すぎると思う…」 歩夢 愛「えっ、えぇぇぇ!?//」
歩夢「そ、そういうやつなんだ……へぇ…//…わぁ…//なんでこんなとこにあるの//」
愛「あ、危なかったね歩夢…危うく買うとこだったじゃん…//」
歩夢「愛ちゃんがそういうムード出すからだよっ//」
愛「歩夢だって気になってたじゃんっ//」 璃奈「未成年だからどっち道買えないけど…」
璃奈「とりあえずそれ置いて出よう」
歩夢「えっ、も…もう買えたの?」
璃奈「うん、無事買えたよ」 璃奈「あとは他の階でグッズとか見て回ろう、歩夢さんの好きそうな物もあると思うし」
歩夢「なるほど…」
愛「おっ…じゃあ買い物終わったらお昼にしようよっ」
愛「その頃には流石にお腹も空いてるでしょ、愛さん約束通り奢っちゃうよ〜!」 歩夢「うん、そうだね、愛ちゃんのお言葉に甘えてご馳走になろうかな」
璃奈「たのしみ!」
从||๑><๑||从
─────
──── ─
──璃奈「…愛さん、ごちそうさま」
歩夢「ごちそうさま、愛ちゃん」
愛「うんっ!めっちゃおいしかったねー」
愛「色んなグッズも買えたし、美味しいオムライスも食べれたし、最高だね!」 璃奈「うん、荷物いっぱいだけど満足。オムライスも絶品だった」
歩夢「ほんとにおいしかったな…メイドカフェに行くとは思わなかったけど」
愛「ふふ、ならではのとこで食べてみたかったんだよねー」
璃奈「いいと思う、私も初めてだから新鮮だった」 歩夢「メイドさんも綺麗だったよね」
璃奈「うん、声が心地好くて脳がとろけそうだった」
愛「あっはは!確かにねっ」
愛「ていうか歩夢とか結構メイド似合いそうじゃない?」
歩夢「え、ええ!?そうかな…私ああいう接客とか自信が無いんだけど…」 愛「出来ると思うけどなー、うさぎの耳つけてあゆぴょんだぴょーん!とか言ってさ」
璃奈「想像が容易い」
歩夢「あ、あゆぴょんはやめて//ほんとに恥ずかしいから//」
愛「えっへへ、でも歩夢のメイド姿見てみたいなー」
璃奈「コスプレレンタルできるところがあるけど、行ってみる?」 歩夢「えっっ…そんなとこ…あるの?」
璃奈「うん、アニメのコスチュームとかも勿論あるし…撮影もして貰えるよ」
歩夢「す、スタジオ!?」
愛「いいじゃんいいじゃん!行ってみよーよ歩夢!」 歩夢「え、うう…まぁ、二人がそんなに言うならいいけど…」
愛「やった!」
璃奈「じゃあ、決まりだね。私も歩夢さんのメイド姿、見てみたい」
────
─ シャッ
愛「ね、どうどう?りなりー」
璃奈「…うん、かっこいい。愛さんのスーツ姿。SPみたい」
愛「えへへー、ありがと!りなりーのメイド姿もめっちゃかわいいじゃん!似合ってる!」
璃奈「ん…そうかな、ありがとう。りなちゃんボード〔てれてれ〕」 璃奈「愛さんはメイドさんじゃなくて良かったの?」
愛「メイドもいいけどさ、一回こういうのも着てみたかったんだよねー」
璃奈「そっか、すごく似合ってる」
愛「えへへ、そんな褒められると照れるよー。ありがとっ!」
璃奈「あとは歩夢さんだけだね」
愛「うん!お、噂をすれば」 歩夢「……」テクテク
歩夢「ど、どうかな…?」
璃奈「うん、フリフリしてて…うさ耳もついててすごくかわいい」
歩夢「…あ、ありがとう……//璃奈ちゃんもかわいいなぁ」
璃奈「…照れるけど嬉しい、ありがとう」
愛「……」 璃奈「…愛さん?」
愛「ん?あー!うん!二人ともめっちゃかわいい!」
歩夢「嬉しいけど…今の間はなんなの…」ジト
璃奈「歩夢さんに見とれてた?」
愛「えっへへ!そうだね、見とれてた!」 歩夢「…あ…ありがと、愛ちゃんのもかっこいいなぁ」
愛「ふふっ、ありがと!あゆぴょん!」
歩夢「!…あっ…//あゆぴょんはやめてってばっ//」
璃奈「じゃあ…撮影できる所借りれたから、そこで撮ってもらおう」
歩夢「う、うん…//」
愛「おっけ!」 ───
─
撮影終了後
電気街
─愛「いやーいっぱい撮れたね!」
璃奈「うん、結構時間掛けちゃったけど…楽しかった」
歩夢「ふぅ…でも、よく借りれたね?あんなすごいスタジオ」
璃奈「うん、当日予約で運良く借りれたから。今日はついてるみたい」 歩夢「…璃奈ちゃんやることが早いなぁ…」
璃奈「今日は歩夢さんがいるからいつも以上に張り切ってるのかも…」
愛「うんうん、それあるよねーっ」
歩夢「…そんなに気を遣わなくてもいいのに」
愛「んー、気遣いってよりやっぱり今日は歩夢を楽しませたかったし一緒に楽しみたいって思ったからさ…」 愛「愛さんは勿論楽しかったけど…」
璃奈「私も楽しかった…それに歩夢さんには私の好きなものを少しでも知ってもらいたかったから」
璃奈「歩夢さんは今、楽しい?」 歩夢「…ん…どこもかしこも電化製品のお店でいっぱいで」
歩夢「アニメのキャラクターがいっぱいで」
歩夢「なんだか私の知ってる世界とまるで別の世界だなぁって感じて」
歩夢「きっと二人に誘われなかったら知らないままの世界だったと思う」
歩夢「昔から私も侑ちゃんも、愛ちゃんと同じでこういう文化とは無縁だったから…すごく新鮮で…うん、楽しかったよ」 歩夢「……」
璃奈「そっか…今度、侑さんも誘って一緒に行きたいな」
歩夢「…!うん…」ニコ
璃奈「愛さんと二人はもうマンネリ化してたし…」
愛「ええぇ!?りなりーひどくない!?」 璃奈「冗談だよ」テヘペロ
愛「んもー!りなりー意地が悪いぞーっ」ムギュウゥゥ
璃奈「わわっ、ごめんなさい」アタフタ
歩夢「…ふふ、それとね」
愛 璃奈「……?」ピタ 歩夢「ここの所ずっと…塞ぎ込んでて、何もする気が起きなくて」
歩夢「物事を前向きに考えることすら放棄して、アイドルなんて辞めちゃおうって思ってた」
歩夢「でも…さっき衣装を着た時に思ったんだ」
歩夢「メイド服だったけど…またこんなフリフリな衣装を着たりとかして…」 歩夢「歌ったり踊ったりしたいなって」
歩夢「やっぱり大好きなんだなぁって」
愛「…いつかまたみんなで歌いたいよね」
歩夢「うん、そうだね、みんなとまた歌いたいな…」 歩夢「しばらく休んでおいて何言ってるんだって話だけど」
璃奈「そう思ってくれてるだけでみんな喜ぶと思う」
愛「うんうん、みんな歩夢のこと待ってるはずだもん」
歩夢「…ありがとう、二人とも」
歩夢「まだ不安なこともあるけど…また頑張るよ」 愛「また行き詰まりそうな時は誰でもいいから相談してよね?」
歩夢「うん、そうする。ありがとう」
愛「ふふ…じゃっ、次行こっか!」
歩夢「うんっ」
─── それから、最後に璃奈ちゃんと愛ちゃんと一緒にゲームセンターでクレーンゲームやプリクラ撮ったりして沢山遊んだ
いつの間にか時間は大きく経過していて、外もすっかり暗くなってて
明るい時とは違って街はとてもキラキラしてた
画面越しで見たことはあるけど、実際に見ると感動してしまうほどに綺麗で
ほんの一端でも、改めてこの世界を知れてよかったなって思うし
お昼からの活動だったけど、久しぶりに充実した一日だったと素直に思った カタン コトン
歩夢「……」ピコピコ
璃奈「…まだ序盤だね」
歩夢「これでまだ序盤なんだ…」ピコピコ
璃奈「でも…歩夢さんがこういうゲームやってるとは思わなかった」 歩夢「私も璃奈ちゃんがやってただなんて思わなかったよ」ピコピコ
璃奈「流石に飽きちゃったけど」
歩夢「普通だったらやる気無くしちゃうよね…」ピコピコ
璃奈「うん、でも私は頂上まで登ったよ」 歩夢「えっ!すごいな…」ピコピコ
璃奈「続けられる歩夢さんもすごいと思う」
歩夢「中々飽きないんだ、こういうコツコツやるゲーム好きだから…」ピコピコ
璃奈「そっか…今度歩夢さんの好きそうなゲーム探してみるね」 歩夢「わ、嬉しいな…ありがとう、璃奈ちゃん」ピコピコ
歩夢「!あっ…落ちちゃった…」
璃奈「…そこ、鬼門だもんね」
歩夢「うん…また後で挑戦かな」
璃奈「歩夢さんの好きなものが知れてよかった」
歩夢「……え?」 璃奈「こうしてゆっくり歩夢さんを知ることってなかったから…」
璃奈「今度は、歩夢さんが好きなところに連れて行って欲しいな」
歩夢「…うん、勿論。今度また三人で遊びに行こうね」
璃奈「うん」
歩夢「…愛ちゃんの好きな所にも行きたいし」 璃奈「そうだね」
愛「……zzZ」
璃奈「ん…愛さんぐっすり。肩重くない?」
歩夢「ん、大丈夫だよ。疲れちゃったんだね…」
歩夢「…愛ちゃんって不思議だよね」
璃奈「うん…不思議。一緒にいるだけで楽しくなる」 歩夢「うん、ちょっといたずらっ子だけど…すごくそばに居て楽しい子だなって思う」
歩夢「それに強くて…弱い部分なんてあるのかなってくらい強くて、笑顔が太陽みたいに眩しくて」
歩夢「落ち込んでる人がいたら直ぐに手を差し伸べてくれる」
璃奈「ヒーローみたいだよね」
歩夢「本当にね…」 歩夢「私が塞ぎ込んでた時…愛ちゃんに連れ出してもらったから…だから、感謝してる、愛ちゃんには」
璃奈「…私も愛さんにはすごく感謝してる」
璃奈「ラノベだったら、愛さんはハーレムになってたかもしれない」
歩夢「…あははっ、そうかもね」
歩夢「罪深いね」
璃奈「うん、愛さんは罪深い」 歩夢「…璃奈ちゃんもちょっと眠そうじゃない?」
璃奈「…うん、少しだけ」
歩夢「こっちの肩、空いてるよ」
璃奈「いいの…?」
歩夢「うん、あと少ししたら着いちゃうけど…良かったら」 璃奈「じゃあ…少しだけ、お言葉に甘えて…」コテン
歩夢「着いたら起こすね」
璃奈「うん…ありがとう…」
………… 璃奈「……zzZ」
愛「……zzZ」
歩夢「…もう寝ちゃった」
…昨日までの私が見たら、ちょっとびっくりしちゃうかもなぁ…この光景
────
─ 駅前
愛「ふあぁ…ねむい…」ゴシゴシ
璃奈「うん…」ウトウト
歩夢「ぐっすりだったもんね、二人とも」
愛「うんー…とりあえず、ご飯でも食べて帰ろっか?」 璃奈「ん、あ…ごめん、これから家に帰らなきゃいけない」
愛「あ、そうなの?用事?」
璃奈「用事というか…これからかすみちゃんとしずくちゃんがお泊まりに来るんだ」
璃奈「前からお泊まり会しようって話してて」 歩夢「璃奈ちゃんって大分リアル充実してるよね」
璃奈「そう、かな?」
愛「へぇいいなー!アタシ達も泊まりに行きたいよー」
璃奈「一年生だけの会だから二年生はダメ」 愛「フラれちゃった」クルッ
歩夢「こっち見ないでよ…」
愛「んーそっかぁ…じゃあここで解散かな」
璃奈「うん…ごめんね、今日はありがとう。楽しかった」
愛「うんっ、愛さんも楽しかったよ!また行こーね!」 歩夢「そうだね、私も楽しかった…」
歩夢「あの…かすみちゃんとしずくちゃんによろしくね?璃奈ちゃん」
璃奈「…うん、分かった」
璃奈「歩夢さん、月曜日…来るよね?」 歩夢「…うん、行くよ。いつまでも引きこもってられないし…みんなにも心配かけちゃったこと謝らなくちゃ」
璃奈「そっか…じゃあ、また月曜日に」
歩夢「うんっ。またね、璃奈ちゃん」フリフリ
愛「またね!」フリフリ
璃奈「うん、また」フリフリ テクテク…
………………
歩夢「…………」
愛「…………」
愛「さ、て…じゃあアタシ達も…」
歩夢「うん、帰ろっか」 愛「お泊まり会しよっか」
歩夢「うん……」
歩夢「…ん?…え…?はい…?」
愛「ふふーん…ね、歩夢!今日家に泊まってかない?」 歩夢「えっ、ええ…?!」
歩夢「きゅ、急すぎるよ!何も用意してないし!」
愛「でも思い立ったが吉日っていうじゃん!」
歩夢「一年生が羨ましくなっただけだよね??」
愛「えへへ、バレちゃった?」 歩夢「バレバレだよ…」
愛「んー、ダメかなー…?」
歩夢「………」
愛「楽しいと思うんだけどなー…」
歩夢「も、もう…分かったよ…」 歩夢「一回家に戻って聞いてみるね…着替えも用意しなきゃだし」
愛「やった!じゃあ早速行こ!歩夢ん家」
歩夢「うん…」
…この愛ちゃんの強引さが私にも欲しいよ でも、侑ちゃん以外の家にお泊まりすることなんてなかったから。
どこかで楽しみにしている自分もいた。
だから愛ちゃんの誘いは断れなかった。
というか断るつもりもなかったかもしれない
…ひとまず私は、愛ちゃんと一度家に戻って
お泊まりの許可を貰ってからお泊まりセット持って家を後にした
…侑ちゃんは、まだ帰ってないみたい ────
──
テク テク
愛「〜♪」
歩夢「…元気だね、愛ちゃん」
愛「んー?あはは、まだ体力はあるよー」
愛「歩夢はもう疲れた?」
歩夢「まぁ…ちょっとだけね、久しぶりに沢山歩いたからかな…」 愛「あらら…そっか、ごめんね無理に歩かせちゃって」
歩夢「ううん…運動不足になるより全然いいもん」
愛「おぶってこっか?」
歩夢「い、いいよ…荷物いっぱいだし…全然歩けるから」
愛「そーお…?無理そうだったら言ってね?」 歩夢「うん…そういえば、愛ちゃんの家ってもんじゃ焼き屋さんだったよね」
愛「そうそう!あ、もしかしてお腹空いた?」
歩夢「あはは…実は、ちょっとだけ…」
愛「そっかそっか!愛さんもお腹空いて来たよ〜」
愛「流石に今の時間はお客さん多めだからもんじゃは無理だけど…」 歩夢「あ、そうなんだ」
愛「だからお部屋で食べよ!アタシ何か作るし」
歩夢「愛ちゃんの手料理?」
愛「うん、そうだよー」
歩夢「手伝うよ」 愛「んーん、歩夢は愛さんの部屋で休んでてよ」
歩夢「そういうわけにも…」
愛「だいじょーぶだって、せっつーも来るし部屋でじっくり話してて」
歩夢「…そう…?じゃあ…」 歩夢「…え?せっつー…?」
歩夢「えっ!!えっ!!せっ、せっつーちゃんくるの!?」
愛「せっつーちゃんて」
歩夢「い、いつ呼んだの…」
愛「さっき歩夢が家で準備してる間に」 歩夢「か、勝手すぎるよ愛ちゃん…!もぉ、呼ぶなら呼ぶって言って…心の準備が…」
愛「それはほんとごめん、でもせっつーも大分心配してたしさ」
愛「…二年生で遊んだことも無かったし」
歩夢「……?愛ちゃん…?」 愛「お、ついたよ、愛さん家!」
歩夢「……!」
愛さんの指さした家の前には、大きめの荷物を持った見慣れた少女が立っていた
…せつ菜ちゃんだ
愛「せっつー!」フリフリ
せつ菜「…!愛さん!歩夢さん!こんばんはっ」フリフリ
歩夢「…せつ菜ちゃん…」
───
─ あかん
一方その頃音楽科と交流(意味深)している侑ちゃんは…という想像をしてしまう 少し時間がかかりますが続きます
遅くてごめんなさい 愛部屋
─歩夢「………」
せつ菜「そういう事でしたか」
歩夢「話さなくてごめんね…」
歩夢「あの時、私が悩んでる時に…せつ菜ちゃんに背中を押して貰ったのに…」
歩夢「押して貰ったからこそ、話し辛かったっていうのもあるんだけど」
歩夢「言い訳だよね」 せつ菜「…そんなことで私がどうこう思ったりなんてしませんよ、歩夢さん」
せつ菜「何事も始めることが大切ですから」
せつ菜「私の言葉で歩夢さんの前進する為の糧になれたのなら、それで。ただ…」
歩夢「…ただ?」
せつ菜「やりたいことって、やっぱり上手くいかないことも沢山ありますから」 せつ菜「ですから、進むのが辛い時…そんな時は立ち止まってもいいと思うんです」
せつ菜「でないと…今回みたいに擦り減ってしまいますから」
せつ菜「歩夢さんには…大好きなものも、大好きな人も…大好きなままでいて欲しいですし」
せつ菜「だから…私は立ち止まってでも大好きを止めて欲しくないです、歩夢さんには」 歩夢「……そう、だよね…」
歩夢「私は…やりたい事のために結果大好きな人のことも…自分のことも否定しちゃってた」
歩夢「大切なこと、忘れちゃってたよね…」
せつ菜「歩夢さんは歩夢さんのままでいていいんですから、あまり難しく考えないでくださいね」
歩夢「…ありがとう、せつ菜ちゃん」
せつ菜「ふふ、いえいえ」 せつ菜「…しかし、安心しました」
歩夢「え?」
せつ菜「前に愛さんから聞いた時は、大分参っている状態だと聞いていたので…」
せつ菜「今日、愛さんと璃奈さんと三人でお出かけしたんですよね?」
せつ菜「楽しめましたか?」
歩夢「…うん」 歩夢「今まで侑ちゃん無しで誰かと遊びに行くことって無かったから…正直ちょっとだけ不安はあったけど」
歩夢「知らなかったことが沢山で、色んな事が新鮮で楽しかった」
歩夢「愛ちゃんからも、璃奈ちゃんからも沢山元気を貰えたし」
せつ菜「…良かったです」 せつ菜「さっき突然愛さんにお泊まり会に誘われて」
せつ菜「歩夢さんがいると聞いて、考えるより前に飛んで来ちゃいました」
せつ菜「それで、さっき元気そうな顔を見た時に安心したんです」
せつ菜「歩夢さんが少しでも元気を取り戻せたのなら、本当に良かったです」
歩夢「…心配かけちゃってごめんね」 せつ菜「いえ、私の方こそ…もっとしっかり歩夢さんの変化に気付いていれば…相談に乗れたのに」
せつ菜「ごめんなさい」
歩夢「せつ菜ちゃんが謝るの…おかしいよ。元々私の心の弱さが原因だもん」
せつ菜「最初から強い人なんて中々いませんから、だから歩夢さんはこれからいくらでも強くなりますよ」 せつ菜「心強い人が周りに沢山いますしね」ニコ
歩夢「…そうだね」ニコ
せつ菜「やっぱり、愛さんのおかげですよね、歩夢さんが立ち直れたのは」
歩夢「…前からずっと、もっと仲良くなりたいって思ってくれてたんだ、愛ちゃんは」
歩夢「あんなに真っ直ぐに私のことが気になるって…」 歩夢「仲良くなりたいってハッキリ言ってくれたのは…初めてだったし、びっくりしちゃった」
歩夢「誰も私になんか興味ないって…凄く消極的になってた私には、とても眩しい言葉だったから」
歩夢「それに愛ちゃんみたいな人気者に、あんな風に素直な気持ちを伝えられたら…やっぱり…」
歩夢「…正直嬉しいって思うし」
歩夢「私も愛ちゃんみたいに、皆に自分の気持ちをしっかり伝えられたらいいなって思えた」 せつ菜「…きっと歩夢さんなら出来ますよ」
歩夢「うん、ありがとう。しっかり勇気貰ったから…また自分なりにやりたい事を頑張るよ」
歩夢「勿論無理のない程度にね」ニコ
せつ菜「…応援してます」ニコ
せつ菜「…あっ、勿論私とももっと仲良くしてくださいね!」
歩夢「うんっ、勿論」
せつ菜「ふふ、嬉しいですっ」 せつ菜「あっ…それと、今日は用事で行けませんでしたが今度は私もお出かけに誘ってくださいね!」
せつ菜「今日のことを聞いて羨ましかったんですから!」
歩夢「あ、うん、そうだね。今度一緒に行きたいな」
せつ菜「約束ですよ?」
歩夢「うんっ」 せつ菜「ふふ…あっ、そういえば、愛さんの方…やっぱりお手伝いした方がいいですよね?」
せつ菜「ここでじっと待っているのも悪いですし…」
歩夢「…あー…うん、でもせつ菜ちゃんの相手しててって言われたし…」
せつ菜「…ん…?あれ?私子供扱いされてますか??」 歩夢「あっ、いや!そういう意味じゃなくて…!せつ菜ちゃん疲れてるでしょ?私も疲れてるし、少し休んでようよ」
せつ菜「大丈夫ですよ!歩夢さんの顔が見れて私は元気100倍になりましたから!」
せつ菜「やっぱり手伝ってきます!こんな時のために納豆やヨーグルト!プロテインも持ってきたんです!」スクッ
せつ菜「歩夢さんは休んでてください!」 歩夢「…!」
…いやいやいやいやいや!
歩夢「…せつ菜ちゃん!」ヒシッ
せつ菜「…あ、歩夢さん!?」
歩夢「ころさないでぇ…!」
せつ菜「ええ!!?な、何言ってるんですか!?」 歩夢「っ、じゃなくて!その、大人しくして!」
歩夢「…大人しくしないとこのまま締め付けるからね!」ヒシィッ
せつ菜「何故!?」
せつ菜「ちょ、離してください歩夢さん!一旦落ち着きましょう!」
歩夢「離さないよっ、せつ菜ちゃんのこと絶対離さない…!…せつ菜ちゃんいい匂い…」
せつ菜「情緒どうなってるんですか!?」 ガチャ
愛「…人の部屋で何イチャついてるの二人ともー…」
ぽむせつ 「…!あ、愛ちゃん(さん)!!」
愛「んもー愛さんが準備してる間に除け者にするのは良くないぞー?」
せつ菜「いっ、いちゃついてないですよ!歩夢さんが急にホールドしてくるから…」
歩夢「せ、せつ菜ちゃんがいい匂いだったから…」
せつ菜「それが理由だったんですか!?」 愛「あはは!もー二人ともなーに言ってんだか…ほら、夕飯の準備出来たから、始めよっか」
ドサッ
せつ菜「…!わ、これは…」
歩夢「…たこ焼き器?」
愛「お泊まり会って言ったらタコパかなーって思って」
せつ菜「わぁ…!タコパ…!感動します!」キラキラ 愛「お、もしやせっつー初めて?」
せつ菜「はい!タコパするのは初めてです!」キラキラ
歩夢「すごく目がキラキラしてる…でも、いいね。私もした事ないから感動しちゃう気持ちは分かるかも…」
歩夢「でも、下準備大変だったよね?やっぱり手伝った方が良かったんじゃ…」 もれなくせつ菜ちゃんがついてくるけど…
歩夢「……」チラ
せつ菜「……?なんですか歩夢さん?」
歩夢「う、ううん…」
愛「…まぁ確かに、一人じゃ大変だし折角だからもう一人呼んでちょっと手伝って貰ったんだ」
歩夢「…え?もう一人…?」 せつ菜「…??」
…待って、これもしかして…
愛「……手伝ってくれてありがとね、どうぞ入って入って!」
……
ドタドタドタドタ!! 「上原ぁぁぁぁ!!」ハグッ
歩夢「ききゅあああーっ!?」ドサッ
突然部屋に駆け込んできたその子の姿より、唐突な突進に物凄くびっくりした…
押し倒されてからも何が起こったのか思考が追いつかなかったけど…
次第に状況を理解できるようになった
…ほんとに、ほんとに愛ちゃんは悪い…
歩夢「っ…は、…ぇ…?」
侑「…………なんだか、久しぶりだね…歩夢」 歩夢「…ぁ、…ゅ……ゆ、っ」
歩夢「ゅ、侑ちゃん…!!?」
歩夢「ど、どうして…っ」
愛「…………驚き方すごいね歩夢」
侑「あはは、確かに…何かの鳴き声みたいだったよ?ね、せつ菜ちゃん」
せつ菜「ビリジオンみたいでしたね」
ゆうあい「ほら」 歩夢「ほらじゃないよ!!?もうっ、愛ちゃん!どういうこと!?呼ぶなら呼ぶって言ってよぉ…!」
愛「………あはは、ごめん。最後に歩夢を驚かせてみたかったからさ」
歩夢「いや今日ずっと驚きっぱなしだったよ…!!」
歩夢「…それと…侑ちゃんも!ほんとにびっくりするから急に突撃してこないで…!」 侑「えへへ、ごめんね…?でも歩夢に会いたいって思ったらもう止まんなかったんだよね」
歩夢「っ…」
鼻の奥が、つんとした
…ほんとにずるい
歩夢「……もう、どうして…あんな事言っちゃったのに…」
侑「………」 歩夢「………侑ちゃん…」
歩夢「ごめんね…」
侑「…ううん、私こそごめん」
歩夢「っ…あのね」
侑「…全部聞いてる。でも、つもる話は後にしよ?」
歩夢「え…?」 侑「とりあえず皆でたこ焼きしようよ、お腹空いちゃったし…」
侑「それからの方が多分…お互いに話しやすいと思うし」
侑「…あとで、ちゃんと二人で話そ?」
歩夢「…………ん…」コク
侑「…ふふ、ありがと…」 侑「…よいしょ」バッ
せつ菜「………びっくりしました、侑さんが来ていたとは…」
侑「うん、さっき終わったんだけどね、愛ちゃんに誘われて急いで準備して来たんだ」
歩夢「……」ムスッ 愛「歩夢ごめんね…?」 合掌
歩夢「……ううん、いいよ。なんだか慣れてきちゃったし…でもこういうのは最後にしてね…?」
歩夢「あと…いつか仕返しするからね、愛ちゃんには」
愛「えへへ、そうだね…うん、分かった!」
歩夢「もう…」 ────
─
ジュー…
モグモグ
愛「ど?おいしい?」
せつ菜「はい!すごく!外はカリカリですし」
侑「うんうん!中はトロトロだよね!愛ちゃんすごいなぁ」
歩夢「…うん、ほんとに美味しい。割ってみると分かるけどまるでチーズ入ってるみたい」
愛「えへへっ、良かった!」 歩夢「次、私が焼くよ」
愛「あ、じゃあお願いしていい?」
歩夢「うん」
愛「じゃあ順番で焼いてこっか」
せつ菜「そうですね!」
侑「うん!あ…そういえば…二人ともお出かけしてたんだよね?璃奈ちゃんと三人で」
愛「うん、そだよー」 せつ菜「用事がなければ私も行きたかったです…」
侑「ねー、私も行ってみたかったなぁ」
愛「今度行こうよ、行こうと思えばいつでも行けるし!」
せつ菜「そうですね!機会があればいつか!」 愛「…あ、そういえば写真あるんだよね、見る?」ゴソゴソ
侑「ほんとに?見たい見たい!」
歩夢「え…?」 ジュー
愛「ほい」スッ
せつ菜「わぁ…!歩夢さん可愛いです!」
侑「うさみみだ!あゆぴょんだ!あゆぴょんポーズだ!」 キラキラ 歩夢「ちょっ//愛ちゃん何見せてるの!?//」
愛「いいじゃーん、見せる為の写真なんだしさ」
歩夢「それはそうだけど…ポーズの写真見られるのはちょっと恥ずかしいよ…//」
侑「わぁ…愛ちゃんのスーツ姿もかっこいいし璃奈ちゃんのメイドさんも可愛いね…!」
侑「いいね…ときめいちゃうなぁ…!」 せつ菜「意外と歩夢さんのスーツ姿も似合いそうですよね!オールバックとかにして!」
愛「あはは!確かに!ちょっとだけいかつそー」
侑「オールバックにしたらホストっぽくなりそうじゃない?」
せつ菜「なるほど!あゆむさんからあゆとくんになるんですね!」
歩夢「そこは別にあゆむくんで良くないかな…?」 侑「あゆ兎くんかぁ…」
歩夢「あゆぴょんの名残りを感じるんだけど…」
愛「でもやっぱり歩夢はフリフリ系がいよねー!」
ゆうせつ「ねー!」
歩夢「ねーじゃないよ…もう…//」 侑「いやぁ、恥ずかしがってる歩夢もやっぱり可愛いなぁ」
歩夢「むぅ…」
愛「…でも逆になんか、ゆうゆが恥ずかしがることってあんまりないよね?」
せつ菜「言われてみれば…ちょっとそういう一面も見てみたいですよね」 侑「んーまぁ…そういう場面になったことがあんまりないからかなぁ、そういうエピソードもないし」
歩夢「…はい、焼けたよ、みんなの分」コト
侑「お、ありがとー」
愛「ありがとっ、歩夢はやっぱり知ってるんじゃない?ゆうゆの恥ずかしい話とか」
歩夢「………うん、あるよ、侑ちゃんの恥ずかしいエピソード」 愛「お、あるの?聞きたーい!」
せつ菜「私も聞いてみたいです!」
侑「え?うそ、なんかあったっけ…?」
歩夢「ん…当時…小学6年の夏だったかな」 歩夢「侑ちゃん…スイカにハマっててね」
愛「もう面白い」
侑「なんで!?」
せつ菜「そ、それで…ハマっててどうしたんですか?」
歩夢「スイカをお腹いっぱい食べて…気を付けてたらしいんだけど、間違って種を飲み込んじゃったの」 侑「あ、やばい」
歩夢「勿論飲み込んでも害はないんだけどね…」
歩夢「次の日食べ過ぎでちょっとお腹壊しちゃって」
歩夢「腹痛も相俟って色々不安になったんだろうね…」
歩夢「どうしよう私の中でスイカの木ができちゃうよぉぉぉ!!って、一生泣いてた」 愛「…ぷっ…ふふふふ…っ…あはは…!ちょ、ゆうゆ純粋すぎでしょ!歩夢のモノマネもツボだよ…っ…!」
歩夢「ええ…?」
せつ菜「ふっ……で、でもっ、その…可愛らしいお話ですね…っ」
侑「あーっ//なんでそんなこと覚えてんのっ//普通に恥ずかしいじゃん//」
歩夢「まぁ…確かにまだ幼かったから可愛らしいエピソードだけど…」
愛「う、ん…そうだね………っ」 侑「愛ちゃん笑いすぎ…//」
歩夢「あと、一昨年のストーカー事件」
せつ菜「ストーカー事件!?」
侑「あーそれちょっと…//」
愛「なになに!?めっちゃ気になる!」 歩夢「これも夏くらいだったかな…?」
歩夢「よく行きと帰りの時に後ろから気配を感じるって言ってたんだ」
せつ菜「…こ、怖いですね…」
歩夢「私も一緒に登校も下校もしてるけど特にそんな気配は感じなかったし…」
歩夢「振り返っても別に人がいる訳じゃないから気のせいじゃない?って話してたんだけど」 歩夢「それでも侑ちゃんはストーカーかもしれないって騒いでて」
歩夢「その時ね、侑ちゃん一週間くらい気分転換でポニーテールにしてたんだけど…」
愛「へーそうなんだ!」
歩夢「うん…で、その気配の正体が…」
歩夢「自分のポニーテールだったんだよね」
侑「」 愛「っ、〜!ぷっ、く…っ」バシッ
侑「いいっ!?たっ!ちょ、愛ちゃん!?」
愛「あはは!んもー助けてせっつー!ゆうゆがこわいー!」ギュウ
せつ菜「ぅっ、ふふ……っ」 侑「もー笑いすぎだよ二人ともー!//」
歩夢「大変だね…」
侑「他人事!?」
愛「っあぁーもう涙出てきたよ…」
せつ菜「ふふ…っでも侑さんにもそういところってあるんですね」
侑「しょ、しょっちゅうじゃないよ!?滅多にそんなことになんないし!」 侑「二人にだってちょっとした恥ずかしいミスくらいあるでしょ!?」
せつ菜「まぁ、侑さんほど強いエピソードはありませんけど…」
せつ菜「ハンドクリームだと思ったらコンデンスミルクを手に塗ってたことならあります…」
歩夢「っ…ぷ…っ」
侑「ちょ……まって…っ…」フルフル
愛「ぷふっ…ぅ…っ、いやそれもおもしろすぎるでしょせっつー……っ」 せつ菜「そ、その時コンタクトしてなかったんですよ…//」
歩夢「…手が凄いことになってそうだね」
せつ菜「はい…流石に甘い香りがしたのですぐ気付きましたけど…//」
侑「ぶはっ…ぅ、ちょっ、流石に塗るとこで気付いてよ……っ」
せつ菜「……っ//」
愛「はぁ…もー笑った…みんなわりと恥ずかしいエピソードってあるんだねー」 歩夢「愛ちゃんも勿論あるよね?」
侑「あ、そうそう!散々笑ったんだから愛ちゃんの恥ずかしい話も聞かせてよ!」
せつ菜「是非聞きたいですね!やっぱり愛さんでもそういう天然な話ってあるんですか?」
愛「えー、考えてみたら愛さん特に恥ずかしい話とかないんだよねー……」 愛「うーん…」
侑「えー、ないの?じゃあ例えばこういうのが弱点!とかそういうのない?」
せつ菜「愛さんの事だから無さそうですよね」
愛「………まぁ、特にないかなぁ」 歩夢「…愛ちゃんつまんないね…」
侑「ねー」
愛「おおおーい!今の聞き捨てならないぞ!」
せつ菜「大丈夫ですよ愛さん!愛さんはとても面白いです!どんなギャグも侑さんなら笑ってくれますし!」
愛「それあんまりフォローになってないよせっつー!?」 ────
─
侑「ふぅ、流石にお腹いっぱい…」
せつ菜「あと残りちょうど四個ですね」
歩夢「うん、これ食べて終わりだね」
愛「だね、じゃあ一人一個で!はい!」ヒョイ
せつ菜「ありがとうございますっ」 侑「ありがとっ」
歩夢「………え」
私に配られたたこ焼きから
茶色い豆のような物がはみ出てる…これって…
歩夢「…ねぇ愛ちゃん」
愛「なになに?」
歩夢「ひとつ聞いてもいい?」 愛「え、ひと月?ひと月はちょっと流石に泊めるのは難しいかなぁ…」
歩夢「……はい?」
愛「ひと月居てもいい?っていうから…」
歩夢「ちがっ…一つだけ聞いてもいい?って意味だよ!?」
愛「あー!そっちか!」 侑「ぶふっ……ねぇもうやめてよ愛ちゃん…っ……」
愛「…っ、いやごめんそう聞こえちゃったから…っ」
せつ菜「なんだか漫才みたいですね!お二人のやり取り!」
歩夢「もう、絶対からかってるよ…」ジト 歩夢「ねぇ愛ちゃん、これ納豆入れてるよね…?」
せつ菜「あ、はみ出てますね!いつの間に入れたんですか?」
愛「あちゃーはみ出てたかぁ、気付かなかったや」
愛「シメはロシアンルーレットにしようかなって思って入れてたんだけど、歩夢に行ったんだね」
歩夢「もぉ、勘弁してよ愛ちゃん…しっかり隠してもらわないと」 侑「あ、ロシアン自体はいいんだね歩夢」
歩夢「気は進まないけどね、納豆だし…」
愛「まぁまぁ、納豆でも意外と美味しいかもしれないし!ここはぐいっと!」
歩夢「うぅ……まぁ、引いちゃったから食べるしかないよね……」
パク せつ菜「……」ジッ
侑「……」ジッ
愛「……」ジー
歩夢「……」モグモグ
コクン 歩夢「……ん、ごちそうさま」
せつ菜「…どうでした?」
侑「不味かった??」
愛「美味しかった???」
歩夢「…うん、なんか…普通…」
どうにもリアクションがしづらい味だった
…………… それから、たこ焼きパーティが終わって
四人で談笑を混じえつつ後片付けをした
少しうるさくしちゃったから、愛ちゃんのおばあちゃんに謝ったけれど…全然気にしてないって言われた
寧ろ騒げくらいの感じだったけど…なんだか、愛ちゃんのおばあちゃんだなぁって思った。
………… …結果、二年生が集まったけれど、素直に楽しかったって思う
せつ菜ちゃんが泊まると聞いた時も…侑ちゃんが来た時も…本当はほんの少しだけ怖かったけど
会ってみれば不思議と普通に話せた
この前まで、顔を見ることすら怖かったのに…
昨日の愛ちゃんの言葉や…今日の璃奈ちゃんの優しさと、さっきのせつ菜ちゃんの言葉で、少しずつ自信がついてきてたのかもしれない 流石に愛ちゃんの強引さは目に余る部分がありすぎるけど…
…そして、これから二人ずつ交互にお風呂に入ることになった
愛ちゃんとせつ菜ちゃんが先で、次は私と、侑ちゃん…
一先ず部屋で侑ちゃんと待つことになった
二人には多分、気を遣わせちゃったかな ──
侑「ふぅ…お腹いっぱい…」ドサッ
歩夢「…牛になっちゃうよ」
侑「今ならもう牛になってもいいやー…なんてね」
歩夢「……」
侑「……二人だね」
歩夢「…っ……」
歩夢「うん…」 侑「……変な夢、まだ見ちゃう?」ムクリ
歩夢「……大丈夫、薬…飲んでるから」
侑「っ…そっか…」
侑「…ホントは、私も愛ちゃんも悩んでたんだ」
侑「今日…私が来るかどうか…せつ菜ちゃんを誘うのにも多分、愛ちゃんとしては結構悩んだんだと思う」 侑「…かえってまた歩夢にストレスを与えちゃうんじゃないかって思ったから」
歩夢「………」
侑「…でも、やっぱり歩夢にすぐにでも会いたかったんだ」
侑「せつ菜ちゃんも一緒だと思う」
侑「自分本位で動いちゃってごめんね…」 歩夢「…ううん、大丈夫だよ。…こういうのは早い方がいいって私も思うし」
歩夢「愛ちゃんもそう思って誘ってくれたんだと思うから…一言くらい言って欲しかったけど」
歩夢「でも…実際四人で色んな話が出来て楽しかったよ」
侑「…そっか、良かった…私も楽しかったなぁ…」 侑「…事情はさ、さっきも言ったけど全部聞いたんだ」
歩夢「うん…」
歩夢「…ごめんね、あの時…侑ちゃんに心にもないことを言っちゃった」
歩夢「きっと、どこかで侑ちゃんのせいにしてたんだと思う」
歩夢「昔から私は侑ちゃんの陰にいて、誰かと友達になる時も侑ちゃんのおかげだったんだと思う」 歩夢「だから今回…侑ちゃんがいなくても、自分一人で誰かと深く関われるようになれたらって…なりたいなって思った」
歩夢「それでも私の口からは侑ちゃんばっかりで、侑ちゃんとの思い出しか持ってなくて…」
歩夢「侑ちゃんが居なきゃダメだって思う反面…少しだけ、侑ちゃんが恨めしいって思っちゃったんだ」
侑「…そっか」 歩夢「でも、大切なことを忘れちゃってた」
歩夢「好きなものは好きなままでいいんだもんね…」
侑「…私も、歩夢が居なきゃダメなんだよ?」
歩夢「…え?」
侑「私も本当はずっと歩夢と、歩夢たちのいない新しい環境が少しだけ不安だったんだ」
侑「上手くいかないこともあったし、だから歩夢と少しの時間でも話すだけで…会うだけでも元気になれた」 侑「…だからこの間の電話の時、嘘だったとしてもわりとショックだったんだからね?」
歩夢「っ…ご、ごめん…」
そっか、侑ちゃんも…
侑ちゃんも辛かったんだ
ずっと不安の中で、へこたれないように自分を追い込むことで
いつもの侑ちゃんとして成り立ってきたんだ
…私ばかりだと思ってた
自分本位なのは、私の方だ… 歩夢「……っ」
侑「…」ギュッ
歩夢「わわっ…ゆ、侑ちゃん…?!」
侑「でも、歩夢が辛い時に傍に居られなくてごめんね…」
歩夢「…!ううん、私こそ…気付けなくてごめんなさい…自分のことばっかりで…」
侑「…それはお互い様だよ」 侑「…また、不安になった時はさ、しっかり話そうよ、私も今度はちゃんと話すから…」
侑「愛ちゃんやせつ菜ちゃん…他のメンバーに話してもいいし」
歩夢「うん、今度からはそうするつもり…」
歩夢「…ありがとう、ごめんね…」
侑「ううん…こっちこそありがとね」 侑「…歩夢はさ…大丈夫だよ」
侑「私がいなくたってもっと、これ以上にみんなの中に溶け込めるし、色んな人と繋がれる」
侑「だって歩夢は凄くかわいいし、現に歩夢のファンだって沢山いるんだもん」
侑「同好会メンバーのみんなだって歩夢の魅力を知ってるんだから…」
侑「それから…」
侑(…それから、それ以上に…多分あの子も…)
侑「………」 歩夢「…侑ちゃん?」
侑「あっ、ううん!」
侑「それに、歩夢はちゃんと成長出来てるよ、同好会に入りたての時よりも一層輝いて見えるもん」
侑「努力しようとしてる歩夢を嫌う人なんて絶対いない」
侑「歩夢の親友でファン第一号の私が言うんだし、間違いないよ!」 侑「だから…もう誰も自分に興味ないだなんて言わせないよ?」
歩夢「……侑ちゃん…」
侑「…それに私たちの関係だってずっと変わらないんだからね!絶対に!」
侑「…この先も、私の想いは変わらないから…歩夢がどんな夢を見たって絶対に変わらないから」
歩夢「……うん…っ」 歩夢「私も、ずっと変わらない…」ギュ
侑「…ふふ」ニコ
歩夢「…侑ちゃんは、今楽しい?」
侑「…うん、楽しいよ!知りたい事も沢山知れるし…すごく楽しいんだ」
歩夢「……」
今日の私と同じだ… 歩夢「…良かった」
侑「…今ね、作曲の勉強してるんだ」
歩夢「うん」
侑「歩夢…良かったらさ、作詞してみない?」
歩夢「え…?」
侑「初めて作る曲は、歩夢と作りたいんだ」 侑「やっぱりさ、一番大切な友達だから」
歩夢「侑ちゃん…」
侑「歩夢の為だけに曲を書きたいんだ」
歩夢「………でも」 ───言ってることは無茶かもしれないけどさ、完璧に無理だなんて思いたくないんだ、愛さんは
歩夢「……そうだよね」
侑「…歩夢?」
歩夢「…じゃあ、私は侑ちゃんの為だけに作詞を書きたい」 侑「……!」
歩夢「いつ出来るか分からないけど」
侑「ううん、いつでもいいよ!じゃあ…二人のこれからの目標だね」
歩夢「…!…うん…っ」 侑「…ちょっと泣いてる?」
歩夢「ぅ、な…泣いてないよ?」
侑「うそー?身体震えてるよ?」
歩夢「…うぅ…ごめん…嬉しくて…ちょっと…」
侑「…ふふ…よーしよーし…」サスサス
──────
─── ─
せつ菜「やりました!上がりです!!」
歩夢「ああ…!また負けたぁ…」
侑「あびゃー歩夢連敗じゃん」
愛「あははっ、歩夢ってめっちゃ顔に出るもんねー」 歩夢「うーん、つい出ちゃうんだよね…ポーカーフェイスって難しい…」
せつ菜「歩夢さんはババを過剰に意識し過ぎてるのだと思いますよ!」
せつ菜「引く時は何か別のことを考えればいいんです!分かってないですね!」
歩夢「なるほ………あれ、今煽られた?」 侑「そこが中々難しかったりするけどねー」
愛「言っても実際ババ抜きは4本勝負でゆうゆが優勝だけどね!ゆうだけにね!」
侑「…ぶっ、クッ…ふはははは!愛ちゃんそれっダジャレとしては弱過ぎるよぉ…っ…!」バンバンッ
歩夢「めちゃくちゃ笑ってるけど…」 せつ菜「ほんとに侑さん強いですね…その次に強いのが2位の愛さんで、私が3位…歩夢さんが4位ですね!」
歩夢(3位に煽られたのかぁ…)
愛「まぁ割と熱い勝負だったと思うけどね〜」
愛「熱くなりすぎて気付いたら時間も遅くなっちゃってたね」
歩夢「…あ…ほんとだ、もうこんな時間なんだ」 侑「だねー、楽しいと時の流れって早いや」
侑「タコパもゲームもこんなに楽しくなるなんて思わなかったし」
せつ菜「そうですね!そもそもまさか今日、愛さんと歩夢さん…それから侑さんとお泊まり会が出来るだなんて思ってませんでしたし!」
愛「ふふっ、正直誘った愛さんですらそう思ったよ」
愛「…でも、二人も来たら絶対もっと楽しくなるなぁって思ったからさ」 愛「まぁ…やっぱりちょっと急すぎたけどね、当日でのお誘いだったし」
侑「そういうとこも愛ちゃんらしいっちゃらしいけどね」
侑「でも、愛ちゃんが居なかったらきっと、歩夢と今も仲直りしてなかったと思うし…」
歩夢「………」
侑「こんな楽しい時間も大切だなぁって、改めて思ったよ」 せつ菜「そうですね、こうして4人でゆっくり遊ぶ事もありませんでしたから…この会だけでより親密になれたと思います…愛さんのおかげですよ」ニコ
愛「…別にこんなの…愛さんがしたいことをしてるだけだよ?結果振り回しちゃってるもん」
歩夢「振り回されても…結果みんな笑顔になっちゃうんだよ」
愛「ええっ?」
せつ菜「そうですね、愛さんにはそういう不思議な力があると思います!」 愛「ちょ、待って待って愛さんめっちゃべた褒めされてるじゃんやめてよー!嬉しいけどめっちゃ照れるって!」
せつ菜「こういう愛さんのたまに照れてしまうところもとても可愛いらしいですよね!」
ゆうぽむ「ねーっ」
愛「むぅ…ねーじゃないよもー…」
三人「……」ニコニコ 愛「っ…あーもーほら!これからせっつーが持ってきてくれたアニメ映画観るんでしょ!準備するからね!」
せつ菜「あっ!はい!是非観ましょう!お泊まり会をするなら絶対この映画を皆さんと一緒に観たかったんですよ!」
侑「おお…せつ菜ちゃんめっちゃ目がキラキラしてるね」
愛「せっつーお泊まり会自体初めてらしいからね、意外とアタシもだけど」 侑「へぇ、ほんとに意外だね。色んな子家に連れ込んでそうなのに」
愛「語弊がある言い方やめよ?!」
侑「えへへっ」
歩夢「………」
せつ菜「……?歩夢さん?どうかしました?」 歩夢「…あ、あのね…」
歩夢「映画を観る前に、しておきたいことがあるんだ」
三人「……?」
歩夢「お願いしてもいいかな?」
── ────
─
愛「…それじゃあ、かけるね?せっつーとゆうゆもおっけー?」
せつ菜「はい!」
侑「うん、おっけーだよ!」
愛「歩夢も平気?」
歩夢「……うん、大丈夫」 愛「…よし、じゃあいくよ…せーの」ポチッ
Trrrrrr……
ガチャ
璃奈『…もしもし?愛さん? 』
愛「おっ、りなりー!さっきぶり!スピーカーにしてくれる?」
璃奈『ん…さっきぶり、どうしたの?愛さん』ポチ 愛「そこにしずくとかすかすもいるよね?」
かすみ『かすみんですー!!! 』
愛「お、いたいた!」
しずく『 …?愛さんと電話してるの?』
璃奈『 うん…たった今電話掛かってきて…』 ガチャ
エマ『はい、もしもし?』
せつ菜「あっ!エマさんも出ましたよ!こんばんは!エマさん!!」
エマ『うん、こんばんはせつ菜ちゃん、こんな時間にどうしたの?』
せつ菜「遅くにすみません。その、用件を伝えたいのですが…その前に出来たら果林さんも呼んでもらえませんか?」 エマ『あ、今横にいるよ〜♪はい、喋って!果林ちゃんっ』
果林『こんばんは、どうかしたの?』
せつ菜「こんばんは!ちょっと…もう少しだけ待っててください!」
エマかり「……?」 ガチャ
彼方『もしもし〜?侑ちゃん?』
侑「あっ!彼方さんも出たよ!こんばんは、彼方さん!」
彼方『ん?うーん?こんばんは〜、なんだか久しぶりだねぇ』
侑「えへへっ、そうですね!久しぶりです!」 かすみ『その声は侑先輩!?侑先輩がいるんですか!?』
しずく「あとせつ菜さんもいますね」
愛「そだよー、今お泊まり会中♪」
かすみ『えぇぇぇ羨ましいんですけど!』
愛「えーそっちだってお泊まり会でしょ?」 かすみ『 そうですけどぉ…』
しずく『最近侑さんとあまり話せてなかったもんね』
璃奈『うん、かすみちゃんが特に寂しがってた』
果林『…かすみちゃんの声が聞こえるんだけど…これなんの電話なの?』 彼方『んー…?果林ちゃんもいるのー?』
エマ『あれ、彼方ちゃんもいる…?』
侑「あー、えっと…みんなに説明するね!」
侑「まずはみんな久しぶり、中々同好会に顔出せなくてごめんね?」
侑「で…ちょっと色々あって今2年生だけで集まってお泊まり会してるんだけど…」 侑「今、用件があって1年生と3年生それぞれに電話をかけてる状態なんだ」
璃奈『…用件って、歩夢さんの事?だよね?』
しずく『え、歩夢さん…?』
侑「…うん、そうだよ」
彼方『お…2年生だけでってことは、じゃあそこに歩夢ちゃんもいるのかな〜?』
愛「うん、いるよっ」
歩夢「…えっと、こんばんは…」 かすみ『えっ!本当に歩夢先輩もいるんですか?!めちゃくちゃ楽しそうなんですけど!』
しずく『わ、ほんとに歩夢さんだ…具合はもう平気なんですか?』
かすみ『あっ!そうですよ!メッセも送ったのに反応がなかったし、これでも心配してたんですからね!!』
歩夢「あの…ごめんね?かすみちゃん…それとみんなにも…」
果林『…体調不良って聞いていたけれど…なにか他に理由があるみたいね、休んでたの』 璃奈『………』
彼方『なるほどー…それを話す為のお電話なのかな?』
歩夢「…はい、そうです」
歩夢「直接会った時に話そうかと思ったんだけど…やっぱり今、どうしても話したくて…」
歩夢「まず、みんなに心配かけちゃってごめんなさい…あの…」 歩夢「…っ…その……」
せつ菜「…大丈夫ですか?歩夢さん…」
歩夢「ん……」
歩夢「……」チラ
愛「……?」 歩夢「………」
愛「………」ニコッ
歩夢「…………うん、大丈夫」コク
せつ菜「ゆっくりでいいですから」
歩夢「…ありがとう」
歩夢「実は…」 ─ちゃんとみんなに話さなきゃ…そう思ったらかえって緊張しちゃった
でも、不意に見せた愛ちゃんの屈託のない笑顔を見たら、なんだか一気に緊張が緩んでいった
大丈夫だよって言われた気がしたから
…ほんとうに、不思議な子だと思う …それから、私はみんなに自分が悩んでいたことや自分に起こったことを全部話した
侑ちゃんとせつ菜ちゃんと愛ちゃんに見守られてる状態だったから…思ったよりも落ち着いて話せたと思う
みんなは黙って聞いてくれた 歩夢「…と、いうわけなん…だけど…」
全員『…………』
ぅ、沈黙がこわい…
でも、真っ先にその沈黙を破ったのがかすみちゃんだった かすみ『…なんですかそれ!?』
歩夢「え」
彼方『あー…、悩みってそれだったのかぁ…』
しずく『…歩夢さんがそれで悩んでいたとは思いませんでした…』
かすみ『うん、ていうかそんなことでみんなが歩夢先輩をどうこう思ったりしませんよ!』 果林『ええ、なんならそれが自然だったというか…』
エマ『私は歩夢ちゃんから聞く侑ちゃんのお話好きだよ〜?』
彼方『彼方ちゃんも好きだなぁ…侑ちゃんの面白いお話いっぱい持ってるしねぇ、歩夢ちゃんは』
歩夢「え…」
しずく『でも…嬉しいですよね、歩夢さんがそういう風にもっと私達と仲良くなりたいと思ってくれているのは』 彼方『うんうん…でも、逆に彼方ちゃん達が変な心配かけちゃったよねぇ』
かすみ『色々深く考えすぎなんですよ!歩夢先輩は!』
しずく『ちょ、かすみさん…』
歩夢「あ…あはは…確かに、すごく難しく考えてたのかも…」
エマ『でも歩夢ちゃんが元気そうで良かったよぉ…』 果林『そうね、長い間お休みしてたからほんとに心配してたのよ?みんな』
歩夢「うう…ほんとにごめんなさい」
しずく『歩夢さん…また一緒に練習やお話もしたいですし、月曜日は是非来てくださいね?同好会に』
かすみ『あ、そうですよ!絶対に来てくださいね!』 歩夢「…うんっ、絶対に行くよ」
かすみ『ふふ、待ってますよっ』
かすみ『あ、あと侑先輩が大好きなのはかすみんも一緒なんですからね!!』
歩夢「う、ん……ふふ、でも…大好き度でいったらかすみちゃんには絶対負けないよ?」 愛「おっ、じゃあ愛さんも負けないぞー!」
璃奈『私も負けない…』キリッ
彼方『よく分かんないけど彼方ちゃんも負けないぞー』
かすみ『ちょっと!3人ともなんとなくで参戦して来ないでくださいよぉ!』
侑「あははっ、参ったねこりゃ」 果林『ふふ、茶番が出来るくらいには元気そうで安心したわ』
かすみ『いや茶番って!』
エマ『でも歩夢ちゃん、また辛くなった時はなんでも相談してね?』
しずく『そうですよ、まだ1年にも満たないお付き合いですけど…同じ同好会のメンバーなんですし』
しずく「まだ私達も…歩夢さんとやりたいことも、知りたいことも沢山ありますから」 歩夢「…っ、うん…ありがとう…」
果林『侑もたまには顔出しなさいね?』
侑「あ、はい!私も月曜日に行きます!」
かすみ『ほんとですか!?』
璃奈『じゃあ…みんな久しぶりに揃うんだね』 侑「そうだねっ。みんなの顔も見たいし、久々にみんなと走りたいしっ」
せつ菜「ふふ、では月曜日はみっちりと詰め込んで行きましょうか!」
彼方『お、お手柔らかにねぇ?』
愛「ふふっ、じゃあ…この辺で終わろっか?」
せつ菜「そうですね!もう遅いですし」 歩夢「うん、みんなありがとう」
かすみ『はい!それではまた!月曜日に会いましょー!おやすみなさいですっ』
侑「うんっ!みんなまたね!おやすみなさい!」
ぽむせつあい「おやすみなさいっ」
全員『 オヤスミナサイッ 』
…
プツ─ …………
侑「…良かったね、歩夢」
歩夢「うん…ちょっと不安もあったけど…びっくりするくらいみんな…いつも通りで」
歩夢「拍子抜けというか…なんだかみんなの声を聞いて安心しちゃった…」
せつ菜「…さっきも言いましたが、皆さんも歩夢さんの事が大好きですから」 愛「歩夢もそうだよね?」
歩夢「…うん、そうだね…私、みんなの事も大好きなんだなぁって、改めて思ったよ」
歩夢「…三人ともありがとう、協力してくれて」
侑「えへへっ、いえいえ!」
せつ菜「ふふ、お役に立てて良かったです」
愛「うんうんっ、友達なんだしこれくらい当然だよ!」 歩夢「……」ニコ
ほんとに、温かい人ばっかりだ
もっと早くに相談していればってつくづく思う
…これから、しっかり頑張らなくちゃね…気負わない程度に
……… 侑「ふふ…じゃ、最後に映画観よっか!」
愛「そうだね、準備しよー!」
せつ菜「あっ、笑いあり涙ありの泣ける映画なのでハンカチ必須ですよ!」
愛「へぇ、めっちゃ楽しみ!」 歩夢「うん、私も楽しみだなぁ」
侑「よしっ、準備おっけーだよ!」
愛「あゆむー、再生押してくれるー?」
歩夢「うん、じゃあ…押すね?」
せつ菜「はいっ!」
ポチッ ────
─
鑑賞後
せつ菜「…はぁ…感動です…終わりましたね…」ウトウト
侑「う〜ん…すごく壮大な話だった…」ウトウト
歩夢「うん、なんか、深い作品だったなぁ…」
愛「愛さんでもうるっときちゃったよ〜…歩夢とせっつーはめっちゃ泣いてたけど」 歩夢「ぅっ…あのシーンは泣いちゃうもん…卑怯だよ、ほんとに家族愛とかそういうのに弱いから…」
歩夢「ね、せつ菜ちゃ…」
せつ菜「……zzZ」
愛「ありゃ…」
侑「…zzZ」 歩夢「二人とも寝ちゃってる…」
愛「終盤ちょっと眠たそうだったもんねー」
愛「とりあえず二人ともベッドに寝かせちゃおっか」
歩夢「うん」
── ──
ゆつせつ「…zzZ」スヤァ
愛「ふぅ…これでおっけ!おやすみ…二人とも」
歩夢「おやすみ…。二人とも軽くて良かったね」
愛「確かにね、二人ともちっちゃいから」
歩夢「…ほんとにちっちゃいよね」 身体はちっちゃいけど、私にとってはとても大きな人だと思う、二人とも
愛「…3人までなら寝られると思うし、歩夢もベッドで寝なよ」
歩夢「愛ちゃんは?」
愛「床に布団敷いて寝るよー、たまには床もいいよね〜」 歩夢「…それは流石に悪いよ」
愛「お、じゃあ床で一緒に寝てくれるの?…敷布団1枚しかないよ?2人分の大きな掛け布団ならあるけどさ」
歩夢「うん、全然いいよ。愛ちゃん1人にする方が気になるし」
愛「あははっ、優しいねー歩夢!」クシャクシャ 歩夢「あぅ…っ、ちょ…!もぉ愛ちゃん…髪くしゃくしゃだよ…」
愛「えっへへ…じゃ、布団敷くねーっ」
歩夢「もぉ…ん、手伝うよ」
愛「ありがとっ」
…………… 愛「バタンキュー…!」ドサッ
歩夢「古いよ愛ちゃん」
愛「ほらほら歩夢もおいでー、意外に気持ちいいよ」
歩夢「…うん、じゃあ、失礼して…」バサッ 歩夢「…!ぁ〜…ぷわぁぁ……」
布団ってこんなに気持ちよかったっけ…すごく寝心地が良くて…気持ちがぷわぷわする…
愛「へへ、どうどう?めっちゃ疲れを吸収してくれる感じしない?」
歩夢「うーん…確かに…この包容力がとてつもなく…お日様の匂いもいいなぁ」 愛「でしょでしょ?ふふ…良かったー」
愛「…でもやっぱり敷布団1枚だと狭いかもね」
愛「アタシ端に寄ろっか?」
歩夢「…ううん、お互いに真ん中に寄れば丁度いいし…私はそれで平気だけど…」
愛「そう?愛さんも全然平気だけど…まぁ寒い時は人肌が一番っていうしね!」 歩夢「人肌って言われるとなんだか恥ずかしいね…」
愛「だね、この状況だとちょっとこそばゆいよねぇ……でも寄っていいなら…そっち寄っていい?」
歩夢「…うん、私も寄るね」ズイ
愛「…お、めっちゃ近ーい…!」ズイ 歩夢「……//顔近いよ…」
愛「ふふ…こうして間近で見ると歩夢ってやっぱりすごく可愛いよね♪」
歩夢「きゅ、急に口説かないでよ…」
愛「口説いてないってー!本心だぞ!…間近はいいね!マジかわいい!つってね!」
歩夢「……はい、それ言いたかっただけだね愛ちゃん」 愛「それもあるけどほんとに本心だぞー?」
歩夢「はぁい」
愛「むぅ…」
歩夢「ふふ…ありがとね、愛ちゃん」
愛「…へへ、いえいえっ」 歩夢「…今日一日、楽しかった」
愛「ん…良かった」
歩夢「璃奈ちゃんと愛ちゃんでお買い物に行って…写真を撮ったり、ゲームしたりして」
歩夢「愛ちゃんの家で…2年生だけでタコパして、色んなお話をして」
歩夢「…久しぶりに充実した一日だったと思う」 愛「ふふ…愛さんも同じだよ」
歩夢「…ほんとに、愛ちゃんのおかげだよ」
愛「え、アタシ?」
歩夢「今日、楽しかったのも…侑ちゃんとしっかり仲直り出来たのも、同好会のみんなと話せたのも…」
歩夢「愛ちゃんが落ち込んでる私を見つけてくれたからだよ」 歩夢「勿論せつ菜ちゃんや璃奈ちゃん…侑ちゃんからも元気や勇気をいっぱい貰ったたけど」
歩夢「愛ちゃんからは今回…すごく沢山貰った気がする」
歩夢「だからさっきも、同好会のみんなと落ち着いて話せた」
愛「…お、またべた褒めタイムかなこれ」 歩夢「…照れてるからって茶化しちゃダメだよ?」
愛「ええー…」
歩夢「ふふ…まぁ、やり方はちょっと強引だったけど…」
歩夢「愛ちゃんのしてくれたことが全部…私の救いになったと思う」
愛「大袈裟でしょ」 歩夢「大袈裟じゃないよ…」
歩夢「でも気になるんだ、愛ちゃんが私に対してどう思ってるのかはもう知ってるけど…」
歩夢「どうしてこんなに、私のためにしてくれるのかなって…」
愛「…アタシはたださ、人の笑顔が大好きなんだよね」
愛「それに歩夢の笑顔ってすごく魅力的だと思うし」 愛「だから、歩夢にはいつでも笑ってて欲しいなーって思った。だから…」
愛「まぁ、無茶なことばっかしちゃったけどね」
歩夢「…ほんとに無茶ばっかりだよ…」
愛「それはホントごめんねっ」
愛「でも…ゆうゆと仲直り出来てほんとに良かったよ」 歩夢「うん…私ね、今後作詞することになったんだ」
愛「作詞?」
歩夢「うん、侑ちゃんが作曲で…私が作詞の曲」
愛「お…それはすごいお話ですなぁ」
歩夢「ん…最初に作る曲はね、私の為に作りたいって言ってくれたんだ」 歩夢「だから…私も書くなら侑ちゃんの為に書きたいなって思って」
愛「そっかそっか…」
歩夢「それで、勿論これからも私はみんなの為に歌っていきたいって思ってる」
歩夢「だから…これから侑ちゃんの為に作る曲は、私にとっての…なんていうかな」 歩夢「…私の夢に向かう為の…プロローグみたいにもしたいなって思ってるんだ」
愛「ほぉ…いいじゃん!」
愛「行き詰まった時とか困ったりしたら愛さんで良かったらいつでも手伝うよ!」
歩夢「うん、ありがとう」 愛「でもいいなぁ、アタシもなんか歌詞書いてみようかなっ」
歩夢「勿論私だけじゃなくて…みんなの分も作りたいって言ってたよ」
愛「お、そっかそっか!じゃーゆうゆが作曲できるようになるまでにひそひそ書いてみよーかなっ」
歩夢「うん、いいと思う…私も少しずつ書いていくつもりだから」
歩夢「今目の前にある目標がそれだから…だからより頑張れると思うし、そこから広がる目標も見つけられると思うんだ」
愛「…そっか、そうだねっ」 歩夢「……」
愛「あ、もう眠い?」
歩夢「少しだけ…」
愛「薬は飲んだ?」
歩夢「飲んでないよ」
愛「えっ、飲まなきゃじゃん」 歩夢「でも今日は…飲まなくても大丈夫だと思う」
愛「え…?」
歩夢「今日はみんなと沢山話したし、沢山動いたし…沢山楽しかったから…それに布団も気持ちいいし」
歩夢「だから久しぶりに深く眠れる気がする」
愛「…そっか」
愛「ふふ…じゃあ歩夢がめっちゃいい夢見られるように愛さんがぎゅーってしてあげよう!」ギュッ 歩夢「ひゃっ…!…あ、愛ちゃん…?」
歩夢「…わ、私…そんな子供じゃな…」
愛「…大丈夫だよ、もし今後歩夢がどんな変な夢を見たとしても…」
愛「ここにいるアタシ達は歩夢のことが大好きだから…何があっても味方だから…いつだって支えるしさ」 愛「だから、安心して寝てね、歩夢」
歩夢「っ…ありがとう、愛ちゃん」
愛「ふふ、うん…おやすみっ歩夢♪」
歩夢「…おやすみ、愛ちゃん」
─── ─
数十分後
シーン
愛「……zzZ」
歩夢「…愛ちゃんが先に寝ちゃった…」 …世の中、何が起こるか分からない
愛ちゃんみたいな子とこういう風に関わる事なんてないと思ってたから
当初はギャルっぽい見た目で…私としては少し苦手なジャンルの存在だった
だから無意識にあまり関わろうとはしなかったんだと思う
でも愛ちゃんと話すようになって…気付いた 愛ちゃんを知れば知るほど見た目とは全然違っていた
どこか芯が通っていて、誰からも懐かれて…
いつだって笑顔で
知れば知るほど不思議な子で、余計に知りたいことが増えていった だからもっと
これからも愛ちゃんのことを知っていきたいって思った
自分とはまるで違う人間だからっていうのもあるけど…それを差し引いても多分、誰でも気になっちゃう人なんだと思う。
そんな風に思わせちゃう愛ちゃんは、中々にずるい人種だ 歩夢「……」ジッ
……色々考えてたら眠気が覚めてきちゃった…私もすぐに眠ろうと思ったんだけど
…愛ちゃんの顔がすぐ目の前にあるから、なんだか気になって眠れない
…つい、愛ちゃんの顔を見ちゃう ……愛ちゃんも十分、間近で見ると改めて可愛らしくて…綺麗だなぁって思う
あんなに元気で笑顔が絶えない子が、寝顔になるとこんなに表情になるんだ…
ちょっとそんなギャップがあって余計に可愛らしい
というか…顔が近い、ほんとに近い… でも…それでも、愛ちゃんからは目が離せなかった
ギュッとホールドされてるから身動きが取れないっていうのもあるけど…
…睫毛、長いなぁ…肌も白くて
窓から差し込む月明かりがより一層、愛ちゃんを美しく魅せた
こんなに綺麗なんだ、愛ちゃんって きっと…愛ちゃんのファンだったら堪らない光景なんだろうなぁ…
寝たい…でもやっぱり…
じっと愛ちゃんの顔を見ちゃう 歩夢「………」
愛「……zzZ」
歩夢「………」
愛「………zzZ」
歩夢「……」
愛「…ン……ぁゆむ……zZ」
歩夢「…っ……」 一回の更新が長めだから頻度はあまり気にならないかな ────
───
─約1ヶ月後
登校中
侑「…でねでね、昨日お笑い番組見てたら久々に大笑いしちゃってさぁ」
侑「腹筋が筋肉痛になっちゃったんだよねー」トコトコ
歩夢「……ええ…そんなことあるの?ていうか笑いすぎだよ、隣まで聞こえてたよ?」トコトコ
侑「えー聞こえてた?抑えてた方なんだけどな」 歩夢「抑えられてないから筋肉痛になったんでしょ?」
侑「あっ、確かにね!あっははいたいたいたい…!」
歩夢「わぁ…」
歩夢「……暫くお笑い番組見るの禁止だね」
侑「むー、私の楽しみが…」
歩夢「ある程度耐性は付けなきゃね」
侑「あはは、だよねー」 侑「…あっ、そういえばさ!前に話した作詞の話なんだけど、もう作り始めてるの?」
歩夢「あ、うん!みんなに少し助けて貰いながらだけどちょこちょこ試行錯誤で進めてたよ」
侑「お、そうなんだ!」
歩夢「多分もう少ししたら完成しちゃうかも」
侑「早っ!?えーそっかぁ、私も頑張んなきゃだね!」 歩夢「うん、お互い頑張ろうね」ニコ
侑「うんっ」
侑「……なんか歩夢、調子良くなってきたよね、吹っ切れたっていうかさ」
歩夢「え?」
侑「…ほら、色々あったしさ」 歩夢「ああ…うん、そうだね、色々あったけど…今は大分安定してるかな」
歩夢「踊りや歌もみんなのおかげで少しずつ感覚が戻ってきたし」
歩夢「最近はよく眠れるし、悪夢もあまり見なくなったし」
歩夢「今はやることもやりたいこともあって、すごく楽しいよ」
侑「ふふ、そっかそっか…」 歩夢「こうやってまた前向きになれたのはみんなのおかげだって思う」
侑「…うん、そうだね。本当に…」
愛「おっはーゆうゆー!歩夢ー!」タッタッ
ドクッ
歩夢「…!?…びっ、びっくりした…」
愛「え…?びっくりした?驚かすつもりなかったんだけど」 歩夢「急に声掛けてくるんだもん…。おはよう、愛ちゃん」
侑「おはよー」
愛「うん!ゆうゆもびっくりしたー?」
侑「びっくりはしなかったけどさ…ていうか朝から元気だよねぇ愛ちゃん」
愛「まぁ毎朝走ってるからね〜」
愛「2人も朝走ってみたら?リフレッシュできるよー」 歩夢「うーん、たまに走るけど…毎朝はちょっとまだ…気力がもたないかも」
侑「私は起きれても上手く走れるか不安だよ…眠気でふらふらしそう」
愛「なーる、早朝だけにそう調子は良くないってことだね」
侑「っ…ぷ、ん…っ、ぷひょいたぁぁぁい!!」
ぽむあい「!?」 侑「いたいいたいひひひ…」
愛「…大丈夫この子?」
歩夢「あ、愛ちゃんダメだよ!侑ちゃん今腹筋が筋肉痛だから…」
愛「え、ええ…どうしたらそうなったの…」
歩夢「昨日テレビ見てて笑いすぎちゃったみたいで…」
愛「申し訳ないけど面白すぎるでしょゆうゆ」 歩夢「だから暫く侑ちゃんの前ではダジャレ禁止ね、愛ちゃん」
愛「そっかぁ、まぁ仕方ないよね筋肉痛じゃ、いよいよ耐性つけなきゃじゃない?そこまできたら」
侑「ふうぅ…それ、たったさっき歩夢にも言われたよ。でもほんと無理なんだよねぇ…愛ちゃん面白いんだもん」
歩夢「面白くはないよ?」
愛「最近歩夢の当たりが強い〜っ」 歩夢「ふふ、冗談だよー」
愛「わー歩夢にからかわれたっ」
歩夢「いつも愛ちゃんにからかわれてばっかりだし、このくらいの仕返しはしたいもん」
侑「…ふふっ、でも2人ともそれくらい気の置けない仲になったってことだよねっ」
愛「あー確かにね!歩夢とアタシはもうマブダチだもんねー」
歩夢「マブダチって…まぁ…うん、そうかもね」 愛「えー何その釈然としない感じ〜」
歩夢「…でも…ここの所よく遊びに行くもんね、璃奈ちゃんと3人でとか」
愛「た、そうだね!せっつーと3人って時もあったし」
侑「えーなんかずるーい!」
歩夢「あはは…あんまりタイミング合わなかったもんね」 侑「むう、そうなんだよねー…」
愛「じゃあ都合が合う時にまた遊びに行こーよ!」
侑「あっ、うんっ!絶対誘ってね!」
愛「もち!あ、じゃあアタシこっちだから、また後でね!」フリフリ
歩夢「……うん、また後で」フリフリ
侑「じゃあねー!」フリフリ
……… 歩夢「………」
侑「……」
侑「さ、て…じゃあ私もこっちだから行くね?」
歩夢「うん、今日も頑張ろうね侑ちゃん」
侑「うんっ、それじゃね!歩夢っ」
歩夢「うん…っ」フリフリ ………………
テク テク…
ピタ
侑「…ふふ、なんだか…ちょっとだけ妬けちゃうなぁ…」 校舎へと駆けていく愛ちゃん
その背中を数秒間ほど見つめていた歩夢を見て、私はそう思った
……この約1ヶ月で、歩夢のメンタルは大分回復した
まだ少し心配なところはあるけれど…歩夢は今、とても充実してると思う
ここのところは、しずくちゃんの演劇の練習のお手伝いをした話とか
果林さんからプロポーション維持のコツを教わったという話とか
同好会のメンバーとのことを話してくれるようになった そんな歩夢の様子は、とても楽しそうで
確実にみんなと前よりも打ち解けていた
それに歩夢は、以前よりも前向きになったし、目の前のことに真摯に、コツコツと取り組むようになったと思う。
まぁ、前から歩夢はそういうすごく真っ直ぐな子だったんだけど、それがより強くなった気がする きっとそれは、みんなのおかげだって私もそう思う。
…それと、特に愛ちゃんが
歩夢のことをずっと気にかけてくれてたからだとも思う
…愛ちゃんは、お節介なところはあるかもしれない けれど、歩夢に関してはなんだか…それだけじゃない気がした
聞いていた話だけど、愛ちゃんが歩夢と仲良くなりたかったという話は本当だと思う
でも、私はきっと別の感情もあるんじゃないかって気がしてた
実際愛ちゃんの真意は分からないし、私の勘だから違うかもしれないけど…
それと…歩夢も今、もしかしたら…
───── ──
数日後 部室
ザァァァ……
彼方「……zzZ」
しずく「…そこ、違うよかすみさん」
かすみ「ぐぬぬ…」カリカリ
璃奈「……」カタカタ
ガチャ
かすみ「あっ、歩夢先輩!」 歩夢「こんにちは〜…暖かいね、ここ」
璃奈「暖房入れておいたんだ」
歩夢「そっか…すごく助かるよ…」
しずく「こんにちは歩夢さん。外、寒かったですもんね」
歩夢「うん、ほんとに寒い…あれ、勉強中?」
しずく「はい、もうすぐテスト期間ですし」
歩夢「あ、そうだね、もうすぐかぁ…じゃあ今日は練習お休み?」
しずく「そうですね…雨の影響で充分に練習できるスペースも無さそうでしたし」 しずく「出来ることと言えば発声練習くらいしかないので…」
しずく「それに今日は全員揃いそうにないですし、お休みにして…」
しずく「かすみさんとテスト勉強することにしたんですけど…」
歩夢「なるほど、今からやらないと…かすみちゃんが心配だもんね…」
しずく「…はい……」
かすみ「2人してそんな深刻そうな顔しなくても良くないですか!?」 しずく「だって、この間は赤点ギリギリだったけど…」
しずく「ちゃんと復習しておかないと、今度はほんとに赤点とっちゃうかもしれないよ?」
しずく「そうなるのはかすみさんも嫌でしょ?期間が明けても練習できないし」
かすみ「むぅ…そうなんだよね、練習出来ないのは困るし〜…よしかすみん本気出しちゃいます!」
しずく「うん、よしよし」ナデ
歩夢「…なんだかしずくちゃん、お姉さんみたいだね」クスッ
しずく「まぁ、私の方が早めに生まれてますし、あながち間違いじゃないですよね♪」 かすみ「むっかー!また2人ともかすみんを子供みたいな扱いしてぇ!」
歩夢「ふふっ…ごめんね?でもそっか…お休みなら私も何かしてようかな」
歩夢(彼方さんは…寝てるんだ)
歩夢「璃奈ちゃんは…編集中?」
璃奈「うん、今やってるのはこの間撮ったライブの裏側の映像」
歩夢「そっか…でも長いから大変そうだね」
璃奈「大変だけど…見返すとみんな本当に楽しそうで…だから編集するの好きだよ」 歩夢「…そっか」ニコ
歩夢「でも、最近色々な動画アップしてるけど…すごく評判いいよね」
かすみ「あっ、そうなんですよー!もっと可愛いかすみん達の姿を見たい!だとか、嬉しいコメントをよく頂きますよね!」
しずく「ふふ、そういうコメントが来るとやっぱり励みになりますし、モチベーションに繋がりますよね」
歩夢「うん、そうだねっ、璃奈ちゃんの編集のおかげですごく見やすいし」 璃奈「わ、歩夢さんに褒められた…りなちゃんボード【てれてれ】」
歩夢「…ふふ」
しずく「そういえば、愛さんと歩夢さんのこの前の映像も好評でしたよね」
歩夢「え?」
かすみ「あー!ガムパッチンのやつ?」
璃奈「うん、まんまと愛さんの悪戯に嵌められた歩夢さんの反応が可愛いって」 かすみ「確かに可愛かった!かすみん程じゃないですけどね!」
歩夢「あ、あれが好評なの?地味に痛かったんだよね…あれ」
しずく「最近よく悪戯されますよね…歩夢さん」
歩夢「そうだね…今朝も驚かされたし、私って隙がありすぎるのかな?」
かすみ「かもですねぇ…ていうか愛先輩ってほんと歩夢先輩好きですよねぇ」
ドクン 歩夢「…っ……」
……まただ…
しずく「…?歩夢さん?」
歩夢「…!…あ、はは…えっと、そういえば愛ちゃんは?今日は元々来るって聞いてたんだけど…」
璃奈「さっき助っ人に行ったよ」
歩夢「あ、そうなんだ…助っ人かぁ…」 璃奈「うん、バスケ部に呼ばれてた」
歩夢「そっか、じゃあ愛ちゃんも今日はいないんだね…」
璃奈「………」
彼方「ん〜…zzZ」ゴソ
しずく「…あ、彼方さん、おはようございます」
歩夢「おはようございます」
彼方「んー、おはよ〜…」ムクリ 彼方「いやぁよく寝たよ〜っ…」ノビーッ
かすみ「学校でそこまで熟睡出来るのってすごいですよねぇ…」
彼方「えへへ〜、だってこのソファ寝心地最高なんだもーん」
彼方「…あぁ、それはそうと…雨止みそうにないね〜」
かすみ「この寒い時期にこんなに降るのって珍しいですよねぇ…今日は晴れると思ったのに〜…」
歩夢「雨のおかげで余計に寒くなっちゃったよね…」 かすみ「ですよね〜…」グテー
しずく「ほらかすみさん、手が止まってるよ」
かすみ「むー、しず子の鬼ぃ…少しくらい休憩してもいいじゃん」
しずく「だーめ、まだ始めたばかりだよ?」
かすみ「むぅ、はいはい…やりますよー」カキカキ
彼方「かすみちゃん頑張れ〜♪」 彼方「さて〜…お、歩夢ちゃんは何かやることあるの〜?」
歩夢「うーん…作詞の続きをしようかなって…思ったんですけど」
彼方「おー、例のやつだね?」
歩夢「はい。でも…こう部室があったかいとなんだか、ちょっと眠たくなってきちゃいますね…」
彼方「あ、確かにねぇ…じゃあちょっとだけ寝る〜?お膝ならいくらでもかすよ〜」
彼方「ちょっと寝て休んでからの方が効率いいと思うしねぇ」
歩夢「えっ、それはそうですけど…でも…それは流石に悪いですし」 彼方「いいからいいから〜、お安くしとくし」
歩夢「ええっ…お、お金発生するの…?」
彼方「えへへ、うそうそ♪さぁさぁおいで〜歩夢ちゃん」ポンポン
歩夢「もぉ、彼方さん…じゃあ、お言葉に甘えて…」
ゴロン
彼方「…どーお?歩夢ちゃん」 …何だろうこの感覚…すごく落ち着く…。
歩夢「…思ってた以上にすごくいいです…」
彼方「えへへ、良かった〜」
歩夢「あ…あの、頭重くないですか?」
彼方「んーん、大丈夫だよ〜」 璃奈「…よし、終わった…!」グイーッ
彼方「あ、お疲れ様〜」
歩夢「…お疲れ様、璃奈ちゃん」
璃奈「うん、ありがとう」
璃奈「……?歩夢さん、寝るの?」
歩夢「うん…ちょっとだけ、軽く寝ようかなって」
璃奈「そっか…」 璃奈「そうだ…歩夢さんが寝るところ、撮ってもいいかな?」
歩夢「え?」
彼方「おー、いいと思うよ〜。歩夢ちゃんの寝顔はいつでも見たいからね〜」
歩夢「そんな風に言われるとすごく恥ずかしいんですけど…//」
璃奈「ダメ、かな?撮られると気になって寝れない?」
歩夢「それは…多分大丈夫かも、彼方さんの膝枕すごく気持ちいいし…わりと寝ようと思えばすぐ寝れちゃいそう」 彼方「おお?マジか〜、歩夢ちゃんに膝枕を褒められる日が来るとは〜…嬉しいなぁ」
歩夢「すごく落ち着きますよ…」
璃奈「ん…じゃあ、撮るね?二人とも」ポチ
歩夢「うん」
彼方「いいよ〜」 璃奈「…やっぱり珍しい、この光景」 REC
彼方「うん、確かに歩夢ちゃんにお膝かしたことは無かったよねぇ」ナデナデ
歩夢「ん……そうですね、でもこんなに彼方さんの膝枕がいいとは思わなかった…」
彼方「えへへ〜嬉しいなぁ。でもしずくちゃんのお膝もすごくいいんだよ〜?」
歩夢「しずくちゃんのですか?」 しずく「…え、私ですか?」
彼方「膝枕ソムリエの彼方ちゃんの中ではトップレベルだねぇ」
かすみ「なんですか膝枕ソムリエって…」カキカキ
歩夢「どんな感じなんですか?」
彼方「うーんとね…知ってるかなぁ、赤ちゃんを泣き止ませる方法で、水の音を聞かせるといいって話があるんだよね」
歩夢「…あ、どこかで聞いたことはあります。お母さんの胎内の音に近いから安心するんでしたっけ」
彼方「そうそう、しずくちゃんの膝枕はまさにその安心感を味わえるんだよ〜」 彼方「しずくちゃんの膝枕があれば誰でも赤ちゃんになれるよ〜」
しずく「な、なんですかそれ…」
歩夢「ということは…実質しずくちゃんがお母さん…」
彼方「そうだねぇ、しずくちゃんお母さんだよ〜」
璃奈「しずくママ…ごくり」 REC
しずく「3人とも何を言ってるの…」 かすみ「ねー今度かすみんにも膝枕してよママ〜」
しずく「…かすみさんまで何言ってるの?」
歩夢「…じゃあ…しずくちゃんの膝枕が一番寝やすいんですか?」
彼方「しずくちゃんのは本当に眠り安いけど〜、彼方ちゃんとしてはしずくちゃんにはして欲しいと言うよりしてあげたい派なのさ〜」
歩夢「あ、なるほど…」 彼方「だからまぁ…ワースト3位かなぁ、しずくちゃんは」
しずく「3位…は喜んでいいんでしょうか…?因みに1位は誰なんですか?」
彼方「うん、やっぱりねぇ…1位はエマちゃんなんだよなぁ…」
歩夢「あー…やっぱり違いますか?」
彼方「違いますねぇ。もう…なんだろうね、スイスに行けちゃうもん」
璃奈「スイス…」 REC 彼方「そう、そこにないのに草原の匂いがするというか…自然と一体化しているような体験を味わえるんだよ〜」
彼方「もう本当にね、眠り手の全てを包み込むような、どんな悪人でも優しい気持ちにさせてくれるような、そんな優しい空間になるんだ〜…」
璃奈「眠り手って何…」 REC
彼方「まぁ、要するに彼方ちゃんの膝枕とは格が違うはずだからほんとにおすすめだよー、エマちゃんこそが母なる大地」 歩夢「ということは…実質エマさんがお母さん…」
彼方「そうだねぇ、エマちゃんママ最強、エマちゃんママしか勝たん…」
璃奈「エママ…ごくり」 REC
璃奈「あ、因みに2位はだれなの」 REC
彼方「枕かな」
しずく「私枕に負けてるんですか!?」 彼方「ふふ、これからしずくちゃんも枕を超えていけ〜…」
しずく「……なんか悔しいので善処したいですけど…」
歩夢「でも、そんなに安心出来るなら今度しずくちゃんの胎内で眠ってみたいなぁ…」
しずく「歩夢さん眠過ぎてとんでもないこと言ってるんですけど…」
かすみ「うん…」 ジトー
彼方「ふふ…でも、歩夢ちゃんがこうして落ち着けてるのを見ると安心しちゃうなぁ」 歩夢「え?」
彼方「ほら、前までの歩夢ちゃんだったら、きっともっと遠慮してたと思うから」
彼方「だから、この先もきっと悩むことはあるだろうけど」
彼方「こういう風に甘えたい時とか…何かで悩んだ時は…どんどん頼ってね?」
彼方「きっとみんな歩夢ちゃんの力になってくれるから」
彼方「まぁ、中でも彼方ちゃんじゃ頼りないかもしれないけどね〜」 歩夢「頼りないだなんて、そんな事ないですよ。ありがとうございます、彼方さん」
彼方「そーお?ふふ…じゃあ、その時は良き先輩として頑張るね〜」 ナデナデ
彼方さんが優しく頭を撫でてくれる…
掛けられた言葉が温かくて、心に深く浸透していく
この感覚がとても心地よかった
ほんとにあったかい 彼方「あ、でもいつかは彼方ちゃんにもお膝かしてね〜?」
歩夢「…ふふ、勿論ですよ」
彼方「やったぁ、楽しみにしてるぜ〜」
しずく「歩夢さん、後輩ですけど…私にもどんどん頼ってくださいね?」
かすみ「そうですよ!私たちはグループじゃないですけど、それでもかすみん達は同好会の仲間なんですし!」
璃奈「…うん、歩夢さんは1人じゃないよ」 REC
歩夢「そうだね…ありがとう」 ニコ …………
彼方「……zzZ」スャァ
璃奈「…!あれ…彼方さん、いつの間にか寝てる…」 REC
かすみ「え!?」
しずく「…まさかの二度寝…」
歩夢「あ、あはは…私より先に…」
璃奈「また眠たくなっちゃったんだね」
しずく「ふふ、彼方さんらしいですね。寝かせておきましょうか」 歩夢「…そうだね、膝枕ってしてる側でも落ち着くものなのかな」
璃奈「…とりあえず、彼方さん寝ちゃったし、ここで止めても良さそうかな?」 REC
歩夢「ん、良いかもね…オチ付くし」
璃奈「え?」 REC
かすみ「え?」
しずく「え?」
歩夢「……え?…な、なに?」 しずく「あの、歩夢さんって…」
歩夢「…?」
かすみ「愛先輩に似てきました?」
歩夢「……!?…う、ん?な、なんで愛ちゃん…?」
かすみ「え、だって歩夢先輩そんな…ダジャレとか言わなかったじゃないですか」
歩夢「?…ダジャレ……?」 かすみ「あ、自覚なかったんですね」
しずく「落ち着くとオチ付くを掛けたのかと思ったんですけど…」
歩夢「おち……?」
歩夢「…っ…!?ちがっ…」ガバッ
歩夢「違うよ!?今のはあのっ、アレだよ!?ダジャレ事故だよっ!?」
しずく「ダジャレ事故…?」 璃奈「あ、歩夢さん…落ち着いて、彼方さんが起きちゃう」
歩夢「あっ…」 バッ
彼方「…zzZ」
歩夢「…ほっ……も、もう…2人とも変なこと言うから…」
かすみ「いやいや、そんな焦らなくても良くないですか…?」
歩夢「………焦ってないもん」 かすみ「なんですかその間は…」
歩夢「……ね、寝ます…」 ゴロン
かすみ「あっ、なんで誤魔化すんですか〜歩夢先輩」
しずく「…ほらかすみさん、歩夢さん寝るんだから、続きやろ?」
かすみ「むぅ…はーい」
璃奈「…おやすみなさい、歩夢さん」 REC
歩夢「……ん…おやすみ」 ………
愛ちゃんに似てきた…そんな風に言われるだなんて思わなかった
思わず否定しちゃった…
勿論意識して言ったわけじゃないけど
でも、なんだろう
言われた時すごくドキドキした…
ここの所、ドキドキすることが多い気がするなぁ…
愛『あーゆむ〜!』
…っ…いつもそうだよ、どうしていつも……
はぁ…眠くて、もううまく思考が回らない
──── ──
歩夢「…ひゃ……!?」ドサッ
歩夢「あ、あい…ちゃん…?」
愛「………」
ギシッ
え、ぇ…な、なに…この状況…
愛ちゃんに手首を固定されてて動けない
それに…顔が近い…
どうしてこんな… 愛「…ね、歩夢」
歩夢「ぁ、…は、はい……っ?」
愛「……きだよ」
歩夢「え…?」
愛「……目、瞑ってね」ズイ 歩夢「……ぇ」
歩夢「はっ…はぇぇ!?//」
歩夢「まっ、待って…!?待って待って!ほんとに待って愛ちゃん!//」
愛「ふふ、待たないよー」 ギュッ 固定していた手の力が弱まったかと思えば…
今度は指を絡ませながら、ゆっくりと手を握られた
愛「全く抵抗しようとしないってことは…いいんだもんね?」
歩夢「あ、ぅ……//」
愛「するね…」
歩夢「だ、だめ…だってば…っ」 私の制止も届かず、そのまま身体が重なって
愛ちゃんの顔が近付いてくる…あと数センチ…数ミリ
歩夢「ぅ…っ…//」
…次第に鼻先が擦れ、愛ちゃんの熱い吐息が唇に触れて…それから…
─ ───
歩夢「…はっ……!」パチ
璃奈「…あ、歩夢さん…起きた」
愛「おーはよ!歩夢♪」
歩夢「っ…!?にゃぁぁぁ!?///」ガバッ
ゴツン 愛「いっ…た!?」
璃奈「!?」
歩夢「くっ…〜っ//」
璃奈「あ、歩夢さん…?」
歩夢「なにゃっ…にゃ、にゃ…ひゃンデアイチャンガヒザマクラシテルデスカ!!?//」
璃奈「なんで片言…?」 愛「いってて…ああ、カナちゃん達もう先帰っちゃったからさ、歩夢が起きるまで愛さんが代わりに膝枕してあげよーかなーと思って」
歩夢「えっ…な//わ、私そんなに寝ちゃってたの…っ?//」
愛「うん!バッチリ寝てた!カナちゃんと代わっても全然起きる様子なかったし」
璃奈「…歩夢さん顔が真っ赤」
歩夢「えっ……//」
愛「あ、ほんとだ、あつい?暖房効き過ぎたのかな」 璃奈「…消しておくね」ピッ
愛「てか、大丈夫?…また怖い夢見た?」
歩夢「……っ」
──…きだよ
歩夢「…!み、見てない見てない!」
愛「…?ほんとにー?」 歩夢「だ、大丈夫!ちょっと寝ぼけてただけだから…ほんとに…」
…ほんとに、何なの…さっきの夢…
愛「あははっ、斬新な寝ぼけ方だったね」
歩夢「うっ…そっそれよりおでこ…あの…大丈夫?ごめんね…?」
愛「ん?あー平気平気!歩夢こそ大丈夫?」
歩夢「う、うん…平気だけど…」
歩夢(それどころじゃなかったし…) 歩夢「…かすみちゃん達、帰っちゃったんだね」
愛「うん今さっき帰ったよー、もう部活の時間も終わってるしね…用事があるみたいだったし」
歩夢「あ、ごめんね?ほんとに寝過ぎちゃってたんだ…起こしてくれればよかったのに…」
愛「カナちゃん達に起こさないであげてほしいって言われたからさ」
愛「まぁほんとに気持ちよさそうに眠ってたから、愛さんも起こさない方がいいなーって思ったし」 歩夢「そ…そうなんだ」
璃奈「おかげでいい画も撮れた」
歩夢「……璃奈ちゃんまだ撮ってたんだ」
璃奈「バッチリ撮った」
从||>ᴗ<||从
愛「ふふ、上がるの楽しみだね〜」
歩夢「…ちょっと、恥ずかしいよ…寝顔見られるの…」 愛「まぁでも、ファンには堪んないと思うよ?みんなバタンキューするんじゃない?」
歩夢「………」
璃奈「愛さん、バタンキューは古い」
ガチャ
侑「…あれ?歩夢達まだいたんだ?」
歩夢「ぁっ……侑ちゃん」 愛「ゆうゆ!うん、これから帰るとこだよー」
愛「ゆうゆもこれから帰り?」
侑「うん、今さっき終わったから帰る前に誰かしらいるかなーって思ってきたんだけど…」
侑「何かしてたの?3人とも」
璃奈「みんなで歩夢さんの寝顔を見守ってた」
侑「え、何それめちゃくちゃ幸せじゃんっ」 愛「でしょー?」
歩夢「………」ボー
侑「…?歩夢どうかした?」
歩夢「…え?う、ううん!寝起きでぼーっとしちゃってただけ…」
侑「ふうん…?そっか…」
愛「…さ、て…じゃあそろそろ帰ろっか」
侑「だね、もう雨も止んでるし…あ、折角だからファミレスとかでご飯食べて帰らない?」 愛「お、いいね!ちょうどお腹空いてたし!りなりーも平気?」
璃奈「うん、平気だよ。私もお腹空いた」
愛「ねー。…歩夢もお腹空いてる?」
歩夢「………」
愛「おーいあゆむー?起きてる?」ズイ 歩夢「っ!えっ?なっ…何…?」
愛「ご飯、食べに行こ?」
歩夢「あっ…う、うん!私もお腹空いちゃった。準備するねっ」 スタッ
愛「うんっ」
侑「………」 ────
──
約1時間後
侑「あーお腹いっぱい!ミラノ風ドリアが安定のおいしさだったなぁ」テクテク
愛「ねっ、あの値段であのおいしさってやばいよね〜!」 テクテク
侑「うんうん!何食べようか最初迷うんだけど、結局ミラノ風ドリアになっちゃうんだよねぇ…」
愛「確かにね!アタシも結局ミラノにしちゃったし」
璃奈「ピザもすごくおいしかった…初めて行ったけど、ピザであの値段はおかしい」 テクテク 愛「ワンコインで済むピザとかあそこくらいだもんねー」
璃奈「うん、個人的には宅配ピザを超えるクオリティだった…」
从||˘ڡ˘||从
侑「分かるなぁ!あそこの宅配があったら絶対頼むのにー」
愛「あーいいねいいね!家でミラノ風ドリアが食べれるとか最高じゃん!」
侑「最高だよねー、辛味チキンとか病みつきになるから絶対毎回頼んじゃうよ」
璃奈「辛味っていうから辛くないと思ったけど…全然辛くなくておいしかった」 侑「でしょ?中にはピリッとする人はいるかもしれないけど全然気になんないくらいだし」
侑「サイドメニューでは私の一押しかなぁ、辛味チキンは」
璃奈「どれも美味しかったけど…私はポップコーンシュリンプかな」
愛「愛さんもポップコーンシュリンプかなー!」
愛「また行こうね!」 侑「もちろんっ」
璃奈「うん、あの間違い探しも…難しかったからもう一回挑戦したい」
侑「あははっ、難しいもんねあれ」
愛「ねー、たまに見るけど全然わかんないもん」
愛「ねね、歩夢は解いたことある?間違い探し」
歩夢「………」 璃奈「…?歩夢さん?」
歩夢「…えっ?な、なに?璃奈ちゃん」
璃奈「またぼーっとしてる…」
侑「うん、さっきからずっと上の空っていうか……具合悪かったりする?」
歩夢「う、ううん!ちょっと…あの、作詞のことでずっと考えちゃってた…聞いてなくてごめんね?」
侑「…そっか…そんな急ぎじゃないんだし、無理しないでね?」 愛「…考えすぎちゃうとかえって行き詰まっちゃうしねー、纏まらない時は休むか他のことしてた方がいいよ?」
歩夢「う、うん…そうだね」
侑「…あ、じゃあ…私たちバスこっちだから行くね?」
愛「うん!もう暗いから気を付けてね!」
璃奈「さよなら。侑さん、歩夢さん」フリフリ 歩夢「うんっ、また明日ね」 フリフリ
侑「じゃあねっ、また今度食べに行こーねー」フリフリ
愛「うんっ、じゃあねー!」フリフリ
侑「行こっか、歩夢」 ニコ
歩夢「…うん」 ニコ
…………… 璃奈「………」
愛「………」
璃奈「歩夢さん、大丈夫かな?また悩んでたり、怖い夢見てたりしてないかな」
愛「…今の歩夢なら、大丈夫だよ」
愛「みんながいるし……何よりゆうゆがそばに居るしね」 璃奈「愛さんもいる」
愛「…そうだねぇ」
璃奈「………」
璃奈「…ねぇ、愛さん」
愛「んー?」
璃奈「前から愛さんに聞きたかったことがあるんだ」
愛「…お、なになに?」 璃奈「今…愛さんは歩夢さんのこと、どう思ってるの?」
愛「どう?って…りなりーと変わんないよ」
璃奈「え…?」
愛「すっごく大切な友達」 ニコ
璃奈「ともだち…」 愛「うん!」
璃奈「……そっか…」
愛「うんっ。ほらほら、ここで話してたら風邪引いちゃうし帰ろ!」 テクテク
璃奈「…」 私の質問に、愛さんは迷いなく…いつもの屈託のない笑顔で答えた
でも…愛さんのその表情と短い言葉は
…核心に蓋をするように、核心から避けるように
元々用意していた言葉なんじゃないかなって思った
愛さんとの付き合いはまだ浅い
でも関係は浅くないと思ってる だからこそ、愛さんを見ていてなんとなく分かる
歩夢さんをどう思ってるのか
…明確なものなんてない
けど私はそうだと思ってる
そうじゃなきゃ、愛さんはこの会話をこんなにすぐに切り上げることをしなかったんじゃないかなって思うから 愛さんがどうして誤魔化しているのか…ハッキリとは分からないけれど
愛さんは必死に蓋をして隠してる
だから、私にはこれ以上その核心に触れる勇気がなかった
下手に触れてしまえばきっと、愛さんは悲しい顔をする気がしたから
愛さんの悲しそうな表情を見る覚悟が…私にはなかったから
だから… 璃奈「…愛さん」クイ
愛「……?」ピタ
璃奈「…私は、愛さんに救われた」
璃奈「楽しいことも…色々教えてもらった」
璃奈「だから、私にとってもすごく大切な友達なんだ…愛さんは」
璃奈「だから…愛さんが困った時は、力になりたい」 璃奈「いつでも力になるから」
愛さんにとっては唐突だったかもしれないけど…
こんな言葉くらいしか掛けることが出来なかった
私は愛さんを待つことしかできない
愛「……」
愛「…ありがとね、りなりー」
璃奈「…っ…」
暗かったせいで顔はハッキリ見えなかったけど…
愛さんのその声は
心臓が締め付けられそうなくらいどこか切なげで…儚げで…
ただただ、優しい声だった ───
─
家前
侑「ふー、とーちゃく…着く前にまた雨降らなくて良かったよー」
歩夢「……ぇ?あっ…うん、そうだね…」
侑「…もー、歩夢?ずっとぼーっとしてるじゃん。ほんとに平気?」
歩夢「ぅっ…ご、ごめん…」
侑「…多分さ、作詞のこと考えてるわけじゃないよね?」 歩夢「……」コク
侑「やっぱり…どうしたの?」
歩夢「……あのね、侑ちゃん」
歩夢「さっき、部室で夢を見たんだ」
侑「……!また、見たの…?」
歩夢「でも、いつもの悪夢じゃなかった…」
侑「…違うの…?」
歩夢「ん…でも内容が内容だから…あの場ではちょっと言えなかったんだ」 侑「…どんな夢を見たの?」
歩夢「それは…」
侑「………」
歩夢「…愛ちゃんに…その」
歩夢「お、おし…倒される夢…」
侑「……!え…」
歩夢「…その夢を見てからずっとね…鼓動が止まらなくて、その光景が頭に焼き付いちゃって離れないの…」 侑「………」
歩夢「それだけじゃなくて、最近…何かしらで愛ちゃんが関わるとすごくどきどきさせられてて…」
歩夢「…最初は、何かの偶然か気のせいかなって思ってた…」
歩夢「けど、段々それが強くなっていって」
歩夢「いよいよあんな夢まで見ちゃって…」
歩夢「ここまで意識するようになっちゃったらもう…そういう事なのかなって…」 歩夢「私…もしかしたら、自分と同じ女の子に…」
歩夢「ねぇ侑ちゃん、私どうしたらいいのかな…」
侑「…歩夢次第だよ」
歩夢「え…?」
侑「……歩夢はさ、どう思ってるの?愛ちゃんのこと」
歩夢「…よく、わかんない…こんな感覚初めてだから…」
侑「……そっか…」 侑「……」
侑「…歩夢のそれは、本物かもしれないし…でももしかしたら一時的なものなのかもしれないね」
歩夢「…一時的なもの…?」
侑「うん、最近愛ちゃんと過ごす時間が一気に増えてったから…そう錯覚しちゃってるって可能性もなくはないし…」
本当は分かってるくせに… 歩夢「…っ…そっ、か…そう、なのかも…」
侑「…まぁさ、私たち思春期だしそういう事も有り得るんじゃない?って話」
…一体、何を言ってるんだろう…私は
侑「そういう経験がない私が言ってもあれなんだけどねっ」
侑「…でも、でも…歩夢もこんなこと初めてで…まだ、自分の気持ちがハッキリしてないんだよね?」
歩夢「…うん」 侑「なら、もう少し気持ちがハッキリするまで様子見した方がいいかも」
侑「…中途半端な気持ちで決めるのも良くないしさ」
歩夢「そう、だね…うん。ちょっとスッキリしたかも、ありがと、侑ちゃん」ニコ
侑「…いえいえ」
歩夢「ふふ…じゃあ、帰ろっか」 侑「うんっ」
歩夢「……」テク
侑「………」
歩夢「………」テクテク
…歩夢……
侑「……っ…」クイ …私は、家に帰ろうと前を進む歩夢の背中を見ていたら
思わず歩夢の服の袖を掴んでいた
歩夢「…!…ぇ…?」ピタ
侑「…ぁっ……」
歩夢「…侑、ちゃん…?」
侑「…ご、ごめ…!」バッ 侑「っ、ごめんごめん!」
歩夢「…どうしたの…?」
侑「あっ、あっ…あのーあれ!忘れてたよ!ちょっとコンビニ寄らなきゃだったんだ!」
歩夢「こんびに…?」 侑「うんっ、雑誌買おうと思っててさ!ちょっと行ってくる!」
歩夢「あ…じゃあ私も行くよ?」
侑「ううん!平気平気!歩夢はもう帰って休んでてよっ」
歩夢「…そ…そう?じゃあ、暗いし気を付けてね?」
侑「うん!じゃあちょっと行ってくるねー!」ダッ 歩夢「うんっ、行ってらっしゃい」フリフリ
歩夢「……」
……なんだったんだろう、さっきの…
歩夢「……侑ちゃん」 …………
タッタッタッ…
…ピタ
侑「…はぁっ…はぁ…っ…」
侑「はぁ、はぁ…何、してるの…っ、私…っ」 ─
昨日のあの夢を見てから、愛ちゃんの事が頭から離れなくなった
こんな感覚で人を意識するのも、人にドキドキするのも初めてで
最初は戸惑う事しか出来なかった
それから段々、もしかしたら私はそういう感情を愛ちゃんに対して抱いてるのかもしれないと思い始めた
…でも、相手は私と同じ女の子だし
気のせいかもしれないとも思った
けどそうなると、毎回起こる動悸の理由が見当たらない かといって愛ちゃんに対してそういう好意があるのかと問われると…
…
はぁ
…堂々巡りだなぁ…
自分の気持ちがハッキリと見えてこない
考えれば考えるほど分からなくなった ─本物かもしれない、でもそれは一時的なもの…錯覚かもしれない
昨日侑ちゃんはそう言った
…本当にそうなのかもしれない。
結局のところ相手は同性の女の子だし
…本当にただの勘違いなのかもしれない
私が落ち込んでいる時に、愛ちゃんが真っ先に手を差し伸べてくれたから
立ち直るきっかけをくれたから それがあって今があるから
だから、愛ちゃんを私が恩人として見ていて、そう錯覚しちゃってるだけなのかもしれない
本当のところは自分でも分からないけれど…本物だとしても、錯覚だとしても…このモヤモヤを残したくなかった
知らないままの方がいいかもしれないけど
でも、納得出来る明確な答えを私は知りたい 実際こういうのはある程度時間かけないと見えてこないだろうね。どっちもあり得るから 仮にもし、本物だとしたら
その先は…
エマ「どうして分からないの?」
歩夢「……えっ?」
果林「………」
エマ「何度も教えてるのにどうして分からないのかな?果林ちゃん」 果林「分からないものは分からないのよ…」
エマ「分かろうとする努力はしてる…?」
果林「私なりにしてるけどすぐ忘れちゃうのよ…」
果林「もういいじゃない、こんな問題分からなくたって。大体こんなの覚えて将来なんの役に立つのよ…」 エマ「こんな問題も出来ない人が将来なんの役に立つの?」
果林「えっ」
歩夢「…!?え、エマさん…言い過ぎじゃ…」
エマ「ごめんね、歩夢ちゃんは黙ってて」
歩夢「は、はい…」
こわい… エマ「ねぇ…」
果林「………」
エマ「ねぇ!!」
果林「…っ」ビクッ
果林「は、はい…」
エマ「分かってるのかな?果林ちゃんの為に時間を費やしてるんだよ…?」 果林「それは…申し訳ないと思ってるけど…」
エマ「けどじゃないよね…?別に努力しても分からないのはいいと思うよ」
エマ「でも私、果林ちゃんが寮で勉強してる所、見たことないんだよ?」
エマ「バ……勉強できない人はできない人なりに分かるように努力して欲しいんだ」 歩夢(今バカって言いかけたのかな…)
エマ「それにすぐに忘れちゃうって…ニワトリさんなのかな?」
エマ「忘れないように出来る限り自分で復習して、頭に刷り込んでもらわないと教える側としてはキリがないんだよ?」
エマ「正直…同じことを何十回も教えさせられる身にもなって欲しいよ、果林ちゃん」
果林「…ご、ごめんなさい…」 歩夢「……」 フルフル
エマ「…もういいよ、ごめんね?色々言い過ぎちゃって…」
エマ「でも、果林ちゃんの為を思って言ってるんだから、それはわかって欲しいな」
果林「え、ええ…いつもありがとうございます…」
エマ「…ここで一旦休んで終わりにしよっか、あとは帰ってからやろう?」 果林「え、ええ…」
エマ「紅茶いれるね、歩夢ちゃんも飲むよね?」
歩夢「…ぁ、あっはい!手伝わせてくださいっ」ガタッ
エマ「ありがとう、変なとこ見せちゃってごめんね?」
歩夢「い、いえ…びっくりしましたけど…」 エマ「えへへ…あ、そこにお菓子あるからね、歩夢ちゃん」
歩夢「持ってきますね」
エマ「うんっ」
………………
エマ「はい、果林ちゃん」コト
歩夢「お菓子も持ってきました」スッ
果林「あ、ありがとう」 カチャ 果林「ん…美味しい、いつものとちょっと違う?」
エマ「わぁ、よくわかったね?いつものは売り切れちゃってたから、別のメーカーの茶葉に変えてみたんだ♪」
果林「なるほどね…」
エマ「さ、歩夢ちゃんも飲んで飲んでっ」
歩夢「ぁ…はい、いただきます」 コク 歩夢「ん…おいしい、香りもいいですね」
エマ「ふふ、そうでしょ?良かった〜♪」
ぽむかり(…いつものエマ(さん)に戻って良かった…)
というか…エマさんが怒るところ、初めて見たなぁ… 果林「あの…見苦しいところを見せちゃったわね」
歩夢「えっ…ぁ、いえ、そんなことは…」
歩夢「でも、果林さんも怒られることってあるんですね…」
果林「私も人間だもの…まぁエマに怒られるのは初めてだけど」
歩夢「あ…そうなんですね」 エマ「怒るのとかは慣れてないし、正直心苦しいけど…」
エマ「たまには叱ってあげないと果林ちゃんは成長しないもん」
歩夢「なんだかお母さんみたいですね」 クスッ
果林「私が悪いんだけど不服だわ…」
エマ「ふふっ…おかわりいる?果林ちゃん」 スッ
果林「…ええ、ありがとう」 果林「……」コク コク
歩夢「…おいしいですね」
果林「ええ、ほんとに…」
果林「………」チラ
果林「…ん…そういえば歩夢、あなた改めて見ると結構スッキリしたわよね」
歩夢「へ?」 果林「ほら、数日前までは少し…ね?若干ふっくらしてたというか…」
歩夢「あっ…ぅ…そ、そうですかね…でも1ヶ月くらい前までは本当に…何もしてなかったですし」
歩夢「あれからいつも以上に運動はしてるし」
歩夢「果林さんのアドバイスも頂いて実践してますし」
果林「そう、効果があったみたいで良かったわ」 歩夢「はいっ、果林さんのおかげです…本当にありがとうございます」 ニコ
果林「歩夢の努力のおかげよ」
果林「…頑張ってるものね、最近では愛とも早朝で走ってるんでしょ?」
歩夢「あ…ぅ…まぁ、たまにですけど」
果林「仲良しね、ほんと」
歩夢「……」 果林「………歩夢?」
エマ「…?どうしたの?歩夢ちゃん」
歩夢「え?」
果林「部室に来てからずっと何か考え事してるわよね?」
エマ「…ちょっと険しい顔してたよ?」 歩夢「ぁ…え…そ、そんな顔してました…?」
果林「ええ、もし何かあるなら聞くわよ?」
エマ「うん、無理には聞かないけど…悩み事があるなら話して欲しいな」
歩夢「う、うーん…そう、ですね…」
歩夢「じゃあ…一つ聞いてもいいですか」
果林「ええ」 エマ「うん、いーよー」
歩夢「…2人は、自分の気持ちが分からない時ってどうしますか」
エマ「…自分の気持ち…?」
果林「気持ちって、例えば…?」
歩夢「あ、あの…その…」 果林「…もしかして、恋愛的な話かしら?」
歩夢「…っ…は、はい…実はその、友達が悩んでて…」
歩夢「ある特定の人の事を考えると夢に出てくるくらいドキドキするらしくて」
歩夢「…でも、その人のことを実際どう思ってるのか、自分でも分からないみたいなんです…」
果林「…ふぅん…それ、相当自分に対して鈍感なんじゃないかしら?その子」 歩夢「…鈍感ですか」
エマ「うん、私も正直そう思うかなぁ。ドキドキするって事は…そういう感情以外に理由はないと思うし」
歩夢「…でも、その友達にとっては恩人のような人なんです」
歩夢「その子が酷く落ち込んでた時に、1番に救ってくれた人だから」
歩夢「だから…」 果林「ちょっと違うかもしれないけれど、吊り橋効果なんじゃないかってことね…?」
歩夢「吊り橋…確かに、そんな感じかもしれないです」
歩夢「それと、私の友達とその相手の人は…まるで人種が違うというか、正反対というか」
歩夢「自分が欲しいと思っている部分を沢山持ってて」
歩夢「だから、もっとその人のことを知りたいって思うようになっていって…」 果林「なるほど…要するに憧れを恋愛と勘違いしてる可能性もあるってことね?」
歩夢「…はい」
エマ「そういう事ってあるものなの?」
果林「私もそういう経験はないけれど…思春期だったら稀にあるそうよ」
エマ「そうなんだ…なんだか難しいね」 歩夢「はい…すごく難しくて…」
果林「…うーん」
果林「…きっと、1度も考えたことも無いでしょうし、是非その子に色々聞いてみたいわね」
歩夢「…何をですか…?」
果林「そうねぇ…例えば」 果林「その相手の人のそばにいたい?2人きりになりたい?とか」
歩夢「……っ…」 ドクッ
果林「それと、その人と手を繋ぎたいと思うのかしら?」
果林「抱き締めたい?キスは、どうなのかしらね…?」
歩夢「…っ……!//」 ボフッ
歩夢「き、き…っ、す…って…//」 果林「…ふふ、その人にずっと触れていたいって思うのかしらね?」
ドクッ
歩夢「あ、あのっ…ちょ、ちょっとまっ…//」
果林「何度も名前を呼んで欲しい?」
果林「何度も好きって言って欲しい?」
ドクンッ 歩夢「か、果林さん…っ…//」
鼓動がうるさい…
果林「愛してる、だなんて言われたら卒倒するのかしら?」
歩夢「っ……も、もうやめてください…っ//」
顔が熱い…
エマ「あ、歩夢ちゃん大丈夫!?顔真っ赤だよ?!」 果林「まぁ、そういう関係になっても流石に言わないのかしらね」
果林「言ったとしても、愛だけにって付け足して空気台無しにしちゃいそうよね、あの子だったら」
歩夢「へっ…?!//な、なんで…っ」バッ
果林「ふふ♪バレバレよ?歩夢」
エマ「…?どういうこと?」 果林「友達の話をしてたけど、実際は自分の話をしてたのよね?」
エマ「ええっ…!?そ、そうなの?歩夢ちゃん?」
歩夢「………//」コク
エマ「…そうなんだ…歩夢ちゃんが、愛ちゃんを…」 エマ「でも、どうしてそんな…」
歩夢「その、なんだか…いざ自分のそういう話をしようって思ったらちょっと…恥ずかしくなっちゃって…」
歩夢「ごめんなさい、咄嗟に嘘ついちゃいました…」
果林「まぁ、気持ちは分からなくはないけどね」
歩夢「…どうして、わかったんですか?愛ちゃんのことも…」 果林「さっき話してた時、愛の名前を出した途端に顔色が変わるんだもの、大体わかるわよ」
果林「それにこの手の相談事は“友達の話“という事にしがちなのよね」
エマ「わ…果林ちゃんすごいね?そういう所は鋭いんだぁ…」
果林「…言葉に棘がある気がするんだけど」
エマ「…??とげ???」 果林「……なんでもないわ」
果林「まぁそれに…歩夢、あなた日頃から愛のことしょっちゅう見てるでしょ?無自覚かもしれないけど」
歩夢「えっ…」
エマ「ああっ、好きな人のことはいつの間にか目で追っちゃってるってやつかな?」
エマ「そういうの何かのドラマで見たことあるよ」 果林「ふふ、そうね。それと一緒の現象になってると思うの、私の見立てだとね」
果林「どう?私の質問に1つでも当てはまる事ってあったりする?」
歩夢「……私は…」
歩夢「………」
果林(ふふ…答えが見えてきたみたいね)
果林「…いいわ、もう無理には聞かないし、答えなくてもいい」 歩夢「え…?」
果林「あとをどうするのかは…歩夢、あなた次第だしね」
歩夢「………」
エマ「歩夢ちゃん、私こういう話には疎い方だから、為になる話なんて出来ないけど」
エマ「また、こうして相談してくれたら嬉しいな。話を聞くことだけなら、出来るから」
エマ「また悩みすぎてストレスになっちゃったら、いけないし…」 果林「そうね、あと息抜きにエマの膝枕で寝るっていうのもいいわよ」
果林「癒し効果が抜群だから」
エマ「うんっ!彼方ちゃん曰くスイスに行けるらしいよっ」
歩夢「あ、あはは…それ彼方さんから聞きました」
歩夢「…ありがとうございます。果林さん、エマさん」 歩夢「その時はまた相談しますね」
果林「ええ」
エマ「うんっ、いつでも相談してね」
果林「…それじゃあ、そろそろ帰りましょうか、部活の時間ももう終わってるし」 ガタ
エマ「そうだね、今なら雨も弱いから」 ガタ 歩夢「……私はもう少し残ってます、侑ちゃんの方が終わったら一緒に帰るので」
エマ「…そっか、じゃあ、私たち先に帰るね?」
果林「帰り、気を付けなさいね」
歩夢「…はい、じゃあ、また明日」 ニコ
果林「ええ、また明日ね」
エマ「じゃあねっ、歩夢ちゃん」フリフリ 歩夢「……」 フリフリ
バタン
歩夢「………」
………
歩夢「…はぁ……」コテン テーブルに頬をつく、ひんやりしてて心地が良かった
きっと熱く感じてるのは暖房のせいだけじゃない
そのくらい顔が火照ってたんだ…
頬が熱くなるくらい果林さんの質問は、私には刺激の強すぎる質問だった
まるで私の見た夢の内容を知っていたかのような内容で、余計にその光景がチラついちゃって それも相俟って、一気に羞恥心に襲われた
…果林さんの言う通り、考えてもいなかった、愛ちゃんとどうしたいかなんて…
果林さんにはもう気付かれてると思うけど…質問の答えはとうに見えていた
…私は
ゴロゴロ… ピシャァァッ!!
歩夢「…っ!!?」ビクッ
ゴロゴロ…
歩夢「びっ…くりした…」ガバッ
歩夢「…かみなり?」
この時期に雷って…めずらしいなぁ ゴロゴロ…
ザァァァァ…
歩夢「…すぐには帰れないかも…」
この状況で1人はちょっと…ちょっだけ心細い…
侑ちゃん…まだかな ドゴォォンッ
歩夢「っ…!すごい音…」
……
歩夢「………」
………
prrrr…
歩夢「…!わっ…」ビクッ
歩夢「で、でんわ?」 スッ すぐ切れた…
相手は…愛ちゃん…?
なんだろう
歩夢「………」スッ
歩夢「……」
……かけ直しても出ない
確か愛ちゃんは今日も助っ人だって言ってた…終わってそのまま帰ってるものだと思ってたけど… 歩夢「………」 ポチ ポチ
歩夢:電話、どうしたの?まだ学校にいるの?
歩夢「……」
数十秒後、既読はついたけど
返信がこない
…なんなの、愛ちゃん ピロン
愛:まちがえちゃった、だいじょうぶ
歩夢「…なに、その文章…」
愛ちゃんにしては珍しい、絵文字もない淡白な文章だった
歩夢「……」ポチポチ
歩夢:もう帰ってるの? 歩夢「………」
…今度はつかない
なんでもないならいい。
でも…私のただの予感だけど、さっきの電話のコールはなんだか…
分からない…分からないけど、愛ちゃんに呼ばれた気がした 本当に気のせいかもしれない
でも、愛ちゃんからのメッセージには違和感があった
なんだかぞわぞわする…
いても立ってもいられなかった
私は一旦、侑ちゃんにメッセージを入れてから、部室を後にした ─────
─
まだ部室棟に人はちらほらといたけど…多分愛ちゃんはいない
まずは真っ先に体育館に行って、愛ちゃんを探した
こっちにも人は少数いたけど、愛ちゃんの姿は見当たらなかった
残っていたバスケ部の子からの話だと、既に帰ったらしい。
本当に帰ってるならいいけど…
教室にいるかもしれないし
…心当たりのある場所といったらもう、そこくらいしか無かった そこにいなかったら…もう1回電話してみよう
とりあえず、急いで愛ちゃんのクラスの教室まで向かった
………
タッタッタッ…
歩夢「はっ…はぁ…っ」
人気が少なくなってきた…こっちの学科に来るのは初めてだから、なんだか新鮮に感じる …着いた、確かここが愛ちゃんのいるクラスだったと思う…
でも…電気も消えてるし、誰もいなさそう
歩夢「はぁ…はぁ…帰ったのかな、やっぱり…」
ドォォォォンッ!!
歩夢「……っ!」ビクッ
…落ち着いたと思ったら…また… ゴロゴロ…
─ヒャ…ッ…!
歩夢「え……?」
誰かいる…?
歩夢「………」
ガラガラガラ
歩夢「………」 愛「っ……」 フルフル
歩夢「…愛…ちゃん…?」
扉を開けてみれば、教室の片隅でぽつんと、愛ちゃんが小さくうずくまっていた
明らかに普通じゃない
考えるより先に愛ちゃんの方へと駆け寄った
歩夢「ど、どうしたの?!大丈夫!?」 愛「…!あ…あゆむ…?なんで…」 フルフル
歩夢「さっきのメッセージ…愛ちゃんの様子がちょっと変だったから」
愛「…探してくれてたの?」
歩夢「うん、なんかあったのかと思ったよ…どうしたの?」
愛「…あ、はは…心配かけてごめんね」 歩夢「…震えてるね、具合悪い…?」
愛「…い、いや…えへへ…ちょっと腰抜けちゃって…」
歩夢「へ…?」
ドドォォンッ
歩夢「…!」 愛「…っ、ひっ…!」ギュッ
歩夢「…っ……」 ドクン
歩夢「…!?あ、愛ちゃん…?」
愛「ぁっ、ごっ、ごめ…っ…」 バッ
歩夢「…こわいの…?」
愛「……ちょっとだけ…」 愛「おへそとられちゃうかもだし…」
歩夢「え…?」
おへそって…
歩夢「…ぷっ……ふ…」
愛「…!ちょ…笑わないでよー…」
歩夢「ふ…ごめん。そっか、雷ダメなんだね…」
歩夢「おへそは隠してればとられないから大丈夫だよ?」 愛「そ…そう、だけどさ…」
ゴロゴロ
愛「…ぅ…っ…」 ビクッ
歩夢「……愛ちゃん」
…そっか、さっきの電話はきっと…私に助けを求めようとしてくれてたんだね
でもやっぱりこんな姿は見せたくないし
迷惑をかけたくなかったから…愛ちゃんは途中でやめたんだ、きっと
弱点がないなんて、嘘ばっかり… 歩夢「…大丈夫だよ、雷が…愛ちゃんが大丈夫になるまで一緒にいるから…」
歩夢「……手、握っていい?」スッ
愛「………」
愛「ん…」
歩夢「……」 ギュ
冷たい… 歩夢「ちょっとは落ち着けるかな…?」
愛「…うん、人がそばに居るだけでだいぶ違う気がする…」
愛「…アタシめっちゃかっこわるいね…」 フルフル
歩夢「…さっきの電話、私を呼ぼうとしたんだよね…?どうして途中でやめたの?」
愛「……やっぱりこんなとこ見せたくないなって思っちゃった…」 歩夢「…もぉ、こういう時に人に頼らない方がめっちゃかっこわるいよ?」
愛「え…へへ…手厳しいなぁ…」
歩夢「………」
…こんなに弱々しい愛ちゃんを見るのは初めてだった
必死に笑顔を見せようとしてるけど、それすらも弱々しくて…
あんなに元気で、強くて…ひたすら全力で、いつだって笑顔だった愛ちゃんが…
雷でここまで動けなくなっちゃうんだ… ピシャァァ…ッ
愛「…っ…!…ぅ…っ」 フルフル
歩夢「…大丈夫だよ、愛ちゃん…大丈夫」ギュ
離れないように強く、愛ちゃんの手を包み込んだ
…私は、愛ちゃんが頼ろうとしてくれたことが嬉しかった
誰も知らないような愛ちゃんの一面を知れたことがとても嬉しかった ここまで弱った愛ちゃんを、きっと誰も知らない
誰にも知って欲しくないって思った
この愛ちゃんを私だけが知っていたい
私が守ってあげたい
そんな愛ちゃんに対する独占欲が、私の中で渦巻いていた …ここまで怖がっている愛ちゃんを前にして思ってしまうのは不謹慎かもしれないけど
こうして縋られて、触れられて、2人だけの空間にいれて
その状況だけで私は満たされてて
ただただ全部が愛おしく思った
この時点で果林さんからの質問の答えが…私の気持ちが、揺るぐことのない確固なものになっていた 実際に触れ合った今なら断言出来る
この鼓動も、感情も…
吊り橋効果なんかじゃない
憧憬なんてものだけじゃ絶対にない ……愛ちゃんの事をもっと知りたい
そう思い始めたあの日から
寝言で愛ちゃんに名前を呼ばれたあの瞬間から
それはきっと始まってたんだと思う
私は、愛ちゃんに恋をしていた だいたい1週間近く音沙汰なくなるからエタらないかヒヤヒヤしてしまう ────
─
数十分後
シーン…
歩夢「…落ち着いたみたいだね」
愛「ん…ぁ…ほんとだね」
歩夢「…………」
愛「………」
愛「……歩夢?」 歩夢「へ…?」
愛「その…さ、手…もう大丈夫だよ」
歩夢「あっ…ご、ごめん」パッ
愛「…ううん…ありがとね。歩夢がいてくれてめっちゃ助かった」
歩夢「…そ、そう?それなら良かった…」
歩夢「えっと…立てそう?愛ちゃん」スクッ 愛「あー…うん、へーきへーき」 スク
歩夢「そっか…。あんなにバンバン鳴ってたのに、すごい静かだね」
愛「うん、なんか…こんな静かだとめっちゃ恥ずかしいね…」
歩夢「た、確かに…」
そう言われると余計に恥ずかしくなってくる… 歩夢「…あの…愛ちゃん、帰りは大丈夫?家まで着いてこっか?」
愛「いやいやいや、平気だって。そこまで子供じゃないんだし…」
歩夢「…子供みたいに震えてたのに」
愛「えー…そこ触れるの?触れちゃうの?」
歩夢「…ふふ、いつかのいたずらのお返しだよ」 愛「…あっはは、それ言われちゃったら返す言葉もないや」
歩夢「ふふ、そうでしょ?」
愛「…あぁぁ、ほんと…雷はもうたくさんだー…」
歩夢「…ほんとに平気そうだね、愛ちゃん」
愛「えへへ、自分でもびっくりするくらい平気っぽい」 ニコ
歩夢「………」 …笑った、愛ちゃんは笑顔でいてくれた方がやっぱり安心する
自分の気持ちを自覚した今
その笑顔もすごく好きなんだって、改めて思えた
思う度に鼓動が高鳴る
本当に愛ちゃんが好きなんだなぁ
…この出来事で、思っていた以上に早く自分の気持ちに気付くことが出来た
でも… 愛「……あれ?」ジッ
歩夢「…?な、なに?」
愛「歩夢、上着なしでここまで来たの?」
歩夢「へ…?ぁ、ああ…部室に忘れてきちゃった…でも大丈夫だよ」
愛「巻き込んどいてアレだけどめっちゃ必死だったんだね…」
歩夢「さっきのメッセージで愛ちゃんの様子が少しおかしかったし…なんだか心配でそれどころじゃなかったんだよね」 愛「あう…それはほんとごめん、でも探してくれてるとは思わなかったなぁ」
愛「居場所も伝えてないしさ」
愛「まだ学校にいたからいいけど…」
歩夢「…何となくまだいる気がしたから」
歩夢「仮に居なかったとしても…鬼のように電話してたと思うよ」 愛「マジか」
歩夢「うん、マジ」
愛「なら、まだ居て良かった方なのかな」
歩夢「まぁ……でも、今度こういう事があったらちゃんと連絡ちょうだいね」
愛「ん…ごめんね、今度からちゃんとする」
歩夢「約束だからね?」 愛「うん、ほんとありがとね」
歩夢「どういたしまして。…じゃあ、とりあえず部室行こっか」
愛「あ、じゃあ部室までこれ着てなよ、風邪ひくし…アタシのだけど」 スッ
歩夢「えっ…い、いいよ…愛ちゃんが風邪ひいちゃう」
愛「歩夢よりは頑丈のつもりだからへーきだって」
歩夢「…そんなのわかんないもん」 愛「まあまあ、これで歩夢に風邪引かれちゃったら愛さんが責任感じて寝込んじゃうよ?」
歩夢「えぇ、そんなに…?いやぁ、でも…」
歩夢「……っ…クシュンッ」
愛「あーほら言ってるそばから、とりあえず暖かくしときなって」 ズイ
歩夢「こ、このくらい別に…っ」 歩夢「ぅ…っ……ェッ…プソンッ…」
愛「……ほらまた…」
歩夢「………」
愛「…エプソンってなんだよ…」
歩夢「……言ってないよ…」ズズッ
愛「言ったくせに〜」
歩夢「言ってないもん…っ」 愛「…まぁ…それはいいや、ほらとりあえず着なよ、上着」ファサッ
歩夢「あっ…ちょっと…!」
愛「どう?大分あったかいでしょ」
歩夢「…あ、あったかいけど…もう、いいのに、ほんと強引なんだから…愛ちゃん」
愛「歩夢が強情なほど強引になってくからね」 歩夢「ふっ…もう、何それ」
愛「えへへ、あっもしかしてだけどアタシの上着を着るのが嫌だったり?」
歩夢「…そういう聞き方するのはずるいよ愛ちゃん…」
歩夢「もぉ…じゃあ、お言葉に甘えて…部室までの間だけ借りるね?」
愛「うんっ」 愛「じゃあ部室行こっか」
歩夢「…そうだね、侑ちゃんも待ってると思うし」
愛「……あ、そっか…ゆうゆも来てるんだもんね」
愛「悪いことしちゃったね…」 歩夢「大丈夫だよ、今ごろ暖房でゆっくりあったまってると思うし」
愛「余裕で想像出来ちゃうなぁ」
歩夢「ふふ…そうだね。冷えちゃう前に行こっか」
愛「うんっ」 ─
部室
ガチャ
侑「……?」
歩夢「侑ちゃんお待たせ、遅くなってごめんね?」
侑「歩夢おかえり〜。今来たとこだから平気だよ」 侑「どこ行って……」
愛「…ゆうゆお疲れっ」 ヒョコ
侑「……あっ、愛ちゃんも一緒だったんだ…お疲れ様っ」ニコ
愛「うんっ、ありがと」
歩夢「はい、愛ちゃん。上着ありがとね」スッ
愛「はーい、どういたしまして」 侑「……あれ、上着持ってかなかったの?」
歩夢「…ああ、うん…うっかり忘れちゃって。それで愛ちゃんが貸してくれたの、いいって言ったんだけどね」
侑「……そうなんだ」
歩夢「………」
侑「愛ちゃん大丈夫なの?相当寒かったでしょ」 愛「……ううん、へーきへーき!歩夢よりは頑丈だしね」
歩夢「…実際そうかもしれないけど万が一ってこともあるよ?」
愛「ないない!引きそうになっても気合いで引かないようにするし」
歩夢「気合いだけで予防って出来るものなのかな…」 侑「まぁでも、実際愛ちゃんって頑丈そうだもんね、熱とか出したことなさそう」
愛「流石に何度かはあるけど、こう見えても予防は徹底してるからね。やっぱり寝込みきりは辛いし」
愛「常に体動かしてないと落ち着かないもん」
歩夢「なんか愛ちゃんらしいね」
侑「うん…脳筋というか」 愛「この話で脳筋に落ち着いちゃうのかー…」
侑「えへへ…ん、それじゃあそろそろ帰ろっか?もう遅いしね」
愛「あ、うん、そだね」
歩夢「……」チラ
侑「……?どうしたの?」 歩夢「…ううん、すぐ準備するね」ゴソゴソ
愛「ゆっくりでいいからね」
侑「……うん」
歩夢「……」 その後、準備を済ませてから3人で学校を後にして
途中で愛ちゃんと別れた
侑ちゃんと2人きりの帰り道
家に近付くにつれて
お互いに口数は自然に減っていった
いつもの雰囲気から一変して、空気が少し重くなった気がした …私は、侑ちゃんに話したいことがある
多分、侑ちゃんも話したいことがあるんだと思う
そのタイミングを探るかのように、お互いにひたすら無言が続いた
やがて、家の目の前に着いたところで、侑ちゃんの方から口を開いた 侑「………」テクテク
歩夢「………」テクテク
ピタ
侑「…ねぇ、歩夢」
歩夢「……」
侑「何か話したいこと、あるんじゃない?」 歩夢「…うん、…侑ちゃんの方こそ、何かあるんだよね?」
侑「……!…うん、そうだね。私も歩夢に話がある」
侑「というか…謝りたいことがあるんだ」
歩夢「え…?」
歩夢「…謝りたいこと…?」 侑「うん、先にいいかな?」
歩夢「……」コク
侑「……昨日さ、相談してくれたよね?愛ちゃんとのこと」
歩夢「…うん」
侑「私、あんなこと言ったけどさ…」
侑「本当は前から…歩夢が意識し始める前から気付いてたんだ」 侑「歩夢が愛ちゃんを特別に想ってるってこと」
侑「愛ちゃんを好きだってこと」
歩夢「え……」
侑「愛ちゃんといる時の歩夢を見てたらわかるもん」
侑「…私ね、2人が仲良くしてるところを見てて、すごく微笑ましいなぁって思ってた」 侑「それを見て、この先歩夢自身が気持ちを自覚した時は、全力で応援したいなって思ってたし」
侑「でも見てて明らかなのに…歩夢自身が自分に鈍感で中々気付かないから」
侑「ちょっともどかしいなぁって思うくらいだった」
侑「でも…実際に歩夢が愛ちゃんを意識し始めたのを知ったらさ…」 侑「なんだか…一気に恐くなっちゃった」
侑「元々歩夢が誰かに恋するだなんて…想像したこともなかったから」
侑「この先の歩夢の変化が未知に感じたんだ」
侑「…歩夢の中で、この先段々私の存在が…関係性が薄れていっちゃうんじゃないかって、急に思い始めちゃって」
侑「昨日…咄嗟に意地悪な嘘をついちゃった」 侑「…それに私、さっき部室に歩夢と愛ちゃんが一緒に来た時だって…二人でどこに行ってたかなんて聞けなかった」
侑「寂しい気持ちになりそうでなんだか…聞くのがちょっと恐かった」
侑「なんでだろうね、私すごくめんどくさくなってるよね…」
侑「ホントにごめんね。でも、私ね…」
歩夢「違うよ」 侑「…え?」
歩夢「思い違いだよ 」
侑「…思い、違い…?」
歩夢「…うん、ごめんね。昨日話したこと、私の気のせいだったみたい」
侑「へ…」
侑「…どういうこと…?」 歩夢「昨日、侑ちゃんに相談してから」
歩夢「侑ちゃんに言われたことで色々考えてたんだ」
歩夢「考えて…ずっと考えてて…」
歩夢「それで、さっきまで愛ちゃんと一緒にいて思ったんだ」
歩夢「愛ちゃんは、私にとってすごく大切な友達で」
歩夢「それ以上の感情はないんだなぁって」
侑「…っ…なに、言って…」 歩夢「……確かに、この短い期間で私にとっての愛ちゃんの存在は少しずつ大きくなっていったと思う」
歩夢「でも、それだけだったよ。侑ちゃんの言ってた通り、一時的なものだった」
侑「…歩夢はそれでいいの?」
歩夢「いいも何も…これが真実だもん」
侑「………」 歩夢「………」
侑「……ほんとに、私の思い違いなの?」
歩夢「私の思い違いでもあったけどね」
侑「……」
歩夢「…これが私の話したかったことなんだ」
歩夢「だから大丈夫だよ、侑ちゃん」
侑「……」 歩夢「変に不安にさせて…心配させちゃってごめんね、私は変わらず侑ちゃんと一緒だよ」ニコ
歩夢「だから、この話は忘れて?」
侑「……ちょっと…待ってよ…」
歩夢「…この話は終わり、寒いからもう入ろ?」 テクテク
歩夢「ごめんね」
侑「…っ…あゆ…っ」
…私はこれ以上、歩夢の背に向けて
言葉を発することも、手を伸ばすことも出来なかった ────
─
早朝
タッタッタッ…
歩夢「はっ…はっ」
愛「歩夢ー?大丈夫?まだいけそ?」
歩夢「はぁ…っ、まだ大丈夫…っ」
愛「そ?…無理しないでねっ」
歩夢「うん…っ」 体力を付けるために最近始めた愛ちゃんとのランニング
これで3回目くらいになるけど、やっぱりこの寒さには慣れない
何回目で慣れるんだろう、これ…
愛ちゃんはよく平気だなぁ… まぁ、毎日走らなきゃ慣れるわけ無いよね
歩夢「はぁ…っ、はぁ…」ジー
愛「…?なに?歩夢?」チラ
歩夢「…っ、は…っ…んーん…な、なんでもないよ…っ」 …これでいいと思った
愛ちゃんとの事で相談したあの夜
侑ちゃんが袖を掴んできた瞬間に見せた表情を、今でも鮮明に覚えている
あの瞬間から分かってた
侑ちゃんが不安に感じていたことを あの瞬間から私は決めてた
もし、私の気持ちが本物だったら
その気持ちを心にしまっておこうって
侑ちゃんが応援したいと思ってくれていたのは、正直に嬉しかった
でも、もう侑ちゃんの曇った表情なんて見たくなかった
寂しい気持ちになんてさせたくなかった それに、この気持ちを伝えても
愛ちゃんをすごく戸惑わせて
すごく困らせてしまうとも思ったから
二人の表情から笑顔がなくなるくらいなら
何も伝えなくていい
2人とも大切だから 2人とも失いたくない
こうして愛ちゃんとランニングしたり
侑ちゃんと他愛のない会話をしたり
それに、みんなと楽しく過ごせてるだけで
私はそれだけで…
…今のままが十分楽しくて、幸せだから だから、辛かったけど…侑ちゃんが何も気にしなくてもいいように
侑ちゃんに最初で最後の大嘘をついた
誰も傷つかない方法は、これしか無いから
…私の気持ちは、今は誰も知らなくていい
私だけがひっそりと知っていればいい 愛ちゃんを好きだったことを、いつか笑って話せる日がくるのなら、その日までしまっておこう
そう思った
恋というものを知れただけで本当に
私には十分だから
これ以上のものを私は求めない
これでいいんだ ─
ドサ
歩夢「はぁ…はぁ…つか…れた…」
愛「ふぅ…歩夢お疲れっ、横座るね?」スッ
歩夢「ん…っ、うん…」
愛「はい、水」スッ
歩夢「あ、ありがと。なんか、愛ちゃんから水貰う度にビクビクしちゃうな…」 愛「…?なんで?」
歩夢「なんでって…愛ちゃんが水だって言ってヨーグリーナ飲ませたことあったでしょ?そのせいだよ」
愛「あー!そんなこともあったね!軽くトラウマになっちゃったんだ」
歩夢「そうだよ…完全に水だって信じてたし、ほんとにびっくりしたんだからね?アレ」 愛「ごめんってー、これはちゃんと水だから大丈夫だよ?」
歩夢「…ほんとに?ならいいけど…ありがと」ゴク
歩夢「っ…はぁ…おいしい」
愛「思いっきり動いた後がめっちゃおいしいもんね」
歩夢「うん、ほんとに」 愛「…なんか不思議だね」
歩夢「…?何が??」
愛「…なんかさ…今更だけど、こうして2人で朝早く走るのって」
愛「前までの愛さん達じゃ想像もしてなかったなーって思って」
歩夢「ん、ああ…言われてみればそうだね」
歩夢「そう考えたら…なんだか変な感じするね」 歩夢「…この短期間でこんなにも愛ちゃんと距離が縮まるなんて思ってなかったから」
愛「…ね、アタシも同じだよ」
歩夢「………ねぇ、愛ちゃん」
愛「んー?」
歩夢「…いつも気にかけてくれてありがとね」 愛「…よせやい、どしたの突然」
歩夢「…愛ちゃんが最初、私と仲良くなりたいって思ってくれてなかったら」
歩夢「こんな風に仲良く話したりしてないんだろうなぁって思って」
歩夢「私の方は最初、ちょっと絡みづらい人だと思ってたし」 愛「わー、さらりときついこと言うね歩夢さん」
歩夢「ふふ、でも関わっていく内に出会った頃の印象とは全然違ってて」
歩夢「どんどん愛ちゃんのことを知るようになって、普通に話せるような関係になれて…」
歩夢「今はすごく嬉しいって思うよ」 歩夢「愛ちゃんがいなかったら、愛ちゃんが引っ張ってくれなかったら、多分今頃…大分違ってたんじゃないかなって思うし」
歩夢「愛ちゃんのおかげで私は立ち直れたから…」
歩夢「だから、これまでよりもっと前向きになれたと思うし」
歩夢「みんなとももっと打ち解けられたと思うし」 歩夢「…それに、侑ちゃんと仲直り出来たから」
愛「…愛さんはちょっと背中押しただけだよ」
歩夢「そんな事ないよ」
歩夢「すごく救いになったよ、愛ちゃんのおかげで…」
歩夢「ほんとにヒーローみたいだよ、愛ちゃんは」 愛「……」
歩夢「だから昨日ね、そんな愛ちゃんが困ってる時に」
歩夢「真っ先に電話を掛けてくれたのがすごく嬉しかったんだ」
歩夢「頼りにされてるんだなぁって思えたから…」
愛「…そっか」
歩夢「ねぇ…愛ちゃんにお願いがあるんだ」 愛「………?なに?」
歩夢「これから先も…」
歩夢「…ずっと大切な友達でいてくれる?」
愛「………」
歩夢「……愛ちゃん?」 愛「………ぷっ、あははっ。何を言うのかと思えばそんなことか〜!」
歩夢「…むぅ、そんな事って…」
愛「あははっ…いやーごめんごめんっ」
愛「うん…勿論だよ、これからも仲良くしてね」 ニコ 歩夢「…良かった。うん…これからもよろしくね、愛ちゃん」ニコ
歩夢「…改まってこういう話するのってちょっと照れくさいね」
愛「…あははっ、そだねっ…」
愛「うん…うん。こちらこそ改めてよろしくね、歩夢」ニコ 朝日が眩しい
昨日までの雨が嘘のように、空は青く澄んでいた
歩夢「うん」ニコ
これでいいんだよ ここで終わるわけはないけど正直安堵してる自分がいる めっちゃ引き込まれるな…
とりあえずエプソンで笑った 更新頻度はゆっくりだけど来てるからエタではないはず どうなんだろうな
間空いてもまとまって突然来てたけど ───
─
◁ ‖ 璃奈の家
ガサゴソ
愛「あれ?ねーねー歩夢、牛乳忘れてない?」
歩夢「え……あっ!そうだね、買い忘れちゃってた…どうしよう」
愛「あちゃー…りなりーん家ないもんね?」
璃奈「うん、豆乳なら家にあるけど…使えるかな?」REC
歩夢「あ、豆乳なら……って、あれ?璃奈ちゃんこれ、回してるの?」
璃奈「うん、折角だから」
歩夢「ご飯作るだけだよ?」 璃奈「歩夢さんと愛さんの手料理を見たいっていうファンの人が多かったから、撮りたいって思って」
愛「へー!」
歩夢「そうなの?…なんかプレッシャーっていうか…緊張するなぁ」
愛「いいじゃんいいじゃん!平常心だよ歩夢!愛さんも一緒に作るしさ」
歩夢「…まぁ、愛ちゃんが一緒なら心強いし…頑張るけど」
歩夢「…じゃあ、璃奈ちゃんのためにもみんなの為にも張り切って美味しいの作ろっか、愛ちゃん」
愛「うん!」
璃奈「期待…!りなちゃんボード<じゅるり>」 歩夢「あ、とりあえず…豆乳使っちゃってもいいかな?璃奈ちゃん」
璃奈「うん、全然いいよ」
歩夢「ありがとっ」
歩夢「それからあとは、玉ねぎと…ひき肉と…」ゴソゴソ
璃奈「色々買ってきたね」 ジー
歩夢「うん、璃奈ちゃん最近偏った食事ばっかりしてるっていうから…ちゃんとしたもの作ってあげたくて」
愛「元々それが目的で来たんだもんね」
歩夢「うん、放っとくとカロリーメイトとかで済ませてそうだし、璃奈ちゃん」
璃奈「流石にそれはないって言いたいけど否めないところはある…」 愛「ちゃんと食べないと大きくなんないよー?」
璃奈「その辺はもう、半ば諦めてるけど」
歩夢「諦めちゃダメだよ、育ち盛りなんだし」
愛「そうそう!世の中不可能なんてことは無いんだし」
愛「ちゃんと食べれば愛さんくらい背が伸びるかもしれないよ」
璃奈「…ほんと?胸も大きくなるかな、エマさんくらい」
愛「……」
歩夢「……」ガサゴソ
璃奈「…何か言って?」 歩夢「……」チラ
愛「……」チラ
歩夢「……えっと…」
愛「…りなりー、世の中にはどうにもならないことって割と沢山あるんだよ」
歩夢「…言ってることめちゃくちゃだよ愛ちゃん」
璃奈「む……怒った、もう愛さんと半日口聞かない」
歩夢「半日なんだ、それってそんなに怒ってないんじゃ…」
愛「………」ズーン 歩夢「えっ愛ちゃん?!落ち込みすぎじゃない…?半日だけなのに」
愛「いや、半日でもりなりーと話せないのは耐えらんないよ…病むよ、SNSのアイコン真っ黒にするレベルだよ」
歩夢「そんなキャラじゃないよね愛ちゃん」
璃奈「愛さん…冗談のつもりだったんだけど…ごめんね。私も半日は耐えられない」
愛「りなりー…ほんとに?怒ってない?」
璃奈「怒ってないよ、ごめんね?愛さん大好き」
愛「…!りなりー…!愛さんの方こそごめんねっ!愛さんも大好きだよー!!」ヒシッ
璃奈「愛さんんん…!」ヒシッ 歩夢「なんなのこれ…」
璃奈「あ…ごめんね、茶番だよ」
歩夢「茶番が過ぎるよ…ほら、そこで抱き合ってないで始めるよ、愛ちゃん」
愛「はいはーい!」
愛「よーしやろっかー!」ウデマクリ
璃奈「何を作るの?」
歩夢「簡単な料理だけど、璃奈ちゃんリクエストのハンバーグだよ」
璃奈「…!わぁ、嬉しい」
璃奈「だからひき肉があるんだね」 歩夢「うん」
愛「あとは付け合わせの野菜とか作るからねー」
璃奈「野菜…」
歩夢「残しちゃダメだからね?璃奈ちゃん」
璃奈「うん、分かってる」
愛「なんかお母さんみたいだね歩夢」
歩夢「ぅ…それ、侑ちゃんにもたまに言われる…」
愛「ゆうゆにも言ってそうだもんね」
歩夢「…確かに言ったことあったかも」
璃奈「でも、歩夢さんは将来いいお母さんになりそう」 愛「うんうんっ」
歩夢「あ…はは、そうかな?」
歩夢「…えと…じゃあ、とりあえず始めよっか?」
愛「だね、先にサラダとか作っとこっか」
歩夢「うん、そうだね」 ──
─
愛「よしっ、出来たー」
歩夢「わ、美味しそう」
愛「でしょ〜」
璃奈「ブロッコリーと…ツナ?」ズイ
愛「そうそう、マヨネーズで和えて作ったんだ。めっちゃ美味しいよ」
璃奈「なるほど…すごく美味しそう…りなちゃんボード<じゅるり>」
愛「歩夢の方も出来た?」
歩夢「うん、出来たよ。シンプルにみそ汁だけどね」 璃奈「こっちも美味しそう…みそ汁久しぶりかも」
愛「匂いもいいね、本格的にお腹すいてきちゃったよ〜」
璃奈「私も…」
歩夢「ふふ、私もお腹すいちゃったな」
歩夢「あとはメインのハンバーグだけだから、すぐ作るね」
璃奈「うんっ」
愛「よっし!じゃあ愛さんも手伝おっかな」
歩夢「うん」ニコ ───
─
トントントントン
愛「うおっ、さすが…手際いいね歩夢!」
璃奈「早い…!私だったらこわくて出来ない」
歩夢「璃奈ちゃんも自炊を始めて慣れていけば簡単に出来るようになるよ」トントン
璃奈「…今度、色々教えて欲しいな」
歩夢「もちろん、自炊する時はいつでも声掛けてね」ニコ
愛「あっ、愛さんもいるからね!りなりー!」
璃奈「うん、その時はお願いしたいな」 璃奈「…ところで、愛さんは今何してるの?」
愛「ん?ボウルにひき肉うつしてるよー、ここに歩夢が刻んだ玉ねぎと…」
愛「味付けに塩コショウと…あとパン粉、それから卵と豆乳を投入して捏ねる!豆乳だけにね!」
璃奈「愛さん面白い」
歩夢「はは、面白いね」
愛「にしては笑い方ドライなんだよなぁ」
歩夢「侑ちゃんだったら大爆笑だけどね」
愛「ゆうゆは全身がツボみたいなとこあるから」
璃奈「ある意味羨ましい」
愛「あはは、確かにね。歩夢を一回くらいは大爆笑させてみたいなぁ」 歩夢「侑ちゃんほどひれ伏して笑ったことないから難しいと思うけど」
愛「…いやひれ伏すって…」
愛「まぁでもそのくらい歩夢を笑わせたい、ドライな返しされると逆に燃えるしね!」
歩夢「愛ちゃんってすごいポジティブだよね…」
歩夢「まぁ、できるなら私も思いっきり笑いたいし…それは挑戦してみてほしいな」
愛「うんっ任せて歩夢!ドライにトライするよ!なんつってね!」
歩夢「…はい、玉ねぎ切れたよ」
愛「え、そこスルーするー?」
歩夢「………」
璃奈「……」 愛「……りなりー今のとこカットで!」
歩夢「恥ずかしくなってちゃ終わりだよ愛ちゃん」
璃奈「急なダメ出し…」
愛「いやなんかこのくだり飽きられてる説あるんだもんっ」
歩夢「ううん…そんなことないよ。愛ちゃんはずっと面白いもん」
愛「うぇっ?」
歩夢「面白くて楽しいよ」ニコ 愛「……お、おう…」
璃奈「あからさまに嬉しそう」
歩夢「ふふっ」
愛「…んもぉ、人の心読まないでよりなり〜」
璃奈「えへへ」
愛「もーもー…ほらっ、玉ねぎ移しとくねっ」ササッ
歩夢「…うん、ありがとう。じゃあ私捏ねるね」
愛「うん、任せた!」 歩夢「こうやって…肉の粒が無くなるまで捏ねて混ぜる」コネコネ
璃奈「冷たくない?」
歩夢「ちょっとだけね、でも大丈夫」コネコネ
愛「………」ジッ
歩夢「……?な、なに?愛ちゃん、顔に何かついてる?」
愛「ん?あー…なんか、熱心に捏ねてるなーって思って」
歩夢「見られてると恥ずかしいよ…」 愛「えへへっ」
璃奈「………」
歩夢「できた、あとは形を作って…」
璃奈「私もやってみていいかな?」
歩夢「え?」
璃奈「やってみたい」
歩夢「…うん、いいよ。やろっか」ニコ 歩夢「じゃあカメラそこに置いて、まずはエプロンして手洗おっか、璃奈ちゃん」
璃奈「うん…!」トテテ
愛「今の会話めっちゃ母娘感出てたね」
歩夢「…言ってて自分でも思っちゃった」
愛「ふふ…よーしじゃあ愛さんもお母さんと一緒にやろっかな!」
歩夢「ちょっ、愛ちゃんってば…からかわないでよ」プクー
愛「えへへ〜」 歩夢「もう……まぁでも、そうだね。折角だから三人でやろっか」
愛「うんっ」
璃奈「洗ってきた」トテトテ
歩夢「うん。あ、璃奈ちゃんも髪結ぶ?」
璃奈「髪…うん、結ぼうかな」
愛「お、じゃあやったげよっか?」
璃奈「お願いしていい?」
愛「うんっ、いいよー。後ろ向いてくれる?」
璃奈「うん」 愛「こうやって…ほいっ、出来た!」ポン
璃奈「ありがとう。愛さん」
歩夢「わぁ、璃奈ちゃん可愛い。似合ってるね」
璃奈「…ありがとう」テレテレ
歩夢「ふふ…ていうか結ぶの早いね、愛ちゃん」
璃奈「うん、手馴れてる」
愛「まぁよく髪型弄ったりするからねー」
歩夢「色んなバリエーションがあるからすごいよね愛ちゃん」 愛「それで言ったら歩夢の普段の髪型もすごいよね、毎朝お団子結んでるんでしょ?」
歩夢「気に入ってるからね、侑ちゃんも私っぽくて好きだって言ってくれるし」
璃奈「私も好きだよ、歩夢さんのいつもの髪型。今のポニーテールも好きだけど」
愛「うん、愛さんもどっちも好きだなぁ」
歩夢「っ…あの、あ…ありがとう……//」
歩夢「え、えと…じゃあ、そろそろ形作ろっか…」オドオド
璃奈「…うん」 歩夢「まずは…このくらい手に取って」
璃奈「ん…わ、やっぱり冷たい」
愛「ね、めっちゃ冷たい。ちょうど3等分出来たね」
歩夢「うん、1人分の大きさも丁度いいね」
歩夢「で、それから…こうやって空気を抜く様に」ペチ ペチ
璃奈「んと…こう?」ペチ…ペチ
歩夢「うんっ、そうそんな感じ」 愛「お、上手だねりなりー」ペチ ペチ
璃奈「そうかな…?良かった」
歩夢「ふふ、作ってあげるつもりだったのに結局一緒に作っちゃってるね」
愛「あははっ、確かに」
璃奈「一緒にやる方が楽しいかも」
歩夢「…だね」ニコ 歩夢「それで…空気を十分に抜いたら、あとは表面を滑らかにして…」
歩夢「そしたら真ん中にこのくらいへこみを作って終わり」
璃奈「なるほど…わかった」
愛「…はい、出来たっ」
璃奈「私も出来た」
歩夢「うん、綺麗だねっ。ありがとう、早速焼いていくね?」
愛「うん!」
璃奈「りなちゃんボード<わくわく>」 ──
─
ジュゥゥゥゥ…
璃奈「すごくいい音…」 REC
歩夢「すぐ焼き上がるからね」
璃奈「うん…!」
璃奈「愛さんの方はソース…もう出来そう?」 ズイ
愛「…うんっ、もう少しかなー」
歩夢「…すごくいい香りだね」 愛「でしょでしょー」
璃奈「いい匂い過ぎて余計にお腹すいてきちゃう」キュルル
歩夢「あはは、私ももう限界かも…」
歩夢「…よし、出来た。あとは愛ちゃんのソースだけだね」
愛「…おっけ!こっちも完成!一応りなりー味見してみてくれる?」
璃奈「私でいいの?」
愛「いいよいいよ!元はりなりーの為に作ったんだし!」
歩夢「うん」ニコ 璃奈「じゃあ…」
愛「はい、あーん」
璃奈「んむ…」パク
愛「どう?」
璃奈「………おいしい!」
从||๑><๑|从
愛「お、やった!」
歩夢「ふふ…じゃあソースかけて、サラダ付け合わせたら完成だね」
りなあい「うん!」 ─
─
3人「いただきますっ」
歩夢「……!このブロッコリーすごくおいしい…」モグモグ
璃奈「うん…ほろほろしてて食べやすいし」
愛「ほんと?よかったぁ二人の口に合ったみたいで…歩夢のみそ汁もおいしーよ」ズズッ
歩夢「ありがと、璃奈ちゃんもおいしい?」
璃奈「うん、絶対おかわりする」
歩夢「ふふ…嬉しいな、そう言ってくれると」 歩夢「おかわり欲しくなったら言ってね」
璃奈「うん、ありがとう」
愛「りなりー、ハンバーグめっちゃおいしいよ」
璃奈「うん」 パクッ
モグモグ
歩夢「どう?璃奈ちゃん」
璃奈「…!すごくジューシー…ソースともよく合って…めちゃくちゃおいしい…」 歩夢「ほっ…良かった。大成功だね愛ちゃん」ニコ
愛「うんっ、りなりーが喜んでくれるなら作ったかいがあったよー」
璃奈「……」モグモグ
从||"´༥`"||从
歩夢「すごく美味しそうに食べてるね」
愛「うんうんっ、見てるみんなも食べたくなっちゃうんじゃない?」
歩夢「だといいなぁ」 愛「あ、お母さんみそ汁おかわり〜!」
歩夢「…!もぉ愛ちゃん?お母さんって呼ばないでってば」
璃奈「お母さん、私もみそ汁のおかわりいいかな」ズイ
歩夢「…もう、璃奈ちゃんまで真似しちゃうからやめてよね愛ちゃん」プク
愛「えへへっ」
歩夢「…はいっ、どうぞ」ズイ
愛「ありがとーっ」
璃奈「ありがとう、歩夢さん」 歩夢「うん」
璃奈「ん…全身に染み渡る…」ズズ
愛「ん…ほんと、みそ汁もめっちゃおいしいよね。毎朝作ってほしいよー」
歩夢「えっ?」ドクッ
愛「ん?…あ!変な意味じゃないよ?!勘違いしないでよね!」
歩夢「……なんでそんなツンデレっぽく言うの…分かってるよ」 璃奈「でも、ほんとに…私も毎朝作ってほしいくらい」
歩夢「絶賛してくれるのは嬉しいけど…流石に毎朝は無理だよ〜…」
愛「ふふ、まあ流石にね。てか商品化とかしたらめっちゃ売れると思うなあ」
璃奈「それはあるかも…商品名は、付けるとしたら…」
愛「歩夢汁?」
歩夢「ネーミングセンス絶望的過ぎない!?」 愛「あ、ダメ?」
歩夢「ダメだよ!なんかこう…ね?ダメだよ??」
歩夢「あの…わかるよね璃奈ちゃん!」
璃奈「…うん、歩夢さんから出汁とってるみたい」
愛「ああ!そっかそっか!確かにそうだね!」
歩夢「…そ、そっかじゃないよ。もぉ…」 歩夢「…あ、二人ともご飯のおかわりはいる?」
りなあい「いる!」
歩夢「はーい」ゴソ
りなあい(やっぱりお母さんだ…)
──── ………
3人「ごちそうさまっ」
璃奈「ふぅ……お腹いっぱい…歩夢さん、愛さん。すごく美味しかった…ありがとう」
愛「いえいえ、美味しすぎて綺麗に平らげちゃったね」
歩夢「うん、作った身としてはすごく嬉しいな」
愛「だね!またやろうよ、こういうお料理コーナー的なの」
歩夢「うん…!いいと思うっ」 璃奈「今度は私も1から参加したいな」
歩夢「そうだね、その時はちゃんと色々教えるね?」
璃奈「うん…!」
愛「ふふ…よーしそれじゃあそろそろお片付けしよっか!」
歩夢「うんっ、そうだね」
璃奈「ん、私も手伝う」 ───
ジャァァァ
璃奈「このお皿で最後だよ」カチャ カチャ
歩夢「うん、ありがとう。置いといていいよ」カチャ カチャ
璃奈「うん」カチャ
歩夢「ていうか…この洗剤すごいね、ちょっと垂らしただけでこんなに泡立つんだ…」
愛「見るからに高そうだねーその洗剤。ウチの鉄板とかすぐ洗えちゃいそう」フキ フキ 歩夢「うん、油汚れもすぐ取れちゃうからいけると思う」
璃奈「お母さんが買ったものなんだけど…市販では売ってなくて、確か高かった気がする」
愛「ほへー、りなりーん家ってやっぱすごいね」
歩夢「ほんとにね。…あ、そういえばまだカメラ回ってるんだっけ?」
璃奈「うん、回ってるよ。でも、どこで落とそうかなって思って」 愛「あー、じゃあオチ作っとく?」
歩夢「今がいいかな?」
璃奈「今でもいいけど…」
歩夢「………うーん」
愛「……」チラ 愛「…あっ、そうだ。じゃあ歩夢、その泡両手で持ってくれる?」
歩夢「ええ?な、なんで…?」
愛「いいからいいから!」
歩夢「う、うん…」スッ
愛「ありがとっ」 璃奈「…?」
愛「じゃあ今からオチ作るね!」
歩夢「あ、愛ちゃん…?何す…」
ベシャッ
ぽむりな「!?」
璃奈「あ、愛さん…?」
愛「ん…!どうどう?泡しっかりついたー?」ガバッ 璃奈「……!カーネルサンダースみたいになってる…」
歩夢「…!……っ…」プルプル
璃奈「……歩夢さん?」
愛「……??」
歩夢「…ぷっ…ふ…」フルフル 愛「お…?」
歩夢「…っぷぁはははっ!ちょっ、待って…っ」
歩夢「っあ、あいちゃ…っあわがっ……髭みたいになってる…んふふっ……くっ…!」プルプル
璃奈「あ、歩夢さんがツボに入った…」 愛「…ぷふっ、ちょっ、もー笑いすぎだよ歩夢!釣られちゃったじゃん!」
歩夢「ふふっ…あはは!だ、だって愛ちゃんの顔が…っふっ…」
歩夢「も、もぉ…!ダメだよ洗剤顔につけちゃ!早く洗ってきて…ん、くふ…っ」
愛「あははははっ!もう歩夢が笑うから愛さんまでツボに入っちゃったよー!」
歩夢「ん、ふふっ…あはははっ…」
璃奈「……ふふ」 ポチ ──
───
部室
カタカタカタ
璃奈「………やっと終わった」
璃奈「……んっ…」グイー
璃奈「はぁ……」
ガチャ
菜々「璃奈さん?」
璃奈「……?あ…せつ…生徒会長」 菜々「ふふ、せつ菜でいいですよ。今は二人きりですから」パタン
璃奈「…そっか」
璃奈「えっと…せつ菜さん。ごめんね、わがまま言って部室開けてもらっちゃって」
菜々「いえ、同好会はお休みですが…もうテスト期間は明けましたし、全然使って頂いて大丈夫ですから」
璃奈「ありがとう」 菜々「編集の方は終わったみたいですね」
璃奈「うん、たった今上げたよ」
菜々「お疲れ様です、やっぱり部室での作業の方が捗りますか」
璃奈「…そう、だね。家でも出来るんだけど…やっぱり部室の方が不思議と捗る気がする」
璃奈「家も家で落ち着けるけど、部室でやる作業が好きなんだ」 菜々「気持ちは分かりますよ、私にとっても…落ち着ける場所の一つですから」ニコ
璃奈「それだけここが馴染み深くなってるんだね、お互い」
菜々「ふふ…そうですね」
菜々「…最近は編集特に頑張ってますよね、璃奈さん」
璃奈「楽しいんだ、みんなの練習風景とか…日常とかを見ながら作業するから」 璃奈「最初はファンのみんなが喜ぶ為にって、愛さんの提案で始めた事だけど…」
璃奈「こうして改めて見ると初めて気付けることもあるし」
璃奈「見ていてほっこりするし、モチベーションにも繋がるから」
菜々「なるほど…そうですね…璃奈さんの撮った動画は、私達にとってはホームビデオのようなものかもしれませんね」ニコ
璃奈「…!ホームビデオ…うん、まさにそうだと思う」 菜々「ふふ……あ、因みに今日はどんな動画を?」
璃奈「えっと…大分前に撮った動画なんだけど…これ」カチカチ
菜々「……ああ!これですか!一緒にハンバーグを作ったんですよね?歩夢さんからこの間聞きました」
璃奈「うん、すごく楽しかったし…ハンバーグもすごく美味しかった」
菜々「歩夢さんも言ってましたね、すごく楽しかったって」 璃奈「そっか…そう思ってくれてて良かった」
璃奈「私にとっては、トップレベルでいい映像が撮れたと思うな」
菜々「ふふ、そうですか…見るのが楽しみですっ」
璃奈「…あ…そろそろ、帰らなきゃだよね?待たせちゃったかな」
菜々「いえ、生徒会の仕事が終わったところで、ちょっと様子を見に来ただけですから」 菜々「でも…終わったのなら、一緒に帰りましょうか?」
璃奈「うん、今から準備…」
ガチャ
愛「…はぁ…はぁ…っ」
菜々「!…あ、愛さん?どうしたんですか?」
璃奈「愛さん…?」
愛「ん…っ、はぁ…はぁ…ちょっと…外走っててさ…疲れちゃったから、休憩しにきた…」ドサッ 璃奈「一人で走ってたの?」
愛「ん…っ、うん…」
菜々「愛さんがそんなに汗かくなんて…タオル持ってきますね」
愛「あ、はは…2時間近く走ってたからね…」
菜々「ええ!?は、走りすぎですよ…」
愛「はい、タオルと水です」 愛「はぁ…はぁ…ありがと…」フキフキ
愛「……」チラ
愛「…りなりー、編集してたんだ」
璃奈「…うん、この間3人でハンバーグ食べた時の動画だよ」
愛「…………そ、っか……」
愛「ちょっと見てもいい?」 璃奈「え…いいけど…今から?」
愛「…うん、時間大丈夫だよね?」
菜々「え?…はい、少しくらいなら大丈夫ですよ?」
愛「ありがと」
璃奈「…わかった。じゃあ、再生するね」
愛「うん」
───── ─
数十分後
璃奈「…ここで終わり」カチ
菜々「ふふっ…愛さんの顔凄かったですね」クス
愛「えへへ…」
菜々「ハンバーグもとても美味しそうでした」
愛「うん、めっちゃ美味しかったなぁ…」 菜々「歩夢さんがあんなに笑ってるところも初めて見ました」
愛「…………そだね」
璃奈「うん、そこも見所の一つ」
菜々「…それと、歩夢さんと愛さんの掛け合い…」
愛「え?」
菜々「私、結構好きなんですよね。お二人のやり取りが」 愛「…………」
菜々「見てるこっちまでもが楽しくて、釣られて笑ってしまうくらい本当に面白くて…」
璃奈「うん、私も二人のやり取り好き」
愛「ふふ…」
愛「……アタシね、嬉しかったんだ」 菜々「え…?」
愛「歩夢があそこまで元気になってさ…」
愛「あんなに…笑顔になってくれたことが…本当に嬉しかった」
愛「それに、こうやって素で笑い合えるくらいにまで仲良くなれて、心底嬉しかった」
璃奈「……あ、愛さん…?何かあったの?」
愛「………この間ね、歩夢が言ってくれたんだ」
璃奈「え?」 愛「これからもずっと、大切な友達でいてほしいって」
菜々「……」
愛「愛さんね…すごく嬉しかった…」
愛「………」ポロ
ななりな「…!」
菜々「あ、愛…さん?」 愛「あ、れ……あはは…ちょ、…ごめ…」グシグシ
璃奈「………愛さん…」
愛「ぁっ…アタシね…、ッ…その言葉が、ほんとに堪らなく嬉しかったんだ…っ」
璃奈「……」
愛「ほんとに…嬉しくて…っ」
愛「く…っ…、ぅ…ッ…」 璃奈「…愛さん…っ」ギュ
愛「…っ……」
璃奈「……いいよ、我慢しないで」
愛「っ、…ぅ……ッ…ん…アタシ…っ…」ヒシッ
愛「…!…ひっ…ぅ、うれしいのに…すごく苦しくて…っ…つらいよ…っ…!」ポロ ポロ
菜々「…っ………愛さん…」
愛「っ…く…ぅ…っ…、ぅぁぁあ…!」ポロポロ
璃奈「………」 …結局耐え切れなかった
嬉しかった分…そのくらいアタシには、その言葉が息苦しかった
あれからずっと、呼吸を意識していないと、窒息してしまうんじゃないかっていうくらい息辛くて
心が押しつぶされそうだった
だから…あの日から
テスト期間中ずっと必死に動いて
必死に別のことを考え続けた
蓋をして 閉じ込めて
ごまかして これまで以上に、必死に気持ちを抑え込もうとした
そうでもしないと、感情が溢れてしまいそうだったから
…自分の気持ちに気付いた時からアタシは…もしこの気持ちを知られてしまったら
歩夢を絶対に困らせるって思ったし
もしかしたら歩夢との繋がりを失うかもしれないって思った 何よりアタシの事で歩夢の笑顔をなくさせたくはなかった
だから、気持ちをずっとごまかしてきた
傍に居られるだけで、傍で笑っていられるだけで…それだけで良い
アタシと歩夢は、この距離感のままで良い
アタシは、歩夢にとってのゆうゆのような
そんな特別にはやっぱりなれないんだって
そうやって、自分に言い聞かせて割り切るしかないから、割り切ってきたつもりだった …でも、あの時の歩夢の言葉を聞いた瞬間からずっと
その言葉がどうしたって頭から離れることは無かった
アタシは焦燥感に苛まれた
結局、割り切っていたはずなのに全く割り切れてなんていなかった
きっと心のどこかで、ほんの少しでも何かを期待してたんだ…アタシは そんな自分に苛立った
…もうアタシは、これ以上感情を抑えきれる自信も…
歩夢の前で笑顔でいられる自信もなくなっちゃった…
こんなはずじゃなかったのに
…アタシはようやく知った
たった一人の人を好きになるのって、こんなにも苦しいんだ 部室棟のヒーロー言われても年頃の女の子だもんな愛さん…
次スレも待ってる このスレッドは1000を超えました。
新しいスレッドを立ててください。
life time: 94日 23時間 52分 14秒 5ちゃんねるの運営はプレミアム会員の皆さまに支えられています。
運営にご協力お願いいたします。
───────────────────
《プレミアム会員の主な特典》
★ 5ちゃんねる専用ブラウザからの広告除去
★ 5ちゃんねるの過去ログを取得
★ 書き込み規制の緩和
───────────────────
会員登録には個人情報は一切必要ありません。
月300円から匿名でご購入いただけます。
▼ プレミアム会員登録はこちら ▼
https://premium.5ch.net/
▼ 浪人ログインはこちら ▼
https://login.5ch.net/login.php レス数が1000を超えています。これ以上書き込みはできません。